秦帝国めいん・きゃらくたーず
三章まで話が進みましたので、キャラクター紹介を改装しました。目下、うちの秦帝国キャラクターはこの調子で進んでいます。お題シリーズも平行しているので、本編に出てこなくてもお題に出てくる人々は出すことにしました。よそのシリーズにまでしゃしゃり出てるのもいるしなあ……。
| 嬴政(えいせい) | いわずと知れた主人公、『うちの息子』の政君。ちなみに後の始皇帝。嬴姓趙氏。陶淵明が『桃花原詩』で「嬴氏天機を乱し」なんて詠んでるが、一応司馬子長先生のほうで行く予定。生まれる前の年に、呂不韋の寵妾だった母親が荘襄王子楚のおねだりでトレードされ、早生まれ(お父様が子楚の場合)だか遅生まれ(お父様が呂不韋の場合)だかわからん時期に生まれてしまったため、親世代の付けを一身に背負うことに。三歳で子楚に見捨てられ『脱走した人質の息子』、八歳で秦に迎えられると『誰の胤だかわからない呂不韋の切札』、十三歳で即位すると『秦室の血を引かない簒奪者』とまあ、言いたい放題言われたせいで、すっかり人間不信の根暗な子に育ってしまった。元々頭はいいので、学問や武芸は人並以上に出来る。致命的な仕事中毒で、一日120ポンドの竹簡を処理することに決めていた。基本的に、遊んでいるより、勉強や仕事に神経すり減らすタイプ。ただし、神経が繊細なので、暴発すると何を仕出かすかわからない。鼻が高くて切れ長の眼、胸板が厚くて山犬のような声のバスバリトン…の筈なのに、何故かそういうイメージで流布していない気の毒な人。こんなんだから、譜代の貴族に心を許さない。李斯だの韓非だのと言う妙な面子が集まったのはそのせいかもしれない。 |
| 李斯(りし) | 『秦王陛下のおっしゃることは全て正しい』のマスターコンプレックス。元々は楚の人。小役人をしていたが、『努力しないで出世する方法』目指して辞職、荀卿門下に学んで紹介状をふんだくり、呂不韋の家来を経由して秦王政に出会う。政より一回りは年上なのだが、主導権が完全に逆転して、既に気が優しい政の理解者兼子分。荀卿門下で一緒だった韓非の数少ない友達もしている。よって荀卿門下のくせに法家路線。頭はそこそこに切れて実務能力もあるのだが、個性派に囲まれているせいで、調停役が板についてしまった。初版では『ぼけぼけの李斯』と言われていた。篆書が得意で『李斯小篆』という字体が残っているほど。「陛下のミスは全部私がかぶります!私の成功は全部陛下に捧げます!」というすさまじいマスコンぶりが災いし(高松の創作ではなく、このコメントは『史記』に載っています)極悪非道の残酷宰相として世界史の教科書にしっかりと太文字で記載され、今日に至っている。つくづく気の毒な主従である。本当はハメられて死んだ、悲劇の人なのに。 |
| 蔡沢(さいたく) | 剛成君。秦の四代の王に仕えた客卿で、丞相を務めたこともある。元々は貧乏な税客だった、がに股のおじさま。苦労人で、酸いも甘いも噛み分けているので、秦帝国の相談役と化している。特に、誰にも懐かない秦王政が子供の頃、唯一懐いた稀有な人。お陰でずっと指南役になってしまった。優雅でゴオヂャスな生活をすることが唯一の希望と言い放つだけあって、尉繚とよく飲んでいる。尉繚が来る前は、政のガス抜き役でもあった。 |
| 呂不韋(りょふい) | 元凶の関係者。元商人。政の父親と言う黒い噂を踏みしだき、強力な後援の末王座につけた荘襄王子楚の下で政権を握る。食客三千人と言う、戦国四君に匹敵する勢力を持ち、秦での権力を全て手中に収め、かつての愛人母太后ともよりを戻してしまう。『呂氏春秋』という百科全書を編纂させるなど、文化のパトロンともなるが、唯一怖いのが秦王政。政の成人以降は内乱に連座して失脚、秦王自身の命令で服毒に追い込まれる。 |
