おしゃれ泥棒

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「そ、そのくらいは知っているよ、以前に大学で一緒に、よ、よく見たアレだろう。」

貴夫は言った。

が実は掲示板とE-Mailの区別がいまいちよく分かっていない。

大学のホームページには、イーメールで良く意見が載せられているし、

その掲示板から返事は送れた。だからイーメールの豪華版ぐらいの考えだった。

西野が続ける。

「普通、掲示板のメッセージは出したら、なるべく多くの人に見てもらう為に

出しっぱなしなんだよ。それでも精々、2〜3日で掲示板落ちするので

定期的にメッセージを載せていくんだ。そのサイトや番組の人気にもよるけど

24時間で、もう古い情報になる世界だからな。そして、

出したら落ちるまで消せない掲示板が多いよ。

どうせ消さなくても2〜3日で新しく書かれた情報で一杯になって押し出される

からね。つまり掲示板落ちさ。ニフ○ィのように[消せる掲示板]もあるけど、

たいていは、同じ名前で内容が白紙のものや、内容を書き換えたもので上書きをして

消したり変更したりするけど、痕跡まできれいに消すのは、こういう[消せない掲示板]

の類では難しいんだ。ところが、このメッセージを見つけた所っていうのが

問題なんだ。消せないはずの最たる所なんだよ、そこはね。

なのに5分も経たないで消えたんだ。記録を取っていたのは全くの偶然

みたいなものだった、妙だろ。」

西野が一気に喋ったので少し驚いた貴夫だったが気を取り直して喋り始めた。

「ヨシくん、つまり消えない筈のものが消えた、だから興味をもったんだね。」

「そのとおり、だから此奴は普通じゃ無い、と思ったんだよ。」

「ヨシくん、水を差すようで悪いんだけどさ、それって、なんか消す方法が

有るんじゃないの、それか、なんかのトラブルで消えた。

とかは、あり得ないのかな?」貴夫が遠慮がちに言った。

「貴夫ちゃん、俺が調べないで来たと思うか?

ちゃんと調べてるって、そのへんは、まず、その掲示板の管理人は俺の友人なんだ、

だから真っ先に携帯に電話した。

奴が言うには、消す方法は3通りだそうだ。

まず管理人である自分に連絡をとり、管理人が消す方法。

次に、プロバイダーが自分のページに不都合が有るとして閉め出す方法。

最も何の通告も無く、そんなことはあり得ないし、その場合は、

そのコーナーごと無くなる。

最後は、特殊なプログラムで自動的に掲示した文字が消えるように

細工されていた場合。

でも、この場合はウイルスと同じあつかいになるから彼のセキュリティを

突破しなければならない。

また、そんなプログラムが進入した場合、多くはそのページを

構成している他の部分に影響が出る。だから、調べれば分かるらしい。

当然、調べて貰ったが、これという痕跡は見あたらないらしい。

もっとも不特定多数の出入りするネットの世界では、何かがあって当然で、

その為のメンテナンスであり管理人だから、よほど大きなトラブルじゃない限り、

これがその痕跡だとは言えないらしい。

利用者の文字化け程度は、よく起こると言っていたよ。

ただ俺の記録が間違い無い以上、よほど凄い腕の持ち主が細工したのだろう、

と言っていた。しかも自分の身元に繋がるようなものは一切残さない高度技術者。

そんな奴が只のいたずらの為に、こんな事をするとは思えないだろ、そう思わないか?」

西野の返答に貴夫は目を丸くして言った。

「わ、わからん、あんたがなに言ってんのか、が俺には理解できましぇーん。」

「これっ!しぇーんってなんだ、しぇーんて、分かった事もあったろうが?」

西野はため息をつきコーヒーをすすった。

貴夫は、一昨日、新しく買い換えた携帯電話の、メールの使い方も分からない自分に

今の話しを解れ、と言う方が酷だと主張した。

これには、さすがに効果があったらしく西野は絶句していた。

そして貴夫は続けた。

「ヨシくん、それで俺にどうしろというの?」

西野は哀れむ様な眼差しで、もう一度ため息をついた。

「だからね!貴夫ちゃん。俺につき合って一緒に宝探しを

やってくれないかなー、ってこと。

得意分野だろ、お宝は千円かも知れないし、何かの実験だったてオチの可能性も

あるけど、その時はメシでもおごるからさ、どうだい。」

西野がおどけて言った。

「あははは。いいよ!勿論。久々にワクワクするよ。」

貴夫は気分が軽くなっている自分が嬉しかった。

同時にこれが西野流の励まし方なのだと理解してもいた。

「ところで貴夫ちゃん、パソコンは持ってるの?」

「持ってないよ、苦手なんだ、アレ!」

「そうか、張り合いの無い奴だ、持っていれば面白い事を色々してやろうと思ったのに」

「なにをしようとしたの?」

「赤外線撮影や合成映像のいたずらを送りつけようと思ったんだよ、刺激的だよ、これは」

「ふーん、よく分からないけど、一時、問題になったって聞いた。」

「それは、あの有名メーカーが発売した夜間撮影モード付きのデジタルビデオカメラだろ、

あるオプションを付けて昼間のプールなどで撮影すると水着が透けて中身が

写っちゃうやつ、回収騒ぎになったよね確か! 実はこれは同じ機能を取り付けてある

デジカメなんだよ!」

「えっ、俺のヌードを撮ったの・・・・」

「馬鹿! あれは昼間の濡れた水着がターゲットなんだ、でも、なんなら合成で

貴夫ちゃんのヤバイ写真でも作ろうか」

「うかうかと写真なんか撮られたらヤバイ時代だな!・ 冗談はさておいて始めようか」

「よし、まずはメッセージの確認からだ貴夫ちゃん、どう思う、これを見て。 

曜日と時間はまんま、やと思うけど・・・」

「土ノ夜>は土曜日の夜。 0ノトキ>は深夜0時。 新シイ街>は新宿。 

または新の文字の付く街か、新しく様変わりしつつ有る街。

もしくは、開発中の街といった感じかなー・・・・・・

渋谷なんかは、この何年かで違う街になっちゃった、と言うか価値観が

違っちゃったと言うか・・・」

西野は、だんだんと学生時代の明るい貴夫にもどりつつある感触に安心したように

相づちをうって聞いている。

「色と数字は何かを示す目印なんだろうけどねー・・とにかく

半径250メートルの中に目印なり、何か、が有るんだろうなー。

イシは、本当に石なのか、それとも石壁か石の階段になんか有るとか。

人の意志のことなのかな、コンクリートも石に入れるとなると

町中になっちゃうから小石と考えた方がいいのかもね。こんな感じかな。」

貴夫は、すらすらと言った。

その時、ウエイトレスが声をかけてきた。

「お客様、12時で閉店なのですが、よろしいですか。」

何がよろしいのか分からなかったが取りあえず貴夫は返事をした。

「あっ、もう出ますので。」

貴夫の言葉に何かを感じたのかウエイトレスは、

すまなそうに一礼してレジの方へ歩いていった。

                                      

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