◇ようこそ皆さん。ここは「おとぎの王国の本屋さん」です。
◇小説・短編小説・童話・物語が沢山有ります。
新作もだいたい一週間ごとにどんどん書いていきます。
皆さん、近くを通りかかったら時々お寄り下さい。
◇公式国名は「おとぎの王国」です。「おとぎの国」は略称です。 |
◆ 目 次
※印は未掲載です。
◇「森の中の宇宙人」も2002年1月31日に続きが掲載されています。
★連載小説が始まりました。「森の中の宇宙人」です。
■ 4月24日・・・「凱旋門でラ・マルセイユーズを歌う男」
■ 4月3日 ・・・「一日で天国と地獄を見た男」
■ 3月10日・・・「モンマルトルのピアノ弾き」
■ 「おとぎの王国の村」と「おとぎの王国の本屋さん」のご案内。
■ 3月3日 ・・・ 「おとぎの国の時計屋さん」
■ 「おとぎの国のはかり屋さん」
■ 「りんごさんと馬さんたちのかけっこ」
■ 空が落ちてきた王国
■ 長編連載小説 「森の中の宇宙人」
※続きは下の方へ。一番下の方へ行きます。
■ 幸せの蒼い石 ■ 神々の黄昏〜忘却編
■ 太陽と北風と旅人 ■ お星さまはなぜ空に有るの?
■ 哀しみのパンドラ ■ おとぎの国の子供戦争
■ 高慢な人類への批判集 ■ 空を見て歩くヨハン
※「空を見て歩くヨハン」の後に、森の中の宇宙人が続きます。
■※どうして夕陽の海は紅いの? ■※広場の賢者
■※メリーさんとクマとオオカミ ■※星座はどうしてあるの?
■※ソクラテスの皮袋 ■※おとぎの国の偉い王様
■※うそつきのいない王国 ■※二人漂流記
■※おとぎの国の五等役人 ■※ケーキ大戦争
■※おとぎの国のレストラン ■※町の大きな不思議な木
■※ぢょんぢょ村のとら丸
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◆ 「凱旋門でラ・マルセイユーズを歌う男」
ロバート・ランブン
街角でとても嬉しそうに立っている男がいた。
知らない若者だったが思わず声をかけた。
「ずいぶんと嬉しそうですね。これから結婚式でも?」
「いや、結婚はもう5年前に済ませた。その質問についての返事をするなら、今私は地獄だと正直に告白しないといけない」
「じゃあ、何がそんなに嬉しいのですか。そうか、子供が生まれるのだね」
「子供はもう三つになる。下の子は二つだ。もう一人まだ地球を一か月しか体験していない子供もいる。彼等は破壊屋だ。美しかった家は廃墟のようになってしまった。彼等が投げ合うおもちゃで窓ガラスは割れ、こぼしたミルクで高価なじゅうたんは一年中湿地帯のようになっている。ミルク以外の液体もよくじゅうたんにこぼすようだ。
真夜中になると彼らは涙を飛ばしながら大合唱を始める。
まだ、音楽教室に入学させていないので、音楽理論を十分理解していない。
不協和音の連続だ。リズムは各自がそれぞれ独自に刻む。そういった状態で輪唱、対位法をこなしていく。バッハも感心するだろう。
だが、平均律は否定されている。アラビア音楽のような旋律を発する時もある。妻に質問をするとその音楽会はこれから3、4年毎晩続くらしい。有料でないからまだ救われるが、」
「では、何故そんなに幸福な顔を?」
「財布を落としたのさ」
「財布を落としたら悲しい顔をしないかね」
「そうしたい。だが、ここで悲しい顔をしたらだめだ。明るい幸福な顔をしていないといけない。そうしないと財布を落とした自分を非難してしまうようになる。財布を落として、さらに激しく自分自身を責めたら厭世家になってしまう。
悲観してはいけない。ポケットに財布が入っていないという事は歩く時にとても楽だ。初めて気がついた。下がっていく右肩を上げながら歩くと言う不便をしなくてもいい。家に帰って召使いに右肩を揉んでもらう必要もなくなる。重たい財布の為に穴が開いた上着を捨てて月に二、三度新しい服を買う必要もない。有難いことだ。
第一悲しそうな顔をして家に帰ったら、財布を落としたという事がすぐ女房に分かってしまう。女房は推理が鋭い。そうなったら我が家でどのような悲劇が起こるかご存知ですか。ナポレオンに攻撃されたイタリアのような悲劇となる。その悲劇を未然に防ぐ為にも私は今、世界中で一番幸福な顔をしているのだ。
そして、事情を知らないみんなに拍手で見送られながら、凱旋門に帰って来たナポレオンのような満ち足りた表情で我が家を目指すのだ。」
男はラ・マルセイユーズを高らかに歌いながら凱旋門の方へと歩いて行った。
( 終わり )
2002年4月24日掲載。 2002年3月14日完成。
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◆ 「一日で天国と地獄を見た人」
ロバート・ランブン
南仏コート・ダジュールに天才がいた。
浜辺で溺れる人を見分ける天才だ。浜辺で遊んでいる子供が溺れるかどうか見るだけですぐ分かる。
水際から10メートルも離れた所で砂遊びをしている子供があと5分ほどしたら海に行き必ず溺れるというのが分かるのだ。予知能力が凄い。本物の天才だ。
その天才には暇な友人がいた。大金持ちだが、好奇心が強い。一日のうちに天国と地獄の両方をを味わいたいと贅沢を言った。
もし、そんな事が出来たら、大きな古城を一つプレゼントしようと約束した。
友人から契約書を貰った天才はよろしいと言って、友人を連れて海へ出かけた。
朝の太陽に輝く地中海は青々として素晴しい。ニースの海岸は世界一美しい。浜辺では世界中の貴族や王族、大金持ちが優雅に過ごしていた。
天才はすぐに浜辺で溺れる予定の子供を捜し出し、友人に飛び込む用意をするようにと言った。あと2分だと言った。
友人が馬鹿なと言って笑いながら水際から50メートルも離れた砂浜で遊んでいるその子を見ていると、天才の言った通り2分ほどして波打ち際に来てすぐに溺れだした。
一応波打ち際にいた友人はすぐ飛び込んで子供を助けた。
友人はその両親や家族、親戚全員から大変感謝され、海岸のすぐ近くの別荘のような豪邸で素晴しいご馳走になった。
子供の親は有力な貴族で世界中の珍しい食べ物がテーブルの上に山のように盛られた。
友人は積み上げられた世界中の果物を見上げていると先日登ったアイガーの北壁を思い出した。
親戚の可愛い少女や美しい乙女達が全員天使のように微笑みながら友人に感謝のキスをした。
友人がその家にいる間中近所の人々がたくさん集まり、歌や踊りを始めて家の中は世界中のお祭りがすべて集まったように熱狂した。リオのカーニバルと復活祭とクリスマス・イヴとシーザーの凱旋行進とフランス革命を一斉に始めたような賑やかさとなった。
その熱気で友人が少し暑そうにするとすぐ、逞しい少年がエジプトの王様が使っていたような大きな扇でそよ風を送ってくれた。目を閉じるとナイル川の川岸で大勢の召使いに囲まれて昼寝をしている王様の気分になった。
まるで天国にいるようなような快適で幸福な時間を過ごした。
友人は夢のような素晴しいひと時を過ごすとすぐ天才の所へ行った。
友人は天才の凄さに驚き賞賛したあと、「では、地獄も体験してみたい」と催促した。
天才は先ほどの浜辺に再び友人を連れて行った。そして、先ほどと同じようにじっと浜辺で遊ぶ子供たちを見つめた。
「あの子だ。」天才は浜辺からほんの1メートルほどの所で一人で遊んでいる可愛い5歳ぐらいの女の子を指差した。
「いや、天国はもう体験した。僕は、今度は地獄を体験してみたい」友人は天国はもう味わったから充分だと言った。未知の地獄を見てみたいと、好奇心を丸出しにした。
「あの子はあと1分したら溺れるから今すぐここへ連れて来ないと危険だ」天才は友人を早くと押した。
友人も暇な金持ちのわりには正義感が強い。すぐ子供が溺れると聞き急いでその女の子の手を取って浜辺から、10メートルほどの所へ連れて来た。
これで良いのかと天才の方を振り返ると、天才は水際に立っていた。
次に溺れる人が分かって用意しているようだ。また溺れる人がいるのかと友人は驚いた。そんなに溺れる者がいるのか、そういった馬鹿な者はニースになど来るべきでないと大声で天才に言った。天才は友人を見てその通りだと頷いた。
向こうから母親が走って来た。後ろから親戚らしい人々もたくさん走って来た。
「やれ、やれ、おなかは満腹だし、歌も踊りも飽きたし、困ったな」友人はうんざりした顔をした。
母親は女の子の所へ来るとその子を抱き上げた。そして、黙って友人の目を見つめた。
何か早口で話したが、外国の言葉なので友人は理解できなかった。ウィーンから来た人のようだ。
きれいなブルーの瞳だ。上品な顔をしている。着ている服も恐ろしく豪華だ。巴里の一番良い店で買ったのだろう。
友人は好奇心は強いが少し控えめの性格だ。やはり育ちが良いのだろう。
「奥様、お礼は結構でございますよ。こういう事はいつもやっている事ですから、そんなに深く考えなくても良いことです」友人はさっきも小さい子に同じ事をしたばかりだ、大した事じゃないとお礼は遠慮した。
母親は後ろの人々に手を上げて合図をした。
「この男は誘拐犯です。娘を誘拐しようとした。いつもやっていると自慢している。懲らしめなさい」「はい!」 後ろの50人ほどの人達は、一斉に友人に飛びかかった。よく見るとみんな兵士だ。その母親はどこかの国の王族の人のようだ。貴婦人だ。
「この誘拐犯人め」 「確かにいつもやっていると自慢そうに言っていた。常習犯だ。許せない」 その友人は後ろの人々が持っていた棒や大きな石で何度も叩かれた。
頭が割れるほど棍棒で何度も殴られた。子供の手を引いた右手は大きな石で30回以上叩かれた。そして、痛さのあまり泣き叫ぶ友人は人々に海へ投げ込まれた。
貴婦人達は沈んでいく友人を見て浜辺の向こうにある馬車の方へと帰って行った。
ぶくぶくと沈みながら友人は助けてくれともがいたが、声にならない。もうだめだ。
塩辛い海水を嫌というほど腹いっぱい飲みながら沈んで行った。友人はこんなに苦しい思いをしたのは生まれて初めてだった。
どんどん深く暗い海の底へと沈んで行った。
しばらくして目を覚ますと先ほどの浜辺にいた。起き上がって横横を見ると天才がいた。
天才はいつも通り溺れる人を予知していたのだった。
「有難う」泣きながら感謝する友人に天才は優しく言った。
「そんなに感謝する事はないよ。君の希望通り天国と地獄を見せてあげただけさ」
そう言って天才は友人に契約書を忘れないようにと念を押して渡した。
( 終わり)
2002年4月3日完成。
2002年4月3日掲載。
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◆ 「モンマルトルのピアノ弾き」
ロバート・ランブン
男は酒場でいつもピアノを弾いている。決して上手くは無い。見かけも良くない。
いつの頃からか女はそんな男が好きになった。男にはなんとなく言いようのない魅力が有ったのかも知れない。
男が好きになるとピアノの音もここちよく響いて来るようになった。ピアノの音が良く聞こえるようになると、今度は男の顔が良く見えてきた。不思議だ。
動作やしぐさのひとつひとつが魅力的に見えてきた。男のさりげないしぐさが自分に対して何か深い意味を持って問いかけているように感じられ始めた。
どうしてだろうか。いつから女はその男を好きになってしまったのだろうか。
男の趣味は分からない。ピアノは生活のために仕方なく弾いているようだ。
有名なピアノ弾きになりたいのかと聞いた。遠い昔はそうだったとぽつりと呟いた。
風に吹かれて広場の片隅に飛んで行った紙くずをじっと見つめている。何かを思い出すような目をしている。女が男を見ていると気づくと男はすぐに無表情な顔になった。
酒は飲むが好きという訳ではないようだ。夜、習慣的に仕方なく飲んでいるようだ。
医者から薬を渡された患者が薬の時刻を几帳面に守っているのと同じだ。格別美味しい訳ではないが時間が来たから飲んでいる、そんな感じだ。
酒のボトルがなくなると飲まない。ボトルが空っぽの時は財布も空っぽのようだ。古びた時計や毛皮を売ってまで酒を飲むのが好きではないようだ。
女が買って来て上げようかと聞くと、いや、いいと手を軽く振る。そのくせ後でこっそり覗くとボトルを持ってじっと見つめている。
ボトルのラベルのデザインに興味が有る訳ではない。ボトルの底に酒が残っていないかと真剣に見ているだけなのだ。
食事の時に珍しいものが出てくると喜ぶ事が多い。では、グルメかというとそれも違う。
昼は、固いパンを水だけでかじっているだけという事もある。固いパンが好きなのだね聞くと、好きでも嫌いでもないが、財布の中身がどこかへ行ってしまっただけだと言う。
じゃあ、美味しいパンを買ってきて上げるから食べるかと聞くと、乞食は嫌いな方だと答えた。難しい性格だ。
しかし、その数分後に女がパンをテーブルに置いて食べようと誘うと、コーラも有った方がいいと言いながらまずそうな顔をしてパンをちぎる。アメリカは好きなのかと聞くと、嫌いな方だと言う。
じゃあ、なぜコーラなど飲むのかと尋ねると、ロシアは嫌いだがチャイコフスキーは大好きで毎日聞いている、とロシアの音楽家を褒めた。ナポレオンがロシアへ春に攻めて行っていれば、ロシアはフランスのような文化の香りのする国になっていたのにとおせっかいな事を言う。
ナポレオンは好きなのか、私も大好きだと女が喜ぶと、ブランデーのナポレオンの方がもっと好きだと返事した。
皮肉屋ではないが余り素直な性格ではない。友人は少ない。当然だ、毎日こんな調子だ。
最初男と話した時女はひどく疲労感を覚えた。
男には誰も近づいて来ない。男の数少ない友人を見ると似た者同士だ。一緒に居ると疲れてしまう連中ばかりだ。おまけにやけにプライドが高い連中だ。
しかし、絵も音楽も小説もたいした人はいない。
職業芸術家ばかりだ。パンの為に仕方なく芸術活動らしい事をしている。そのあとは、高尚な事とは程遠い生活を送っている。
昼はカルチエラタンで少し仕事をして、夜になるとクレシー通りに帰って来る。夜の方に比重がある。パートタイム芸術家だ。いや、職人の領域に居ると言った方が彼らの人生の位置を正確に示している事になる。
もちろん彼らも自覚している。自分達がルノワールやドビッシーなどよりも優れていると言った事はない。
有名な芸術家には成れていないが人生を十分快適に過ごしていると威張る。
悲惨な最期を遂げたモーツァルトやゴッホよりも遥かにいい人生を送っていると自慢する。
誰かが向こうの席から「乾杯!」と大声を上げた。
こうしてモンマルトルの丘の下の安酒場の夜は毎日過ぎていく。
( 続く )
2002年3月10日掲載。
2002年2月18日完成
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◆ 「おとぎの国のいろいろの村」の紹介です。
※ 「おとぎの国の本屋さん」てどんな所に有るの?
書いた人 おとぎの国の村長さん
正式には「おとぎの王国」なのですが、「おとぎの国」には、いろいろな村が有ります。音楽の村、美術の村、そして、おとぎの国の本屋さんが有る文学の村です。
おとぎの国の本屋さんはこの文学の村の中に有るんですよ。
文学の村の人々は、ここがおとぎの国の首都だ、一番偉い村だと威張っていますが、他の村の人々は誰もそんな事は認めません。
もちろんその他にもいろいろな村がとても沢山有りますが、大きな村はこの三つです。
その他と言いますと、たとえば、料理の村、遊びの村、こどもの村、遊園地の村、おもちゃの村、幸せの村、劇と舞台の村、海の村、仕事の村、発明の村、時計の村、花の村、昔の村、政治家の村、役人の村、王様の村(王様しかいない村)、動物の村(動物が主人の村で人間よりも動物がえらい村)、スポーツの村、哲学の村、ソクラテスの村、数学の、・・・・などです。
文学の村は村中楽しい物語や童話、小説、詩などでいっぱいです。
どこのお店に行っても楽しい本が沢山置いています。ここの村人はみんな小説や童話、詩が大好きです。
童話畑、小説通り、短編農園、詩の丘などでみんないつも本を読んでいます。
レストランに入ってもすぐ出てくるのは料理ではなくて本です。駅で切符を買うと切符ではなくて本が出てきます。
畑で犬がここを掘れと言うので掘ってみると本が沢山出て来ます。すずめにご褒美を沢山貰って開けてみると沢山の童話や昔話が入っています。雪国で倒れて助けられた鶴は恩返しに布や着物を織らずに美しい物語を書きます。
雨が降ってくる時も、本が降ってきます。そういうわけでこの村にいるといつでも楽しい物語、小説、童話を楽しむことが出来ます。
この文学の村には、米沢正論やロバート・ランブンが住んでいます。もちろん、伊東和雄もいます。そのほか小石川翠、アンシャンテ・原宿など沢山の作家がいます。
そうそう、それからあの人もここに住んでいるんですよ。「忘れないでね」「波は友だち」「世界の・・・・」などを書いた人です。
料理の村では、一日中みんなが美味しい料理ばかり作って、そして、食べてばかりいます。遊びの村では一日中みんな遊んでばかりいます。村人は殆ど子供ばかりですが、大人やおじいちゃん、おばあちゃんも一緒に楽しく遊んでいます。皆さんが知らない、見たこともない、びっくりするような楽しい遊びが沢山有ります。
美術の村へ初めて行く人はとても注意が必要です。何しろ村中が素晴しい絵ばかりなのですから。
どうして注意が要るのかって? だって、皆さんが森に行って道端に美しい花が咲いていると思って手に取ると、それは全部絵ですから。お腹がすいたので、たわわに実った葡萄を手にとって食べようとするとそれも全部絵ですから。
道を歩いていると天使が倒れています。大変だ、と助けようとしますがどうしても抱える事が出来ません。道路に書いた倒れた天使の絵だからです。
自分の部屋に入るとなんと憧れの大スターが居ます。こちらを見て微笑んでいます。喜んで話しかけます。しかし、何を聞いても黙っています。じっと立っているので椅子に座って下さいと、手を取るとそれは絵でした。
美味しい食事をするために豪華なレストランに入ろうとして、ドアを押しますがどうしても開きません。どうして開かないのかとドアの横に立っている係りに聞いてもニコニコと微笑むばかりです。両方とも絵だからです。
音楽の村ではみんな一日中歌ったり、演奏したり作曲をしています。パンやケーキを食べる暇も有りません。
ひたすら歌や音楽を歌い、演奏し聞いています。どこを歩いても道の両側では歌や演奏をする人で溢れています。どの家でも小さな音楽会をやっています。農場や畑のど真ん中ではいつも大きな音楽会をやっています。
おなかすいた時はどうするのかって? 何日も歌い続けておなかがすいたら、隣の料理の村へ行って半日ほど過ごします。
そして、帰ってきてからまた何日も音楽を楽しみます。
仕事の村の村人から見たらとんでもない村だといつも怒られていますが、音楽の村の村人はあまり気にしません。
仕事の村の人々は、どの村の人々にもいつも言っています。この世の中には、仕事の村だけ有ればいいのだ、それ以外の村はすべて無くすべきだと。
でも結局、仕事の村の人々は、何十年もその村にいて、ある日ふと気がつくのです。そして、音楽の村へ引っ越して来るのです。
昔さんざん音楽の村の人々を怒ったりしていたので、少しバツが悪そうですが、音楽の村の村人になったとたんその人達はとても生き生きとしてきて、それからは幸せに過ごしていくようになります。
もちろん、美術の村へ行ったり、文学の村の童謡畑に引っ越して行く人も沢山います。
みんなそれぞれの村で楽しく暮らしています。そのうち他の村の事もいろいろと紹介していきますね。お楽しみに。
( つづく )
2002年3月4日掲載
(2002年2月5日完成)
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◆ おとぎの国の時計屋さん
作 ロバート・ランブン
この村には世界中の面白い時計がたくさん有ります。
不思議な時計がいろいろ売られています。
何といっても一番面白いのが、勝手に針を止めれる時計です。
「ぼくんちの時計だって針は止めれるよ」そんなことを言ってはいけません。ぼくんちの時計は針を止めてもそれだけでしょう?
