全然知らなかったのだけど,アメリカの大学では,3月半ばに一週間の春休みがあるのだった。春休み開始の一週間前にそれを知り,それじゃあどこかに旅行でもしようかと思ったが,手頃な旅行先が思いつかないので,日本に帰ってみることにした。一ヶ月前に甥っ子が生まれたので,見に行くのにも丁度いい機会だった。
甥っ子は今,産後の妹と共に実家に滞在しているので,そちらに向わねばならない。Expedia.comで検索すると,ボストンのローガン空港からニューアークへ,そこから乗り換えて成田,更に成田から国内線で伊丹空港まで行くというチケットがあった。ちょうど同じ日に,バンコクに住んでいるもう一人の妹が,こちらは一歳になった姪を連れて帰国するというので,大阪で落ち合う事にした。
ESLクラスで帰国の旨を話すと,日本ファンのタイワニーのヤーティンに,資生堂の化粧品の購入を頼まれた。最初,ヤーティンが「シシドー,シシドー」と連呼するので何のことだか分からなかったのだが,漢字で書いてもらってやっと分かった。何でも,海外で流通しているシセイドーは,日本国内版シセイドーは成分が違っていて,効き目が落ちるんだそうだ。彼女は月に一度はニュージャージーの日本スーパーマーケットまで行って,日本のお菓子や食材やファッション雑誌を買っている。日本についてむちゃくちゃ詳しいのである。昼休み中に最新号の「CamCan」をめくりながら,「あれも,これも」と,いろいろと買い物を頼まれた。資生堂はアジア中で充分有名で,昼休み時間をオーバーして,アジアン女性達としばし日本製コスメについてワイワイと語り合う。他にも,コリアンのシンディからは「DHCのクレンジングオイル」を,講師のクリスからは「大阪のポストカード」を,キューバ人のハイミからは「日本の国旗」をリクエストされる。
旦那からは「目薬」を頼まれる。「スマイル40」ってやつ。アメリカの目薬は,あの「効くーっ!」っていう感覚が無くて物足りないんだそうだ。こういう,アメリカで意外と手に入らないものってのは,挙げていくと何だか面白い。今迄の所,こっちに無いなあ。。と思った物は,おいしい明太子,効く目薬,まともな日本酒,アジア人の髪をマトモに切ってくれる美容院,しっとり生クリームたっぷりのロールケーキ,人間ドックのメニューがある病院,それに温泉。今回の帰国で,これらの用事を一気に片付けようと決心する。
日本へのお土産は,近くのバッタ屋で山になって売られているビーフジャーキーを何パックか。だが,出発直前に「ジャーキーは日本の空港で即没収される」という噂を聞いて,あわてて他のお土産も買い足して,でも一応ためしにジャーキーも半分だけトランクに詰めて,初めての一時帰国の途に着いた。当日は
朝5時にアパートを出,7時発の飛行機に乗り,伊丹空港に着いたのは約24時間後である。ビーフジャーキーはちっとも没収されなかった。久しぶりの日本。。といっても,まだ半年なのに,何だか落ち着かない。「ああ,日本だな〜」と思ったのは,成田の待合ロビーで大相撲春場所の生中継を見た時だった。
大阪駅で,姪っ子を連れた妹と落ち合う。姪っ子とは渡米前にタイに遊びに行ったときに会った。当時は寝返りがやっとでハイハイもまだ出来なかったのが,半年後の今は,しっかと歩いている。はやいもんである。大阪からJRで実家へと向う。実家では,もちろん早速甥っ子と対面。もんのすごい久しぶりに,一家全メンバーが実家に集合となった。10年ぶりくらいだ。
一歳になった姪っ子は,可愛い盛りである。愛想の良い性格で,外出中にぐずっていても,他の人から「かわいいわね〜」とか話しかけられると,途端にニコーっと笑う。うちの姉妹は全員,どちらかというとマイペースでぼけーとしているタイプなので,この外ヅラの良さというかサービス精神は,恐らく妹の旦那さんの血を受け継いだかと思われる。
一方,生まれたばかりの甥っ子は,一日中泣くか,おっぱいを飲むか,眠るかしている。まだ外の世界に馴染んでいないような,ただ寝かせているだけでも落ち着かない様子だ。「あ〜イライラするっ!」という感じで,手足をじたばたさせている。ただ,帰国した当初は,まだ「何にも分からない」みたいな状態だったのが,一週間後には,目線をしっかと対象に向けるようになり,表情もかなり人間らしくなったのには驚いた。そんなこんなで,家に居る間はずーっと甥っ子と姪っ子の相手をして過ごした。
滞在中,妹と姪と共に,金沢の湯涌(ゆわく)温泉へ行った。金沢から車で30分ほど河を遡った山の合間にある。旅館数は少なく観る物もあまりないのだが,静かで鄙びた良い所だった。歴代加賀藩主の湯治場だったそうです。「秀峰閣」という旅館に一泊する。浴場はそれほど広くなく,露天風呂も無かったが,部屋数が少なくて静かで,雰囲気も良い。姪は初めての大浴場に大喜びで,何故か私が髪を洗っているのを見てやたらと受けていた。食事はいろいろと凝ったものが出てきて美味しかった。
湯涌温泉は気に入ったな〜。近いし,旅館も雰囲気悪くないし,何も無いけどかえってゆったりと過ごせる。客足が落ちて活気が無いとか言われてるけど,いいところなのでぜひたくさんの人に行ってほしい。金沢観光の足場としても使えるし。所々で工事をしていたのがちょっと気になったけど,観光客向けのへんてこな設備を作ろうとしているのかな?「鄙びた温泉地」としての雰囲気作りを是非お願いしたいです。
今回の帰国でのイベントらしいイベントはこの温泉行きくらいで,その他の日は,前述の用事を一つ一つつぶして過ぎていった。美容院へ行き,日帰り人間ドックへ行き,友人にも会いに行き,買い物をして。。。とやっていると,あっという間に一週間が過ぎてしまった。その間に,いろいろと地元のおいしいものを食べた。牡蛎,ハタハタの塩焼きと干物,ズワイガニ,イカと甘エビとフクラギの刺身。アメリカではフライものが売っていないので,コロッケも美味しかった。寿司屋にも2回行く。マサチューセッツでも充分に寿司は美味しいけど,エンガワや白エビといった,こちらでは見かけないネタを食べた。食べモンにばかり執心した気がするが,食べモンは重要である。何だかんだで米国ではストレスが溜まっていたようで,美味しいもの食べてしっかりリフレッシュできた。
帰りの荷物は,地酒を2本入れたせいで行きよりも重くなってしまった。皆へのお土産も詰め込んで,またまた長い旅程をトンボ帰り。久しぶりの日本は楽しかった。だが,これだけの短期間だと,時差ボケがようやく直った時点で帰る羽目になるので辛い。年を取るほど時差ボケが堪えるようになるようです。帰米後,翌日から授業があったのだが,眠いどころか,寒気や頭痛に襲われてしまい,結局3日ほど休んでしまった。
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