過去に読んだ小説の感想です。
こうしてみるとなんとなく自分の好みみたいのがでてる気がする。
感想が長いやつは基本的に気に入ってる作品かな。
![]()
新津 きよみ
・危険な恩人
福井 春敏
・川の深さは ・Twelve Y.O. ・亡国のイージス
藤原 伊織
・テロリストのパラソル ・ひまわりの祝祭
村上 春樹
・ノルウェイの森
村上 龍
・限りなく透明に近いブルー
村山 由佳
・天使の卵-エンジェルス・エッグ
船戸 与一
・緑の底の底
・黄色い蜃気楼
山崎 豊子
・沈まぬ太陽@アフリカ篇・上
「黒い家」 /
貴志 祐介 ( 文庫・1998年角川)
日本ホラー小説大賞大賞 受賞
<あらすじ>
京都の生命保険会社に勤める若槻
慎二はある日、顧客の家に呼び出され、その家の中で子供の自殺死体を発見してしまう。
その時の顧客の目をみて若槻は異常を感じ、さらに子供の志望保険金が請求される。他殺を確信した若槻は独自の調査を開始
する。警察も他殺を疑うが顧客・菰田
重徳にはアリバイがあったことからシロと断定。保険金も支払われることとなった。
しかし、その後も他殺を疑っていた若槻に信じられない恐怖が巻き起こる・・・・
<感想>
これは生命保険会社の内情が詳細に書き込まれていて、その上での保険金殺人ということなので妙にリアリティーを感じる。
著者が元
生命保険会社勤務というのも大きいのでしょう。何か実際にありえそうな話。終始怖くてたまらないってほどのもので
はないが、とても興味深い話でもある。だがしかし、最後の方はさすがに怖い。家族にさえ愛情を抱かず、爆発性・残虐性のあ
る性格。そして、生きたままの人を切り刻んで楽しむ犯人。そんな人間が真夜中に主人公の自宅にやってくる。それも合鍵を持
って。主人公はルームモニター機能(電話の)で外から部屋の様子を聞くと唸り声が。
「どこ、行きくさった」「さっさと、帰ってこんかい」「帰ってこい」「帰ってきやがったら」「なますにしたるわ・・・・!」
しだいに追い詰められていく主人公の様子もよくわかる。この辺は自分だったらパニくるんだろうなとか考えた。たぶん深夜
にでも読みふけってればもっと怖かったかもしれないけど、人が大勢いる電車の中で読んでたから。読む場所の雰囲気もや
はり大切でした。保険のことも書いてあるけどスラスラ読めるし、それがこの著者のうまいところなのでしょう。ホラーも結構イイね。
「クリムゾンの迷宮」 / 貴志 祐介 (文庫・1999年角川)
<あらすじ>
目覚めるとそこは見たこともない場所だった。自分がなぜそこにいるのかも思い出せない。その不思議な世界で40歳の失業
者・藤木
芳彦はおそらく自分と同じくしてそこに連れてこられた8人と出会う。傍らに置かれた携帯用ゲーム機には・・・
「ゲームは開始された。無事に迷宮を抜け出て、ゴールを果たした者は、約束通りの額の賞金を勝ち取って、地球に生
還することができる。」
そう表示されていた。かくして血で血を洗う凄惨なサバイバルが始ろうとしていた。
<感想>
これはハマった。はっきりいって○○○ロワイヤルだ!!と思ったがおもしろかったからOK。ちなみに怪物ホラーではなく、人間
の内面の恐ろしさを描いている(ホラー?)。化け物・怪物系の怖さよりもこっちのほうがゾッとする。怖さの種類の点では「黒い家」
と似てる。ホラーが見たいという人よりもサバイバルなのが見たいという人は買いでしょう。話の中ではグループで行動することに
なるが、やはり組む人は最重要らしい。それぞれ4種のアイテムの選択できるルートがある。各グループで取りに行き元の場所に
一度戻ってアイテムを平等に分配し、その後各グループ別行動とする。
[@サバイバルのためのアイテム A護身用のアイテム B食料 C情報]
選ぶとしたらどのルート?そして、どのルートに行った人間が一番恐ろしい?ゲーム機にでるダックビリー・プラティ君は言う。
「だけど、何といっても一番恐ろしいのは・・・・を取りにいったヤツらだ。警告しておこう。最初はいいが、後半はヤツらには絶対
に近づくな。なぜかって?悪いな、それはまだ教えられない。」
こういう何気ないところにもゾッとさせられる。書き出しからいきなり謎の場所に主人公がいるという設定だから最初からまったく
飽きさせない。けど、コレ読みながら飯食えないね。あっという間に読み終えてしまったが、おかげで寝不足気味になった。あえて
納得できないところといえばラスト。消化不良という言葉が最も似合う形の終わり方は残念でした。しかし、かなりのオススメ作で
あることは間違いない。貴志作品は個人的に気に入りました。次は「天使の囀り」あたりに手を出そうか・・・
「危険な恩人」 / 新津 きよみ ( 文庫・2000年角川晴樹事務所 )
<あらすじ(オビより)>
線路に落ちた娘・美希を助けてくれた、行きずりの美青年。堂本良子は、新聞記事がきっかけで、その男性・伊吹
