私が赴いた場所は戦禍がもっとも酷い場所だった。 そこに着いて私は目を覆った。 爆撃や地雷の被害者は死者と一緒に地面の上の転がっていた。 傷口は化膿し、蛆がわいていた。 鼻につく異臭は、死体の腐乱と混じり息も出来ないような有様だった。 話に聞いた以上に凄まじい光景だった。 自分達は助からないのだと、諦めと絶望のまま人々は死んだように転がっている。 その姿が自分と重なって見えた。 ここで目を背ける訳にはいかなかった。 ――― 一人でも多く助ける。――― そう約束した以上、私には果たさなくてはいけない使命があった。 医師として・・・自分が出来る限りの最善を尽くす。 それが私の務めだった。 少尉が私の助けになればと数名の医者と看護婦をつけてくれた。 この満足に設備も備品も無い場所でどれだけのことが出来るのかは判らない。 それでも私は逃げる訳にはいかない。 私は、奥歯を噛み締め、テントを張らせた。 動ける者を移動し、動けない者の手当てから私は取り掛かった。 それは不眠不休の戦いの幕開けだった。 患者は、敵味方関係なく兵士から住民、老人から女子供まで様々だった。 どれも軽症とは呼べない怪我を負い、満足の行かない手当ての中で病気にかかる者もいた。 ―――怪我人は増える一方だった。 兵士は多少回復したとまた戦場へと戻って行く。 悪循環の繰り返しだった。 医療具は言うまでも無く足りなかった。 月に数回届く世界各地からの救援物資だけでは間に合わない。 多くの者を亡くし、それでも私は絶望を感じるわけにいかない。 ここで絶望に取り付かれれば、まだ生きている者を見殺しにしてしまう。 傷付き、癒えない心の傷を持った者が少しでも生きる気力を持てるように・・・ 私は目の前にいる患者の為だけに戦っていた。 例え、この場所が戦火から遠く離れ"今"は安全でも・・・ それが続く保障は何処に無いのだから・・・ |