2002.9.21西武ライオンズパシフィックリーグ優勝ドキュメント

 

  

  2002年9月23日

  本当に二転三転した。順調にマジック2まで減らし、あとは歓喜の胴上げを待つばかりと思っていたらとんでもなかった。

  話は9月18日のファイターズ戦までさかのぼる。この日試合前の時点でライオンズは、ホークス、バファローズの両チームにマジック2を残すのみとなり、ライオンズが勝ち、マジック対象の両チームが負ければ、この日にも優勝が決定するという状況だった。

  ちょうど地元優勝の最後のチャンスということもあり、18日の胴上げを誰もが望んでいた。もちろん自力ではこの日の優勝は不可能だから、ホークス、バファローズの試合結果も気になるという忙しさだったが、選手、首脳陣、関係者、ファン一同、皆心は一つで試合を迎えた。

  3試合の中で始めに結果が見えたのがバファローズ・マリーンズ戦。大量失点を序盤から喫してバファローズの敗色濃厚。いけるかもしれない、と少し思う。ライオンズも先制されたもののあっさりと逆転し、勝てそうな雰囲気。残るはホークス・ブルーウェーブ戦。

  だが、そう簡単に優勝させるものかと、ホークスは意地を見せた。じわりじわりと得点し、ブルーウェーブに大差をつけて結局勝利を収める。この時点でこの日の優勝はなくなった。ライオンズも勝利したものの、ホークスにマジック1が残ったからである。これがまず、最初のつまづきだった。この日優勝が決まっていれば、何の問題もなかったのである。

  移動日を挟んで20日、ナイトゲームでマリーンズ戦。千葉マリンスタジアム。マジックは1だから、ライオンズが勝つか、ホークスが負ければ優勝が決まる。もちろんライオンズとしては勝って優勝を決めたい。絶対に今日は決まる。そう確信していた。

  今年のライオンズの勢いを見ればこの日に優勝が決まらないということは到底考えられなかったし、先発が今やエース級の活躍をしている後藤とミンチーということもあってここは勝たなければならなかった。だがここでもうまくいかない。

  千葉ロッテマリーンズの優勝を目前としたチームに対する粘り強さは有名だが、その伝統がここでも発揮されることとなった。こんなに強いチームだっただろうかと、真面目に思った。ホークスは自力で決めて下さいと言わんばかりに勝ちゲームを展開している。今日決めるためには何としてもライオンズが勝つしかなかった。だが、幾多の逆転ゲームを演じてきた2002年のライオンズ打線がこの日ばかりはまさに借りてきた猫、いや借りてきた獅子となってしまい、カブレラのソロホームランで一矢を報いたのみで試合は終わった。

  優勝はお預け、翌日以降となった。優勝は既に間違い無いのだから、優勝持ち越しになったこと自体は本来ならば特に大した問題はないのだが、全く違う方向から忍び寄るライバルの存在を、ライオンズファンは敏感に捉え始めていた。

  貴乃花がついに今場所出場し、日本中の話題をさらっていたのである。これはライオンズファンとしては運が悪すぎるといわざるを得ない。

  パシフィックリーグのチームにとっての最悪のパターンは、セントラルリーグのチーム、特にジャイアンツと優勝決定日が重なってしまうパターンだが、その他にもライバルはいる。芸能人だったり他のスポーツだったり、事件事故だったりする。ジャイアンツとは幸い、まだマジックに開きがあったため、よほどのことが無い限り衝突する危険はないと考えていた。そして懸念していた17日の小泉首相の訪朝も避けることに成功し、残る不安は突発的な大物芸能人の結婚等や、貴乃花のみに限られた。

  貴乃花に関しては初め、引退の心配をしていた。貴乃花引退とライオンズ優勝では、今の世間の雰囲気からしてライオンズがかなうはずがなく、それだけは勘弁してくれと貴乃花を相当応援していた。何しろ、貴乃花には92年に宮沢りえとの婚約騒動でライオンズ日本一直後のスポーツ紙一面を強奪されたという前例があるのだ。だからこそ不安で仕方が無かった。

  そんな心配はしかし杞憂で、貴乃花は勝ち進んだ。勝ち進みすぎた。恐ろしいことに、引退の可能性は消えたかわりに優勝の可能性が頭をもたげ始めた。まさかの展開に愕然となったのは言うまでもない。

