アテネオリンピック楽しかったですね。日本では相当盛り上がったのでしょうか。アメリカではNBC系列局が放映権を牛耳っていて,他の局ではあまり取り上げなかったので事前の盛り上がりには欠けたが,アメリカ選手がいろんな種目でメダルを取り出してから徐々に関心が高まっていった。ワタシも開会式の後はしばらく遠ざかっていたが,後半に入ってから時々観るようになった。
NBCの朝のニュース番組「Today」は,メインキャスターが全員アテネへ飛び,毎朝現地から生放送していた。キャスター達は,いつものスーツ姿ではなく,ポロシャツにスラックス,あるいはワンピースといったラフな格好にサングラス姿。表情も明るく,アテネで楽しんでまーす!という雰囲気たっぷりだった。「今日のギリシャ語!」なんてコーナーも設けて,半分バケーションのお祭り騒ぎ。
この番組では,放送局の周囲に一般人を集めて,キャスターが彼らとコミュニケーションしつつ進行するのだが,アテネでも,観戦に来たアメリカ人達を集めて全く同じようにやっていた。世界中どこへ行こうと自分流を通すところがアメリカらしくて笑える。
シリアスなニュースはほとんどうっちゃって,毎回,いろんな種目の選手を呼んでインタビューしたり,選手の休日の過ごし方をレポートしたり。インタビューといっても,全然堅苦しいものではなくて,
「何でこのスポーツを選んだの?」
「どうやってトレーニングしてるの?ちょっと見せてくれる?」(ここで練習の実演)
「このスポーツの魅力は何?」
「次の試合はいつ?」
「試合の様子は当チャンネルで明日放映されるよ。今日はどうもありがとう。グッド・ラック!」
というような調子である。キャスターも選手も,その種目の面白さを伝えることに主眼を置いている。選手側も物怖じせずに話す。一部の選手は,オリンピック開会前からコマーシャルにどんどん出て,受け答えも妙に物慣れていて,もうすっかりタレントである。今後の事をいろいろ考えているのだろうが,まあ,そういう人に限らず,気さくでサービス精神旺盛な選手が多い。
夜は毎日8時から,主にアメリカ人選手が活躍する種目に限ってだが,ダイジェスト版が放送される。こちらのキャスターはカチッとしたおじさん一人である。内容は硬派で,選手インタビューでも遠慮のない突っ込みを入れてくる。それも「目標はずばりメダルですか!?」みたいなアホな質問ではなく,
「得点計算のミスという事態が起こり,観客からもブーイングを浴びたが,あの時は何を考えていた?」
「この種目は今回初めてオリンピック種目に追加されたが,これがスポーツ界にどう影響を与えると思うか?」
といった,スポーツのあり方やオリンピック運営等を含めた,非常に幅広くかつ本質的な事項について聞いてくる。選手側も真剣に答えざるを得ない。また,IOC会長を呼んで,オリンピック運営に関するインタビューをしていたのには感心した。
朝の部も夜の部も,日本の報道よりずっと良いなあと思う。報道側の姿勢が客観的で対等で,選手と程好い距離感がある。報道内容も,メダルが取れるのか?の一点に絞られる事なく,硬軟取り混ぜて幅が広い。また,選手側も自己表現が上手である。「アメリカ国民の期待にこたえるように頑張ります」式の回答も無い。たまにアメリカ国旗を纏って「アメリカのために勝ったぜ!」みたいなパフォーマンスを見せる選手も居るが,愛国的演出で自己アピールしているだけという感じで,報道側はもっと醒めている。そういえば記者会見も観たこと無い。やってるのかもしれないけど,TVでは放送してない。
わたしはNHKアナウンサーの選手インタビューが大嫌いなのだ。あの,選手に対する腫れ物に触るよーな態度は何なんだ。選手の顔色を伺いながら「メダルの期待がかかりますが,調子はいかがですか?」とか聞いたりして。最近は,プレッシャーかけるのは良くないってんでNHK以外はあんまりメダルメダル言わないようにしているようだが,それでも何だか選手との距離のとり方に失敗しているように見える。子供のご機嫌取りに汲々としている,子離れしてない母親みたいな態度だ。
「もうね,お母さんね,xxちゃんがメダル取ってくれるだけで何にも要らないから。何か欲しいものある?」とかマスコミが騒いでいて,それに対していい子ちゃんは「お母さんのために頑張るよ」と言いつつプレッシャーに負け,反抗期の子は「うっせーな,あっちいけ!」と言っているのが日本のオリンピック報道の実態なのかなと思う。最近は,選手の方が大人になってきたようで,室伏選手のコメントとか読むと,「はいはい。もういいからあっちで観てて」と,自立した息子がバカげた干渉をしてくる母親をあしらっているように見えなくもない。
それから見ると,NBCの報道姿勢は良くできた父親みたいかもしれない。アメリカ選手に対して,一人合点の期待を寄せたりしない代わりに,「自分の言葉で,自分の事,そのスポーツの事,オリンピックに対する意見を述べる」事を要求しているように見える。選手のプレッシャーの源泉も,自分で定めた目標を達成できるかどうかにあるようである。試合直前は選手に過剰に干渉せず,試合後に改めてじっくりと話す。NBCの朝の部が能天気で,夜の部が硬派という二通りの対応をしているのもバランスが取れていて良い。
欧米の教育方針は父親的で,日本のそれは母親的であると何かで読んだが,報道に関しても同じ事が言えそうだ。今年の日本のオリンピック報道はどうだったんでしょうか。ネットニュースで,シンクロで失敗したとかいう記事があったが。日本の伝統的要素を入れたのが失敗だったとか。こちらの実況では特にその点には触れていなかったなあ。ただただ素晴らしい!を連発してたけど。。。金を取れなかったのは,ロシアチームが圧倒的に上手だっただけじゃないかと思う。こういう記事を読むと,益々日本マスコミがヒステリーおかーさんのように見えてきませんか。
とはいえ,アメリカの報道側が選手と距離を取れている理由は,結局は,世間がオリンピックに対してさほど興味が無いからなのかもしれない。旧共産圏とメダル争いをしていた頃もこんなに冷静だったのかどうか。それに今,アメリカは不思議なくらいに海外に興味が無いのである。オリンピック閉会式から一夜明けた途端,ニュースは共産党大会一色になってしまった。オリンピックへの(事前の)関心の無さは,大統領選の年と重なっているせいなのかもしれない。アメリカは国内事情だけでいっぱいいっぱいなのである。
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