この村のその不思議な時計の針を止めると村全体の時間が止まるのです。針を巻き戻す事も出来るのです。
たとえば山の上から大きな岩が落ちて来ていて、下の人にごっつんと当たってしまいそうな時はあわてて時計屋さんのおじいさんの所に行って、店に有る大きな時間の止まる時計の針を止めてもらうのです。
それで下を歩いている人の所へ行って早く逃げなさいと言うのです。そう言うと落ちて来ていた岩と一緒に止まっていた人も目が覚めて動けるようになって逃げて行きます。
呼んでも目が覚めない時はその人達を安全な所まで担いで行きます。
それからまた時計の針を動かすのです。すると、岩が落ちて来ますがもう人はいないので大丈夫です。
それからこんな事も出来るのですよ。
子供が川で溺れていなくなった時は、お母さんはすぐに時計屋さんに行き、時間の時計の針を2時間ぐらい戻してもらいます。
そして、川へ行こうとする子供に庭で遊んでいなさいと言って、決して川へ行かせないのです。
それから、本当は子供が溺れていた時間を過ぎた頃の時間に針をまた戻してもらうのです。
時計の針が元通りに戻ってから庭を見ると、子供が遊んでいます。川へ行かないでずっと庭で遊んでいたのです。
再び何事も無かったように一日が過ぎていきます。
針をちょっと戻すぐらい簡単なように思うでしょう。でもとっても大変なのですよ。
特に針を1時間も戻すという事はすごく力が要ります。おじいさんが力をいっぱい入れてもなかなか大変です。汗だくになってしまいます。とても疲れます。
どうしてそんなに力が要るかという事を説明するととても大変難しいのです。
大学教授でもなかなか分からないのです。それぐらい難しいのです。
簡単言いますと、針を1時間も戻すいう事は、時計の村全体の出来事がすべて1時間逆に戻って行くのです。走っていた馬はそのまま逆に後ろに走って行き、落ちて来ていた大きな岩は上へと上がって行くのです。
落ちて来ている大きな岩をすぐに上へ上げるという事はヘラクレスという力持ちでも出来ない事なのです。1時間針を戻すと言う事は落ちて来ている岩を上へ上げてしまうのと同じぐらい力が要るのです。どうです、分かりましたか。ちょっと難しかったでしょう。
ま、そんな訳でおじいさんはとても大変なのです。
でも、おじいさんはとても優しいので、子供が溺れた時や大切なおもちゃが壊れてしまったという時などは、疲れていてお昼寝をしている時でも一生懸命針を戻してくれます。
本当に不思議な時計でしょう。この時計の針を止めてもらうのに料金は高いですかって? そんなに高くありません。なぜなら時計屋さんのおじいさんはとっても優しいのでパン1個の値段でやってくれるのです。
小さい子供が行くとただでやってくれる事があります。親切なおじいさんです。
時々悪い王様や大臣が、隣の国へ戦争をしに行くので攻めて行くまで時計を止めておいてくれと頼みに来ます。でもおじいさんは悪い王様や大臣の言う事は決して聞きません。
それで時々大臣がおじいさんを捕まえに来ます。おじいさんが捕まるとおばあちゃんがすぐに時計を止めて、その間に牢獄に行きおじいさんを助け出します。
ですからおじいさんは大丈夫です。
この時計が有るおかげで村のみんなはとても助かっています。
この時計はおじいさんの時計屋さんで売ってもいるんですよ。
買うと少し高いですよ。パン10個ほどもするのでなかなか買えません。
しかも、そのパンには大きないちごが入っていないといけないのです。
ですからなかなか買うのは大変なのです。でもみんなパンと大きないちごをを一生懸命貯めて、この時間の止まる時計をおじいさんのお店に買いに行きます。
とっても売れます。でも、みんながどんどん買って行って悪い事に使われたら困るのではないかと心配するでしょう。
大丈夫です。心の悪い人やずるい人やうそつきが買っても、この時計はちっとも止まったり針を戻したりする事は出来ません。
心が美しくて正直な人にしか使えないのです。
( おしまい )
3月3日掲載 2002年2月20日完成
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◆ 「おとぎの国のはかり屋さん」
ロバート・ランブン
ジュリエットは小麦粉と砂糖を測るはかりを買いにお店に行きました。
大きいはかり、小さなはかり、仏蘭西のはかり、埃及のはかり、印度のはかり・・・・いろいろな国の面白いはかりがとってもたくさん有りました。
店の奥の方に変な秤(はかり)がとてもたくさん売られていました。そして、その秤の周りには沢山の人がいました。
「この汚い秤は?」ジュリエットが変な秤を指差して聞くと、店のおじいさんはとても嘆かわしい顔をして答えてくれました。
「お金を測る秤です。」
「じゃあ、このねじれて歪んだ秤は?こんなに沢山どうするの?」
「それはね、」おじいさんは今度は頭を抱えて言いました。
「権力や名誉を測るのです。」
「変なの・・・・」ジュリエットはそう思いましたが、でも、見ているとその二つの秤は次から次へと売れていきます。一人で5個も買っていく人もいます。
大きな馬車で来て、二人の召使に「お金の秤」と「権力と名誉の秤」を持てるだけ持たせて買っていった人もいました。
ジュリエットはあきれてしまいました。反対側のとても小さなガラス・ケースに入っている秤に気がつきました。その秤は、たった一つしか有りませんでした。
そのはかりは売れないのでしょう。誰もそのはかりの周りには来ません。
誰も買っていってくれないので、そのはかりはとても寂しそうです。
「おじいさん、この小さな綺麗なはかりは? 」おじいさんはニコニコをして、ジュリエットに教えてくれました。
「美しい心を測るはかりなのです。」
( つづく )
2002年2月15日完成
2002年2月17日掲載
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◆ 「りんごさんと馬さんたちのかけっこ」
作 ロバート・ランブン
フランスのパリから少し南へ行ったロワール地方は美しい田園がどこまでも続く所です。
古城や森が沢山有ります。ところどころに小さな丘が有ります。
そんなに大昔の話ではありません。ナポレオンという人が生まれた頃のお話ですからほんの少し前の事です。
りんごさんとにんじんさんは天気のいいある日、丘の上で遊んでいると犬さん、猫さん、馬さんからかけっこをしょうと誘われました。勝った方が何でも好きな物をもらえるという競争です。
丘の上からふもとのジュリエットのおうちまで競争です。
りんごさんとにんじんさんはとても馬さんのように速く走れないので、イヤだといいましたが、見ている小鳥さん、羊さん、小鹿さん、きつねさん、猿さん、もぐらさん、牛さんたちが、それは面白いと賛成したので、とうとう競争させられることになりました。
にんじんさんはスタートの少し前に、ちょっとおなかの具合が悪くなったと言って、かけっこする事をやめて観客席の方へ行ってしまいました。馬さんはそれを聞いてとてもがっかりしてしまいました。
りんごさんは条件を出しました。牛さんに手伝ってもらってもいい事を条件にしました。
馬さん、犬さん、猫さんは笑いながら「牛さんがりんごさんを手伝うくらいならいいよ」と認めてくれました。
よーい、ドンで競争は始まりました。馬さんと犬さんはあっという間に走って行きました。
猫さんもすばやく走って行きました。りんごさんはぽつんと取り残されました。馬さんのように長い足がないので速く走る事は出来ません。走るのは苦手です。と言うより、気が付くと生まれてから走った事がありませんでした。
このままでは馬さんに負けて、りんごさんの木の上のりんごは全部馬さんに取られてしまいます。さあ、大変。
にんじんさんがいなくなったので、馬さんは代わりにりんごさんの木の上のりんごを全部街へ持って行き、沢山のにんじんと交換するつもりなのです。観客席から見ているにんじんさんやみんなは早く走れとりんごさんを応援しますが、少しも走れません。
仲のよい牛さんを呼びました。「牛さん押してください。」牛さんはりんごさんをよいしょと押しました。りんごさんは丘からころころと転がって行きました。ころころと、とっても軽快に転がって行きました。
丘の上では、牛さん、にんじんさん、小鹿さん、小鳥さん達ががんばれと手を振ってくれています。
りんごはころころと転がって行き、あっという間に猫さん、犬さん、馬さんを追い抜いて一番でジュリエットのお家に着きました。
庭に着くとジュリエットがいました。「まあ、りんごさんどうしたの?」ジュリエットはいつも丘の上にいるりんごさんが庭にやって来たので、びっくりしました。
ジュリエットはりんごさんを両手で抱き上げて聞きました。りんごさんは一生懸命走って来たので、大きな汗を沢山かいていました。
りんごさんは汗をぬぐいながら、馬さんたちとかけっこの競争をして一番で来たのだと言いました。
ジュリエットは「まあ、一番早い馬さんとかけっこして勝ったなんてとてもすごいわ!」と言ってりんごさんにご褒美をくれました。
それからきれいなハンカチで汗を拭いてくれて、日当たりのいい木の上に置いてくれました。
そして、冷たい水をかけてくれました。ぽかぽかと暖かいお日様と優しいそよ風を受けてりんごさんは幸せでした。
そこへ、馬さんたちがやってきました。ちょうどおじいちゃんも畑から帰って来ました。
おじいちゃんはジュリエットから話を聞いて馬さんたちを叱りました。馬さんたちはばつが悪そうに謝りました。
次の日ジュリエットはりんごさんをかごに入れて丘の上に行きました。
そして、丘の上の小鳥さん、羊さん、小鹿さん、そして、にんじんさんや馬さんたちみんなを集めてりんごさんはかけっこが一番早い、すごいとほめました。
丘の上のみんなはりんごさんに大きな拍手をしました。
( おしまい )
2002年1月30日掲載
(2002年1月27日午後10時完成)
※この物語には主題歌が有ります。
◇◇◇このホーム・ページの物語、小説には、殆ど主題歌が有ります。
そのうち、このホーム・ページで主題歌を流したいと思います。もちろん、「森の中の宇宙人」にも主題歌が有ります。その時は皆さん聞いて下さいね。
「おとぎの王国の本屋さん〜芸術部」
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連載ホーム・ページ長編小説
■「森の中の宇宙人」
2001年11月16日から連載開始。
2002年1月23日に追加済。
※連載です。続きは下の方へ行って下さい。
作 伊東和雄
夏の暑い日だった。優一は軽井沢の友達の所へ行き、帰って来る途中だった。
国道を自転車で軽快にとばして行き、深い森の近くで、国道を曲がり林道へと入って行った。
林道からさらに小径に入ってしばらく行くと、小さな泉が有る。
優一は自転車を降りて泉の岸に座った。優一はこの小さな泉が好きだった。
森の奥でひっそりと静かに水をたたえ、いつも清らかな水が湧き出ている。優一は冷たい水を手ですくって飲んだ。
「うまい。」ここの水は本当にうまい。今日のように暑い夏の日は特にうまい。
しばらく休んだ後、立ち上がって帰ろうとした時少し先の木陰に一人の少女の姿が見えた。
見かけない娘(こ)だった。第一この泉に人が来る事などめったにない。国道からかなり入った所に有るし、地元の人も用事が無ければこの泉に来る林道などまず通らない。
この泉に一番近い家でも1キロは離れている。
友達か家族と来たのかと思って周りを見たが誰もいない。変だなと思って少女の顔をよく見ると、少女も優一の顔をじっと見つめている。
『どっかで会った事があるのかな?』と思った優一は「こんにちは」と少し丁寧に声をかけた。
「こんにちは」と少女も言った。少し発音がおかしい。外人みたいだ。
「初めまして、イーアと申します。お目にかかれて光栄です。」続けて少女は驚くほど丁寧な言い方で挨拶をした。
優一はびっくりした。『何だ、この娘は?』しばらくぽかんとした後、優一は気を取り直して少女に尋ねた。
「僕は優一と言います。軽井沢の人ではないですよね。旅行かハイキングですか? 家族の人達と一緒なの?」我ながらくすぐったくなるような丁寧な調子で聞いた。
「はい、別の場所から来ました。家族は今は離れています。この場所は初めてです。あなたの住宅はこの地域ですか?」少女は相変わらず真面目くさった顔をして優一に尋ねてきた。
優一は少女の話の仕方に少しくすぐったくなると言うか、疲れるというか何とも気が抜けるような気分になった。
「みんなは何処にいるの?」優一は周りを見ながら再び聞いた。
少女は7月の暑い日だというのに、長袖の薄いベージュのスポーツ・ウエアーを着ていた。 少し微笑みながら少女は答えた。「今は遠くにいます。すぐに会えます。」
少女は歩き出した。そして、相変わらずおかしな発音で優一に尋ねた。「お聞きします。銀行は何処に有りますか?」
「銀行は軽井沢に行けばいくらでも有るさ」優一も自転車を押しながら一緒に歩き出した。
少女は自転車を珍しそうに見た。見るというよりも点検するような目だ。
「それは自転車ですね」少女は得意そうに言った。そして、銀行の事を再び聞いてきた。
少女は話すたびに手に持っている携帯電話のような小さな器械をちらちらと見る。
「どの銀行でもいいです。金(きん)とダイヤモンドを通貨に交換出来ればいいのです。」
「金(きん)? 通貨?」優一は再びぽかんとした顔で少女の顔を見ながら聞いた。「金(きん)を通貨に交換するってどういう事だよ。第一、金やダイヤモンドを今持っているの?」
少女はすました顔で優一をじっと見ながらごく当然のように言った。「ええ、少し持って来ました。この、、、、えーと、日本では通貨でないと買い物出来ないですね?」
「お金を持って無いの?」「はい。ですから金(きん)やダイヤモンドを交換するのです。」
優一は何を言っていいか分からず少女の目をじっと見た。少女の目はよく見ると少し蒼い。髪も茶色だ。しかし、染めているような色ではない。
『ハーフか、、、』やがて二人は林道に出た。
「どっから来たの?アメリカ?フランス?」「はい、違います。でも大丈夫です。日本の事はよく知っています。大丈夫です。」
『何が大丈夫なんだよ、変なやつだなあ、、、』優一はおなかが空いたので、バッグからおにぎりを出して食べだした。
少女はとても珍しそうな顔をしておにぎりをじっと見つめた。そして、また手に持っている器械を見ながら聞いてきた。
「それは何ですか?」相変わらず物の聞き方が平然としている。
優一は思わず、口の中のおにぎりを吹き出すところだった。「おにぎりを知らないの?」と言いかけて止めた。
「そうか、イーアは帰国子女か」優一は自分でそう言って何となくほっとした気分になった。
「これはおにぎりって言うのだよ。日本のトラディショナルな食べ物だよ。食べるかい?」優一は一個少女に渡した。
少女は大切そうに手に取ると優一の真似をして少し食べた。
「美味しい?」と聞くと「はい」と嬉しそうに答えた。そして、のりを少しつまんで「この物質は何ですか?」と少し不審な顔をして尋ねた。
「その物質はねえ、のりって言うの。大丈夫だよ。毒じゃないから。」優一は疲れた声で答えた。「のりですか。ずいぶん薄い食物ですね」「外国にはのりはないの?」「外国? ああ、はい、のりはないですね。初めて見ました。とても栄養が凝縮している食物ですね。長期間出かけるにはいいですね」
優一はどういうふうに会話を続けたらいいか見失って黙った。
やがて、二人は国道に出た。少女は通り過ぎる自動車を真剣な目で見つめた。
「あれは自動車ですね?」「当たり前じゃないか。イーアはアフリカの奥地にでも居たのかよ?」山の中と言っても7月下旬はやはり暑い。空を見ると太陽がぎらぎらと輝いている。
二人は話をしながらゆっくりと国道を歩いて行った。
話といってもイーアにすれば会話だが、優一にすればとても会話とか質問、あるいは訊問とも言えない言葉のやりとりだった。優一の足取りは重かった。
◇◇◇ 10行ほど下へつづきます。
◇この小説は長編小説です。ランブンの短編物語のように短くはありません。
連載で掲載していきます。
皆さん、時々続きを読みに来て下さい。
この小説もランブンの短編物語も、ホーム・ページに掲載する為にかなり短くしています。変更している所も多く有ります。
文章も短くしていますし、情景描写はなどは殆ど省略しています。
すべて簡略編です。大変読みづらいと思いますが、ご了承下さい。
実際はもっと長い作品です。
2001年6月25日完成の作品です。
◆「森の中の宇宙人」のつづき。12月3日。
熱い日射しの中を二人は軽井沢へと歩いて行った。
どういう訳か優一はこの変な少女を軽井沢の街まで連れて行くはめになってしまった。
優一は何度かこのおかしい女の娘を置いて、さっさと自転車で帰ってしまおうと思った。
しかし、いくら国道とはいえ山の中に女の娘を一人置いてきぼりにして行く訳にも行かず、疲れるような女の娘の会話に付き合いながらとぼとぼと歩いた。
女の娘はひたすらしゃべる。見る物、現れる物がとにかく珍しい。その度に優一に聞く。聞くと言うよりもまるで調査だ。細かい事をやたらと聞いてくる。さらに自転車や自動車、服など見る物すべての材質や材料を聞いてくる。
優一は軽井沢までの1時間を耐えきれるかどうか自信がなかった。
後ろから車のクラクションがした。
「ハーイ。優一じゃないの。何処へ行くの?」
舞が乗っている。軽井沢の街へ野菜を届けに行くという。
車は親父さんのワゴン車だ。「舞、頼むよ。乗せてくれよ」
「いいけど、自転車で座席のカバーを傷つけないでよ」イーアがいるせいか舞のしゃべり方がいつもより丁寧だ。
優一達は乗せてもらった。舞が来てくれたおかげで優一はほっとした。
「こんにちは。私はイーアと申します。お会いできて光栄です」イーアは舞にも丁寧な挨拶をした。
「は、はい。こんにちは。私は舞です。」舞は思わずつっかえながら挨拶をした。ついアクセントがイーアのようなアクセントになってしまった。
