サイモン博士と宇宙人

サイモン博士と宇宙人     


                 第  一  章


 早春のある日、東京の上空に無数のUFOが飛び交った。退去の警告を無視したた め、自衛隊が迎撃しようとして出撃したが、無敵のレーザー砲とバリアーの前に木っ端 微塵にされた。円盤から宇宙人が出てきた。人の形はしているが、頭のてっぺんから つま先まで、光るレオタードのようなもので体がすっぽり包まれれている。宇宙人は高 らかに宣言した。

「我々は宇宙で一番、詰碁が好きな宇宙人だ。我らより詰碁に弱い人間は全員、奴隷 になってもらう。明後日、午前九時に皇居前広場に一人、代表を連れてこい。難解な 詰碁を一題、出題する。解けなければ日本を征服する。正解すれば詰碁能力の高さ を評価して、おとなしく帰る。チャンスは一度きりだ。考慮時間は初手に十分間。応手 はこちらがする。以降、一手につき一分だ。TVカメラマン一人だけ、同行を許す。 繰り 返す・・・・・・・」

 これには日本全体が騒然となった。到来してきた宇宙人は「詰碁星人」と命名され、 緊急対策本部が官邸に設置された。大垣首相は直ちに閣議を開き、今後の対応を協 議した。

 佐々木外相が口火を切った。
「安保条約を結んでいるアメリカに援軍を頼んだら」

 斉藤防衛庁長官が反論した。
「馬鹿言え。あのUFOの強さを見たろう。我々とは科学力が桁違いだ。米軍の力をもっ てしても、歯が立つまい」

宇都宮文部科学相が同調する。
「やはり、ここは代表を一人送り込み詰碁を解いてもらうことです。正解すればいいん でしょう」

「そう、正解さえしてくれれば、それで万事解決です。一人の犠牲者も出さなくてすみま す」
 小滝官房長官のこの一言で閣議は収束した。

 閣議の間、大垣首相はずっと疑問を持っていた。「もし、解けなかったり、間違えたと きあるいは詰碁星人が約束を破ったときはどう対応するのか」の議論が出てしかるべ きなのだが・・・・しかし、議論したところで名案がでそうもないことから、首相は気づか ない振りをしたたまま、閣議を終了させてしまった。

 大垣首相は緊急に東京棋院と大阪棋院の理事長を呼ぶと、国家の危急を救うため に代表をひとり、話し合いのうえ推薦するよう要請した。


                              
     第    二   章




  翌日、東京の国際会議場で日本の全てのプロ棋士が勢揃いした。総勢五百名。こ のうえない壮観である。

 議長の東京棋院理事長が演壇に立って会議が始まった。
「皆様ご存知のとおり、この度の国家の大事、私共の双肩に懸かることになりました。 本日お集まりいただいた皆さんの中から、代表を一人選ぶ事になりました。自薦・他薦 を問わず忌憚のないご意見をお聞かせ下さい」

 二階の傍聴席のオブザーバーの中には、柴中博士、サイモン博士、ガーフィー博士 も陣取っていた。

 長老格の林田九段が口を開いた。
「ここはやはり、タイトルホルダーから代表を選ぶべきでしょう。高田本因坊か、堀池名 人あたりが適任だと思いますが・・・・・」
長老らしい無難な意見である。

 これに対し、大阪棋院の存在をこの機会にアピールしようと、藤村九段が反論した。
「いや、詰碁星人は詰碁を出題するのです。対局するんじゃありません。詰碁が得意 なことが重要です。我が大阪棋院が誇る『詰碁の神様』、前野九段が適任です」
 
 東京棋院で藤河九段の愛弟子の篠原七段がこれに反駁した。
「今おっしゃられた3人は、いわゆる長考派です。不適任だと思います。なぜなら今回 は制限時間があります。初手、すなわちヨミキリまでわずか10分しかありません。早 見えの棋士であることが第一条件です。 しかも、詰碁星人は、『我々は宇宙で一番詰 碁が好きだ』と言っています。あの科学力からみて、想像を絶する難解な――『発陽 論』を上回る、宇宙一難解な詰碁が出題されるにちがいありません。それを10分でヨ ミキるのはトッププロでも至難の業でしょう。それをやってのっける才能を持っている棋 士といえば、これはもう一人しかいません。藤河九段です」