渉と
再会した。売れない役者だという彼は、危険な魅力に満ちていた。その時、良子と伊吹のいる部屋をじっと見つめている
刑事がいた−。伊吹はその後、堂本家にうまく入り込み、美希ともすっかり仲良くなったが・・・。
<感想>
うーーん。サスペンス好きな人にはどうなんだろう。わりと単純な話な気がする。恩人という役でうまく堂本家に入り込んで
いくまではいいんだけど、その先がね。もう少し過激な内容のものにしてほしかった。全体をみてあまり刺激がないし、物足り
ないと感じた。平凡な家庭に忍び寄る危険と恐怖(少し)は描けていただけに残念。
「川の深さは」 /福井 晴敏 (単行本・2000年講談社)
<あらすじ(オビより)>
手負いの獣となって、追手から逃げてきた少年。傷だらけの体にグロック17(自動拳銃)。世界を敵に回して。
その瞳にかつての自分を見た警備員は、彼をかくまうことで底なしの川に引き込まれていった。少年を追う者たちは
やがてその姿を現し、風化しかけた地下鉄テロ事件の真相が封印されたこの国の亀裂とともに白日のもとに曝される−。
<感想>
読み始めから読者に登場人物に対して興味を持たせてくれるのでわりと前半はスイスイ読めた。逃げてきた少年とかくま
った警備員桃山の性格のギャップがいいし、徐々に桃山に感化されていく登場人物。ラストもいい終わり方をしてる。ただ
この作者の作品に出てくる登場人物って性格とか似すぎ。でもその辺を抜きにしてもこれは結構楽しめる作品だと思う。
「あなたの目の前に川が流れています。深さはどれくらいあるでしょう?
1.足首まで。 2.膝まで。 3.腰まで。 4.肩まで。」
この情熱度を表す心理テストが作中に出てくるけど、その答えがこの小説とその登場人物たちの魅力かな・・・。
「Twelve
Y.O.」 /福井
晴敏 (文庫・2001年講談社)
江戸川乱歩賞 受賞
<あらすじ>
電子兵器 「アポトーシスU」と「ウルマ」と呼ばれる兵器を使い、米国防総省を脅迫し沖縄から米海兵隊を撤退させた
トゥエルブ。そんな社会状況の中、自衛隊の手配師・平はかつて部隊に所属していたころの上官・東馬修一と再開する。その後
日本の非公式機関に身柄を拘束された平は東馬がトゥエルブだということを聞かされ、東馬をとめるために協力することになる。
様々な人間の思惑が入り乱れる中で、しだいにあきらかになっていく事件の真相と東馬の真の目的とは・・・・
<感想>
余計な部分が多いという何というか、読んでてあきてしまう部分が多い。っというかこれホントに乱歩賞?一応ミステリの範疇には
入るんだろうけど。ストーリー的にはいいんだけど登場人物にあんまり魅力がない。何よりも東馬の目的が幼稚なのにはがっかり
してしまった。この作者の描く悪者は何か最後が幼稚な気がする。ただ終盤でのある人物の意外な行動にはビックリ、全然気づ
かなかった。ド素人がいうのもなんだけど、まあ悪い作品ではないと思うし、それなりに楽しめるところもあると思う。
「亡国のイージス」 / 福井
晴敏 ( 文庫 上下巻・2002年講談社 )
日本推理作家協会賞 日本冒険小説協会大賞 大藪春彦賞 受賞
<あらすじ>
ミサイル防衛のために、あるいは自立のために改装し誕生したイージス・システムを搭載したミサイル護衛艦「いそかぜ」。
日本・アメリカ・北朝鮮(工作員)の策略の中、出航した「いそかぜ」には北朝鮮偵察局始まって以来の恐怖と評される
工作員ホ・ヨンファらが乗り込んでいた。最悪の兵器を携えて・・・・
洋上で突如反旗を翻し僚艦を沈め、戦争を忘れた国家に牙をむいた「いそかぜ」
「現在、本艦の全ミサイルの照準は東京首都圏内に設定されている。その弾頭は通常にあらず。」
しかし狂気が入り乱れる「いそかぜ」の中には艦を取り戻すために戦っている自衛隊員の姿があった。
<感想>
すごいっス!熱いよ、この小説は。トリプル受賞作だけのことはある。上下巻合計1000ページ以上の量をまったく感じさせない。
出だしはこの物語の核になる人物の背景がきちんと描かれているから心情が理解しやすい。登場人物は個性的でかなりシビ
レさせられた。文章もうまいんだろうけど、セリフが好きなったね。中盤からは突如展開が早くなり、艦内にひそんだ敵が誰なのか
ハラハラさせられる。あえて苦言を呈するならば、最期に幼稚な行動に走るんだよね。まあテロリストなんてみんなそんなもんか・・・。
ラストは評価が分かれるところだけどよかったと思う。
ところで「川の深さは」「Twelve
Y.O.」とこの「亡国のイージス」は話がつながっており三部作となっている。でも必ず刊行順に読む
必要はないと思うし、むしろ「亡国のイージス」を最初に読んでよかった。それぞれの作品で登場人物は違うんだけど、性格や雰
囲気がやたら似てるからいろいろとわかってしまうところがあるから。ともかくもハードボイルドあり、友情あり、何か人間らしさ(?)