「ハハハ」優一は思わず声を出して笑った。
舞が振り返って優一を睨んだ。『てめえ、笑うんじゃねえ』といった顔をした。
「ちょっと、舞、ちゃんと前を見て運転して欲しいな。危ないよ」優一の話し方もいつもと違っておかしい。
舞はイーアが居るのでどうもいつものように喋りづらい。
舞はイーアの事を優一に聞こうかと思ったが、優一が知らん顔して黙っているので何となく聞くきっかけがつかめなかった。
車は橋を渡り軽井沢へと向かって行く。
「今のは橋ですよね」イーアはごく普通の顔で舞に話しかけた。
「えっ?」舞は何と言っていいのか返事が出来なかった。一瞬自分の目が止まったような気がした。
「材料は木ではなくて鉄を使っているのですよね」イーアはまるでそこに咲いている花の名前でも聞くような感じで舞に聞く。
「くくく、」優一が下を向いて声を押し殺して笑った。
「下を流れているのは川ですよね。海ではないですよね」珍しそうにイーアは川を見続けた。
「そうだけど、、、、」舞はなんて返事をしたらいいのか戸惑った。
「この川には船は無いようですね。漁はしないのですか?」
「漁?」イーアの話し方には舞も完全に呆れたみたいだ。
優一の方をそっと見て、『なんなの、この娘?』といった顔をした。
それでも気のいい舞は疲れきった優一に変わって丁寧に答えた。舞はイーアが優一のガール・フレンドかな、と思った。
『もてない男の優一が、どうした事か。この娘はちょっと変だが、よく見ると少し美人だぞ。おい、おい、優一め。』舞は優一に聞こえないように小声でつぶやいた。
「え?なんだよ、舞」優一が舞の顔を覗き込んだ。
「暑いねって言ったの」舞はぶっきらぼうに言った。
やがて車は軽井沢の街の中に入っていった。
車から降りたイーアはすぐに銀行へ行こうとしたが、優一と舞に説明されて行く事を止めた。
三人はバーガー・ショップに入った。優一は釘を差した。「いいかい、店に入ったら大きな声でいろいろ質問をしないで欲しい」
イーアはさすがに照れくさそうな顔をした。「分かりました。黙っています。」
舞は思わず笑った。つられてイーアも笑った。笑うととても可愛い顔になる。
金やダイヤモンドを交換して、家を借りて生活するというイーアをどうするか、三人はいろいろ話した。
優一はイーアが家出をして来たと思った。舞はよく分からないが、とにかく優一の知り合いだと思った。
やっかいな事は嫌だと優一は逃げだそうとした。
「そうだ、舞、おまえの家に泊めてやれよ。」優一は面倒を舞に押しつけた。
「いいよ」舞はあっさり返事した。
舞の家は農家だから部屋数は多い。親戚の人がいつも泊まりに来たりするので、人が来て泊まると言う事に関しては両親も大らかだし、むしろ娘の友達が遊びに来るという事は大歓迎だ。
優一と別れて舞はイーアを乗せて自分の家へと向かった。
「イーアの質問をあまり真剣に考えるなよ」優一は車が出る時舞に小声で言った。
「優一の大切な人の質問をそんな風には出来ません」舞はにやにや笑いながら言い返した。
「おい、何を言ってんだよ」優一が言った時にはもう車は走り去っていた。
舞はイーアを友達の友達と家族に紹介した。イーアが夏休みの間軽井沢で過ごすので泊めて欲しいと両親に頼んだ。
「何日でも泊まっていって下さい」娘の知り合いと言うので両親はとても喜んで笑顔でイーアに言った。
「ご両親様、大変有難うございます。心から感謝致します。」イーアは非常に喜んで例のごとく丁寧に挨拶をした。
「あ、はい、これはご丁寧にどうも、、、、」両親は顔を見合わせた。
「まあまあ、今時の子にしては珍しいね。舞ちゃんも少し見習わないといけないね」おばあちゃんはイーアの挨拶の仕方が大変気に入ったようだ。
イーアはみんなに帰国子女と思われて大歓迎だった。
それにイーアは外国の事をよく知っている。
特に地理については非常に詳しい。気候、気温についてはもう完璧だ。言葉も英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語などだいたいの国の言葉は話せる。
「すごい」舞は感心した。
両親も祖父母もイーアの事を世界中を駆けめぐる商社マンの娘でハーフだと思った。
(つづく)
2001年12月3日
◇この続きはこの画面の一番下の方、最後に有ります。 「空を見て歩くヨハン」の次に有ります。そちらでご覧下さい。
右側のスクロール・キーを使って行くか、「Ctrlキー」とキー・ボードの右上の「Endキー」を使って下さい。すぐに下の方へ行けます。 2001年12月7日。
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◆「空が落ちてきた王国」 ・・・・ 「おとぎの国の勇敢な王様」
作 ロバート・ランブン
01年12月30日掲載
ずっと大昔のお話です。
どれくらい大昔かというと、地中海が世界で一番広い海だと思われていた頃の時代です。
フランスよりもずっと西のジブラルタル海峡すら越えて行った所に有った遠い遠い国のお話です。
エジプトにまだピラミッドが一つも出来ていなかったほどの大昔です。もちろんみんなの大好きな、ソクラテスおじいさんやピタゴラスおじいさんもまだ生まれていない頃です。
それどころか、地中海の真ん中あたりでは大きくて恐ろしい恐竜が時々現れていたほどの大昔のお話です。
その国の王様はとても勇敢で強い人でした。多くの国と戦争を何度もしましたが、一度も負けた事は有りませんでした。それほど強い王国でした。
しかし、強い王様にも一つだけ心配が有りました。
いつか空が落ちて来るという確かな予測でした。王様は勇敢なだけでなく、学問も出来て非常に賢明でしたから、普通の人が考えないような事も分かるのでした。
大臣やぼんくら役人や、村の農夫などは空が落ちて来るなどというそんな馬鹿な事はないだろうと、王様の事を陰でこっそり笑ったりしていました。
王様は空が落ちて来た時の対策の為に、高い塔やピラミッドを沢山造りました。
さらに、法律を作って空に対して落ちて来ないように命令しました。もし、落ちて来たら牢屋で10年という恐ろしい刑を宣告しました。
兵士達が何人も高い塔の上から空に向かって「地上に落ちて来たら懲らしめるぞ。」と矢などを空高く放ちました。
もちろん、みんな空が落ちて来るなどとは思っていないので、言いたい放題の事を言いました。
「やい、大ばか者の空め。腰抜け空め。来るなら来てみろ、しばりつけて海の底へ沈めてやるぞ。」
王様自身も国中で一番高い塔に上りました。その塔はとても高くて空まであとほんの少しというほどの高さでした。
「こら、空め落ちて来るなら来てみろ、やっつけてやるぞ。命令違反で逮捕してやる。そして、裁判の結果、特別の牢獄に入れてしまうぞ。裁判官は特別にわしがやってやる」と威厳に満ちた大きな声で叫びました。
地上から毎日下らない挑戦の叫び声が聞こえて来ますが、空は一向に相手にしません。
空は位置が高いのと同様に、とてもプライドが高いのです。地上のような下品な所へわざわざ行こうなどと考えた事は有りませんでした。
空は地上が誕生するよりも、もっともっと大昔から誕生していました。地上が出来てからの地上の出来事は良く知っています。
特にあの人間という下らない動物が誕生してからは、毎日呆れてばかりいました。
もともと、人間を作ろうと神様が言い出した時に、やめた方がいいと忠告したのは空でした。
ですから、地上へなど行く気はぜんぜん有りませんでした。
ところが、その地上からいろいろと侮辱の言葉がここのところ毎日届くのです。
もちろん下らない人間の言う事ですから、空は無視していましたが、そのうち女神や天使達がくすくすと笑ったり噂話をするようになりました。
「空は本当は地上に行くのが怖いのよ。人間に負けるからよ。」などという噂話を、仲のいい星がそっと教えてくれました。
地上から来た小鳥が、「空は世界一弱虫だ。」と王様が国民に言っていると報告してくれました。
あまりの事に空はとうとう怒って、大きな音を立てて落ちて来ました。
空が落ちてくる事が分かっていた王様は、早速兵隊を指揮して戦いました。
しかし、大臣やぼんくら役人達、そして、町のケーキ屋、村の農夫などは、まさか空が本当に落ちて来るとは思ってもいなかったので、慌てふためいて逃げまどいました。
兵隊達も最初はびっくりしましたが、王様の確かな指揮のもとに勇敢に戦いました。しかし、何しろ相手は空です。今まで、戦ってきたギリシャやエジプトの軍隊とは違って強さが全然違います。
いくら、大きな石を投げてもびくともしません。大きなやりを投げても全部雲の奥深く吸い込まれてしまいます。弓で勢いよく矢を放っても強い風が出て来て矢はすべて、アフリカの南の方へ全部飛ばされて行きました。
風や雲は空の忠実な部下です。兵隊達をこてんぱんにやっつけました。さらに、空は夏だというのに北のほうから冬を呼び寄せて大雪を降らせました。
王様の広い王国はすっかり真っ白い雪に覆われてしまいました。王様の王国はとても暖かい国でしたので、雪が降るのは初めてでした。
美しい雪を見てみんな最初は大喜びでした。しかし、兵隊達は始めて体験する寒さの為にみんな風邪を引いてしまいました。
雪が降った次の日、兵隊達の家族がみんな王宮にやって来て、病気でお休みしますと届出の文書を置いていきました。
兵隊達がみんなお休みしてしまい、「ずるいぞ。」と、王様は空に怒りましたが、空は気にしません。それどころか、象ほどの大きなひょうを降らせました。
ひょうは、高い塔やピラミッド、王宮などをどんどんつぶしていきました。町や村も大きな穴が開いて大変な事になりました。
大臣や、国民達は王様が言っていた事は本当の事だったと分かり、王様の賢明さが改めて分かりました。国民はいっそう王様を尊敬するようになりました。
しかし、今ごろ王様の本当の立派さが分かっても手遅れでした。もう空はすぐそこまでやって来ています。
国で一番高い塔がつぶされました。その次に、ピラミッドが全部壊されました。それから、国中の高い山が全部ぺしゃんこになりました。
とうとう、空は人々の頭のすぐ上までやってきました。
王様が手を伸ばすと、空に届きました。王様は、げんこつで思いっきり空を叩きました。しかし、空はとても固くてかえって王様の手が象さんの耳のように大きくはれ上がりました。
風邪で休暇を取っていた兵隊達も寝ていてはいけないとみんな起きて来て、槍を空に突き刺したり棍棒で叩きました。
しかし、空はびくともしません。王様は勝つ事を諦めてついに降参しました。降伏のしるしである純金製の旗を高々と上げました。
高々といっても空はすでに、王様の冠のところまで来ていましたから、旗は王様の背の高さまでしか上がりませんでした。
しかし、空は許しませんでした。人間からはもちろんの事、女神や天使達にもいろいろからかわれたのがよほど悔しかったのでした。
とうとう王様の国は空の重さでぺしゃんこに潰れてしまいました。さらにあまりの重さでとうとう海の底に沈んでしまいました。
あれほど大きく繁栄していた王様の大きな国は、海の底深く沈んでしまいました。
空は怒りのあまり地上を全部つぶしてしまおうと、さらにもう一度どすんと落ちて行こうとしましたが、ちょうどその時ギリシャやローマに遊びに行っていた女神達が帰って来て、そこまでひどい事はしてはいけないと言いました。
空も愚かな人間は嫌いでしたが、ギリシャやフランスなどの美しい風景は大好きでしたから、地上全部を海の底に沈める事はやめました。
それから、気が遠くなるほどの年月がたってから、ギリシャのアリストテレスという偉い学者が、先生であるプラトンというもっともっと偉い学者に言われて、海の底に沈んだこの国を引き上げようとしましたが、あんまり大きくて重たかったので無理でした。
引き上げる事に失敗したアリストテレスはプラトン先生から大変叱られてしまいました。
それ以来、この国の事はみんなにすっかり忘れ去られてしまい、今ではこの国の事を知っている人はこの地上に誰もいなくなりました。
そして、それ以来、地上に空が落ちて来るなどと言う人がいると、頭がおかしいと、みんなに笑われてしまうようになりました。
<おしまい>
2001年12月30日掲載。
2001年10月21日完成。
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■ 「幸せの青い石」
作 ロバート・ランブン
今から300年ぐらい昔の事だったでしょうか。
フランスのブルゴーニュ地方の広大な農場主のレオナールはとてつもなく大金持ちだった。
しかし、彼は大変なけちで横暴だった。教会へ行っても寄付というものをした事がなかった。
第一、教会へすらあまり行く事がなかった。
たまに彼が教会へ行くと神父さんはいつもがっかりする。不思議な事に14才になる金持ちの娘のエリザベートは大変心が優しく信仰心の厚い娘だった。
金持ちの妻は娘が小さい時に病気で亡くなっていた。
有る日曜日の朝、金持ちの近くに住んでいる伯爵夫人達が教会へ行きましょうと誘いに来た。
しかし、金持ちは行かないと言った。
伯爵夫人達は、なおも丁寧に金持ちを誘った。「出来るだけ教会へ行く事が神から祝福を受けることの出来る最善の道ですよ。」
娘も父親に行きましょうと誘った。
金持ちは、みんなが何度も言うので渋々教会へ行く事にした。伯爵夫人達はたいそう喜んだ。
金持ちにとって教会の神父の話は退屈なだけだった。ずっと居眠りをしていた。
帰り道、町はずれの公園の前でみすぼらしい老人が何かを売っていた。売っていると言っても、服装からいって乞食のようである。悲しい顔をしていた。
娘は父親に言った。「お父様、貧しい人に施しを。」金持ちは知らん顔をした。
老人は小さな石を売っていた。
「おじいさん、この石は色が付いていて綺麗だわ。宝石なの?」娘は老人に聞いた。
「お嬢さん、それは宝石ではありません。でも、幸せの蒼い石です。幸せがやって来ます。」
老人はは相変わらず悲しい顔をしたまま言った。
金持ちは止めなさいと言ったが、娘はどうしてもと言って一つ蒼い石を買った。
蒼い石が綺麗だということもあったが、娘は可哀相な老人の為に少しでも役にたちたいと思った。
生まれた時から大金持ちの娘という事だけで金に困らない自分は、困った人々に心から何かをして上げなければいけないといつも思っていた。
屋敷に帰ってから金持ちは石を取り上げた。病気でも移ったらどうするのかと言いながら、その石を部屋の片隅の家具の下の方の抽出へと突っ込んだ。
娘は少し抗議したが父に従った。従順な娘だった。
それっきり金持ちはその石の事などすっかり忘れてしまった。
その頃からフランス全土に恐ろしい疫病がはやり始めた。金持ちの町でも多くの人が疫病にかかって亡くなった。
一ヶ月ほどした頃に金持ちの娘も疫病にかかった。金持ちは公園に行き老人に文句を言った。
「何が幸せの石だ。娘は恐ろしい病気にかかったぞ。あの石のせいだろう。」金持ちは老人に金を返せと迫った。
老人はさらに悲しそうな顔をした。「返す金は有りません。でも幸せは来ます。」
金持ちは老人を殴った。「どこに来ているのだ。娘は今にも死にそうだ。」
老人は立ち上がると静かに言った。
「不幸はすぐに来ます。でも、幸せはゆっくりと来ます。そして、すぐに立ち去ります。」
金持ちは娘をパリから呼んだ名医に見せた。しかし、もう駄目だと言われた。後2、3日しか持たないと言われた。金持ちは大声を上げて泣いた。
次の日、金持ちの邸宅の前にみすぼらしい少女がやって来た。もう何年も長い旅をして来たかのように服はぼろぼろで、顔は青白く痩せこけていた。
お嬢様に会わせて欲しいと門番に言った。
そこへ金持ちが通りかかった。少女を見て物乞いか乞食と思った金持ちは、早く追っ払えと門番に言った。
門番が追い払おうとすると、少女は横をすり抜けて邸宅の中へと入って行った。
まるで何度かこの邸宅に来た事が有るかのように、広い庭園を素早く通り抜け玄関の大きな扉を開け、階段を駆け上がり廊下を何度も曲がり、沢山の部屋を通り過ぎて迷わず娘の部屋へと入って行った。
娘は部屋の中央のベッドで死んだように横たわっていた。周りでは友人が何人も悲しそうに立っていた。
「こんにちは。」少女が声をかけると娘は目を開けた。昨日から誰が呼んでも目を覚まさなかったというのに、はっきりと目を開けて少女を見た。
「あなたはどなた?」娘は聞いた。もちろん見覚えはなかったが、どこかで一度会った事があるような気がした。
「遠くからあなたに会いに来ました。あなたが元気になれるように歌を歌います。」
少女は美しい声で歌を歌い出した。ずっと遠くの国から静かに流れて来て、聞く人の心にそっと入って行くような優しさに満ちた歌だった。
歌が終わると娘は立ち上がった。そして、少女に拍手をした。
「とても美しい歌でしたわ。なんて歌なの。初めて聞いたわ。」娘は感動のためか、頬がうっすらとバラ色になっていた。
少女は何も言わずにっこりと微笑んだ。そして、部屋の隅へと行き家具の抽出を開け、中から小さな蒼い石を取り出してそのまま部屋を出ていった。
娘はその日の夕方には全快した。医者は「奇跡だ。」と驚いた。
金持ちは大変喜んだ。その夜は大急ぎで豪華なパーティーが開かれた。金持ちは上機嫌だった。もう助からないと思っていた娘が治って嬉しくて仕方がなかった。
伯爵夫人達もたいそう喜んでくれた。神父も祝福にやって来た。治った娘を見て神父は天を仰いだ。
「神よ、やはりあなたは偉大です。でも、何故この金持ちの家に奇跡が? 一度も教会に寄付をした事がないのに。」
金持ちはパーティーの間ずっと涙が溢れて止まらなかった。神父にはこれから毎週日曜日に欠かさず教会へ行くと約束した。寄付もきちんとすると伝えた。
パーティーが終わる頃に、あの少女を探しに行っていた何人もの召使い達が帰って来た。
みんな馬でこの町だけでなく隣の町や村までくまなく探した。しかし、不思議な事に少女は何処にもいなかった。