 酒田九段がこれに異を唱えた。
「早見えなら、小竹九段もいますよ。MHK杯も五回優勝しています」

 意見が百家争鳴して、まとまらない。困った理事長は思案の末、その目を傍聴席に 向けた。
 「今度は一般のファンの方のご意見も聞いてみたいと思います。傍聴席の最前列の 一番通路側に座っていらっしゃる紺のブレザーを着た方、何かご意見がありましたら、 どうぞ」

 思いがけない突然の指名に、サイモン博士は言葉に詰まった。藤河九段を尊敬して いる(一部、不信感を持ってはいたが)サイモン博士としては、藤河九段の「無冠の帝 王」返上の、絶好の機会だと思った。2年半前の「世紀の助言大作戦」のことが、頭を かすめないではなかったが、ファンとしての願望が優先した。サイモン博士は、ゆっくり と立ち上がると発言した。

「相手は詰碁星人です。人間ではありません。いわば、詰碁の化け物です。こちらも人 間離れした選手で対抗するべきです。目には目を、歯には歯を、です。化け物には化 け物です。となれば、これはもう、藤河先生以外いないんじゃないでしょうか」
 おおっ、とどよめきが会場内に起こった。藤河九段は、(ほめられたのか?)と複雑 な表情をしている。

 この発言を境に、藤河九段を推す声があちらこちらから出てきた。議論を見守るう ち、サイモン博士に今度は後悔の念が出始めた。
――余計なことを言ったかも知れない――  
 あの「タイムマシン作戦」の悪夢が記憶によみがえってきたのである。
――もし本番で例のやつが出れば、日本は、日本国民は――
 恐怖がサイモン博士を包んだ。

 そんなサイモン博士の不安とは裏腹に、議論は次第に藤河九段が代表に選ばれる 方向へと進んでいった。やはり棋士の多くは、無冠といえども藤河九段のずば抜けた 才能には敬意を表していたのである。

「異論がないようでしたら、藤河九段に、代表の大役を引き受けていただきたいと思い ます。藤河九段、引き受けていただけますか」
 理事長が藤河九段の推挙を宣言した。

 藤河九段は、晴れ晴れとした表情で立ち上がると、
「ありがとうございます。棋士として、こんな名誉なことはありません。不肖藤河、身命 を賭けて我が国を救います」 堂々と頭を下げた。

 大きな拍手が巻き起こった。拍手をしながらも、サイモン博士は一抹の不安を禁じ得 なかった。



           第   三   章



 その日の夕方、大垣首相は緊急記者会見を開き、藤河九段を代表として送り込むと 発表した。
「・・・・・・藤河九段は、日本の棋士の中では抜群の才能があり、制限時間内に必ずや 正解手を打ち、我が日本国民を救ってくれるものと信じている」 と締めくくった。
 
 ここで、記者団代表から質問が飛んだ。
「万一、詰碁を制限時間内に解けなかったり、間違えたときの対策はどうなっています か」

 当然予想された質問だったのだが、不覚にも大垣首相は全く回答の準備をしていな かった。
――しまった――
 大垣首相は、いつも秘書官が書いた原稿を読むのに慣れていたため、用意していな い質問にアドリブで答えるのが苦手だった。
 しかし、このTV実況は全国民が注目している。「まだ対策は考えていません」などと 無責任な答弁は出来ない。
「え――・・・・・それにつきましては・・・・・・」 大垣首相はしどろもどろになった。
「その場合の対策につきましては・・・・・・」
――何とか、この場を切り抜けるんだ――
窮する余り、とんでもないでまかせが口をついて出た。

