冬の章<3> 月も見ず


その後二、三日、お便りもなく・・・、
(頼もしげにおっしゃっていたこともどうなっているのだろうか。)
と、思い続けていると少しも眠れない。
ともかくも横になって、
(・・・夜も次第に更けていくよう・・・)
などと思っているところへ門を叩く音がする。
(あら、誰かしら? 心当たりはないけれど、)
と思いながらも人をやって見に行かせると敦道様からの文なのだった。

思いがけない時のことで
(私の心があちらに届いたのかしら?)
と、しみじみ嬉しく、妻戸を押し開け月明かりを入れる。

見 るや君さ夜うち更けて 山の端にくまなくすめる秋の夜の月
(あなた、見ていますか? 
夜も更け、山の端にかかる隈なく澄んだ秋の夜の月を)

思わずじっと月を眺めていると、いつもよりも様々なことが心に沁みるよう・・・、

(いけない、門も開けずに待たせているから、使いの者が首を長くしていることだろう。)

と思い、急いでお返事する。




更 けぬらんと思ふものから寝られねど なかなかなれば月はしも見ず
(夜も更けたと思われるのに眠れませんが、かえって物思いが増すばかりと思い、月は見ていません。)

あえて『月は見ない』と言う彼女の返事には意表を付かれた。

(やはり、この人が傍にいないとつまらないな。
なんとか邸に呼び寄せて、こうした気の利いた歌などを詠むのも聞いていたいものだ。)

と、改めて心に決める。




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