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弟と反省文
****************************** ICHI
弟が、学校で反省文を書かされることになったことがあった。
どうやら喧嘩が理由らしい。母と私は、
「あーあ」
と、首を落とし額に手を当てたが、父だけは、
「男にとっては喧嘩は勲章のようなもんだ。反省する必要、一切なし!」
と言い放った。
弟は散々学校で絞られてきた後で、しゅん、というかややふてくされた顔をしていたが、
父のその一言で顔を上げ、にやっと笑って言った。
「じゃあ、反省文は書かなくてもいいな」
すると父は、えっ、という顔をして少し間をあけた後、
「まあ・・、学校にも面子というものがあるから、顔ぐらいは立ててやらんとな。
表面だけ反省しているふりをしてればいい」
と、さっきの勢いとは反対に、少し小さな声で言った。
かくして、書きたくないと言いはる弟の為に、
家族一丸となって、反省文を書くことになった。
皆でこたつを囲み、いかに反省しているようにみせるかを話し合った。
「えー、今回の件に関しましては、重々反省している次第であり・・・」
と、どっかの政治家のような言葉を発する父に対し、
「ちょっとお父さん、それは子供の書く文章じゃないよ」
と、だめだしをする母。
「そうか」
「じゃあ、これはどうだ。お前、国語得意だろ」
「私、反省文なんて書いたことないよ」
「お父さん、漢字間違ってない?」
「おい、ちょっと辞書持ってこい」
「はい、はい」
「この年にもなると、なかなか漢字ってでてこないもんだな」
当の本人は出る幕がないので、しばらくは神妙な顔をして見ていたのだがすぐに飽きだし、
「俺、寝てもいいかな」
と言う始末で、私が、
「ちょっと。あんたの為にやってるんだよ。もうちょっと真剣に考えなよ」
と怒ると、
「だって、俺作文苦手だもん」
の一言だった。
すると、
「おい、よく聞けよ。俺がこつを教えてやる。作文ちゅうもんはな、」
と父が言いだした。
何を言うのかと思ったら、
「俺が読書感想文なんぞを書いた頃はな、マスがたくさん埋まるように、わざとな、
『であるからして』ちゅうような、長くて難しそうに見える言葉を入れるんだ。
どうだ、名案だろ」
父は得意げである。 なんだか情けないが、
妙に説得力がある言い方をするので、私も弟も、はぁそうか、と納得してしまった。
3時間程喧々諤々とやって、やっと反省文は完成した。
弟がしでかしたことはいえ、家族全員が一つになって何かを作り上げたというのは、
これが最初で最後だったのではないかと思う。
弟は、来年結婚することが決まった。
「そういえば、あの時反省文、皆で書いたよね」
と言ったら、口数の少ない弟は、
「おぉ? ・・・・うるせー」
と言っていたが、口元はにやっと笑っていた。
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