が作品には溢れてる。熱い小説が読みたい人にはオススメ。日本の安全保障や自衛隊のあり方みたいな難しいことも考えさせ
られるし、護衛艦の設備や兵器のウンチクもかなり載ってるけど、文句ナシで今年一番の小説でしょう。(個人的にね)
「テロリストのパラソル」 / 藤原 伊織 ( 文庫・1998年講談社 )
江戸川乱歩賞 直木賞 受賞
<あらすじ>
アル中のバーテン島村
圭一は過去の爆破事件を隠し、友人・桑野との約束を守り20年以上もひっそりと暮らしていた。
ある日、新宿中央公園で爆弾テロに遭遇し、残してきた持ち物から自分の指紋が検出され、警察から追われることになる。
そして爆破事件の現場では桑野の体の一部も発見される。変な(?)ヤクザや昔の恋人の娘が次々と目の前を訪れ、次第
に事件に巻き込まれていく。かくして真犯人を探すことになった島村は過去の爆破事件との関わりと意外な真相を目の当
たりにすることになる。
<感想>
乱歩賞と直木賞の同一作品によるW受賞は史上初らしい。ということで読んでみると、これがけっこうおもしろい。主人公が
変わってて個性的っていうのかな。話自体はハードボイルドだが、昔の恋人の娘がいいアクセントになってて華をそえてる感じ。
でも島村にしろヤクザの浅井にしろ頭キレすぎ。そこがカッコイイのかもしれんが。島村は「吾兵衛」というバーをやってるが
つまみはホットドッグのみという変わった店。そのホットドッグをヤクザが褒める。
「なあ、マスター。おまえさん、商売のコツ知ってるな」 (なんか味のあるセリフだ)
ヤクザに褒められるホットドッグってどんなんだ?しかも単品のみで商売のコツって・・・
読み始めからいきなり爆弾が炸裂して読む人を飽きさせない。カッコイイ人が出てくるのが読みたい人にはいいと思う。
「緑の底の底」 / 船戸 与一 (文庫・1992年中央公論社)
<あらすじ(オビより)>
「白いインディオ」の噂に導かれ、獰猛な大山猫がまちうける南米の密林を、オリノコ河源流域へと遡る「ぼく」といわくありげ
な文化人類学者の一行。荒々しい欲望を剥き出しにする彼らの、真の目的とは何か。鬱蒼たる原生林の底で、聖なる大地を
汚された者たちの怒りの矢が放たれる-。
<感想>
この作者の作品のほとんどは冒険ものを描いているらしい。今回の舞台は南米はベネズエラの奥地。「白いインディオ」の存
在の有無や密林を案内してくれる若者のいわくありげな発言に、これは期待できそうだと思ったが。もっとジャングルでの生活
や調査の展開をもっと描いてくれたら個人的にはおもしろかったのではと思う。終盤でのひっくり返しはよかったのだけど・・・
読み終えてみれば、なんとなくチープな感じがしただけに残念。
「ノルウェイの森」 / 村上 春樹 (文庫・上下巻・1991年講談社)
<あらすじ(オビより)>
(上) 暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの
「ノルウェイの森」が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ20歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱していた。
−限りない喪失と再生を描き新境地を拓いた長編小説。
(下) あらゆる物事を深刻に考えすぎないようにすること、あらゆる物事と自分の間にしかるべき距離を置くこと−。
あたらしい大学生活はこうして始まった。自殺した親友キズキ、その恋人の直子、同級生の緑。等身大の人物を登場させ、心
の震えや感動、そして哀しみを淡々とせつないまでに描いた作品。
<感想>
この話は主人公・ワタナベの過去の回想。自殺した親友の恋人・直子との再会でワタナベは彼女に惹かれていくが、突然の
拒絶の後、精神を病んだ直子は遠い地に入院してしまう。その間に同級生・緑の存在がワタナベの中では大きくなっていく。
