方程式




外観も然る事ながら、内装は更に素晴らしい家だった。いや。家というのも可笑しいものだ。コレは館。そう、城でも良い。まるで、御伽噺や創造の中のお金持ちを、そのままの形で作ったかのように。
ココに来る使用人は必ず、門で驚き、内装でたまげる。
 「あー」も「うー」も言わない。ただ息を呑む音だけが響く。
勿論、桐山和雄にはそんな事はどうでも良かったが。

 修学旅行と云う名のプログラムを終え、桐山和雄は自宅の書庫に篭もっていた。プログラムを終え、こうしてたった一人家に帰ってきた今日も…普段通りの日常を終えていた3日前も…どんな日でも、いつも思う。
【自分は一体何者なのか?】
 幼い頃の記憶を思い出し記憶の奥底を探る…自分の中のなにかが、どちらでもいいと言う。
目の前の穴だらけの死体を見て騒ぐ人間を見て、また思う…ソレも良いと思う。
泣き叫ぶのも良いのでは無いかと。
狂ってしまうのもいいのでは無いかと。
 何時だったか、誰かが言った。お前なら、このプログラムをひっくり返せる! だから、手伝ってくれないか?……それも、良いと思う。
けれど。泣き叫ぶ事にどんな意味が有るんだ?
プログラムをひっくり返す事にどんな意味が?
昨日のプログラム、最後の生存者が言った。片手の耳が吹き飛び、全身が焼け爛れ、それでも右手に握り締めたレミントンM31RSを杖にし、逃げようとした。
 ―半死半生の身体で一体何がしたいんだ?―
右手のトカレフTT33で両手を撃ち抜き、俺は聞いてみた。
 「俺は、生きたいんだ。ソレ以外…理由が有るか?」
「他人を知る前に自分を知れ…クソッタレ!」
 そう言って、死んだ。いや、正確には俺が眉間を撃ち抜いたのだが。

…他人を知る前に、自分を知れ…
それも良いと思う。だから、こうやって書庫に篭もり、調べて見る。桐山和雄と言う数式の答えはどの本に書かれているのか……
けれど、もう直ぐ。この書庫で本を読むことは無くなるのだが。



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