いったいあのか細い少女が半日のうちに隣の町や村を越えて、もっと遠くの方へ行く事が出来るのだろうか。
「そんな事は有り得ません。馬で走っても半日がかりでやっと隣の町です。」召使い達は疲れ切った顔で断言した。
金持ちは次の日公園へ行った。あの老人を捜した。しかし、何処にもいなかった。
<おわり>
2001年11月5日掲載 2001年10月20日頃の作品。
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■「神々の黄昏〜忘却編」
作 ロバート・ランブン/Robert Lunbum
昔、神が人間を作った時、男に勇気を与えた。
女には天使のような美しさを与えた。動物のように鋭い爪や牙を持たない人間の為に考える力を与えた。
神は自分と同じ姿をしている人間がとても可愛かった。やがて、特別に火も与えた。何もかも与えた。
エデンの園でイヴがリンゴが欲しいといえば何個も与えた。イヴが寒いといえば、服を与えた。
天使によって織られた美しい服を手にして、イヴは「素敵、、、。」と大変感謝した。珍しくアダムがとても遠慮したが、遠慮してはいけないと言って与えた。
ある日、イヴが星のようにきらきらと光る石が欲しいと言った。神はすぐ与えた。
イヴの目が輝いた。見た事もないほど喜んだ。美しいダイヤやルビーを沢山身につけたイヴはとても幸福だった。何日も何日も飽きもせず眺め続けた。
おかげで、しばらくの間アダムは満足に食事を食べさせてもらえなかった。
ノアの箱舟もあの後何隻もプレゼントした。箱舟どころか巨大な帆船を与えた。ピラミッドが欲しいといえば沢山の奴隷を貸してやった。
パンドラの箱が欲しいといえばすぐに与えた。渡す時に絶対に開けるなときつく注意した。勿論、注意は役に立たなかった。
モーゼが海が有って渡れないといえば、海を二つに割って歩けるようにしてやった。
パスカルが風呂場で困っているとヒントを与えた。パスカルは大喜びのあまり叫びながら町中を走り回った。
サンタクロースが雪道は歩きにくい、と言うとトナカイをプレゼントした。
名画を見たいという人たちの所には、ダ・ビンチを連れて行った。
地球が丸いと誰かに吹き込まれて、大西洋を西へと出航して印度へ行こうとしたコロンブスを見て、慌てて地球の形を丸く変えてやった。危ない、あと一日遅かったらコロンブスは大西洋の西の果てで海の滝からまっ逆さまに落ちてしまっていた。
それ以来忙しいので、地球は丸いままにしているが、いくらなんでも、もう来年あたりには、元の四角い箱型の地球に戻しておかないといけない。
しかし、今ごろ元に戻すと世界中の科学者が困ってしまう、可哀想だが仕方が無い。
ニュートンが木の下で悩んでいると、林檎をそっと落としてやった。昔、イヴが食べ残した林檎だ。
ベートーヴェンが交響曲第五番を作曲した夜には玄関のドアを力強く叩いてやった。ゲーテが最後の夜に手を差し伸べた時には光を与えた。
ナポレオンがいい辞書を欲しいと、言った時にはすぐに一冊与えた。ナポレオンがあまり急かすので一頁渡し忘れてしまった。
走るのが嫌だと言った時には、自転車を与えた。面白いといって、毎日乗っていたが、すぐに飽きたのか、もっと早いものがいいと言うので自動車を与えた。
これには喜んで、その車に乗ってすぐに教会へ出かけた。珍しいものだ、久しぶりだ。そして、いつもの2倍の金貨を置いていった。
鳥になりたい、空を飛びたいと贅沢を言い出しても、にこにこと笑って飛行機を与えた。飛行機には本当に驚いたみたいだ。
「神様にお礼を言いに行くぞ」と言って、空高く飛んで神の国へ行こうとした感心な人間も多くいたいた。しかし、みんな失敗している。まだ人間は未熟だ。
その後も神の国に行こうとする人間は多い。それほど神に会って感謝したいのか、信仰があついものだ、感心だ。
飛行機を与えてもまだ完全に満足せず、それからも相変わらず人間は、あれもこれも何でも欲しいと言い続けた。
しかし、神はにこにこと微笑んで本当に何もかも与えてやった。
しかし、たった一つだけ与えるのを忘れたものが有った。
その為に人類は、20世紀の半ば迄大変な苦労をするはめになった。
それは・・・・・・・・。
つづく
※’01.8月頃の完成の作品です。
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◇ とても偉い太陽と北風と旅人
作 ロバート・ランブン/Robert Lunbum
昔々、それはそれは大変昔の話です。
この地球が出来たばかりの頃のお話ですから、気が遠くなるほど昔の事です。
太陽はこの世で一番威張っていました。
「俺様のおかげでみんな地球で生きていけるのだ。」と、太陽はいつも地球上の生き物の代表を集めては言っていました。
「俺様がひとときでも居なくなるとこの世は闇となり、寒くなり大変な事になる。俺様のおかげで、花も草も作物も海も動物も人間も生きていけるのだ。」それはそれは大変威張っていました。
でも、太陽が大いに威張っても本当の事ですから、花も葡萄畑も森の木も海もライオンも恐竜も頭のいい人間ですら、反論できずじっと黙っていました。
その頃は、太陽は昼だけでなく夜も大空に輝いていていました。一日中昼でした。夜というものは有りませんでした。
もし、太陽がこの地球からひとときでも居なくなると大変な事になるという事は、頭のいい人間だけでなく、動物や魚、ミツバチ、畑、花、家の壁のレンガや煙突、そして、広い海や高い山でも分かる事です。ですから、太陽が毎日威張っていてもみんなじっと我慢していました。
でも、北風はそんな偉そうな太陽が我慢がなりませんでした。
ある日、北風は太陽に試合を申し込みました。旅人の服を取る競争をしようと言いました。勝った方がこの世で一番偉いのだぞ、と言いました。
太陽は困りました。北風の策略は分かるのです。北風は旅人のすぐ側に寄って、強い風で旅人の服を吹き飛ばす事ができますが、太陽は、大空高くじっと輝いているだけですので北風のように旅人の側へ寄って、服を取ってしまうという事ができません。
しかし、北風の挑戦から逃げると、この世の笑いものです。かといって、試合をして負けるともっとみっともない事になります。
うっかり負けてしまって、この世の王者の地位を北風なんかに取られてはたまりません。しかし、いい案が出てきません。
すっかり困り果てた太陽は、なんとなく道を歩く旅人を見つめました。
「おや、」太陽は旅人の顔を見てつぶやきました。その旅人は、イソップでした。
旅が大好きで、あちこち旅をしているとても頭のいい人間です。欲張りな狐やずるい人間を見ると、その行動をすぐ面白い話にする特技が有りました。
おまけにイソップには一つの癖が有りました。暑くなるとすぐ服を脱ぐ癖です。
「しめた。」太陽は喜びました。そして、堂々と北風に返答をしました。
「いいとも北風くん。挑戦を受けて立とう。」
北風は大喜びしました。これで、この世で一番偉くなれる。北風は思いっきり強い風を旅人に吹き付けました。
北風が思いっきり強い風を吹いても、勿論旅人は服を脱ぎませんでした。
次に太陽が暖かくすると、旅人はたまらず、マフラーを取った。北風は負けたと思った。さらに太陽は、暖かくした。旅人は帽子を脱いだ。
北風は自分が恥ずかしくなった。旅人は暑いので木陰に入って休んだ。そして、太陽と北風を見ながら、なにやら物語を書き始めました。太陽は思わず笑った。
そして、北風にもう少しだぞ、と言いながらますます暑くした。
旅人は暑くてたまらないと叫んだ。そして、立ち上がった。太陽は勝ち誇ったように北風に言った。「ほら、もう僕の勝ちだ。旅人は暑くて降参だぞ。つぎは服を脱いでしまうぞ。」
北風は太陽を尊敬した。「なんていい方法だろう。服を取るのに、引っ張ったりせず、強い風を吹き付けたりもしないで、ただ暖かくして、そして服を取る。頭がいい。やはり太陽はこの世で一番偉い。」
北風は今までの自分が恥ずかしくなり、これからは心から太陽を尊敬して生きて行こうと思った。太陽の側では、小さくなって生きて行こうと誓った。
ところが、立ち上がった旅人は、あまりの暑さで倒れて死んでしまいました。服を脱ぐ暇も有りませんでした。
旅人を遊びのために殺してしまった太陽は空の神様から、大変怒られた。
そして、空で遊んでいる時間をそれまでの半分にされるという罰を受けた。
今までのように一日中、昼も夜も空で輝いている事が許されなくなりました。
それからは太陽は、夕方頃になると慌てて西の空へ消えていくようになりました。太陽は、北風や、海、雲、雨、ライオン、花などから笑われて馬鹿にされてしまいました。
毎日、太陽が西の海などに消えていく時、北風や、雲、波、浜辺、花、小鳥が大声でからかうので太陽はいつも西へ消える時は、大変恥ずかしくて真っ赤になってしまいます。
それで夕日はとても赤いのです。
昼が半分になりました。夜が誕生しました。夜は、星や月の天下となりました。
北風は相変わらず、夜も吹いていていいと言われました。太陽の居ない夜にも、北風は、大威張りで寒い風を吹き続けるようになりました。
だから夜は昼間よりも寒いのです。
太陽は北風に頭が上がらなくなり、北風が出て来ている時はじっとして北風の邪魔をしたり、北風に偉そうな事を言わなくなりました。
動物や人間、鳥、モグラ、花、山、海、虹などにいつも偉そうに演説をしていた太陽はすっかり無口になりました。
それからは太陽が喋っているのを見たものはいません。
特に北風が大好きな冬になると、夏なんかよりも姿を小さくして南の方へ逃げて行ってしまいます。ちょっとでも北風がやって来るとすぐ暖かくする事を遠慮するようになりました。
そして、夏の時なんかよりも、もっと早く西の方へ逃げるように消えて行くようになりました。
西へ消えて行く太陽を見送って、北風は勿論の事、雲や小鳥、花、牛さん、大きな山さん、浜辺さん、今出て来たばかりの月や星たちも、大きな声で笑い続けました。
いつも笑われて西の空へ急いで消えて行く太陽は、そういった毎日が辛くなりました。以前の威厳のあった日々を思い出すと、屈辱です。
それで、空の神様に頼んで、みんながいじめるので、もう少し遠くに住みたいと希望しました。
毎日空を東から西へと動かなくてもいいように訴えました。西へ消える時のみんなの笑いの合唱は、プライドの高い太陽には耐えきれませんでした。
空の神様は、あの事件以来みんなにからかわれている太陽の事は気にしていました。それで、太陽の頼みを聞いてやる事にしました。
太陽がみんなにからかわれないように、居場所をもっとずっと上の方、大空の大変高い所へ変えてもいいと天空の住所変更許可書を発行しました。
そして、再び以前のように一日中じっとしていてもいいと言いました。
太陽が一日中動かなくてもいいとの許可が出てびっくりしたのは、地球と夜と星達です。空の神様に抗議しました。
夜は太陽がじっとしていると、また消えなければいけなくなると許可の取り消しを申請しました。
星もせっかく仲良くなった夜や、ふくろうさん、時々祈ってくれる可愛い人間の子供達と別れるのは悲しいと泣きました。地球は、下側が寒くて凍ってしまうので風邪を引いてしまう、いや、肺炎になってしまうと必死で頼みました。
結構みんな勝手な事を言ってると太陽は思いましたが、黙っていました。実は、太陽はこの後の空の神様の対応の予測がついていましたので余裕でした。
空の神様は困ってしまいました。ちょっと、たまたま立ち寄ったふりをして、太陽の所にやって来ました。さりげなく女神もまじえて、太陽と相談しながら2、3日考えた神様はいい方法を見つけました。
今度は地球に自分で回転する事を許可しました。夜と星にも地球と一緒に回るように提案しました。
空の神様の許可、提案と言っても実質は命令ですから、断ると怖い罰を受けることになります。夜も星も従う事にしました。
星たちは、毎日慌ただしく回るのは嫌でした。地球が何とか頑張ってもう少し交渉してくれないかと思っていたら、地球はもう下側が凍ってしまって冷たくてたまらないので、一言も反論しないうちにあっさりと許可を受け入れて回り始めました。
ぎこちなく回っている地球に太陽が言いました。「じっとしてないで回らないといけないぞ。」「回っているよ。」「僕の周りを回るんだ。今までは僕が君の周りを回っていただろう? 空の神様の許可証をよく見ろよ。」
地球は許可証をポケットから取り出すとじっと見ました。許可証には、自分で回転する事を許可する、とだけ簡潔に書かれていました。
空の神様のサインもちゃんと有ります。読んでいると却って分からなくなりましたので、空の神様に質問しました。
空の神様はチラッと太陽の方を見ました。太陽は涼しい顔して知らん顔をしています。許可証の文は、時間が無かったので太陽に書かしたのでした。
よくチェックしなかった自分もいけなかったと思った空の神様は、女神たちを呼んでもう一度相談しました。しかし、いい案が出ません。天使たちも呼びました。天使たちが沢山集まって来て、にぎやかに相談を始めました。あんまり騒がしいので、途中で面倒くさくなった空の神様は、天使たちに結論を出すように言って散歩に出かけました。
許可証の文の解釈をめぐって天使たちは議論しました。しかし、結論は出ませんでした。
太陽の巧妙な文書の作成でした。
天使達は、困って金星や火星、木星たちに相談しました。
金星たちは即座に返答書をよこしました。純金製の返答書には、自分たちも長い間太陽の周りを回っているのだから、地球だけじっとしているのはいけない、地球もみんなと一緒に太陽の周りを回るべきだと達筆で書かれていました。
なるほど、もっともだと感心した天使達は、空の神様に結論書を提出しました。
天使たちの的確な結論書を見た空の神様は、喜んでその結論書を地球に示しました。
地球は天使たちを恨めしそうに見ながら太陽の周りを回り始めました。
太陽は以前よりも、もっともっと高い空でいっそう輝きました。
再び威厳を取り戻しました。
そして、汗を沢山かいて自分の周りを回る地球を見ながら、にこにこと優しく笑い続けました。
おしまい
2001年8月25日完成
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◆「お星様はなぜ空に有るの?」
作 ロバート・ランブン
もう100年ぐらい前の出来事でしたでしょうか。
夏のバカンスで、地中海に面したフランスの静かな
海辺の村にやって来た、可愛いお譲ちゃんジュリエッ
トと、お母さんのお話です。
夜、静かな浜辺を二人で歩きながらジュリエット
はお母さんに聞きました。
ジュリエットが空を見上げると、美しい星が空いっ
ぱいに輝いていました。
潮風がとても素敵な夜でした。
空いっぱいに沢山の星がこぼれんばかりに輝いていました。まるで世界中の宝石を全部集めて空に飾ったような美しさでした。
ジュリエットはお母さんに聞きました。
「お母さん、どうしてお星様はあんなに綺麗にお空で輝いているの?」
お母さん優しく教えてくれました。
「本当に綺麗ね。そうだわ、お星様のお話をしてあげましょうね。 昔、昔、ずっと昔、まだ神様や天使たちが地上によく遊びに来ていた頃は、お星様はね、地上に有ったのよ。
野原や、山、海、川、花畑、木の上、どこにもたくさんお星様は有ったのよ。どこもかしこも、きらきらと光っていて、それはそれはとても綺麗だったのよ。
ところが人間たちが綺麗なお星様を、全部自分のものにしょうとして、どんどん拾い集めて、自分の家や洞窟にしまったの。
夜が真っ暗になって困ったうさぎさん、牛さん、キリンさん、鳥さんたちが神様に訴えたの。
『夜暗くて散歩にもどこにも行けません。星を全部人間が独り占めにして、私たちは綺麗な星を全然見る事ができません』
びっくりした神様は天使に言いつけて、人間たちが自分の家に集めた星をすべて空へ持って行きました。
それから、夜空は星でいっぱいとなり、とても綺麗になりました。
ウサギさんや牛さん達も夜空いっぱいに星が明るく輝くようになったので、夜の散歩が以前どおり出来るようになって大変喜びしました。
あまりの美しさに天使は夜空を飛び回るのが大好きになりました。それからは天使はあまり地上へ降りて来なくなりました。
でも、お星様を全部空へ持って行った訳ではないのよ。
うっかり者の天使が一人いて、夜の空に持って行き忘れたのが、海の星でした。
海に忘れ去られた星は、長い長い年月の間に、形を変え美しく柔らかな輝きを持つ真珠となりました。
だから海の真珠は、とてもとても綺麗に海の底で、まるで星のように輝いているのよ。」
つづく
2001年9月15日
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◆ 「哀しみのパンドラ」
’01.9.24
作 ロバート・ランブン
裏町に住むパンドラは貧しい娘だった。パンドラはみんなに嫌われていた。
なぜなら、パンドラと親しく付き合っていると必ず病気になったり、貧乏になったりして不幸になっていくからだ。
みんなパンドラを避けるようになった。確かにそうだった、パンドラはその事がよく分かる。でも、パンドラはみんなと話したり、遊んだりするのが好きだったので、みんなの所へいつも出かけて行った。
パンドラは、自分が聞いたり見たりしてきた事を、みんなに話したりするのが大好きなだけだった。
パンドラは生まれた時から、狭い部屋の中や暗い場所にいるのが大嫌いだった。だから、いつも大きな広場や、にぎやかな市場のみんながいる所へ出かけていった。
そしてみんなと楽しく遊んだ。パンドラは何故か遠くの国やずっと昔の話、神々の話が得意だった。どうしてそんな古い事を知っているのか、自分でもよく分からなかった。
パンドラは以前はとても金持ちだった。家の中には金貨や宝石がたくさん有った。みんなに宝石を上げた。みんなが喜ぶ顔が大好きだった。
おじいさんやおばあさんから貰った昔の宝物もすべてみんなに上げた。