キズキの自殺により、すでに病んでいた直子とは正反対に緑には生きる強さを感じる。ワタナベはそのどちらでもない強さと
弱さをもった人間だと思う。超人・永沢さんやレイコさんといった人物も独特の世界を感じさせてくれる。
人の死によるえもいえない喪失感とかわいた悲しみを感じた。いろんな意味で感動できる小説。ちなみになぜ「ノルウェイの森」
というタイトルなのかはよくわからないが、ビートルズの「ノルウェイの森」の歌詞とこの小説の内容に関係あるらしい。
「限りなく透明に近いブルー」 / 村上 龍 (文庫・1978年講談社)
群像新人賞 芥川賞 受賞
<あらすじ(オビより)>
福生の米軍基地に近い原色の街。いわゆるハウスを舞台に、日常的に繰り返される麻薬とセックスの宴。陶酔を求めてうご
めく若者、黒人、女たちの、もろくて哀しいきずな。スキャンダラスに見える青春の、奥にひそむ深い亀裂を醒めた感性と誌的イ
メージでみごとに描く鮮烈な文学。
<感想>
舞台は1970年代東京都福生の米軍基地に近い街で主人公・リュウが感じたことが生々しく描かれている。冒頭からドラッグやら
乱交やらが書き連ねてあって正直うざったくもなったが、描写が生々しいだけに自分にとっては非現実的な世界だけどやたら現実
味があった。そこが村上龍のすごいところなのかもしれない。最初はこれが芥川賞なのか?と思ったけど。しかも23歳でこの作品
を書いたってのには驚いた。
あとがきに「リリーへの手紙」というのがある。(リリーは作中の人物)
「リリー、今どこにいるんだ?」
「結婚しててもいいからできたらもう一度だけ会いたいと俺は思っている。二人でもう一度、ケ・セラ・セラを歌いたいよ。こんな小説
を書いたからって、俺が変わっちゃってるだろうと思わないでくれ。俺はあの頃と変わってないから。」
リュウ
こんな感じのあとがきがあるがどんな意図で村上龍はこれを書いたんだろう?妙に感動させられた。
「天使の卵−エンジェルス・エッグ」 / 村山 由佳 (文庫・1996年集英社)
小説すばる新人賞 受賞
<あらすじ>
19歳の予備校生の僕・一本槍
歩太は電車の中で年上らしき女性に一目惚れ。そして、父親の入院する病院でその女性・五堂
春妃と再び出会う。彼女は8歳年上でなんと精神科医、しかもガールフレンド・夏姫の姉だった。春妃は暗い過去を持っていたが、
歩太と話していくうちに次第に癒されていく−。
<感想>
この作者の作品、「おいしいコーヒーの入れ方シリーズ」は読んだことがあるが、それと同じだと思って読むと最後に痛い目にあう。
この人がこんなん書くとは思わなかった(ちなみにこの作品はデビュー作らしい)。理解しやすい話(いかにも集英社)だし、ありがちで
普通の恋愛小説だけど理屈ぬきで、いい話だと思う。感動というよりも、凹む人の方が多いでしょう。特にラストの一行は、もう・・・。
久しぶりに泣かせてくれた一冊です。
「沈まぬ太陽@アフリカ篇・上」 / 山崎 豊子(文庫・2001年新潮社)
<あらすじ>
日本のナショナル・フラッグ・キャリアである国民航空の社員・恩地
元はケニアのナイロビ営業所での任についていた。彼は
もともとは将来エリートコースを歩むことを約束された人間だったが、信念をまげることができず、中近東からアフリカへと内規
を無視した流刑の日々に耐えていた。
最初の海外赴任先はパキスタン・カラチ。海外での任期は2年となっていたのだが・・・恩地はさらに中東の僻地に回される運
命にあった。その背後では会社の人事に絡み暗躍する人物がいた。
<感想>
これがホントだとしたら恐ろしい人事だ。この恩地
元のような己の信念を貫くような生き方をする人間は結局は損をするんだろ
うか?まあそれを気にくわないと思う人間も大勢いるでしょう。内容としてはひたすら現状と過去の経緯を交互に記述している感じ。
連作ということなので今回のアフリカ篇ではあまり魅せられるようなところはなかった。ただ今後、会社の人事に憎悪にも似た感情
を持った恩地が日本に帰り、何をするのかは期待できそうなころだと思う。