仕事がやっと終わりいつもの待ち合わせ場所の本屋に向った。

一日中立ちっぱなしだった足は浮腫んでいた。

仕事を始めてから仕事場の近くの本屋に父は迎えに来てくれている。

本屋へ行くとすでに父は来ていた。

「お疲れ様〜。」

車に自分の体を押し込むように乗り込んだ。

「おじいちゃんな、後2、3日でがやまだって。」

「え・・・??」

予想もしない言葉だった。何を言っているんだろう。

父は、今おじいちゃんがどういう状態なのか、今日なにがあったのか話始めた。

けれど、その言葉達は私の耳を風のようにすり抜けていくだけだった。

訳もわからず私の目には涙が溢れた。

最後におじちゃんと話したのはなんだったっけ・・・??

思い出そうとしても思い出せなかった。

何日か前おじいちゃんは病院に行った。

ここの所日に日に右足と右手が動かなくなって居たので病院に行ったのだった。

病院に行くとそのまま検査入院になった。

けれど本人は元気だと、毎日お見舞いに行っていた母と叔母から聞いていた。

すぐ退院出来るだろうという話だった。

私もすぐおじいちゃんは帰ってくると思っていた。

しかし、おじちゃんは病院で突然心筋梗塞を起こしたのだった。

最後におじいちゃんと話した言葉はなんだったんだろう。

「おはよう」だったか、「行ってきます」だったか。

いや・・・あの朝私はおじいちゃんとちゃんと向かい合う事はなかったのかもしれない。

最後に向かい合ったのは「おやすみなさい」だったかもしれない。

おばあちゃんもそうだった。突然だった。

うちで脳梗塞を起こしたのだった。

2年ほど寝たきりだった。

あの時あんなにも悔しい想いをしたハズなのに。

同じ事を繰り返している自分に気が付いた。

人生とは同じコトの繰り返しなのだろうか。

おじいちゃんはICUに入った。

家族だけならば入るコトが出来た。

母は叔母と毎日通った。

「りんごもおじいちゃんに会う?」

「・・・・・・・。」

「会う」と即答出来なかった。

会いたいけれど正直自信がない。

自分に正直目の前に映ったコトを受け入れられる自信がない。

恐い。

凄く迷った。

会いたいけれど・・・・でも・・・・。

「母・・・・明日おじいちゃんに会いに行っていい??」

「いいよ!明日、行こうね。」

エレベーターに乗り頑丈なシルバーの扉の前に立ちインターホンを鳴らす。

大きな扉が開くと同時にナースが出て来た。

私達は中に入り、サンダルに履き替える。

白衣を着て、マスクをして、紙帽子をかぶる。

アルコールで手を消毒しておじいちゃんの所へ向った。

おじいちゃんは沢山の機会に囲まれて居た。

それぞれの機械達は自分の使命をかせられたように動いていた。

ベットに寝ているおじいちゃんの姿。

それは今まで見たことの無い、おじいちゃんの顔、姿だった。

「おじいちゃーん。今日はりんごが来たよ。」母たちはおじいちゃんに話かけながら体をさすり話かける。

私は目の前に広がる光景をただ立ち尽くして見ているだけだった。

ただ涙が一粒、一粒と流れ落ちるのを感じるだけだった。

面会が出来るのは1家族5分程度だった。

ICUの中には他に何人かの患者さんも入っていた。

カーテンの向こうに横たわる人の姿が少し見えた。

私がおじいちゃんに会いにいって3回目の事だったか、おじいちゃんは私達の言葉に少しずつ反応を示すようになった。

顔を顰め、体を少し動かした。

私が「おじいちゃん」と声をかけ、手を握りしめとおじいちゃんは私の手を力強く、強く握りしめた。

あったかくて。大きいおじいちゃんの手の感触は今でもこの手がしっかり覚えている。

思えばおじいちゃんの手を握ったのなんて始めてだったかもしれない。

手ってこんなにあったかいものだったとは知らなかった。

おじいちゃんはこのおっきくて、あたたかい手で何を握り締めてきたのだろう。

あの温かさは今でもこの手に