自分の部屋で荒れ狂うように癇癪を起こしている碧の姿に、二葉は冷めた視線を注いでいた。 碧が荒れている理由は聞かなくてもある程度の予測が着いていた。 多分、西遠寺湫からの伝言でも受け取り、その内容だろうと・・・ それに付け加えるなら、その伝言を持ってきた人物についても、荒れているのだろうと思う。 ・・・事実、その通りなのだ。月に何度か碧が荒れる原因はある。 その大半多数の理由がソレなのだ。 いい加減、それを押さえ付けようなど・・・二葉には毛頭ない。 押さえつけた所で碧の癇癪がおさまる訳ではなし、かえってストレスが溜まり奇妙な暴走に走り、 仕事に影響を及ぼされたり、最悪な状況になれば病院送りにも成りかねないくらいないら・・・ 小一時間あまり部屋を提供するなど動作もないことだった。 普段は、温厚で人当たりの好い性格を人前に出す碧の本性は、その漂わす温和な雰囲気とは 全く逆で感情の起伏が激しい面があることを二葉は良く理解していた。 その上、極度の神経質な面がある。 ・・・これは本人が自覚していないのでなんとも言えないが、それも二葉は知っているのである。 壁にクッションを投げつけては大声で文句を撒き散らかす彼女の姿を見ながら、二葉は溜息混じり にキッチンへ足を向けた。 内心、部屋の壁が壊れない事を願いつつ・・・。 一時間後―――碧は、すっきりとした表情でキッチンに顔を出した。 「気はすんだの?」 冷ややかな眼差しを向けて聞く。 「ゴメンナサイ。」 即座に碧はそう言って頭を下げた。 二葉は幼さの残る少女のような笑みを零して、碧に席を進めた。 「とりあえず、座りなさいな。」 そう言って自分は席を立ち、キッチンの中に立つ。 碧のために冷たい麦茶をグラスに注ぎ、彼女の前に差し出した。 彼女は小さな会釈をして、グラスを口元へ運ぶと殆ど一気に飲み干した。 二葉はすぐに空になったグラスに再度、麦茶を注ぐ。 アレだけ怒鳴り散らせば当たり前・・・そんな顔をして碧を見下ろす。 「さてと、今回の理由は?」 落ち着いた様子を見せ始めた碧に聞く。 「え・・・?」 一瞬、たじろいで、何の事か分からないと逃げの顔を見せる。 そんな碧に呆れを含んだ顔をして二葉が口を開いた。 「私の部屋の壁を壊さんばかりに、八つ当たりしていた理由よ?」 口調は至って穏やかだが、その表情には明らかに青筋が立っていた。 碧は引きつった笑顔を向けながら、懸命に逃げ口上を述べようと試みる。 「えッッ・・・とォー・・・デスね〜・・・・」 頭の中の言葉を瞬速で選びながら、考えている最中だった。 二葉は根気良く待つ体制で碧の様子を眺めていた。 無言の催促、それは何よりも効果的面である。 碧は自分に添えれれた視線と無言の圧力の中で、何と言えばいいのか分からず、言葉を捜していた。 忙しなく、留まる事のない視線を宙に漂わして・・・。 「それはァー・・・湫からの手紙を見れて頂ければ・・・。 一目瞭然、かな?・・・と、思います。」 ハイ!と言わんばかりにテーブルの上に白い封筒を差し出した。 二葉はその中身を取り出し、素早く便箋の上に視線を走らせる。 その様子を碧は恐る恐る見上げていた。 クスッ・・・二葉が笑みを零した。 「こんな事で?」 呆れた口調が零れた。 碧は首を傾げて二葉を見た。 「こんな事?」 二葉は可笑しそうに顔を歪めせながら、碧の顔を覗き込む。 そこには訳が分からないと首を傾げている碧がいた。 「常時、組む訳じゃないんだから・・・」 そう言う。 「でもぉ〜・・・」 抗議を申し立てようとして碧は口を噤んだ。 自分を見つめる二葉の眼差しに碧に俯いた。 下手な事を言えば、彼女の無情な言葉の犠牲になりかねない。 碧の気持ちが分からない訳ではない二葉は、碧の様子を眺めていた。 本来なら次の仕事の打ち合わせをしているはずだった。 しかし、その前に邪魔が入り、碧は癇癪を起こし、約1時間壁に八つ当たりをしていたのだ。 それはそれで、ショウガナイのかもしれないが・・・ 二葉は、内心『湫も罪なことをする。』と悩ましげにその幼い顔を歪めた。 |