いろいろな珍しい話をしたいと思って、みんなの所へ行っているだけだった。パンドラは悪気はなかった。知っている事や聞いてきた事を話したり、持っている物を上げるのが好きなだけだった。
パンドラは自分の家に有るいろいろの物をみんなに上げた。きっと喜ばれると思った。
宝石なんかはとても喜んでくれたが、その他のものはみんな嫌な顔をした。
そして、みんなは逃げて行った。
パンドラは悲しんだ。「私はみんなの嫌われ者だわ。」パンドラは楽しい友達が大好きで、いろいろな愉快な友達が欲しかった。小さい子供も大好きだった。
でも今はもう誰もいない。誰も寄って来ない。パンドラは自分では何も悪い事をしていない。ただ、みんなに与えるのが好きなだけだった。でも嫌われる。
パンドラは毎日部屋でぽつんと一人で立っていた。
友達も宝石も悩みも悲しみもどっかへ行ってしまった。部屋の中を見た。もう何もなかった。さびしい部屋を見て泣こうと思った。しかし、涙も出なかった。
「もう涙さえ出てくれないのね。私はすべてを失くして涙さえ無くしてしまったわ。」
確かにパンドラはもうすべてを失くしていた。昔、宝石にあふれていた部屋はがらんとしていた。何一つなかった。
立っている横の小さなテーブルの上の綺麗な箱を手にした。軽かった。振ってみた。何の音もしなかった。
「おまえも空っぽになっちゃったのね。」箱がまるで自分の事のようで悲しかったが、涙は出なかった。仕方が無いので「ああ、悲しい。」とつぶやいた。
でも、パンドラは何故か幸せだった。これほどみんなに嫌われていて、すべてを失くしてもパンドラの表情は生き生きと輝いていた。自分でも分からなかった。
「どうしてかしら?」暗い部屋の真ん中でパンドラは、自分の胸にそっと両手をあてた。
パンドラの心の中には、まだ「希望」が残っていた。
終り
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◆「おとぎの国の子供戦争」
作 ロバート・ランブン 2001.9.23
今から何百年も昔の事ですが、平和でのどかな小さな国に敵が攻めて来ました。
大臣達と王宮会議の議員達は、すぐさま緊急会議を開いて対応策の検討を始めた。激しい議論が続いた。
戦うか。降伏するか。逃げるか。
戦うという議員が多かったが、戦争開始許可の国王の署名を得る為に必要な、三分の二まで賛成票があとニ、三人届かなかった。
戦闘派は国民の支持を集めたが、反対派の主張もほぼ同じくらいの賛同者を得た。
いっそのこと国を捨てて、隣の友好国の大国へ逃げて行ったほうがいい、と言う逃亡派も多かった。
会議は延々と続いていった。
敵の進行は早かった。あっという間に王宮のある都市は囲まれた。軍隊は出撃命令を待ち都市の外側の要塞に結集した。しかし、王宮会議の結論が出ないので、戦闘の許可証が司令官の所に来なかった。軍隊は敵を目の前にしてじっとしているしかなかった。
やがて、敵は一斉に攻撃を開始した。戦闘許可証を手に入れていない司令官は、退却を命じた。退却している内に、軍隊は殆ど壊滅した。
村や町で多くの農夫や商人も敵に殺されていった。子供達は泣きながら逃げ回った。子供達の両親や優しいお姉さん達も殺されてしまった。
子供達は、両親や近所の大人に何故戦わないのかと聞いた。大人達の返事はこうだった。
「まだ国王から戦争の許可が出ていない。これは大切な大法律だから守らなければいけない。」そして、子供達に法律論を説いた。
殆どの子供達はまだ学校で法律を習っていないので、難しい法律の事を言われて黙った。そして、大人に付いて森の奥深くへと逃げて行った。
しかし、その森も敵の軍隊が攻めて来て、あっという間に包囲されて大人達は殆ど殺された。
子供達はついに立ち上がった。両親や優しいお姉さん達が殺されていく事にもう我慢が出来なかった。
戦場に落ちている武器を手にして、勇敢に敵の軍隊と戦った。女の子も必死で戦った。弓矢の得意な少年や槍の得意な子供は大活躍した。かなりの敵を倒した。
しかし、やはり大人の軍隊には勝てない。だんだん山の奥深くに追い詰められて行った。王宮のある町を見ると、敵の旗があちらこちらに上がっていた。子供達のうち足の一番早い者が、隣の大国に援軍を頼みに走った。
隣の国の王様は子供の話を聞いてかわいそうになり、援軍を差し向ける事にした。早速、援軍派遣の書類に署名をし、司令官に渡した。司令官はすぐに大軍に出撃命令をした。途中山に寄って子供達と合流した。
子供達は全員大歓声を上げた。そして、大国の援軍の大将に感謝をした。
子供達と大国の援軍が王宮前の広場に来ると、敵が一斉に攻撃してきた。援軍はまるで自分の国の戦争であるかのように、死を恐れず勇敢に戦った。子供達も必死になって戦った。激しい戦闘で、援軍の兵士達は沢山死んだ。
戦闘は激しく、町は破壊されていった。
戦争が始まってから1年経った。大国から新しい援軍が到着した。
そして、とうとう敵を打ち破った。子供達は歓声を上げた。
そして、半分崩壊した王宮に入って行き王様を探した。王様達は全員地下の広間にいて無事だった。子供達は喜んだ。
しかし、大臣達がいない。敵に殺されたんだ、と子供達は悲しんだ。王様も王妃も悲しんだ。王女の一人は悲しみのあまり気を失った。
子供達と王女達は泣きながら重い足取りで、王宮広間の横の小会議室の前に来た。
その時、中から声が聞こえて来た。
「大臣達がここに逃げているぞ。無事だ。」子供達と王女達は喜んで小会議所の小さな扉を開けた。中には大臣達と王宮会議の議員達が全員がいた。
中ではまだ、攻めて来た敵と戦争するかどうか激しい議論が続いていた。
終り (しかし、会議はまだ続いています。)
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■ 「高慢な人類への批判集〜そのT」
作 米沢正論
どうして、人類の生存に大変役に立っているおいら達が、法律で保護もされず、感謝もされず、可愛がってもらえないのか。
もし、おいら達がこの世からいなくなったら、人類は大変困るではないか。牛乳メーカーが困るだけではすまないぞ。
小鳥、犬、猫は大して何もしないのに可愛がられ、病院やホテルまである。可愛い服まで着せてもらっている。美容院へ行ってる猫や犬もいるぞ。
カラスなんか可愛い歌まで作ってもらっているぞ。狸や狐は大昔からあれほど人間を騙しているというのに、詐欺罪で逮捕されるという事も無い。
特に狸はひどい、森の葉っぱで小判やお札を何枚作った事か、とても許されない。おいらも一度騙されたぞ。狸には通貨偽造罪は適用されないのか。いったい日本の警察は何をしているのか。
一日中田んぼでこき使われて帰ってくる途中、神社の前を通った時に見たけれど狐なんか石の像にしてもらっている。神様扱いだ。いい気なもんだ。
法律で鳥や動物は保護されている。人間に危害や損害を与えるカラス、クマ、猿、カモシカなどはあまり殺されない、捕まる事もあんまり無い。
サメも海水浴場を悠然と泳いでいる。イルカは頭が良いからと可愛がられている。鯨はここ最近とても大切にされている。昔は大変だったのに、羨ましいぞ。テレビによく写ったり、写真集まで出ている。泳いでいると近くで見ている人達が拍手をしている。
おいらが牧場を走ったり、川で泳いでいる時には誰も拍手なんかしてくれない。去年あんまり暑いので川で泳いでいたらご主人に棒切れで叩かれたぞ。
馬は特別にとても大切にされている。収入も多いと聞くぞ。テレビにも良く出ている。あまりよく分からないけれど、馬のオリンピックかなんか有るらしい。
一番大きな大会で一等になった馬には、ニンジンのほかに沢山のお金もくれるらしい。何千万円とか言うが、おいらには分からないのでタヌキに聞いたら、何千万円というお金は、それはすごいらしい。
タヌキは大きな金庫を開けて、これぐらいの量だと教えてくれた。すごいもんだ。あのタヌキの大きな金庫いっぱいのお金だ。
すごい量だ。ちょっと牧場ぐらいの大きさの所を一回りするぐらいでこんなにくれるのか。毎晩おいしい米沢牛を食べたとしても、7年もつという金額らしい。
羨ましい。ところで、タヌキよ、お前は金持ちだなと言うと、タヌキでさえまだ何千万円という札束は見たことが無いという。
じゃあ、この金庫いっぱいのお金は何だと聞くと。ばつが悪そうな顔をして慌てて金庫を締めてしまった。またタヌキの悪い癖だ。
とにかく走るのがとても速いという事が人間には好評のようだ。むむ、悔しい。
しかし、おいら達は馬になんか負けないぞ。自慢していいのか迷うが、まずおいら達は馬より格段においしい。
それと、あまり行くのが好きではないが、肉屋に行くと並んでいるのはおいら達だけだ。馬肉なんか並んでいるのを見たことがないぞ。
いかにおいら達が人類に貢献しているかという事の証明だ。
米沢、神戸、松阪と三頭揃ったらどんなダービー馬も勝てないぞ。それにおいしい牛乳も人類に提供している。馬乳など聞いた事がないぞ。
これらを見ても、馬よりおいら達の方が優秀であるという事が理解して頂けるはずである。
西班牙の友達は少しましだ。闘牛場で人間と戦う事ができる。1対1だ。人間の中にも勇気の有る奴はいるもんだ、西班牙人は立派だ。ただ、ずるい事に剣を持っている。まあ、弱い人間だ、それぐらいはいいだろう。
大体勝負は牛の勝ちだ。当然だ。鉄板の上のステーキのようにじっとしているわけが無いだろう。赤い布切れをひらひらさせて、何をやってんだか。ちょいとお尻を角で突くと、悲鳴をあげて泣きながら逃げて行く。いい気味だ。
米粒はあんなに小さいのに、とても感謝されている。食事の時はみんな米粒や農夫にお祈りをしている。しかし、ステーキやすき焼きを食べる時、誰も牛に感謝のお祈りを捧げていない。
おいらの友達で善光寺の近くに住んでいる立派な牛は、時々お寺の近くで人生の意義が分からずぼんやりしている人間を見かけては、善光寺へ無理やり連れて行き信心深い人間にしてやっているというのに、感謝もされない。
どうして、おいら達は感謝されて、もっと大切にされないのか。「牛さんの感謝保護法」はどうして出来ないのか。
この間、「今日は牛の日だ。」とみんな言うので思わずおいらは涙ぐんだ。やっとおいらの事を分かってくれたんだと。おいらもその人達の後をノソノソついて行ったら、みんなうなぎ屋へ入って行った。おいらは本当に怒るぞ。
おまけに最近は狂牛病だとさ。ふざけちゃいけない。本当においらは怒るぞ。おいら達は、広い牧場の美味しい草が大好きなのさ。あんまり変なのを食べさすんじゃないぞ。
イギリスやフランスでおいらの友達は沢山いなくなったぞ。ぐすん。
おいらはもうインドへ移住したくなったぞ。パスポートも取ったんだ。インド大使館へ移民申請をしに行ったんだ。大使館の人達が全員出て来て、それはそれは大歓迎だったぞ。この世で一番立派なのはインド人だ。
でも、ぐっとこらえた。日本中の牛がみんなインドへ移住したら、日本中のすき焼き屋さんは倒産してしまう。
皆さん早く、牛の日を作っておくれ。「牛の日」「牛さんへの感謝デー」を。
おいらは最近ちょっと怒ってるぞ。
終り
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■「 空を見て歩くヨハン 」
作者 ロバート・ランブン
◇これは19世紀のフランスのある田舎に住んでいた
ヨハンという真面目な農夫のお話です。
ヨハンの家は貧しかった。でも、ヨハンは真面目な働き者だった。両親は病気と怪我で働く事ができなかった。ヨハンの一家はその日の食事にも困っていた。
ヨハンの楽しみは、一日中一生懸命葡萄畑で仕事をして帰って来てから、美味しいワインをカップに一杯飲む事だった。
しかし、生活が苦しくてもう飲むワインも殆ど無くなってしまいました。夜、ヨハンはワインをほんの一口だけ飲んで、残りはカップに残して寝ました。
もう、残りはあと一口しか有りません。それが最後です。それを飲んでしまったら、お金が無いのでしばらくワインを飲む事ができません。
カップはとても古ぼけていて汚らしいが、ヨハンの家に何代も前から伝わる大切なカップです。お爺さんも、ひいじいさんもその前の先祖もみんな大切にして使ってきたカップです。
次の日も、ヨハンはいつものように葡萄畑で一生懸命働いた。夜、食器棚からワインを出して最後の一口を飲もうとした。
「あ!」 ヨハンは驚いた。見るとカップにいっぱいにワインが入っていました。
両親に聞くと知らないと言います。両親はついにヨハンが働きすぎておかしくなったと思った。ヨハンも、そうだ、自分はおかしくなったのだと思った。
とにかく嬉しくて少しだけ飲み、殆ど両親に上げた。つつましいヨハンは全部飲まずに、少し残してまた寝た。次の日も、ヨハンは一生懸命働いて帰って来た。
食器棚を開けると、またワインが一杯になっていた。毎日毎日、ヨハンが一生懸命働いて帰って来ると必ず、ワインが一杯になっていた。
母親が言った。ワインを飲まずにビンに詰めて売ったらどうかと。ヨハンはワインを飲まずに、ビンに詰める事にした。
不思議な事に、カップのワインをほんの少し入れただけですぐ大きなワインのビンが一杯になった。一晩に一杯のカップから5本のワインのビンが出来た。
ヨハンは家の前に置いて売った。旅の人が買って行った。ヨハンたちは大喜びした。それからもワインは売れた。ヨハンは相変わらず一生懸命畑で働き続けた。
毎晩食器棚のカップを見ると、ワインはいつも一杯になっていた。ワインは売れ続けた。おかげで、高い薬も買えて母は少し元気になった。
しばらくすると、父もいい医者にかかる事が出来るようになって治った。父も畑で働けるようになった。生活が楽になった。半年もするとビンに詰めたワインで倉庫は一杯になった。
以前に比べて、とても楽な生活が出来るようになった。ヨハンのワインは美味しいと遠くからみんな買いに来た。高く売れたので益々生活は楽になった。 ヨハンは村一番の金持ちになった。
ヨハンは食器棚のカップの隣にワインを売って得た金貨を置いた。金貨がどんどん増えていった。ヨハンは食器棚の金貨を見るのが嬉しかった。
食器棚が、金貨で一杯になった。輝く金貨の光でヨハンの目も金色に光った。金貨が食器棚にあふれるばかりになった。
ヨハンは昼間畑で働いている間に金貨が盗まれないように、金貨を全部いつも背中の大きな袋に入れてしょって歩いた。金貨の重さで、後ろにひっくり返りそうになった。
歩く時も、金貨の重さで背中が後ろに反り返った状態で歩いた。頭もぐっと後ろに引っ張られるので、上を見て歩くはめになった。知らない人が遠くから見ると、偉い王様が大きく胸をはって歩いているようでした。
村の人とすれ違っても、前が見えないので相手が頭を下げて挨拶しても、気がつかなかった。
みんな、ヨハンのことを「空を見て歩くヨハン」と呼んだ。
ある日の朝、ヨハンは食器棚一杯になって輝く美しい金貨を見ているうちに、金貨のそばのカップが汚く思えてきた。邪魔だと思い始めた。ヨハンは汚く見えるカップを一番下の棚の隅っこへと置いた。
そして、ヨハンはその日は畑へ行く事をやめて、金貨をたくさん持って町へ行き、高い服を買ったり娯楽場でたくさんお金を使って遊んだ。
娯楽場ではみんながとてもちやほやしてくれた。ヨハンの事を素晴らしいと言ってくれた。
娯楽場の係の人に少し金貨を上げると、とても喜んでくれた。みんなが集まって来て、ヨハンの事をまるで、銀行家のように立派だと言った。
他の人は、いや、有名な音楽家に似ていると感心した。美しい女達が何人も寄って来て、ウイーンの貴族のように素敵だといってくれた。みんながいろいろな言葉で褒めてくれた。
ヨハンは王様になったような気持ちになった。
その日からカップからワインは出なくなった。だが、ヨハンは、倉庫の一杯のワインを見て、沢山有る、毎日売っても100年分有る、もうあの汚いカップからワインが出なくても大丈夫だと笑った。
父は相変わらず、一生懸命畑で働いた。ヨハンは毎日町へ行って遊んでばかりいた。
ヨハンはワインを全部馬車に乗せて、町へ行き引っ越す事にした。ワインを全部売れば大金持ちになれる。
それで町に大きな家を買って一生贅沢に暮らす事にした。両親は行かなかった。ヨハンを一生懸命引き止めた。
農夫が畑仕事を止めてはいけない。毎日畑で働かないといけないと言った。
ヨハンは馬鹿な両親だと笑ってワインを全部大きな馬車に乗せて町へ出発した。行く前に、戸棚の金貨を全部袋に詰めて持って行った。
足元に、あの汚れたカップが見えた。ヨハンは踏みつけた。カップは砕けてぼろぼろになった。「最近はちっともワインを出さずに、もうお前は用なしだ。」カップのかけらを蹴飛ばしてヨハンは家を出た。
蹴飛ばされたヨハンのカップのかけらは、庭の隅に有るくさい匂いのする薄暗いどぶに転がって行き落ちた。
ヨハンは町へ着くとワインを並べて売り始めた。ヨハンのワインが来たと聞くとみんな集まってきた。高い値段でワインはすぐ全部売れた。ヨハンの袋の中は金貨で一杯になった。「俺はこの国一番の大金持ちだ。」ヨハんはげらげらと笑った。
「さあ、宝石屋へ行って沢山の宝石を買って、それからこの国一番の高級ホテルに何日も泊まろう。そして、あの娯楽場へ行き親切な優しいみんなと楽しく遊ぼう。この町で一生楽しく、愉快に遊んで暮らそう。」ヨハンは、馬車に乗った。
その時、町のあちらこちらから沢山の人が寄って来た。ヨハンの周りに集まった。
「もうワインは売切れだ。そこをどいてくれ。」ヨハンは人々を押しのけた。
人々はヨハンに詰め寄った。「このワインは腐っているぞ。いつものワインではない。インチキだ。」
集まって来た人々はさっきワインを買って行った人々だ。みんな、さっき買ったばかりのワインのビンを持ってヨハンに金を返せと詰め寄った。
確かにワインは全部腐っていた。どぶのような悪臭がしていた。みんなヨハンの金貨を持って行った。金貨で一杯になっていた大きな袋がカラになった。
ヨハンはがっかりした。しかし、まだ家から持ってきた金貨が沢山有る。その金貨だけでも一生遊んで暮らせる。ヨハンは金貨の袋を縛ると再び行こうとした。
