『嵯峨神社の怪』

序章

原作;四條 薫




 ――――― 第ニ話 ―――――






 倉本碧は瞠良台(ミハラダイ)駅前の喫茶店に人待ち顔で座っていた。
中途半端な長さの髪を時折掻き揚げ、離れた場所にある窓の方を眺める。
黒ブチの眼鏡が顔の半分を隠し、お世辞にも可愛いとは言い難い。
 白いシャツに胸元の赤いネクタイ、濃紺のジャンパースカートその制服はここから10分程
歩いた場所にあるビジネス専門学校のものだが、彼女が着ていると雰囲気は何処かの会社の
OLのようにも見える。
 退屈なのか手元のグラスの氷をストローで弄ぶように掻きましている。
グラスの周囲に水滴が浮く、彼女は掻き回すのを止めた。
氷は小さくなり、冷たかったアイスティーは少しずつ温くなってきていた。
 彼女は口元にストローを加えると氷で薄くなったアイスティーを一口飲み込んだ。

 入り口に視線を流すと、彼女の待ち人が入って来たとこだった。
彼女に近づくと柔らかな微笑を零す。
「お待たせ。」
一言告げて、彼女の前に腰を下ろす少年の姿がある。
 柔らかな癖っ毛の茶色い髪、男の子にしては大きめなダークブランの瞳が幼く見える。
どちらかと言えば可愛い感じの少年だ。
「イイ度胸よね・・・この私を30分も待たせるなんて。」
彼に向けての第一声がそれであった。
「悪い、チョット・・・駐車場が混んでてさ〜」
少年は屈託のない笑みを浮かべる。
取り分けて悪いと思ってる様子は感じられなかった。
「二葉から聞いたけど、話があるって・・・何?」
率直な物言いで彼女が聞く。
「湫から言伝を頼まれてね。」
少年は悪戯小僧のような可愛いらしい笑顔を覗かせてた。
「言伝?」
彼女は怪訝そうに顔を歪めて見せた。
「コレさ。」
少年は手元の鞄から白い封筒を彼女の前に差し出した。
 碧は嫌な予感を感じながらその封筒を受け取り、封を切った。
一旦、少年に視線を添えてから取り出した白い紙の上に視線を走らせた。
次の瞬間、驚いたように少年の顔を見つめた。
「ドーユー事?」
彼は首を傾げ、肩を竦めて見せる。
「さぁ〜?」
解らないと態度に示す。
「冗談じゃない!
何で、私がアンタと組む訳?」
荒い言葉に彼は壁に背中を預けた。
「知らないよ・・・
湫が決めた事だろう?
オレが口出せる事じゃないだろう?」
そう言う彼を、脱力するように見つめ、彼女はこの上なく悲壮感漂う顔を見せた。
徐に重々しい溜息を吐き出す。
「そう、露骨に嫌がらなくても・・・」
困ったように苦笑を浮かべて彼が彼女の手元にある紙を指差す。
「そこにさ、書いてない?
"イザと言う時の為"って?」
「そんな事はどうでもイイのよ!」
彼女は言い捨てると再度、深々と溜息を吐き出した。
「あのなぁ〜」
困ったように彼がボヤク。
「そんなに、ヤバイ相手な訳?」
彼女が俯いたまま聞く。
「そうなんじゃないの?」
お気楽な言葉が返ってきた。
碧は彼の返事に不愉快そうに顔を顰めて、手紙を封筒に戻すと鞄の中に仕舞い込んだ。
「分かったわ。
湫に伝えておいて、"承諾しました"と・・・」
彼女はレンズ越しに鋭い視線を彼に向けて立ち上がった。
「イザという時にすぐに動けるようにしておいて頂戴。」
それだけ言うと彼女は素早く店内を後にした。

 残された彼は大きな溜息を吐き出して「相変わらず・・・」と小声で呟いた。










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最終更新日:2003年8月23日(土)