小生は過日神奈川県湘南台にある某大学の湘南藤沢キャンパスの講義を参観する機会を得た。そこで目にした光景は我が目を疑うものであったのでここに報告する。
それはその学部唯一の必修科目であった。講義の内容は現代メディア論ということであった。小生は開始時刻少し前に講義室に着き教授の到着を待った。講義室は300名は収容できる階段型の部屋だった。共学だったので、女子も多く、なかなかかわいい娘が多かった。小生が結婚していなければ、声をかけたいくらいだ。しまった、早まったか、と思った。しかし、まず異様だったのは、学生たちが激しく出入りをしていたことだ。いったん講義室に入った学生が、既に部屋にいた別の学生に何事か尋ねると、急いで出て行くことが繰り返されていた。なぜ激しい出入りをしていたのかはあとでわかった。
教授は予定の時刻より10分ほど遅れてやって来た。教授の年齢は60歳くらい。講義が始まった。
我が目に対する疑惑 その1 しゃべりは続くよどこまでも
私語が止まないのである。女子学生が横並びで6名ほどぺちゃくちゃとしゃべっている。後ろの方ではカップルがしゃべっている。男子学生は、講義が始まってからもう20分もたっているのに、部屋に入ってくるなり、友人らしき誰かに話しかけている。教授は淡々と講義を進めている。表情に変化はない。あきらめているのか、無関心を装っているのか、怒りを隠しているのか、小生にはわからない。確かに、いじめたくなるタイプの、おとなしそうな先生だったことは認める。よくいるタイプだ。業績があまりない代わりに学生には甘く、わりあい簡単に優をくれる、「楽勝パターン」な教授。 だからといって私語をかわしていいのだろうか。お前たち、どう思うのだ。こら、返事をしろ。ちゃんとこちらが納得のゆく答えをしろ。し烈な受験競争をくぐり抜けてきたその優秀な頭脳で小生を納得させろ。どうだ、やってみろ。馬鹿野郎とは、受験に破れた者を呼ばない。お前たちのような者を言うのだ。
我が目に対する疑惑 その2 ここは学生食堂か?
育ち盛りなのである。とにかく学生たちはよく食べる。よしよし、腹が減るのであろう。が、ここをどこだと思っているのだ!講義室である。講義中である。教授の目の前、数メートルの距離に座った男子学生は堂々とチーズドッグをほおばっている。後ろの席の者は牛乳を飲んでいる。さっきの横並び女子学生(できたらこのおじさんと遊んでほしいタイプもいたが)が全員菓子パンを食べながら紙パックのジュースを飲んでいる。ここは学生食堂か?否、動物園か幼稚園、いやそれ以下だ。幼稚園児はおべんとうの時間以外はモノを食べないからだ。動物園の動物たちでさえ、飼育係がエサをくれるまで待っている。彼らは確か高校時代に倫理社会を学んだはずだが、、、。ちなみにこの大学の入試時の偏差値は80を超えている。
我が目に対する疑惑 その3 最新式遠隔講義教室の悲劇
実は、この講義室の講義は、となりの講義室でも聞けるのである。なぜなら、二つの部屋は、高速の回線で結ばれ、教授の声や姿は、電送されているからだ。なぜ、わざわざ電送するのか。それは、必修科目であるがゆえに一講義室内に学生は収まらないはずだからである。従って教授の居る部屋に入りきらなかった学生のみが画面で講義を受ける前提になっている。ところが、教授が朗々と講義を続けているこの部屋に居る学生の数は、およそ50人くらいであろう。従って、空席が250人分はあった。 では、遠隔講義教室の内部はどのような状態であったのか。小生は見に行った。そこで小生は、現代日本社会のひずみがキシキシと音をたてているのを見た。「戦後教育のなれの果て」という名のイモムシが、人間の男女の形を借りて、蠢いているのを見た。
だれ一人、画面の教授の話を聞こうとする者はいなかった。彼らの全てが友人と私語を交わしていた。ただ講義室にいるだけで、講義に耳を傾ける者は皆無であった。腐敗したモラルの死骸が横たわっていた。若くうつくしい顔だちの向こうに醜いぶよぶよとしたものが透けて見えた。小生はその者たちの発する腐臭に耐えかねて気分が悪くなり、たまらずに講義室を後にした。確かに、どのような学生時代を送ろうが自由である。要領よく単位をとり卒業することは、将来、適当に力を抜くべき仕事と、全力を投入する仕事の区分けをすることに役立つ。しかし、いつから力の適切な配分という行為の中に、人生の師でもある大学教授への侮辱が組み込まれたのか。失礼千万、即刻退学でも文句は言えまい。諸君の他にも優秀な人材はいくらでもいると心得よ。諸君らが合格したがために大学に入学できなかった者の気持ちを考えたことがあるか。
考察 ネットワークの落とし穴
今回の体験から、ネットワークで電送されてくる講義は、よほど工夫をしないと、まともに視聴されないことがわかる。そこで、電送の受信をする部屋と、教授の居る部屋とを映像とは別の回線でつなぎ、常に遠隔地のようすを教授がモニタしながら、随時学生に質問できるようにする事を提案する。学生は、自分も監視されていることを知れば少しは緊張するだろう。(もっとも講義中の「食事」は減らないだろうが。)遠隔講義を血の通ったものにする一方策と考えるが如何。
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