その時、役人が沢山やって来た。ヨハンを連れて行った。ヨハンはすぐ裁判にかけられた。判決が出た。
インチキなワインを沢山売った罪で鞭打ちの刑100回になった。
そして、踏みつけ30回の刑を受けた。踏みつけの刑で、ヨハンの背中はぼろぼろになった。さらに、蹴飛ばしの刑を受けた。
刑罰執行人に蹴飛ばされたヨハンは、刑場の広場の隅に有るくさい匂いのする薄暗いどぶに転がって行き落ちた。
ヨハンの腐ったワインを飲んでたくさんの人が病気になった。何人もの人が入院した。それで牢屋に2年入れられる事になった。
さらに、罰として、ヨハンの持っていた金貨はすべて没収された。
ヨハンは無一文になった。
そして、日の当らない暗くて、くさい匂いのする牢屋の中で毎日泣いて暮らした。
終わり。
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◇「森の中の宇宙人」の続き。
12月7日。 このホーム・ページの一番上からの続きです。
次の日、優一は心配になって午前中に舞の家へ行った。
家の玄関で二人に会った。舞もちょうど優一の家へイーアを連れて行く所だった。
「どうだった?」
優一は舞にそっと聞いた。舞はげらげら大笑いしながら昨日の事を話し出した。
イーアは恥ずかしそうに舞と優一の顔を見た。
まず、イーアはみんなにご馳走を食べろ食べろと言われて、言われるままに食べて、夜中に腹痛を起こした。
テレビやガスの炎を珍しそうに見て、おばあちゃんに笑われた。
お風呂の入り方や布団で寝る方法、その他生活の仕方を完璧に舞に尋ねた。舞はあきれ果ててしまった。
家族のみんなは「ずっと外国に居たのだから仕方ないわよね」と優しくフォローしてくれた。
「お父さんが帰って来るまでずっとここに居ていいわよ」おばあちゃんはイーアがとても気に入ったみたいだ。
おまけにおじいちゃんはイーアが金(きん)を持っていると聞くと、細工物に使うからと50グラム買ってくれた。イーアはとても嬉しそうな顔をした。
「良かったね」と舞が言うと、イーアは舞のおじいちゃんに貰った7枚ほどの1万円札を手にして、このお札の価値はどのくらいなのかと聞いて来たので、またまた舞はがっくり来た。
家族全員大爆笑した。
イーアは本棚で図鑑を見つけるとじっと穴が開くほど真剣に見続けた。花の写真を見て「綺麗だ、綺麗だ」と大騒ぎをするので、またまたみんな大爆笑した。
花といっても、桜とか菊などのありふれた花で大騒ぎするので、おばあちゃんは腹を抱えて転がってしまった。
とにかくやる事なす事がおかしくて仕方がない。
さらに、お風呂に入ると石けんで皮膚がかぶれてしまった。目も痛い痛いと涙を流した。
その後腹痛を起こして家中大騒ぎになった。料理を作ったおばあちゃんは真っ青になった。
おじいちゃんが医者を呼ぼうとしたが、不思議な事にイーアが持っている薬を飲むとすぐに治った。
イーアはいつもこういった食事をしないので、それで内臓が拒絶反応を起こしたとみんなに謝った。
みんなは分かったような分からないような顔をして「ああ、そうなんですか」と頷いた。
夜、舞が寝る時に電気を消すと、イーアは驚いた声で何故明りを消すのか、事故が発生したらどうするのかと言った。
「何の事故?」舞は仕方なく電気をつけたまま寝たが寝れない。
イーアを見るとすやすやと寝ている。「変わった娘だよ」舞は目の上にタオルを置いて寝た。
ところが、イーアは3時間ほど寝ると起きて舞にも起きろと言った。舞が相手をしないで寝ていると、イーアは仕方なく夜通しさっきの図鑑を見続けた。
朝、聞くとイーアはいつも3時間しか寝ないと言う。それが普通だと言った。
「羨ましい、ナポレオンの娘か」舞は感心した。
そういった話を舞から聞いた優一はげらげら大笑いした。自分が相手をしない限り愉快で楽しい話だ。舞は優一の腕を肘でつついた。
イーアは照れくさそうに二人の顔を見ながら微笑んだ。18才というのに微笑むと16才ぐらいに見える。
イーアが身の回りの物を買うので優一と舞も一緒に軽井沢の街へ行った。
とにかくイーアは一人では殆ど何も出来ないので、舞が頼りだった。舞も何となく慣れたというかイーアのペースの方に入ってしまったというか、もうあまり気にもせずにイーアの買い物を手伝ってやった。
買い物の様子が爆笑物だ。何を買うにしても当たり前の事を細かく店員に聞いて、店員に笑われてしまい、舞も優一も何度も顔が真っ赤になった。
「この町にはフランス人や、イギリス人が多いのですか?」とイーアが聞いた。
どうしてかと聞くと、町中フランス語や英語の看板が多いからと言った。
優一と舞がまた変な事を聞いてきたぞと、困りながら説明をすると、イーアはそれでフランス語で話す人が誰もいないのだねと言った。
さっきフランス語の看板の有る店でフランス語でものを聞いたら、店員があわてて手を振った意味が分かったと言った。
なるほど、と優一と舞は何となく感心した。
変わっているけど面白い観察をする娘だと誉めた。
イーアは仕事をしたいと言った。舞はじゃあ、うちの畑仕事を手伝えばと言った。たぶん嫌だと言うかと思ったら、イーアはとても喜んだ。
働いたらずっと家に置いてくれるかと聞くので、いいよと舞が返事をするとイーアは大変喜んだ。
しかし、駄目だった。畑や、草むらにしばらく入るとイーアはすぐにかぶれてしまう。皮膚が非常に弱い。
それで、家で簡単な仕事をやらせる事にした。イーアは仕事をしながらおばあちゃんにしつこいほどいろんな事を聞いた。
小学生でも聞かないような事を聞くのでみんな笑ったが、おばあちゃんはそんなイーアがとても可愛くて丁寧に丁寧に教えてあげた。
ひらがなや漢字もおばあちゃんに教えて貰った。山とか花とかの易しい漢字を聞いてもおばあちゃんは笑いもせずに、「イーアちゃんは一生懸命勉強して偉いね。イーアちゃんは外国ばかりに居て日本に居なかったから仕方がないね。そうそう、上手だね」と何度も誉めながら教えてくれた。
2、3日もするとイーアはだいたい普段の生活に困らなくなった。ひらがなはすっかり覚えて、漢字もだいたい覚えた。
夜も電気を消して寝るようになった。食事も腹痛を起こさないように、少しだけ食べた。後は、こっそり布団の中で持って来た固形食料を食べた。
( つづく )
2001年12月7日
◆「森の宇宙人」の続きです。 12月20日
怪我をして、サッカー部を休部している優一は、夏休みの間伊豆の伯父さんの家でアルバイトをして過ごす事にした。
伯父さんは漁師だ。漁師と言っても船を三隻も持ち兼業で民宿も経営している。
夏休みの間は民宿の方が大忙しとなるので、いつも優一がアルバイトがてら遊びに行くと大歓迎してくれる。
優一が伊豆の話をすると、イーアは目を輝かして伊豆の伯父さんの家で雇ってくれないかと聞いた。
海を見た事がないのでどうしても海の有る所で働きたいと言った。
またまた、優一と舞はあきれた。「海を見た事がない? 嘘だろう?」と聞くと本当だと真剣に言った。一度でいいから波というものにさわってみたいと言い始めた。
優一はどっと疲れが出て来た。
『こんな女の娘を海へ連れて行ったら大変な事になる。』優一は即座に断った。
イーアはとても悲しそうにした。下を向いたままじっと黙った。
舞が見ると涙を流している。
「いいじゃない。優一、私が付いて行ってイーアの面倒を見るからいいでしょう? 一緒に行こうよ」
「冗談じゃないよ」事故でも有ったらどうするんだと優一は舞に文句を言った。
結局、舞と舞のおばあちゃんが優一の父や伯父さん所に電話をして頼んだので、イーアは海へ行ける事になった。
特に伯父さんは、女の子が二人も来てくれると民宿の方がとても助かる、やはり男よりも優しい女の子がいいと喜んでいるという。
「ほらね。やはりお客様の相手は美しい女性がいいのよ。私とイーアが行けば、優一は用無しよ。毎日船の底でも磨いていればいいのよ」」舞が優一をからかった。
「ちえっ、勝手な事言ってらあ」
優一達は7月25日に伊豆へ出発する事にした。
海へ行ける事になって、イーアは信じられないほど喜んだ。その日の夕方イーアは海の図鑑を広げて、優一と舞に海の事をあれこれと聞いてきた。
本当に海の事を何もも知らない。小学生どころか、完全に知らない。
百科事典を読んだ後のように知識としては知っているが、では実際波とは何か、砂浜とは、泳ぐと言う事はどういう事かと言う事がまるで分かっていない。
そのくせ、人類が泳ぎ方を覚えたのはいつからか、海水浴というのは世界中で行われている習慣なのか、溺れないようにするにはどうすればいいのか、などといつものようにとんちんかんな事を聞いてきた。
あまりの事に舞は真剣にイーアに問い詰め始めた。
舞は事細かくイーアの生まれた場所、今まで住んでいた国、通った学校の様子、両親の事などをいろいろと訊問調に聞き始めた。
舞に徹底的に質問されて、イーアは答えられなくなり、とうとう泣きだした。そして、下を向いたまま、か細い声でぽつりと言った。
「私、宇宙人、、、、」
拷問でもうけているような苦しそうな、悲しそうな声だった。
「宇宙人?」二人は驚いた。
イーアはどこか絶対おかしいと質問した舞自身が呆然とした表情になった。
イーアの告白は本当だった。イーアは二人に自分の星のこと、宇宙船の事などをぽつりぽつりと話し始めた
二人とも何か言おうとしたが、胸が押さえつけられたような気持ちになって声が出なかった。
『宇宙人か、、、、』
優一と舞はじっとイーアの顔を見た。イーアはとても悲しそうな、不安そうな顔で二人をじっと見ている。
イーアのそういった表情を見た二人は、イーアが宇宙人というのは本当なんだなと確信した。
そうだとすると今までのイーアの会話、しぐさ、行動などがすべて説明がつく。
「本当なのです。私、地球に住みたくて宇宙船から逃げて来たのです。この美しい地球で住んでみたかったのです」
イーアはすがるような眼をして二人に説明した。
宇宙船が深夜、軽井沢に近い山の頂上に着陸して近辺を調査している時に、森の中へ逃げ出したのだと言った。
そして、黙っている二人に、脱出してから森の中を走り続け小さな泉で夜を過ごし、次の日の昼頃優一に出会ったのだと話した。
イーアは何も言わす相変わらず黙ってじっと自分を見ている二人に不安を感じた。イーアはまるで何か悪い事でもしたかのように、小さくなって二人をじっと見つめた。
『もしかしたら、政府や役所などに通報されて捕まってしまうのかな? 政府の人達に連れて行かれたら、牢獄のような所に一生閉じこめられるのかな? 研究材料にされるのかな?』
二人が完全に沈黙しているので、イーアはますます不安になってきた。心臓がドキドキと大きな音をたて始めた。
優一と舞の二人はじっとイーアの顔を見続けている。何も言わない。
イーアは息が止まりそうになった。
「お願いします。優一、舞、どうか私を捕まえないで下さい」
イーアは一生懸命頭を下げて二人に頼んだ。涙が出て来た。
「優一、舞、お願いよ。私を政府に連れて行かないで。私は地球に何も危害を加える事はないのよ。地球で住みたいだけなのよ。このままずっとここに置いて欲しいのよ」
イーアは頭を下げて頼んだ。
優一と舞は顔を見合わせた。何か言おうとするがどうしても言葉が出ない。
「でも、優一と舞に迷惑がかかるようなら、ここを出て行きます。そして、森へ行きそこで生活します。ですから、政府には教えないで下さい。お願いよ」
イーアの声が涙声になってきた。涙が溢れてきた。
「な、何言ってんのよ、イーア。私達、友達よ。いや、家族同然よ。大切なイーアを政府や警察になんか連れて行く訳、ないじゃない」
舞がやっとのおもいで声を出した。言葉がうまく出ない。
続いて優一もやっとイーアに声をかける事が出来た。「そうだよ。僕たちはイーアの友達だよ。」
優一は安心しろよと優しく言った。
二人の言葉を聞いてイーアはほっとした。同時に大粒の涙がぼろぼろと溢れてきた。
「安心してね。私達は永久にイーアを守るよ」舞がイーアの肩に手を置いて大丈夫だよと力強く言った。
「ありがとう。優一も舞も本当に優しいね」イーアは真剣な顔をして二人にお礼を言った。
「僕達だけじゃないさ。舞のおばあちゃんや家族もみんなイーアを守ってくれるよ。僕の友達だってみんなイーアの事を守るさ」優一は力強く言った。
イーアは優一をとても頼もしく感じた。
二人はイーアにイーアの星の事や宇宙の事、宇宙船の事などを聞いた。
しかし、まるで頭に入らない。二人とも頭が混乱していて、ただ淡々と説明するイーアの顔をじっと見るだけだった。
「どこの星から来たの?」
( つづく )
2001年12月20日掲載。
※この「森の中の宇宙人」はそのうちパソコンで手作り本にします。テレビ・ドラマなどになればいいですね。楽しい夢です。
◆12月24日。 「森の中の宇宙人」の続きです。
舞が聞くとイーアは軽く微笑んだ。当ててご覧なさいと言うふうだった。
「1億光年の遠くから?」優一がとんでもない距離を適当に言うと、イーアは「もっとよ」とあっさりと言った。
「10億光年?」舞が真剣な顔をして聞くと、イーアは「そう」と事もなげに返事した。
「10億光年と言ったって、舞はいったい何才? 18じゃないの?」舞はそれはおかしいよと言った。
「18よ。優一や舞と同じよ」さらに混乱が深まっていく二人にイーアはゆっくりと言った。
「分かったわ。光速で航行するんだよね。光速で航行すると、年を取らないとか、年が逆に若くなるとかアインシュタインか誰かが言っていたよ。イーアは本当は10億才なんだ」舞が、マンガかテレビで覚えた事をちょっと得意そうにイーアに言った。
イーアは舞の顔を見ながらとてもおかしそうに笑った。
笑うととてもあどけない表情になる。
「光速で航行すると確かにそうなるけど、今はどこの星も光速航行や光速越え航行は使わないわ。私はちゃんと18才よ。10億才のおばあちゃんではありません。10億才だと舞のおばあちゃんよりも、もっともっとおばあちゃんになります」3人は同時に笑った。
イーアは少し真面目な顔をして2人に光速航行とか宇宙の航行の方法について簡単に話した。
淡々と話すイーアの話を聞いていると、優一と舞の二人は専門の科学者から講義を受けているような気分になってきた。
「光速航行を今は使わないって、光速よりも早く飛べる方法が有るの?」優一はとにかく質問をした。
猛スピードで走るトラックの後ろの荷台の端に両手でやっとしがみついていて、今にも振り落とされてしまいそうなそんな気分だ。
「宇宙の空間移動航行よ」イーアは簡単に説明し始めた。イーアは出来るだけ易しい言葉を選びながら2人に説明し始めた。
やさしい言葉を使うのは、2人に専門的な言葉や用語を使っても全然理解されないからである。
また、地球にはそういった宇宙航行の用語に対する言葉がまだ無いので、同じ意味の用語を使ってうまく話すという事が出来ない。
それと、実はイーア自身もそういった航行の学問的な原理を完全に理解していない。
イーアがそう言うと、「なーんだ。少し安心した。俺、イーアがすごい科学者に見えてきて困ったよ」優一がほっとした顔で頭をかいた。
また3人は大爆笑をした。
「そうよ、私もよ。もう、正座して聞かなきゃいけないかなって思っちゃったわよ」優一と舞がまた笑うと、イーアは照れた顔をした。
イーアは宇宙空間移動航行について話を続けた。
宇宙はいつも非常に速い速度で膨張している、同時にいろいろな方向へも移動している。さらに宇宙空間は大きくねじれたり歪んでいる。
また波のようにうねっている。100億光年の場所が歪みやうねりによって、1日光年、あるいはすぐそこに来る。
そのうねりの動きをコンピューターで計算し、近づいて来たうねりの空間内に入り込み、うねりが再び元の1億光年、100億光年の位置へと戻って行く動きに乗って一瞬のうちに1億光年、100億光年と移動して行く。
光速で進むよりもうねりに乗って航行する方が早い。宇宙のうねりなどに乗って移動する限り光速超えの法則の影響を受けない。
また、宇宙には空白宇宙、不存在空間という不思議な空間が無数に存在する。この空間は、文字どおり空間が存在しない。距離で10億光年有っても、この空間の中に入ると空間が無いので、距離がゼロとなる。
これは2次元法則ではなく非三次元法則である。
簡単に言うと、一枚の写真が有り、その写真の中の手前に人が居て、同じ写真面のはるか後方の遠くに山が写っている。
普通の世界である三次元の法則では、山まで通常の方法でその距離を進まねばならない。そのために必要な時間がかかる。100キロ先の山へ行くのに、100キロ分の時間がかかる。
ところが、この写真という2次元の世界においては、人と山との距離が存在しない。
写真の中の人の位置から後ろの山の位置まで行くのに、距離も時間もゼロである。
今、写真の人の上に宇宙船が有り、そこから少し左右へ移動すると、写真上で宇宙船は山の上に来る。
三次元なら、その位置から山まで100キロだが、距離が存在しないと、宇宙船から山までは、距離はゼロである。こういった事である。
つまり、写真で人の上から山の上へ移動すればもう山に着くのと同じように、実際の航行でも目的地に宇宙船の向きを合わせればいいのである。これが空間不存在宇宙における非三次元法則だ。
これにより、100億光年の遠くへでも、一瞬のうちに移動できるのである。
100億光年先の目的の星の正面に位置を取りこの空間の入り口に入りさえすれば、その瞬間にもうそこは出口なのである。目的の星の前に着いているのである。
100億光年の空間をゼロ秒で通り過ぎる事が出来る。
やはりこの不存在空間の位置を知り、その中を航行すれば100億光年の距離も一瞬である。
こうして、イーア達は光速を超える速度で移動しなくても、広大な宇宙を短時間で航行しているのである。
殆ど、時速1000キロを越えない速度で一ヶ月のうちに、宇宙の端から端まで航行してしまうのである。
また時間が逆に進んでいる空間も、この広大な宇宙には何か所か存在する。
その空間では、すべての時間や物質の現象が逆に進行する。
