学生寮で同棲???
キャンパス内での学生生活は、非常に単調に出来ている。
学生達にしても、週末ごとに帰省できる訳もなく、車を持つような経済的に余裕のある者は
まれときている。(私の友達は持ってたけど)
そんな学生達の貴重とも言える気晴らしは、映画クラブが主催する映画を見る事だった。
上映される映画は、その大半がアメリカ映画の旧作というお粗末な内容だったが、一応
字幕がフランス語だということと、一回12フランという安さも手伝って、私達は度々見に
でかけていた。
その夜は、かの旧超大作の代表とも言える「風と共に去りぬ」が上映された。この頃から
分裂気味にあった日本人グループはまとまりが悪く、その夜、会場として使われる広い
講義室に行ったのは私だけだった。
さあ、独り寂しく最後列に陣取っていた私だったが、そんな姿が人目を引いたらしい。
一人のフランス人が話しかけてきた。彼女の名はフローランス。小柄で、漆黒の髪が彼女の
アイディンティティー(アルジェリア人との混血児。いわゆる”ピエ・ノアール”)を物語る
この女性は、私という日本人に事の他興味をそそられたらしい。私達の会話は弾み、なんと
その夜の内に友達と言える関係にまで発展していた。
「寮に遊びに来て欲しいわ。会話の練習にもなるわよ。きっとよ。そうね・・・・
こんどの土曜なんかどうかしら。」
この言葉に気を良くした私は、二つ返事で承諾すると、意気揚々と寮に引き上げた。
さて、問題の土曜日が来た。
簡単に帰省出来ない境遇の学生達のおかげで、彼女の住む寮は活気に満ちていた。
私は、六畳くらいの広さに、机が二つとベッドが二つ(当然二人部屋)備え付けられただけの、
いかにも学生らしい部屋に腰を落ち着けていた。フローランスは、あらかじめ私の来訪を
ふれまわっていたらしい。部屋には、彼女の友達が多数詰め掛けていた。
和やかに会話を発展させる私達だったが、私は、来た時から、出入り口のある壁に垂直に交差
する壁に備え付けられた、もう一つのドアに気を取られていた。(ドアの真横にドア???)
クエスチョン・マークを抱えたままでいた私だったが、やがてその問題のドアが開いて、中から
男子生徒が飛び出して来た。彼は、フローランスに笑いかけると、そのまま出入り口から
飛び出して行った。
あっけに取られた私は、彼女に問いただした。
「自分の目で確かめた方が良いのかもよ・・・。」
私は、意味ありげに笑うフローランスの許可を得ると、ドアから中を覗いた。すると、両脇に
シャワーとトイレを挟んだそのスペースの向こうに、同じようなドアが見え、そのまた向こうに、
愉快そうにたむろする男子生徒達の」姿が確認できた。
「男子生徒と一緒に住んでいるの???」
「ええ、そうよ。」
「そんなあ・・・シャワーを共有して問題でも起こったら・・・・。」
「大丈夫。ルールは守るのよ。ここ(フランス)では、本人同士が頼めば、同棲も認められるのよ。」
いやはや、これがお国柄と言うものです。