あるとても広い所に、一人の神様がいました。
 神様はそのとても広い空間にお尻をつけ、足をだらしなく広げたまま座り込んでいました。輪ゴムの一辺と一辺を引っ張ったように大きく、楕円に口を開いて息を吸い、吐き出しますと、波紋のように辺りの空間が波打っていきます。
 神様は暇を持て余していました。とても広い所に座ってただただ呆けていました。
 あくびをして、眠たそうなまぶたをゆっくりと上下させます。そうしている内に百年が過ぎました。
 神様は相変わらず座っていました。手を後ろについて上体を支えています。でん部を浮かせると、お尻から空気の抜ける音がしました。間抜けな音でした。黄色い気体が昇っていきます。神様はただ一言、「臭い」とだけ言いました。
 百年が経ちました。神様の姿勢に変わりはありません。足首まであるはずの布が膝までめくれています。スネから無数の毛が覗いていました。
 ある時ふと、神様は見上げました。百年前に自分の体から出て行った気体が、頭上で細長い綿のようになって蠢いていました。それを見て、思い立ちました。
 世界を創ろう。
 神様は自分のたたずむ広大な空間の一所にひとつの部屋を作りました。
 神様は黄色の綿に指を突き入れ、引き連れてその部屋に入ります。その部屋は暗かったので、明かりをつけようと思いました。綿から飴玉ほどの塊を引き千切ると、息を吹きかけて流します。神様が指を鳴らして火を起こすと、それが引火して煌々と照りました。太陽です。
 次に神様は部屋の真ん中で、指にまとわった黄色いフワフワの塊をクルクルと回し始めました。お椀のような輪郭を描くように手を動かしていると、塊はその通りに形作られていきます。
 意図した形にはなったものの、未だたゆとうそれを固めるために、指を舌に濡らして黄色の綿に塗りつけていきました。
 やがて器のように外部が出来上がります。椀の中には幾つもの千切れた綿が雲のように浮いていました。神様はそれもやはり舌に溢れる液で塗り固めると、満足そうに眺めました。大地の出来上がりです。
 最後の仕上げに指を鳴らすと、地面から大きな噴水が伸びてお椀の底と繋がりました。深部から勢い良く海が飛び出します。その時、あまりの勢いに押されて、衝突した陸の一部が空に吹き飛びました。それは月となりました。一緒に跳ね飛んだ海の雫は星となりました。
 次第に海の勢いは弱くなりましたが、絶えず噴き出す海水は器を満たして収まりきらなくなりました。ぐるりから瀧のようにこぼれていきます。はじめは中央に散らばっていた大地もその流れに乗って少しずつ、ゆっくりと広がっていきました。
 そうして世界は成り立ちました。
 神様に吹かれた太陽が世界を回り、朝と夜を生みます。
 弾き飛ばされた月も空を巡りました。
 神様はしばらくその光景をぼんやりと眺めていました。