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 太鼓橋のある町 1

**************************** 桃戸 千




同じ町の同じ家で一生を過ごす人があれば、

様々な町に移り住みながら人生を送る人もいるでしょう。

皆さんは、どちらでしょうか。

いづれにしても、胸に残る思い出の場所というのは誰にもあるものです。

この物語に登場する晶子(あきこ)の場合、

小学校時分からずいぶん引越しと転校を繰り返しました。

おかげで、5つの都道府県と10の町の住人になることができたのですが、

結婚して子供を生した今でも良く思い出すのは、

京都府の南端、大阪府との境に位置するY市のことです。

小学校の高学年から中学を卒業するまでの

いわゆる思春期を過ごしたこの町が特別に思い出深い町なのだといいます。



Y市にやってきたのは、晶子が小学5年生になる年の春のこと。

父親と二人して降り立ったプラットホームに吹く風はとても暖かかったのを

晶子は今でもよく覚えているそうです。

晶子は分厚いコートを着ていました。

周りを見ると彼女のように厚いコートを着ている人はもういませんでした。

だからといって晶子が特別寒がりなわけではありません。

彼女のコートにはちゃんとした理由があった。

晶子はその日の朝まで、まだ雪の残る東北にいたのです。




つづく





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