「実は、ノーベル賞学者・柴中博士の友人に、サイモン博士という天才学者がおりまし て、このたび、どんな難しい詰碁でも解いてしまう超小型ロボットの製作に成功しており ます。このロボットをサイモン博士に密かに持たせ、TVカメラマンとして藤河九段に同 行してもらいます。万一、藤河九段が解けなかったり、間違えそうになったときは詰碁 星人には判らないように藤河九段に目配せして、必ずや制限時間内に正解手を打つ よう、万全の処置を講じております」

 「ええ!」 自宅でのんびりビールを飲みながらTVを見ていたサイモン博士は、ひっく り返らんばかりに驚いた。
 そんな便利なロボットなど、あろうはずもない。首相とは前に「柴中博士ノーベル賞受 賞記念パーティー」で一度話をしたことがあるだけである。何を血迷ったのか。

「なるほど。それは頼もしい」 記者席から感心の声があがった。
 
 しかし、別の記者が鋭いツッコミを入れる。
「でも、そんな便利な機械があるなら、何も藤河九段を代表に選ばなくても、最初から サイモン博士を代表にすればよいのではないんですか。横から詰碁星人にわからない ように目配せするなんて、難しいでしょう。」
「そうだ、そのとおりだ」 記者席から同調の声があがった。

 不幸にも、大垣首相はこれらの意見に咄嗟に反論するだけの才覚がなかった。
「あっ、いえ・・・・・・そうですね・・・・・確かに・・・・・言われてみればそのとおりですね。 わかりました。このさい、サイモン博士を代表として送り込みましょう」
あとさきを考えない無責任なその場逃れの回答が口に出た。

「ええ!」  サイモン博士は驚愕のあまり、今度は腰を抜かさんばかりになった。

 記者席から「うんうん、」とうなづく声が起こった。
 TVの前のサイモン博士が愕然としているうちに、首相の記者会見は終了した。

 案の定、記者会見終了後官邸の秘書官から、「代表を引き受けて欲しい」、依頼の 電話がサイモン博士に入った。

「ばかな。私はアマチュア二段ですよ。詰碁星人の詰碁なんて解けるはずないじゃない ですか。この件は辞退します」

「でも、記者会見でああいう風に言ってしまった以上、もう覆せないんですよ。首相の立 場も考えてください。お願いします」

「何が立場ですか。あんな無責任なでまかせを言っておいて。日本の、日本国民が宇 宙人の奴隷になるかどうかの瀬戸際なんですよ。そんなことを言ってる場合じゃないで しょう」

「そう言わないで、たのみますよ。成功したら、藤河九段のサイン入り色紙を貰ってあ げますから。とにかく、頼みましたよ。明日の朝、午前9時、皇居前広場に来てくださ い」
 一方的に電話が切れた。否応なしにサイモン博士は代表として送り込まれることにな った。

 ――この自分に、日本の未来が、国民の運命がゆだねられた――
 
 藤河九段が代表に選ばれた時とは比べものにならない恐怖が、サイモン博士を襲っ た。
 しかし、簡単な初級詰碁でも解けない事が多い自分に、詰碁星人の出題する詰碁が 解けるとは思えなかった。しかも、初手までわずか10分の考慮時間しかないという。
 サイモン博士は、目の前が真っ暗になった。



  第   四   章



 運命の朝がやってきた。大勢の関係者やファンに励まされながら、サイモン博士は、 皇居前広場に立ち宇宙人が現れるのを待った。

 大垣首相がサイモン博士の手を握りしめる。
「あなたに全てを託します。日本国民を救ってください。お願いします」

(何だ、この男は。勝手なことばかり言って)サイモン博士は怒りで一杯になった。


 昨晩、官邸からの電話の後、サイモン博士は気も狂わんばかりになった。しかし、そ こに現れたのが、柴中博士とガーフィー博士だった。

「TVを見たよ。えらいことになったな。しかし、みんなの運命が掛かっている。ここは是 非とも、詰碁を正解して貰わねばな。サイモン、詰碁ロボットを見せてくれ」

「あれは大垣首相のでまかせだ。そんなものはないんだ」

 真相をサイモン博士から聞いた二人は仰天したが、ガーフィー博士はサイモン博士 に冷静なアドバイスをした。
「こんなときこそ、得意の発明で切り抜けるんだ!」

 柴中博士も同調した。
「こうなった以上、仕方がない。私たち発明の天才3人で力を合わせ、難局を切り抜け よう。祖国のために。さあ、急ごう。もう時間がない」

 日頃、犬猿の仲のはずのガーフィー博士までが、こうして力を貸してくれる。サイモン 博士は二人の友情に感動した。
「よし、がんばろう!」
 急きょ、3人は藤河28号の改良に取りかかった。