| 荘襄太后 (そうじょうたいごう) |
全ての元凶、母太后。元は邯鄲の売れっ妓の歌姫、趙妃。才気煥発の美人さんを大枚はたいて落籍せたのが呂不韋、それをくれと言った子楚も子楚なら、やった呂不韋も呂不韋。おまけに、実家があるとはいえ敵国のど真ん中に子供と置き去りにされるという経験を経て、すっかり旦那衆を信用しなくなった。元の商売の水が抜けきっていないが、恩人の呂不韋にはいささか弱い。三度の飯より色恋が好きだが、反面現実主義者でしたたか。息子の政とは反発を続けているが、お互いに相手を無視できないという泥沼に嵌っている。 |
| 華陽太后 (かようたいごう) |
呂不韋の策謀により、荘襄王子楚を養子にして秦王への道を開いた人。元は安国君こと、後の孝文王夫人であった。子供が出来なかったためか、孫の政には問答無用で甘い。寵姫だっただけあって、今でも美人。 |
| 荘襄王子楚 (そうじょうおう・しそ) |
政の『父親』。元々は趙の邯鄲に人質になっており、呂不韋の資金援助や策動によって秦王の座に着けたというシンデレラ公子。彼が呂不韋の寵妾を欲しがったせいで話がややこしくなった。おまけに政君が三つの時、単身包囲下の邯鄲を脱出して、攻め手の秦軍に駆け込み、妻子を死地に置き去りにしている。咸陽では後宮に政の弟達を生ませているので、更に話はややこしくなり、宮廷が混乱するのでありました。…『幻想旅行』であんなにいい人にしたのは間違いだったかも、と後悔しつつある高松です。この話の開始時点で死亡、驪山陵に眠っている。 |
| 蒙恬(もうてん) | 秦の名家、蒙家の正嫡。お坊ちゃまで武人としても嘱望された逸材。よって、プライドが滅茶苦茶に高い。かくして年下の秦王とは徹底的に性格が合わない。生真面目で実直。将才はピカ一。相互理解が成立すれば、頼りになる人。秦帝国屈指の武将になって周りをびびらせ、物のついでに筆など発明したことにされるのは、ずっと、ずーっと後のことです。恐らくこの話には出てこないでしょう、このエピソード。 |
| 范雎(はんしょ) | 応侯。それ程出てこないに違いないんだが、読めないですからねえ…雎の字が。ワープロの時なんか、字が出なかったもんな。政君の祖父、昭王時代の宰相。この人も叩き上げ成り上がり組みなので、若い頃は簀巻きにされたりして苦労してます。 |
| 尉繚(うつりょう) | 言いたい放題、風来坊の『いかさま兵家』。兵法家である。前述政君のルックスについて好き放題の口を叩いたのも彼。その後脱走しようとしたが、政君に捕まって扱き使われたというオチが付いている。韓非の古い友人。基本的に遊び人で、秦の蔡沢や王翦と意気投合。真面目な李斯はいささか敬遠している。ストレスと緊張状態が続く秦の宮廷に風穴をぶち開けながら歩き回るので、案外頼りにされている。これでも戦略を立案させると人が変わる。この緩衝地帯のようなキャラクターに救われたのは、実は秦帝国の面子だけではなく、さりげなーくその後の話にも登場していたりする。ヒントは一応書いているつもりなので、どこにいるのか捜してみてください。ちなみに初版終了時、皆様にアンケートにご協力いただいた結果、一番好かれていたのがこの尉繚です。お嬢さんたちに好かれて彼も嬉しいことでしょう☆ |
