秋の章<1> 七夕 

 
そうこうするうちに7月になってしまった。
7日の七夕の日には色好みな男達から、織女、牽牛などにちなんだ恋歌が数多く贈られて来るけれど、目を留める気にもなれない。
(こうした折、敦道様は必ずといっていいほどお便りを下さっていたものを・・・、本当に私のことなど忘れてしまわれたのだわ。)
と思っているところへ文が届く。

思 ひきや七夕つ女に身をなして 天の河原をながむべしとは
(思ってもみませんでした。この私が織女のような身になって、ままならぬ逢瀬を嘆き、天の河を眺め物思いにふけることになろうとは。)

ただ歌ばかりとはいえ、やはり今日と言う日は見過ごされなかったのだと思うと嬉しい。

な がむらん空をだに見ず 七夕に忌まるばかりのわが身と思へば
(あなたが眺めているという七夕の空さえも私は見ていません。
織女にさえ不吉と思われるほどに、あなたとの逢瀬に恵まれない我が身を思うと・・・。)

とお返事する。




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