異常な空間である。この空間内部の距離・空間と時間と運動と物質のの法則については、まだ完璧に解明されていない。イーアにも難しすぎて良く分からない。
イーアは宇宙航行の方法などについて、二人にほんの少しだけ話した。
気が付くともう3時間もたっている。夜の8時近くだ。
「へえー、、、」イーアから宇宙空間の不思議な仕組みや現象をいろいろと聞いて二人は気が抜けたような声を出した。
二人ともすっかり疲れてしまった。
「優ちゃん、舞、イーアちゃん、ご飯食べないといけないよ」おばあちゃんが3人を呼びに来た。
下へ降りるともう皆食べている。お父さんとおじいちゃんはビールを飲んでいてもう顔が赤い。
みんなはイーアに外国の事などを聞いた。聞かれた事をイーアは詳しく答えていく。
舞の弟は、各国の言葉を質問した。イーアはすらすらと答えた。
優一にはフランス語などの外国語はさっぱり分からなかったが、イーアのしゃべり方は滑らかでわりと綺麗な発音だった。
「すごい、すごい!」舞の弟は感心のしぱなっしだ。
「当たり前よ。イーアちゃんは頭がいいもの。それにとても一生懸命詳しく聞いて、勉強するからすぐ何でも覚えてしまうのよ。本当にイーアちゃんは偉いわよ」おばあちゃんはイーアは天才だと何度も褒めた。
イーアは照れて少し顔を赤くしたが、ちょっと嬉しそうだった。
「本当にそうね。イーアちゃんは偉いわねえ」お母さんも大きくうなずきながらイーアを褒めた。そして、舞と舞の弟の顔をじっと見つめた。
「えっ、何で僕の方を見る訳?」舞の弟が母に抗議した。
優一もみんなも大笑いした。イーアはあまり意味が分からず不思議そうな顔をして、舞の弟や母の顔を見比べた。
それを見てまたみんな爆笑した。
次の日も優一と舞はイーアから宇宙の事を聞いた。
朝寝坊の優一が、珍しく早起きして舞の家に午前中に来た。
自転車を飛ばしながらやって来る優一を舞とイーアは庭から見つけた。
「おい、県大会の日も朝寝坊した優一がどうした事だ」舞がけらけら笑って優一をからかった。
イーアはよく意味が分からなかったが2人と一緒になって笑った。
広い1階の居間で二人はイーアに昨日の続きを聞き始めた。
「イーアの星ってどんな星なの?」優一も舞も秘密の宝物の箱を開けるような気分で聞いた。
「私の星はね、」イーアは少し目を閉じた。そして、自分の星の事を懐かしそうに思い出しながら話し始めた。
2001年12月24日 ( 続く )
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◆ 2001年12月29日。「森の中の宇宙人」の続きです。
「小さい星よ。直径が地球の半分ぐらいよ」地球ぐらいの大きさが有るといいのに、地球が羨ましいと言った。
「地球に似てるの?」舞が一瞬砂漠のような星を思い浮かべて聞いた。
「そうね、だいたい似ているよ。海が無いのよ。その代わり大きな湖がいくつも有るの。それが海といえば海だけど、塩分が全然無いの。だから地球の海のように湖の中の生物は豊富じゃないの。山もあまり高くないわ。なだらかな高原が多いの。海と山を除けばだいたい地球と同じよ」それで海や高い山の有る星を見ると感動してしまうと海に憧れる理由を説明した。
「へえー、花とか、草などの植物は?」やはり地球と同じ花が有るのかと舞は聞いた。
「有るけれど、でも地球みたいにきれいな花は多くないわ。」とても地球の花の美しさにはかなわないわとイーアは言った。
「科学は発達しているよね。宇宙船で地球に来たり、宇宙を駆け巡っているんだもの」宇宙船でほかの星へ行ったりする星はいったいどれくらい科学が進んでいるのだろうかと優一は興奮しながら尋ねた。
「地球より1000年は進んでいるんじゃないの? 国中を小型の空飛ぶ乗り物で動き回っているのでしょう? コンピューターなんかすごいんでしょう?」舞はイーアの星の高度な文明について聞いた。
「文明、科学は地球よりも進んでいるようよ。でも、科学が進んでいるからといって立派な星という訳ではないわ」イーアは自慢していると思われたり、地球が遅れている星だといった言い方にならないように慎重に言葉を選んだ。
文明、科学は、地球よりも200年ぐらい進んでいる。
当然、機械関係は地球では発明されていない物が多く有る。宇宙工学は当然だが、医学、生命学も進んでいる。
政治や社会の制度も進んでいるようだ。1000年ぐらい前から民主主義が行われている。
戦争は、500年ほど前になくなった。
イーアの星の人は、イーアを見れば分かるように殆ど地球人と同じである。まず区別が付かない。
強いて言えば少しほっそりしている。勿論、どう見てもほっそりしているとは言えないような人も多くいる、らしい。
種族は3種族である。言語5種類である。星全体でも人口は1億人ほど。非常に少ない。
海の無い小さい星である。海の代わりに川と湖だけである。高い山が無い。500メートル以下の山というより、なだらかな高原である。それ以外はだいたい地球と似ている。塩分は岩塩から取っている。
ミネラルは地下水に非常に多く含まれている。
動物、植物もよく地球に似ている。生物の進化、文明の発達の仕方も不思議なほど地球と似ている。
しかし、これはどこの星もだいたい同じようなものである。
水、空気、酸素などの元素、日光、適度な気温、たんぱく質、ミネラル、栄養分、土、海、湖、、、などが有れば、結局どこの星でも生命体の誕生と生物の進化は同じようになってくる。
生物の進化がほぼ同じであれば、次は高等生物の誕生である。そして、文明が発達する。
発達の速度や特徴はそれぞれの星で違ってくるが、地球の生物、人類、文明の発達の様子と大きく違うという事はない。
SF小説やマンガに出てくるような、奇妙な怪獣のような宇宙人は存在しない。
「僕は宇宙人って人間と全然違う姿をしていると思っていたよ」
優一は小さい頃は宇宙人は、タコみたいだと思っていたと思わず言ってしまった。
「私もよ。宇宙人って映画に出てくるような変わった動物や怪獣みたいな姿をしていると思っていたよ」
舞も優一と似たような事をずけずけと言った。
イーアは別に怒りもせずにおかしそうに笑った。
「高等生物でそんな奇妙な生き物が居るわけないじゃない。」
どこの星でも映画やマンガに登場するような奇妙な宇宙人や摩訶不思議な植物は存在しない。
高等生物のいるような星はだいたい人々も動物、植物も地球と似ていると説明した。
それは地球で言えば、大昔、海の向こうの遥か彼方の遠くの国から来た、初めて見る異国の人が怪獣でも奇妙な生物でもなく、結局自分達と同じ人間だったという事と同様である。
「へえー、そんなもんなんだ、、、、」二人は感心したように頷いた。
2001年12月29日 ( 続く )
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◆2001年12月31日。 「森の中の宇宙人」の続きです。
「宇宙船から見た星は綺麗でしょう?」舞は聞いた。「とても美しいわ。でも、何年も見続けていると飽きるわ」
「贅沢だわ」宝石のようなきれいな星の中を進んで行くのに、飽きるなんてもったいないと舞は言った。
「それよりやはり地球よ。地球の花や、木はとても綺麗よ。鳥も見たけど可愛いよ。花や草、木は手に取ってさわれるからいいのよ。星はいくら美しくても手に取れないわ」イーアは地球の花はとても美しい、森や浜辺の風景も大変素晴らしいと何度も褒めた。
さらに、地球にはどこの星にもない素晴らしいものや出来事がたくさん有ると言った。
「へえー、そうなのか、、、」イーアからしきりと褒めてもらった二人はちょっといい気持ちになった。
「イーアはどれくらい宇宙船に乗っているの?」宇宙船の乗員になって宇宙を長い間旅するなんてすごいな、と優一は尊敬を込めて言った。
「ずいぶん長く乗っているよ」少し退屈そうに答えた。やはり何年も宇宙船の中にいると飽きるのだろう。
「星には帰らないの?」寂しいでしょうと舞は聞いた。
「時々燃料や食料の補給などで帰るのよ」永久に星には帰らない任務なのかと思ったらそうではないらしい。
「やはり星にずっと居たい?」宇宙船があまり楽しそうでないようなので、ずっと星に帰っていたいのかと舞は聞いた。
イーアはしばらく考えた後で短く答えた。
「宇宙船がいいわ。地球とかいろいろな星に行けるし。地球はいいわよ」ちぐはぐな返事をするイーアの表情はあまり明るくなかった。
「お茶、飲もうか?」舞が冷蔵庫から飲み物を出した。
舞は話題を変えて伊豆の話を始めた。
伊豆の伯父さんの居る所の海はとてもきれいだと説明した。
イーアは図鑑を広げてこれよりもきれい?と聞いた。
「その写真よりももっときれいだよ。泳ぐと最高だよ」世界で一番きれいな海だと優一は大げさに自慢した。
優一の説明を信じたイーアは楽しそうな顔をした。
「ね、優一も舞も泳げるの?」イーアが二人の顔を覗き込むように聞いてきた。
「泳げない人間なんか地球上にいないぞ」馬鹿な事を聞くんじゃないと優一は偉そうに言った。
「そうだよね、、、」イーアは恥ずかしそうに下を向いた。
「イーアは泳げないんだろう?」優一はからかった。
宇宙の話の時はすっかり小さくなっていたので、地球の事では少し威張らないといけないと優一は半分真剣に考えていた。
「何を威張ってんだか、、、」舞はイーアに、地球ではめだかだって泳ぐことは出来る、泳げる優一が天才でもなんでもないと慰めた。
イーアはそれを聞いて少しほっとしたが、今度は「私はめだかにも負けるのね」と下らない事を言い出した。
「はっきり言って勝てないな。イーアの星の学校ではプールは無かったの?」ひどい学校じゃないか、と優一は笑いながらからかった。
「プールは有りましたよ。でも、私は宇宙船乗員の授業を取ったからプールの時間が無くなったのよ。それで、泳ぎは出来ないのですよ」
「そうだよね、犬かきよりも宇宙船に乗る方が大切だものね」舞が優一の泳ぎ方だって華麗とは言えない、とイーアを慰めてくれた。
「大丈夫よ。すぐ泳げるようになるよ」伊豆に行ったら泳ぎ方を教えてあげると舞いは言った。
「ありがとう、舞は優しいね」イーアは喜んだ。
次の日、7月25日の朝三人は伊豆へ出発した。
朝、おばあちゃんが大きなおにぎりを沢山作ってくれた。のりがたっぷり巻いてある。
中にはイーアの大好きなおかかやたらこが入っている。
「うわあ、素敵。おばあちゃんのおにぎりは宇宙一よ」両手に一杯におにぎりを持ってイーアは飛び上がって喜んだ。
「宇宙一かい? すごいね」おばあちゃんも喜んだ。
「あっ、日本一か。おばあちゃん、日本一よ」イーアが言い直すと「いや、宇宙一でいいんじゃ。おばあちゃんのおにぎりは昔からうまかった。ほんとに宇宙一じゃ」おじいちゃんが何度も宇宙一と言った。
優一と舞も宇宙一と言おうかと思ったが、何となく言えずイーアの喜ぶ顔を見続けた。
いい天気だった。朝早く軽井沢を出発したので昼前には東京駅に着いた。踊り子号に乗り換えた。期待に胸を膨らましているイーア達三人を乗せて、列車は軽快に海へと向かって行った。
大磯あたりで、海を遠くに見たイーアは「海だ!」とアメリカ大陸でも発見したような声を出した。「広いなあ」と感動したままじっと水平線を見た。
「これが地球一広いという太平洋でしょう? 大きいね」と言いながら面積はどれくらいなの?と聞いてきた。
「申し訳ないけど、これは相模湾、、、、」優一はほかのお客が笑っているからもう少し小さな声で話せといった。さらに、あまり地球の事について人前で質問をしないようにと注意した。
イーアはそうだね、と言って照れ笑いした。舞は笑ったらイーアが可哀想だと思ったが、こらえきれず笑ってしまった。
踊り子号から伊豆急行の特別パノラマ列車に乗り換えた三人は喜んだ。特にイーアは大きく広い窓が非常に気に入った。
「優一、舞、海よ! ほら、青いね! 綺麗よ! 美しい!」小田原を過ぎ真鶴、熱海、伊東と間近に海を見たイーアは窓に顔をくっつけるようにして大声を上げた。目が輝いている。
「すごい。こんなに窓が広いと、海に手が届きそうだね。迫力満点」舞もまるでイーアのようにはしゃいだ。
伊東、熱川、河津を過ぎ下田へ着くまでイーアは声を上げて海を見続けた。
「あまり大きな声を出すなよ。海を見た事が無い山奥の人間かと思われるぜ」優一は小学校の遠足の引率の先生のような気分になった。
「私は海は見た事がありませんよ。それに軽井沢は山奥よ」イーアは平然と言った。
「山の中に有るけどハイセンスな都会だよ」位置の事を言ってるんじゃない、洗練されているかどうかが大切だ、軽井沢は日本有数の避暑地でハイセンスな町だと自慢した。
ほかの乗客に変な所から来たと思われないように、と注意した。
「そうよ。軽井沢は素晴らしい町よ。優一も舞も変ではないし。森は美しいし、川はきれいだし、でも海が無いのが残念よ」イーアは優一と話すよりも海を見続けた。
青く輝く海を見続けているうち三人はお腹がすいてきた。舞がバッグからおばあちゃんのおにぎりを出した。
美味しいおにぎりをほおばりながらイーアは海を見た。列車のすぐ下の岩場に荒く打ち寄せる白い波をため息を漏らしながら見続けた。
伊豆の美しい海岸線を最南端まで列車は進みやがて下田に着いた。
イーアは真っ先に降りると早く海へ行こうと二人の袖を引っ張った。
「行こう、行こう」舞もイーアも走り出した。
「ちょっと待てよ、荷物どうすんだよ」優一はイーアと舞の大きな荷物を持って二人の後を追いかけた。
下田港に着いたイーアは海を見て「素敵よ!」と大きな声を出した。
「来たぞー!」優一も大きな声を出した。
潮風が汗ばんだ三人の頬に気持ちよく吹いてくる。
「塩分のにおいがするよ」イーアのお得意が始まった。
「潮の香りって言ってくれよ。化学工場に来てるんじゃないんだぜ。ロマンも何も無いな」優一が大声で笑った。舞も笑った。
「潮の香りね。きれいな言い方だね」イーアは頭をかいて笑った。
三人は駅に戻りバスに乗って伯父さんの住む漁村へと向かった。
海岸線を走るバスの中でもイーアははしゃぎっぱなしだ。海岸の岩の面白い形には大喜びだ。
浜辺で遊んでいる子供を見て、「すごい、すごい」泳ぎ方が素晴らしいと褒めた。
「しーっ、」優一は少し静かにしろと言った。あれは泳いでいるのではなくて、歩いているだけだと小声で言った。ただ水が腰まで来ているだけだと説明した。
「あー、」イーアは気の抜けたような声を出して舞を見た。
三人とも大声で笑った。
バスはやっと伯父さんの村に着いた。
小さな漁村だが、浜辺は美しく、砂浜は白く真夏の陽に輝いている。
「すてき!」浜辺に立ち白く輝く砂浜と真っ青な海を見てイーアは感動した。
「優一君!」海岸の道路でおばさんが大きな声で呼んだ。
「こんちは、」優一はイーアを紹介した。舞は前におばさんが軽井沢に来た時に会っている。
「こんにちは、お久しぶりです」舞はおばあちゃんから預かったお土産を渡した。
「初めまして、私イーアと申します。よろしくお願いします」最近はイーアも地球に慣れてきて、挨拶も普通になってきた。「まあ、まあ、いらっしゃい。よろしく」おばさんは三人を家へと連れて行った。
家に着いて、お茶を飲んでいると伯父さんが帰って来た。
「お、来たな、優一君」陽に焼けた真っ黒な顔をした伯父さんが優一とがっしりと握手した。
真っ黒な顔をした伯父さんを見たイーアは大変驚いた顔をした。
「舞ちゃん、ようこそ。そちらの人がイーアさんだね」伯父さんは舞とイーアに、にこっと微笑んだ。
真っ黒い顔から真っ白な歯がこぼれた。イーアは不思議そうな顔をしながら挨拶をした。
「はじめまして、、、」イーアが丁寧に挨拶をすると伯父さんは喜んだ。
「いやあ、イーアさんは上品だ」民宿のお客さんが満足すると手をたたいた。
伯父さんはまた船で沖へ出るという。
「船に乗るのですか?」イーアは一緒に乗せて欲しいと頼んだ。
「いいよ」三人は伯父さんと一緒に浜辺の漁船に向かった。
「すごい」船の甲板に立ったイーアは珍しそうにあちこち歩き回った。
船が出るとイーアは喜んだ。
伯父さんの漁船はエンジンの音を大きく上げながら、すぐに沖に出た。港の中と違って、波が荒い。
船が上下に揺れる。時おり大きな波が来ると、横へもぐっと揺れる。
舞は、少し酔ってきた。操舵室に入り椅子に座って海を見た。
イーアは揺れる甲板の上を自由自在に歩き回っている。
「へえー、イーアさんは本当に船に乗るのが初めて?」伯父さんは驚いた。
「初めて船に乗ってこんなに揺れたら、みんなすぐ船に酔うのになあ」
上下に揺れる舳先に立って楽しそうに海を見ているイーアを見て、優一と舞は「危ないよ!」と言いながらも驚き感心した。
( 続く )
2001年12月31日掲載
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◆2002年1月1日。
「森の中の宇宙人」の続きです。
夕方おばさんに民宿のアルバイトの仕事の説明を受けてから、三人は玄関の入り口の応接間で雑談をしていた。
そこへ近所の優一の友達が5人やって来た。優一は小学校の時から伯父さん所によく来ているのでこの村に友達が多い。中に軽井沢に遊びに来た友達も二人居る。舞もその二人の顔は少し知っている。
みんなは今年は優一だけでなく、舞と一見ハーフのようなイーアがいるので照れくさそうだった。
優一はイーアが何かとんちんかんな事を言い出さないうちにみんなに紹介した。
「この人は、イーアっていうんだ。ずっと外国に行ってたから日本語とか日本の習慣に慣れていないんだ。海も初めてなんだ。いろいろ初歩的な事を聞いたりするかもしれないけど、そういう訳だから」
イーアは緊張した顔でみんなに挨拶をしたあと、優一の顔をチラッと見た。なかなかうまい言い方をするね、といった顔をしている。
舞も挨拶をしたあと「イーアは日本の事は分からないけど、フランスやイギリス、イタリアの事は詳しいよ。言葉も世界中の言葉がぺらぺらよ。気象学、物理も大得意よ」と、みんなにイーアの凄さを教えた。
