レッドソックス優勝と大統領選

大統領選の投票日まであと数日。なんとも長い選挙運動期間であった。ここ一ヶ月の間に行われたTV討論会も盛り上がったし,皆の関心は今や大統領選に釘付け。。。のはずなのだが,ケリーの地盤であるはずのマサチューセッツ州では違うのです。もう一つの大ニュースに,皆の注目が完全に移ってしまった。そのニュースとはもちろん,ボストン・レッドソックスのワールドシリーズ優勝である。その盛り上がり様は,阪神のリーグ優勝のそれを遥かに上回っているようす。優勝してからというもの,ローカルニュースは殆どレッドソックスの話題しか伝えていない。ボストンの人達にとっては,歴史的記念碑的大勝利なのである。

私は元々野球には興味が無いので,レッドソックスの試合もTVでちゃんと観たことが無い。それでも,宿敵であるNYヤンキースとのリーグ優勝決定戦あたりから,ローカルニュースはレッドソックス一色なので嫌でも目に付く。去年も今年と同様,NYヤンキースとリーグ優勝戦を戦ったのだが,確か接戦の挙句に,最終の第7戦で敗北したんだったかな。その翌日は,ローカルニュースも大学構内も,葬式のような雰囲気だった。もう,話題にするのも憚られるといった感じで,先生も学生も一日中沈鬱な表情だった。
今年はヤンキースに勝ってリーグ優勝を果たし,ワールドシリーズに向けて盛り上がってはいたが,その一方で,やはり長年の「呪い」が気になるようで,ジンクスが心配だとか,呪いは解けるのかとか,ローカルニュースは大真面目に報道していた。一方で私は,ワールドシリーズがいつどこでプレイされるのかも把握せず,「なんか騒いでるナー」と思っているうちに,ある日真夜中にTVをつけたら,ワールドシリーズ優勝で興奮するレッドソックスファンを警備隊が追っ払っているライブ映像が映っていたのであった。翌日のボストン・グローブ紙は一面トップで 「Yes!!!」のヘッドラインが踊っておりました。

「バンビーノの呪い」については,去年大学の講師に教えてもらった。レッドソックスは,1918年以来実に80年余り,ワールドシリーズ優勝を果たせずにいる。理由は,1918年のシリーズ後にトレードされていったベーブ・ルースがかけた呪いのせいだというのである。バンビーノ(Bambino = 赤ん坊)とはベーブ(Babe)・ルースの別のあだ名である。それ以来,リーグ優勝は何度かしているものの,ワールドシリーズでは勝てていないらしい。80年とは,何とも気の長い話であるが,ボストニアン達は辛抱強く応援してきたのである。親子2代に渡って。。どころじゃないですね。曾おじいさんの代から4代,くらいの長さだ。

長年優勝から遠ざかっていたにも関わらず,レッドソックスの人気はものすごい。地元民の熱狂的支持を集めているのである。ホーム球場であるフェンウェイ球場の一般チケットはシーズン前の売り出し日に殆ど完売してしまうらしい。対ヤンキースのリーグ優勝戦ともなると,ネットオークションで 2000ドル前後で売り出されているとかなんとか。以前NYでヤンキースの試合を観に行った時は,数日前に正規チケットをネットで購入したが,ほとんどの試合は空席有りだったのだが対レッドソックス戦のチケットだけはすべて完売状態だった。ローカルニュースのスポーツコーナーはレッドソックスばかり扱うし,マサチューセッツ州発のドーナツ・チェーン店であるDunkin Donutsは,CMに選手を起用する。ボストンが舞台になった映画「Goodwill Hunting」では,レッドソックス戦の過去の名シーンや,フェンウェイ球場の映像が差し挟まれていた。地元が総力を挙げて,レッドソックスを盛り立てている。地方立脚モデルのお手本のようなチームではないでしょうか。

ワールドシリーズ優勝した翌日の特番の最後に,シリーズ優勝を祝う替え歌が流れた。カントリー調のメロディーで「過去の名選手達にもできなかった事をお前達は成し遂げた」「へんてこな奴ら,俺達はお前らを信用するぜ」といったような内容だったような。何ともしみじみと良い歌だったなあ。今日は朝からボストンで優勝パレードが行われている。選手達は,フェンウェイ球場でインタビューとファン交流会を行った後,ボストン名物である水陸両用観光ボート「Duck Boat」に乗って出発していった。どの選手も気さくなあんちゃんという感じで,ファンと選手の距離がとても近いように思える。

数日後に迫った大統領選ももちろん大事であるが,ボストニアンにとっては,どうせマサチューセッツ州はケリー勝利に決まっているのだから,あとはもう激戦他州の結果に依るしかない。ここ一年余りの大統領選プロセスを通して,もう皆充分に考えてきた。ニュース番組は毎日「Decision(意思決定) 2004」というコーナーで選挙戦にまつわるニュースを報道,新聞は「ケリーが有望」「いやブッシュが」とコロコロ変わる選挙予測。みんな,そろそろこの生真面目な泥仕合に疲れてきたに違いない。レッドソックス優勝は,ボストニアンにとっては格好の気晴らしでもあったかもしれない。ケリーも,優勝の翌日にはレッドソックスのロゴ入りジャケットを着てはしゃいでおった。大統領候補も一緒くたになってその勝利を喜べるような地元球団があって,改めて,ボストンは良い街だなあ,アメリカの野球はすごいなあ,と思うのでした。

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