今日の授業は全部終わって、私はまた駆け足でスリザリンの寮生をかきわける。
少しでも早く、少しでも長く、アイツ…ドラコ・マルフォイの傍にいたい。

私はグリフィンドールの生徒だけれど、ドラコのあの美しい刺すような瞳を見てからと言うもの、好きになってしまったのだ。
それを同寮の生徒達はあまり良いこととは思ってないみたいだけど、それでもいい。
私は彼を好きだし、多分彼も、最初の頃より好きになってくれてると信じてる。
彼になら手酷く裏切られてもいいし、乱暴に扱われたって少しぐらいなら平気。


「ドラコ!」
「……あぁ、か…」
ドラコは私を見つけると、まず目を細めて微笑むようになった。初めて会った時なんか、一瞥もくれてなかったから進歩してるんだと思う。それに…ロン曰く、コイツのその表情はあり得ないらしいし。
「ドラコ、ドラコ聞いて!さっきの授業の小テストね、満点だったの」
「満点?それぐらいで喜ぶ事か…まぁ、にしちゃぁ出来すぎだと思うけどね」
憎まれ口も気にならない。
ドラコの目が笑っているうちは、全然大丈夫、苦になんかならないわ。
「でしょー?ドラコが昨日、ちょぉーっと助言してくれたからだよ」
「僕が教えた?そんなことした覚え、ない」
うそうそ。
昨日私がボヤいてたの聞いて、ボソっと暗記方法教えてくれてたじゃない。
天邪鬼な所が大好きで、そうゆう時決まって少し、頬が赤い。
素直じゃないから多分好きなんだな…似たもの同士、類は友を呼ぶ。

「あれ…そういえば、今日はクラッブとゴイルは?」
「………お前がうるさいから先に帰した」
「!!!本当!?」
二人はドラコの付き人で、何があっても離れないと思っていたのに!
え…それって、私のためってことだよね…?
「べっ別に!お前のためとかじゃないからな!?勘違いするなよ…あいつらが、お前のことウザがっていたから…!」
「でも、じゃあ貴方はいいの?私がいて…いいの?」
「……お前はどれだけ来るなって言っても来るだろ…」
「…ねぇ、それっていいってこと?はっきり言わないとわかんないでしょ〜?」
「だからバカって言われるんだ。話の裏を読もうとは思わないのか?」
「だって純真だからv」
「………」
さっさと歩き出すドラコの後ろを、少し小走りで追いかける。
必死で追いかけているんだけど、ドラコの後ろ姿はだんだん遠くなっていって…
ドンッ
「ゃあっ」
「きゃあ!」
人とぶつかって、相手を倒してしまった。
こちらは後ろによろめくだけでよかったんだけど、向こうは尻餅ついてしまったらしい。
私は急いで足を止め、しゃがんで相手を起こそうとした。
「危ないじゃない!」
「ごめんなさい…その、急いでいたから…」
「…あら、
「ハーマイオニー…?」
ぶつかった相手は同じ寮生のハーマイオニー・グレンジャー。
あぁ、どうしてこんな時に限ってこの子とぶつかっちゃったんだろう。
当然、ハーマイオニーがいるって事は…
ー、また君か」
「あぁっロン…」
ドラコを毛嫌いしているロンもいるわけで。
こうなってくると、ハリーだっているのよね、多分…。
、どうしてそんなに焦ってたの?」
やっぱり…。
「え…と…うん、ちょっとね…」
この人達、嫌いじゃないけどドラコを目の敵…というか、にしてるから…何か複雑。
寮のために色々してくれるけど、でも…そうするとドラコが目立たなくなる。
だから、ちょっとした悪ふざけで目だってしまうドラコが不憫で不憫で…
「…まさか、またマルフォイじゃないだろうな?」
「っ!ち…違っ…」
「おい、…何してる」
あぁぁあぁ…
バカドラコ。
人がせっかく貴方の事、隠そうとしてたのに…どうして貴方って間の悪いところで気がつくのかしら。
「マルフォイ!」
「ん…?……おやおやポッターじゃないか。あぁそれに、ウィーズリーとグレンジャーまで。が何かしたか?」
は僕達の寮生のはずだ。お前がを、自分のもののように扱うのは…」
は…はそう思っていない。例えグリフィンドールであろうと、僕を慕っているんだ。…そうだろ?…」
「………うん…」
ドラコが、私の事をそう言ってくれるのはとても嬉しい。手放しで喜んでしまいたいぐらい。
でも…ハリー達の事を考えると…私のためを思って、ハリー達の言い分を借りれば、危ないから心配してくれてる。
!どうして…あれ程言ったじゃない、マルフォイと関わるなって!」
「…どぉして?だってドラコ、優しいじゃない」
「「優しい!?」」
私が呟くと、ハリーとロンが顔を見合わせて声をハモらす。
優しいわ…
私はもう一度呟き、ドラコの腕を引っ張って廊下を突っ切った。
!」
ハーマイオニーの叫び声が聞こえるけど、もう気にしてられない。
私は、どちらの悪口も聞いていたくなかった。


廊下を突き当たると、図書館に続く通りに出る。
ここまで来てやっとドラコの腕を離し、ゴメンなさいと謝った。
何も言わないで連れてきたことと、3人の、明らかに失礼な言葉に対して…そして、私があそこで言い返せなかったこと、全てひっくるめてその言葉に託した。
「別には何もしていないだろ…」
「でも…ドラコは気にしてないかもしれないけど、私が謝りたかったから…ごめんなさい」
ふっと鼻で笑い、ドラコは私の頭の上に手を置いた。
一瞬ぶたれるのではないかと身構えたが、そんな心配はいらなかったらしい。
そのまま優しい手つきで頭を撫でられた。
「っっっ!!ド…ドラコ!貴方何して…っ」
予想外のできごと。
あのドラコが、こんな頭を撫でるなんて…こんなっ
「お前が苦しそうだったから。僕は何も気にしていない、言わなくてもわかるだろう?いつもの事だ」
「〜〜〜〜〜…本当に?全然気にしてない?」
「あぁ」
撫でるのをやめたかと思ったら、次は顎に手を添えられた。
冷たくてきめ細かい、上品な手だ。
…お前は直球じゃないとわからないようだからな…」
「……ん…」
ちゅっと、口先だけが触れるような口づけを、自然にされて目を見開く。
初めてのキス。
しかも、ドラコとのキス。
そしてあの、キスする前のドラコのセリフ。
「ド…ドラコ……あの…その意味は…」
「自分で考えろ、ここまでしてやったんだから」



そう言ったドラコの頬は、珍しくほんのりと赤く染まっていた。