| 韓非(かんぴ) | 政君の憧れ、李斯の天敵、尉繚の玩具、才能を嫉視されて自殺に追い込まれた悲劇の貴公子、という天才法家。韓の公子という、生粋の王子様である。図抜けて怜悧な頭脳を持っている超現実主義者、倫理観などくそ食らえ、勝つためには手段を選ぶな、人間の良心など当てにするんじゃないと断言する『極悪法家』。尉繚などは『気違い法家』と呼んでいる。千六百年近く後のマキャベリさんとよく比較されるほどだが、常識の世界から遠いのは韓非のほう。李斯に服毒自殺を迫られて死んだため、思考内容はともかく、彼自身を悪く書いたものにはあまりお目にかかったことがない。容姿端麗、才気縦横だが、世間的にそれを全て抹消しているのが重度の『吃り』。お陰でまともに人間扱いしてもらえなかった韓非は人間不信を通り越し、憎悪の塊となって鬱屈した日々を送っている。自分の才能を評価してくれる人にはやたらと甘い。その代わり敵に回すと、有り余る文才で滅茶苦茶に扱き下ろされる。お陰で儒家に排撃されるのだが、秦帝国以後中国の裏側帝王学をきっちり握っているのは韓非子だったのであった……。 |
| 蒙毅(もうき) | 蒙恬の弟、秦王の遊び仲間。腰が低く、気が優しいので、政とも衝突せずに済んでいる。真面目で素直な文官向き。秦帝国メンバーにしては珍しく、ごく平凡な良家の子弟である。 |
| 甘羅(かんら) | 呂不韋の舎人、登場した時は十二歳。祖父は秦の丞相だった甘茂。十二で趙の国君を説いて上卿になってしまったため、いささか生意気。名門を意識しているところは蒙恬に通ずる。梭沙にとってはトラブルメーカー。ちなみにこのおじいさま、張儀の口添えで秦に就職し、秦を出た後は蘇秦の弟、蘇代に世話になっています。『幻想旅行』を知っている方は、「あらま」と思って流してください。 |
| 梭沙(りょうさ) | 華陽太后の侍女、実は政の幼馴染。ずっと政のことを想い続けているのだが、相手はけろりと忘れている。控え目で清楚な女性なのだが、言うべきことは言う。 |
| 王翦(おうせん) | 秦の宿将。代々名将を出している王家の頭領で、本人も豪快でやり手の将軍。老獪な部分も併せ持つ。蔡沢の飲み仲間。他人の事情は我関せず、我が道を行くの性格で、秦に重きを成している。事務仕事は大嫌い。尉繚とは気が合う。宮廷闘争からは一歩を引いているので、秦王には一目置かれている。 |
| 李信(りしん) | 武将候補生。李家も代々秦の将軍職を担った家。一本気な上に、蒙恬より口が立つので、舌禍が多い。時々蔡沢や呂不韋にたしなめられるが、一番怖いのは王翦の雷である。激しやすいが忘れっぽくもある、熱血なお坊ちゃま。 |
| 夏樹(なつき) | 生物ノートを知っている人だけが知っているキャラクター、夏樹さん。改訂で組み込みました。(名前が訓読みなのはそのせいです。気に食わなかったら勝手に音読みしてください)秦王の叔母に当たるが、年は然程変わらず。姉代わりの勝気な公主。華陽太后と親しい。絵描きが趣味。 |
| 太子丹(たいしたん) | 燕の王太子。邯鄲での政の幼馴染。事ある毎に政を馬鹿にし、苛めていたので、無論相性は最悪。甘羅のせいで慌てた燕が人質として秦に差し出すことになり、咸陽で再会する。無論、人間の性根は一朝一夕で変わらず。小才の効く生意気な才子といったところだが、別段人に深みを要求しない宮廷人の間で受けは良い。長安君に知らない内に影響を及ぼしている。政の冷遇に逆上、無断で燕に逃げ帰る。後に刺客である荊軻を送り付けて政を刺そうとしたことはあまりにも有名。 |