入学式の朝


「遅刻するよ。早く早く。」

「うん...」


玄関で靴を履きながら部屋の方を振り返ると、紺色のジャケットにスカートのTGが無表情で鏡を眺めていました。その後ろでは車椅子に座った姫がTGの後ろ髪になにかリボンみたいなものを結わえていました。どうにもその後ろ髪の白いリボンが気に入らないらしく、朝から姫に不機嫌な態度をとっていましたが、結局姫に無理矢理つけられていました。


見たことのない他所行きの格好をして朝から慌ただしい様子のTGを見た小人たちは壁際にボーッと並んでその様子を傍観していました。

「じゃあ、行ってきますよ。なにかあったら小人を使って下さい。あんまり役に立たないけど。」

「そんなことないですよ。押してくれるし。」

「...じゃあ、行ってきますね。」


姫の座る車椅子が小人たちに押されて玄関までやってきました。TGは見送る姫に目を合わせずに靴を履き、無表情で玄関を出ました。




「すごいね、もう今日から1年生なんだよ。すごいね。給食とかあるんだよ。小学校、良いね。」

「うん。」

「ほら、あっちの子も今日入学なんじゃないの?友達発見。ランドセル背負って.....ランドセルは???」

「...さぁ?」


手を繋いで隣を歩くTGの背中には何もありませんでした。

ランドセル忘れた...


「.....初日から...時間ないしなぁ。急いで取りに帰ってくるから...小学校分かる?...一人で行ける?」

「.....」

「...う〜ん...あ。」


少し不機嫌な顔に戻ったTGはまっすぐ前を見たまま冷たい目をしていました。言いながらどうしようか迷いながらも家へ走ろうと振り向くと小人たちが遠くの方から3匹ランドセルを引きずりながらバタバタ走ってこっちにやってきていました。


小人たちは役に立っているという自覚でもあるのか、ニコニコしながらアスファルトにランドセルを思いっきりガリガリ引きずり、走り寄ってきて僕に向かってランドセルを抱え上げました。


「.....」

「.....」


先週買ったばかりの2万円の赤いランドセルが傷だらけになりました。

TGが泣き出しました。


なんでTGが泣いているのか理解できない小人たちが怒りだしてTGを叩きました。


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