  20日に優勝を決めることが出来なかったため、翌日の21日になんとしても決めなければ、22日日曜日に持ち越してしまうと貴乃花の千秋楽、悪ければ優勝と見事にかち合ってしまうという苦しい状況が眼前に突きつけられたのである。

  勝てばいい。勝てば問題はない。問題はないのだが・・・。消えない不安を抱えたまま、翌日のマリーンズ戦がデーゲームで始まった。

  初回いきなり許銘傑が2失点。目の前が真っ暗になる。何とか1点ずつ返してくれと願い続けた。だが、マリーンズは恐ろしく強かった。拙攻もあったが、結果として手も足も出なかった。ライオンズはついに、自力でこの日、優勝を決めることが出来なかった。

  ホークス戦がナイトゲームで予定されているため、その試合でホークスが破れればライオンズの優勝が決まるのだが、それだと胴上げもカウントダウンもない。優勝前の緊張感も何も無い。それはそれで最悪だが、明日になると貴乃花と重なる。ならば明後日までという可能性も思い付いたが現実的でなく、たとえ現実になって明後日まで持ち越しても、今度はジャイアンツと重なる可能性が出てきてしまったということで、どれを取っても最悪、優勝は間違い無いのに最悪な気分に襲われるという、貴重な体験を強いられる羽目になった。

  何もかもやる気を無くして、生きる気力さえなくしつつあったが、ナイトゲームのホークス戦を気にしないわけにはいかず、どういう展開になるか見守った。先発投手が斎藤とシールバックということで、ホークスの勝利が濃厚だと考えていた。そして明日胴上げ、一面は貴乃花・・・。考えるだけで嫌になった。既に貴乃花はこの日も勝利を収めて明日、武蔵丸と優勝をかけた一番を残すのみとなっていたのである。

  試合は予想に反して投手戦となり、序盤の1点をシールバックが守り抜いて9回ツーアウトまで来てしまった。信じられない思いだった。あと一人でライオンズ優勝・・・。文化放送と福岡の放送を同時に聞きながら目眩を禁じ得なかった。さらに携帯でヤフー掲示板のライオンズファンの様子などもチェックしながらその時を待った。

  ライオンズファンはほとんどがこの展開をどう捉えていいのかわからず、複雑な思いでホークス戦を見ていた。絶対に自力で決めたいという者、もう開き直って優勝を喜ぼうという者。どちらを取っても釈然としない。だが9回2アウトまでくれば開き直るしかあるまい、貴乃花と重ならないだけよかったさ、と思いはじめた直後、大道に同点ホームランが出た。

  伊原監督は苦笑、選手たちは爆笑、ファンは唖然である。もう優勝は今日決まるものと考えていたのに、明日までもち越しになる可能性が再び復活したわけである。状況は変わらないが、その劇的な展開には面白さを感じた。少しずつ楽しくなってきた。一体どうなるのだ。

  ファイターズ、ホークスともにチャンスはありながらも試合は延長12回まで進んだ。東京ドームのファイターズ主催試合であるから、ホークスが表。引き分けでもライオンズの優勝が決まるため、延長12回表が終われば試合の結果如何を問わずライオンズのパシフィックリーグ制が決定する。あとアウト3つ。ライオンズの試合ではない、ホークスの試合でのカウントダウン。まるでファイターズがライオンズであるかのような錯覚。わけがわからなかった。

  あっさりとホークスは2アウトを取られ、いよいよ優勝の時が近づいてきた。最後はあっけなく終わりそうだと思えばそこからヒットが出たりするという、本当に面白い試合だった。だが、それでも得点することは出来ず、ホークスの勝ちがなくなった時点で西武ライオンズのパシフィックリーグ制覇が決定した。

  決まり方としては最悪だと思ったが、そのあと、共同記者会見やビールかけ、テレビでのインタビューなどを見ているうちに気分は盛り上がり、十分に優勝の雰囲気を満喫することが出来たので結果的にはよかった。貴乃花と重なるよりは数倍いい。翌日のスポーツ紙もほとんどがライオンズ一面で、全紙購入、ファイルした。4年ぶりの幸せな瞬間だった。やはり私にとって、西武ライオンズが優勝する以上の幸福はない。

  もちろんまだ終わりではない。今年はもう一度、勝利の美酒に酔う予定である。今度こそは地元胴上げを達成したい。

 

 

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