サイモン博士が、藤河28号のシステムとプラグラム改良をし、柴中博士が、大量の詰 碁の本のデータをスキャナで取り込んでいく。玄玄碁経、碁経衆妙、官子譜、発陽論、 死活妙機、玄覧など手に入る限りの詰碁集を取り込んだ。ガーフィー博士がハード部 分の改良を担当した。

 夜を徹しての作業の末、日が昇った頃、ようやく「自動詰碁回答ロボット、藤河29 号」が完成した。藤河29号は藤河28号を詰碁解読用に改良した超小型ロボットだ。 これを背中に忍ばせておく。ネクタイの結び目に仕込まれたマイクロカメラが詰碁の正 解手順をすばやく推理し、間違った所に着手しようとすると、指が石から離れる前にロ ボットが右手に持ったキリでサイモン博士の背中を突いて警告を出す仕組みになって いる。黒先か白先か分からないので、どちらの石でも反応するように設定した。
――果たして、うまくいくだろうか・・・・・・――

 試運転はうまくいったものの、いざ本番となると自信がなかった。まして、詰碁星人の 詰碁が、入力した詰碁を遙かに上回るレベルであれば、到底、対応出来ないとサイモ ン博士は思った。こうして充分な対策が出来ないまま、皇居前広場に立っている。

 見送りに来た柴中博士とガーフィー博士が、「落ち着いて打て」 と励ます。今や、日 本のメディア全てが、サイモン博士の一挙手一投足に注目している。MHKはもちろん、 民放テレビ、ラジオ局全てが特別番組を組んでいた。東京棋院の控室では、トッププロ が多数詰めかけ、TVの実況中継に釘付けになった。


 午前9時。 皇居前広場に円盤が一機、上空から舞い降りてきた。地上二〇メートル の辺りで静止すると、
「代表選手と同行カメラマンの者は右手を挙げろ」
 詰碁星人の声が響いた。

 サイモン博士とMHKのカメラマンは右手を静かに挙げた。

 円盤からするすると光の筒が下りてきて、二人を包んだ。二人は光の筒に包まれた まま、円盤に吸い込まれていった。

 二人は「ルーム」の中にいた。何の装飾もない白一色の壁。10畳ほどの広さの部屋 の中央に、碁盤と座布団、その横に碁笥が二つ置いてあった。詰碁星人の姿は見え ない。 

 MHKカメラマンのワイヤレスカメラで皇居前広場の臨時特設TV中継会場の大画面 に「ルーム」の様子が映しだされると、 広場に集まった大観衆から「おおっ」 とどよめ きが起きた。この場所であと幾ばくもなく、日本の運命が決まる。人々は固唾を呑んで サイモン博士を見守った。

 「用意はいいか。座布団に座れ」
ルームに、どこからか詰碁星人の感情のない声が響いた。サイモン博士は碁盤に近 づくと、座布団に座った。
 すると、碁笥の蓋がひとりでに宙に浮いた。白と黒の石がばらばらと浮き上がったか と思うと、自動的に石が碁盤に並べられた。

「それが問題だ。黒先白死、だ。初手までの制限時間は今から10分だ。」
  詰碁星人の声に、サイモン博士はゆっくりとうなずくと、座り直して碁盤をにらんだ。



         第   五   章


 MHKカメラマンがワイヤレスのTVカメラを盤上に向けた。この一瞬、日本全国の視 聴者が一斉に息を呑んでTV画面を見つめた。東京棋院の控室の大型TVにも、大勢 のプロ棋士が見守る中、問題が映しだされた。