「へエー。凄いなあ」みんなのイーアを見る目がたちまち変わってきた。
みんなの驚いた表情を見て、これでイーアが頓珍漢な事を言ったり、したりしてもみんなはイーアの事をからかわないだろうと舞は安心した。
夕食はおじさんが獲って来たばかりの魚がずらりと食卓に並んだ。
「うまい! やっぱり伯父さんの獲って来た魚は最高だよ」伊豆の新鮮な魚をどんどん腹に詰め込みながら優一は、伯父さんの漁の腕前と魚の新鮮さを褒めた。
「軽井沢じゃこんなに活きのいい魚は食えないだろう。どんどん食べなよ」
食卓の中央に魚の活き作りの大きな盛り合わせが有る。豪快だ。まだ魚のしっぽがぴくぴくと動いている。タコの刺身も動いている。
イーアの表情が止まった。どうやら活き作りというのは初めてらしい。r
イーアはお皿の端の方の焼き魚をつまんで食べた。
「イーアさん、遠慮しちゃ駄目だよ。どんどん食べなさい。こっちの大とろはさっき福ちゃんが持って来てくれたんだ。これもいける」伯父さんは焼き魚なんか食わず、刺身を食べなさいと大きな声ですすめた。
イーアはぴくぴく動く魚と伯父さんの大きな声、日焼けして真っ黒な顔と腕に圧倒されたようだ。
おばさんが刺身やカニ、エビなどをたくさんお皿に取ってイーアの前に置いてくれた。
イーアは優一と舞を見ながら少しずつ刺身を食べた。
「大変美味しいですわ」イーアはにこっと伯父さんに笑って、毎日こんなに魚をたくさん獲るのですか、と食卓の上の魚を見ながら聞いた。
「いやあ、これぐらいじゃないよ。毎日あの船にいっぱい獲るんだよ」獲った魚は市場で売り、民宿のお客さんにも出すのだと説明した。
「すごいですね」イーアは感心した様子でしきりと伯父さんの漁の腕前を褒めた。
舞がイーアのお皿を見ると、イーアは殆ど刺身を食べていない。舞は焼き魚とお肉を取ってあげた。
「イーアさんは外国が長いからやはりお肉がいいんですかね?」おばさんが尋ねた。
「いいえ、お魚はとても大好きです。とても伯父さんの魚は美味しいです」かなり気を使う性格のようである。動く刺身は初めて見たが、魚は好きな方だと言ったあと、たらこやおかかも大好きだと平然と言った。
「おかか?」伯父さんは一瞬箸を止めて、にこっと笑った。
「おかかは太平洋で取れる美味しい魚ですよね。舞のおばあちゃんに教えてもらいました」続けて舞のおばあちゃんの料理は素晴らしいと話した。
「イーアさんは日本の魚も大好きなんだね。良かった、良かった」伯父さんは大きく笑いながら優一の方を少し見た。
優一は何とも言えず舞の顔を見た。
「イーアはまだ日本の魚の名前をきちんと覚えてなくて、、、、」舞が困った顔をしながら説明した。
伯父さんはとりあえず笑ったあと、海や漁の話をした。海の話が始まるとイーアの顔がいきいきとしてきた。
海の深さとか海流の動き、海水の温度などについてイーアが質問したので、伯父さんは意外な顔をしたが、海流、黒潮の蛇行などについて説明した。
優一はイーアの方を見て、あまり細かい質問をするなと目で合図した。
イーアは優一の心配そうな顔を見てにこっと笑い、大丈夫よといった顔をして海の事についていろいろ聞いた。
次々と質問を続けるイーアに伯父さんはすっかり喜んで詳しく答えていった。
次の日、伯父さんは朝暗いうちから漁に出かけた。
優一達は民宿の手伝いをしたあと、昼過ぎから夕方まで休憩を貰った。
浜辺に行くと近所の優一の友達がいた。「泳ごうぜ」みんな海へ走った。
舞もイーアもみんなについて走った。
「熱い!」舞が振り向くとイーアが足をばたばたさせるようにしている。
優一がイーアの困ったような顔を見て、「ははは、」と笑ったが、イーアが砂浜に腰を落として泣き顔で「熱いよ、本当に」と足の裏を手で押さえ始めるとあわてて走って来た。
優一と舞は二人でイーアを抱えてビーチ・マットまで連れて来た。舞はすぐイーアの足の裏に水をかけた。
「アー、もう大丈夫」イーアは助かったといった顔でありがとうと言った。
「こんなに熱い砂や土は初めてよ。火山の上を歩いているようよ」イーアは足の裏をさすりながら砂がこんなに熱いとは思わなかったと驚いた声で言った。
そのあとイーアはビーチ・サンダルをしっかりと履いて、手には水を持ち波打ち際まで恐る恐る歩いて行った。近所の連中が少し笑っている。
渚に立ち、押し寄せて来る雪のように白い波が足に当たった瞬間、イーアはとても感動した声を出した。
「すてき!」
次から次へときれいな波が足元に押し寄せて来るのをじっと見ながら、すごい、きれいだ、すてきだと何度も喜びの声を上げた。
「泳ごうよ」と舞がイーアの手をとった。イーアの顔に緊張が走った。
「大丈夫、大丈夫。ここは浅いから」舞はイーアの手をとって腰ぐらいの深さの所を歩き回った。
「イーア、これはまだ泳いでいるんじゃないからね」舞はからかった。
「はい、水が腰まで来ているだけですね」イーアは空を見て笑った。真夏の青い空がどこまでも広がっている。夏の光が痛いほど降りそそぐ。
「ほら、これ使えよ」優一が浮き袋を持って来た。
「ありがとう」イーアは浮き袋につかまりながら泳いだ。
「泳げたよ、舞」うれしそうに笑顔を見せた。
「うまいじゃない。すごい、すごい」舞は喜んでイーアの浮き袋を引っ張って歩いた。
「すごい、泳げたよ」優一は手を叩いて褒めた。
舞はイーアに泳ぎ方を教え始めた。浮き袋は横にどけた。平泳ぎというより犬かきに近い泳ぎ方だが、わりと早くイーアは泳ぐことが出来た。
「本当に泳げたよ!」浮き袋を使わずに泳いでイーアはすごくうれしそうな顔をして二人に笑顔を見せた。
運動神経はいいようだ。
優一と舞は大きな拍手をした。
だが、顔に海水がかかると大騒ぎになる。「辛い、辛い」としかめっ面をする。
「海水が甘かったらどうするんだよ」優一は大笑いした。「塩分濃度がちょっとオーバーかな?」続けてからかった。
「そうよ、塩の水に入った事が無いから、本当に辛いよ」イーアは目が痛い痛いと困った顔をした。
辛いとか、しょっぱいとか言いながらイーアは楽しそうに泳ぎ続けた。優一は近所の連中と沖の方へ泳いで行った。
「すごいね、優一は」とイーアは感心した。舞はおぼつかない様子で泳ぐイーアのそばで一緒になって泳いだ。
ちょっと見た目には男勝りの感じのする舞だが、わりと優しくて気のいい所が有る。
イーアは3時間ほどするとかなり泳ぎが上手くなった。
( 続く )
2002年1月1日掲載
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◆2002年1月23日 「森の中の宇宙人」の続きです。
優一達は夜伯父さん達が寝たあと民宿の玄関兼応接間のテーブルで、シーツをたたんだりして軽い仕事をしながら小さな声で話しをした。
イーアはしきりと日焼けした肩や、腕が痛い痛いとつぶやいた。
「それなあに?」舞はテーブルの上のイーアの小型の機械を指差した。携帯式のコンピューターでしょう?と聞いた。
前から聞こう聞こうと思っていた事だ。高性能なんだろうな、と優一も聞いた。
イーアは軽くうなずいた。
「僕は最初、それ、携帯電話かと思っていたんだ」
「ごめんなさいね。携帯電話ばかり見てよそ見しながら話す変な人と思ったでしょう」イーアは優一が最初思っていた事を代わりに言って謝った。
「いや、そんな事はないよ」全然気にしていなかったよと優一は手を振った。
「迷惑そうな顔をしていたよ」イーアは優一に本当の事を言ってもいいのよ、と微笑みながら最初会った時の事を少し話した。舞が笑った。
「僕はイーアに謝らないといけないや」「私もよ」優一と舞はイーアに真剣に謝った。
「イーアが宇宙人と分からず、いろいろ笑ったり、変な女の娘だと思ったりしたんだ。失礼な事も言ったと思うけど本当にごめんよ」「私もよ。ごめんなさいね」二人とも真面目な顔をして少し頭を下げた。
「そんな事はないわ。優一も舞も本当にとても親切で嬉しかったよ」
やはり最初、地球の人、つまり優一に森の奥の泉で会った時は怖かった、と言った。
宇宙人と分かって攻撃されたりするのじゃないかと、とても緊張したと胸に手を当てながら話した。
「でも優一の優しそうな目を見て安心したよ。やっぱり地球は優しい星だと」そう言ってイーアはじっと優一の目を見つめた。
優一も少しイーアの目を見つめた。イーアの蒼い瞳を見ていると遠い宇宙に吸い込まれていくような気がした。
「な、僕の立派さは宇宙でも証明されたよ」優一は舞を見て自慢した。
「何言ってんだか。イーアは優一の事を何も立派だなんて言ってないじゃないの。イーアの美しさに驚いて普段のひどい自分を見失っていただけじゃないのさ。試合のたびにイエロー・カードばっかり貰うくせに。乱暴で、ラフプレーばかりで、いつも試合の後に相手の監督が抗議して来るじゃない」試合の時こそ立派にプレーをしなよと舞はからかった。
イーアはサッカーの事はあまり分からなかったが、優一と舞のいつも通りのやり取りを見て可笑しそうに笑った。舞も大声で笑った。優一は苦笑した。
話をしている間イーアはひりひりする手や背中を時々さすった。イーアにとって海で激しく日焼けをするというのは勿論初めての経験である。
イーアも気をつけて陽があまり当たらないようにヨット・パーカーを着てたが、それでも体中炎症を起こした。おまけに海水に初めて入ったので塩水の痛さで二重に痛かった。
肩や腕と言わず体中真っ赤だ。皮がむけてしまっている。
結局舞は夕方からイーアの体に薬を塗る係りとなってしまった。薬はイーアが持っている薬だった。
白い普通のクリームのような薬だが、よく効いた。はれがあまりひどくならない。
「舞、美しくなる薬を塗って貰いなよ」イーアの薬の効き目に感心した優一が半分本気で、イーアにいい薬を貰いなよ、と言った。
「何さ、それよりイーアは頭につける薬を持っているってよ、貰いなよ」舞は優一の頭にさっきの薬を付けようとした。
「よせよ」優一は自分の部屋へ逃げて行った。
もう夜の1時を回っている。舞とイーアも自分の部屋へと帰った。
布団に入ってからイーアは体中痛い痛いと泣いた。
次の日も優一達は昼過ぎに休憩をたっぷり貰って海で泳いだ。
イーアはかなり泳ぎが上手くなった。だが、海水が日焼けした皮膚にしみこんで痛くてしょうがないと辛そうに言った。
「じゃあ、泳ぐのやめて見てればいいじゃないか」と優一が言うと、でも、やはり泳いでいたいとイーアは泳ぎ続けた。
夜、舞に浴衣を着せてもらったイーアは大喜びした。
「着物だ、着物だ」と鏡を見て嬉しそうに眺め続けた。
「きれいだよ」と舞が褒めると、イーアは少し顔を赤くして喜んだ。
そこへ優一が来た。「それ、浴衣じゃないか」優一がからかうと、イーアはがっかりした。
「よけえな事を言うんじゃねえよ、」舞が思いやりが無いなあ、と優一の背中を叩いた。
「一応着物を着た宇宙人第1号だな」優一がイーアの前で小声で冷やかすと、イーアは「それは大変名誉ね」と却って喜んだ。
浴衣を着て喜ぶイーアは何故か本当の地球人、いや、日本人のように見えた。
『きれいだ、、、』舞と話しているイーアの横顔を見て優一は思った。
< 続く >
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◆2002年1月31日 「森の中の宇宙人」の続きです。
毎日夕食のあと、伯父さん達と海や軽井沢の話をしたりしてから、応接間や部屋であるいは浜辺を散歩しながら優一と舞はイーアに星の事や、宇宙の事を聞いた。
聞くたびにいろいろ新しい不思議な面白い話が出てくる。
イーアに宇宙の事などをいろいろ聞いているうちに、優一と舞はイーアがさらに優秀だという事が分かった。
星全体で高校生枠とはいえ宇宙船の乗員試験という難関の試験に合格したのだという。星全体の同学年で3人だけという。
イーアは別に何も言わないが、やはり宇宙船の乗員というのは優秀な人達ばかりのようだ。イーアの星でも重要で憧れの任務らしい。
宇宙船から一人だけで地球に来て、家族と一緒でなくて寂しくないか、みんな大変心配しているだろうと聞いた。
「大丈夫よ。寂しくないよ。地球が大好きよ。家族には地球に居るといっているから、みんな心配はしないよ」
そういった話になると、イーアは簡単な返事しかしない。
そんなものかなあと思ったが、深く聞こうとするとイーアは楽しそうにしないし暗い表情になるので聞くのも悪いかなと思ってしまう。
文明の進んだ宇宙人の家族とはそんなものかなあと思ったりする。いつかもっとそういった事を聞こうと思うのだが、なかなか聞けない。
少しでも聞こうとするとイーアは寂しそうな表情になる。そして、必ずすぐ優一や舞が喜びそうな話題に話を切り替えていく。
優一に言わせると、宇宙人のくせに地球の事を本当にいろいろ知っているイーアだが、殆ど百科事典少女である。
知識はそのつど携帯コンピューターで覚えていく。宇宙船にいる時から地球の事、日本の事も研究してきたのでよく知っている。
しかし、それは知識である。実際の使い方や感覚がぴんと来ない。手にとって使おうとするとうまくいかない。
会話ではどんどん話せるが、実際そのものを見た時はどうすればいいのか戸惑う。
「優れた評論家、百科事典博士だな」優一が言った。
優れた評論家とか博士とか言うので最初イーアは喜んだが、舞が優一に文句を言っているのを見て、どうやらからかわれていると分かって少し優一を睨んだ。
優一達は民宿の仕事が一段落するたびに休憩時間を沢山貰って海で泳ぎ続けた。
だいぶ泳げるようになったイーアは休むことなく泳ぎ続けた。水中眼鏡をつけて浅い岩場に潜り魚を追いかけた。
イーアは3分ぐらいは平気で潜れる。最初はイーアが水から出て来ないので、潜ったまま溺れたと思った優一と舞は真っ青になった。
あわてて潜って探すと、岩場の底の方ででゆらゆらと漂いながら小さな魚をじっと見ていた。
苦しくないかと聞くと「そんな事はない」とあっさりと言った。
「すごい」優一も舞も驚いた。
「どうしてかしら、、、、」イーアにも理由は分からないと言う。星の授業で潜り方の練習の時間などが有るわけではないと説明した。
「地球で海女(あま)さんとして生きていけるぜ」と優一はからかった。
「海女さんて?」イーアは舞を見た。
海の底に潜って貝や真珠を採る仕事だと舞が説明すると、「真珠・・・、それは美しい仕事よ」と喜んだ。
「地球に生まれたかったよ」イーアはだんご岩やヨットの上で青い海を見ながら何度も言った。「こんなにすてきな海が有るんだもの、最高よ」
そう言いながらイーアは遠く水平線や岬、真っ青な大空を見た。大空の遥か彼方にはイーアの星が有るはずだ。
優一と舞も一緒になって大空の彼方を見続けた。
強烈な夏の日差しにうたれる海辺の人々を救うかのように風が優しく吹いてくる。
イーアの細くきれいな髪が潮風にゆれる。
「地球は海が美しい星として宇宙でも昔から大変有名よ。地球の人達がその美しい海にそんなに関心を持たないのはもったいないよ」
イーアは地球の人達は美しい海に強い誇りを持ち、海を今より以上に大切にし、もっともっと海を楽しめばいいのにと言った。
海や高い山を除いて、丘陵、高原などの風景はイーアの星も地球もよく似ている。
全体的に景色は地球が美しい。
空も地球の方が青々としていてきれいだ。イーアの星の空はいつもどんよりと曇っている。青空というのは全く無い。
イーアは空というものはクリーム色か灰色が当たり前だと思っていた、と話した。
初めて地球を低空飛行した時、回りを見たら空が青いので大変驚いたという。
宇宙には地球と同じような星はかなり有るという。そして、それらの星の殆どに高等生物、つまり人間が住んでいるという。もちろんすべての星が地球よりも文明が進んでいるという訳ではないという。
地球の科学、文明は宇宙全体でも進んでいる方である、というよりもトップ・クラスであるとイーアは説明した。
「へー、地球も捨てたもんじゃないね」優一と舞は少しほっとした。
1月31日 ( つづく )
◇この「森の中の宇宙人」の物語は2001年6月25日に完成したものです。パソコンで本として印刷する予定です。このホーム・ページでは早く終わらせる為にかなり省略しています。本にした時はホーム・ページのように省略していないので相当長くなります。
伊東和雄
◇次回からも「森の中の宇宙人」の続きはここ、一番下になります。他の物語の掲載との兼ね合いです。
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◇ この小説の続きをご覧になる方はここへ来て下さい。
「Ctrlキー」とキー・ボード右上の「Endキー」を使って下さい。
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◇これからも物語、小説、童話を書いていきます。皆さん読みに来て下さいね。 ロバート・ランブン 伊東和雄
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◇フュージョン、ポップ音楽に興味のある方にホーム・ページを紹介いたします。
このホーム・ページはもう5、6年やっている、5万ヒットの人気ホーム・ページです。
◇下記のホーム・ページで、山崎さんという方の自作のオリジナル曲が20曲ほど演奏されています。オール・インストです。
効果音も自作のものが50曲ぐらい流れています。
◇これらの曲はメールで了承を取れば無料で使う事ができるそうです。
◇フュージョンに興味ある方は訪問してみてはいかがですか。確かバイク・ツーリングのエッセイなども有りました。
◇山崎さんのURLです。ホーム・ページのタイトル名は、
「ACTIVE SOUND STUDIO」です。
http://www.alpha-net.ne.jp/users/yamazaki/
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■ ここが最終行です。
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