Hさんの入院日記
  
  四月十二日       へ飛ぶ

 
入院生活も二ヶ月近くなると毎日が退屈でたまらない。
どうにかするためにこのHPを立ち上げることにした。文章だけのつまらないものになるか、少し凝って見辛いだけのものになるかどうかは現時点では想像もつかないができるだけ毎日更新したいと思う。
 ここで登場人物を紹介したいところだが、仮名にするか実名にするか少々迷ってしまうところである。どうせ実名にしても本人に迷惑がかかるようなことになるとも思えないし、仮名にしたとしても読んでる人にしてみたらいっこうに構わないことと思われるので、迷ってみたがその時々で適当にやっていこうと思う。 
 
 起床は八時ごろ、昨日のプロ野球は阪神vs巨人戦だった九回の同点劇に納得できない病院のファンたちも憤りを隠せないでいるようだ。
ペナントレースが始まってからというもの朝の喫煙所での会話は阪神タイガースの自称オーナーたちの評論で口火を切る。その次に海外で活躍する日本人大リーガーの話題で一段落すると、いつも顔を合わせる人
たちの身の回りの話が始まる。
 ガンがあちこちに転移しているYさんはいつもどおり周囲に悪態をつき始めた、病状をよく知る患者たちの間では余命六ヶ月という大方の予想をつけられた御仁である。この人の病状の経過は残酷で、すい臓・胃を摘出した後、退院の予定であったそうなのだが検査の結果肝臓にもガン細胞が発見されたそうだ。さすがにYさんもこの時は落ち込んだみたいで自分の生存の確率が6%だと周囲に強がって漏らしていた。その話を聞いた周囲の患者たちは勿論押し黙るしかすべがなく、見かねた別の患者Mさんが話題をすかさず変えるがしかしYさんは落ち込んだかと思うと、すぐさま態度を翻し周囲に悪態をさらにつき始めた。これを止めるのはもはや患者Mさんしかいない。
 Mさんという人物、この人は心臓・すい臓・腎臓・肝臓などの疾患があり、過去にはガンをも克服している猛者。このMさんとりあえずボロクソに言う人でガン患者を鬱に追い込む名人である。Yさんもすっかり意気消沈したようで、喫煙所をあとにして部屋に籠もったようである。