「こ、この詰碁は!」 TV画面を見た棋士たちから、驚きの声が挙がった。
 
 TV画面に映しだされた詰碁は、なんと五目ナカデの問題だった。急所に黒石を一手 打てば、それで正解の詰碁だった。詰碁というには余りに易しい、囲碁を覚えてまもな い初心者でも分かる問題だった。

「何だ、この問題は!」 東京棋院控室では藤河九段が大声を出した。
「我々を馬鹿にしているのか! 詰碁星人が聞いて呆れる」

「全くだ。科学力と棋力は必ずしも一致しない、てことだな」
林田九段が同調した。

「でも、良かったじゃないですか。これなら、間違いようがない。どんな人でも正解だ。 詰碁ロボットの力を借りるまでもない。日本は安泰だ。よかった」
 拍子抜けして、緊張感がいっぺんにほぐれる。控室の面々は安心してTV画面を見つ めた。

 問題を一目見て、サイモン博士は拍子抜けすると同時に胸をなでおろした。
――とてつもなく易しい問題だ。五目ナカデの急所に一手打てば、それで終わりだ。 「藤河29号」の力を借りるまでもない。よかった。日本を救うことが出来た――

「一分経過。残り9分だ」 詰碁星人の感情のない声がルームに響いた。

 サイモン博士は、自信満々の手つきで、白石をポンと急所に打った。むろん藤河29 号は作動しない。

 その瞬間、詰碁星人の冷ややかな声がルームに響いた。
「我々は、『黒先白死』と言ったんだ。白石で活きる手を打ってどうする」

「あっ」 サイモン博士が小さく叫んだ。

 東京棋院の控室のプロ棋士、皇居前広場の大垣首相はもちろん、柴中博士・ガーフ ィー博士、大観衆、そしてTV の前に釘付けとなっていた日本全国の視聴者の表情が 一瞬にして凍りついた。

「勝負はここまでだな。やはり地球人には難しすぎたか・・・・・・」
 詰碁星人の冷たい声が響いた。

 その瞬間、サイモン博士とカメラマンは円盤から放り出され、気が付くと皇居前広場 にいた。
――しまった。ゆうべ一睡も出来なかったのがこたえた――
  サイモン博士は悔やんだが、全ては後の祭りだった。

「あ、悪夢だ・・・・・これは悪夢に違いない」
 プロ棋士達は頭を抱えて、うめいた。

「どうしよう・・・・・・」
 大垣首相は途方に暮れた。

「サイモン・・・・・」
 柴中博士、ガーフィー博士は言葉も出ない。

「ねぇママ、あのおじちゃん、人の話をよく聞いてなかったんだよね。だめだね」
 TVを見ていた、囲碁をおぼえたばかりの女児が母親に言った。
「そうよ。人の話はちゃんと聞かないとダメよ。ああ、日本はどうなるの」
 母親は女児を抱きしめた。



        第   六   章


 二週間がたった。日本の様子は依然と変わらない、平和な状態が続いている。
 あのとき、詰碁星人は
「黒石と白石の見分けも付かないような地球人は、奴隷にしたところで役に立たない」
一言言い残して宇宙に帰ってしまったのだ。

 一方、サイモン博士は以前にも増して自信満々の手つきで、喜々として碁を打ってい る。
――詰碁星人の星へいけば、俺は名人だ。碁の強さなど、相対的なものだ。地球では アマチュア二段の俺でも、 違う星へ行けばたちまち碁の神様だ――
  サイモン博士の、石を打つ指がしなっている。
――自分にもっと自信を持とう。自分の棋力に誇りを持とう――
パチリ。パチリ。
――詰碁星人の星では俺は名人なのだ――
 パシッ。サイモン博士の着手が音高く、碁会所に響く。

                                (終わり)


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回作にもご期待下さい。ご意見・ ご感想をお聞かせいただければ幸いです。  (中河原 潤)


                                                   


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