ばよりんがうちにやってきた!

−手にありしはのこぎりかそれともばよりんか−


ばよりんケースというのは長方形である。

ということすら知らなかった高松は、ロイヤルブルーのビロード張りという内装を施したばよりんケースに鎮座している楽器を見てびっくり。その上ばよりん様ときたら、ご丁寧にビロードの掛け布団までかけて寝ていらしたのであります。
レジカウンターでばよりんの確認のために開けてくれたのだが、何しろ箱の麗々しさに度肝を抜かれてしまった高松は。

店のおにーさんが教えてくれた『ばよりんを弾く前に』の諸々の注意点をすっかり忘れ去っていた。(笑)

さて、買ったものは早速開けようっ!とばよりんケースのファスナーを開いた高松は教則本を開いて弓を張り、早速弦をこすってみたのですが。

すー。

…無音じゃないか?

すー……。

やっぱり音が出ないぞ、変だなあ。
変に決まっています。弓の下ごしらえもしていません。(笑)鳴るはずがないのです。
「弾く前にはこの松脂を粉が出るくらいまでたっぷり弓の毛に塗ってくださいね」
という店員さんの注意をすっかりと忘れ果てていたのでした。五六度無駄な抵抗をしていた高松、はた、と思い出して慌てて四角い松脂の塊を取り出したのであります。これが。
べたつくくせにかなり硬い代物です。ちょっとこすったところで跡すらつきやしません。すると注意書きが。
「使い始めはなかなか傷がつかないので、カッターなどで傷をつけてから使いましょう」
…カッター汚したくないなあ……。←いい加減な練習姿勢
手は洗えるので爪で引っ掻いてみることにしました。(笑)この手抜きがたたったのか、こしこしやってもなかなか床に引いたチラシの上に粉は落ちない。で、元来いい加減なことばかり仕出かす高松、
「弓の元から先まで満遍なく塗りましょう」
という指示をあっさりとスルー。
「よーするに結果的に満遍なく松脂がついていればいいんだな?」
という結論から。
根元・中間・先端程度のブロックに分けて攻略開始。このほうが力入れてこすり付けられるという次第です。しかし、なかなか上手くいかない。今度は面に擦り付けていたのを、角を使ってこすることに。
さすがに硬い松脂の角も取れはじめました。そこを突破口にしてなおもこすり続けること十分間、ようやくあちこちに白い粉をばら撒いて琥珀色だった松脂の表面には太い白線が一本通ったのでありました。そして、恐る恐る弓を弦に落としてみると。

〜♪

ふふーん♪
一音しか弾いてないのに喜んでいます。現金なものです。メロディーもへったくれもありゃしない。
と、いうわけで何か弾きたいのですが。
鍵盤でないので、押せばすぐ音が出るわけではありません。(笑)今までと勝手が違います。その上に弦は四本しかありません。

…ドレミファソラシドはどこにあるのだね??

というわけで、また教本を開いてみました。開いて固まりました。

『U弦を弾いてみよう』

ま、真ん中の弦からスタートするのかっ?!高松、こーちょく。

実は試奏の時も、家に帰ってからも、高松が弾いていた弦は一番端のW弦だけ。はい、かの有名なG線であります。元々低音のほうが好きなので(だから本当はチェロの方が好きです。ばよりんの音は実はそれほど…だったりするのですね)これを鳴らしては喜んでいたという。一番高い弦には当然手もつけず、それよりワンランク音の低いU弦なんて一緒に他の弦も弾きそうだし、しろーとは手を出したくないなあと。
それを弾けってかい……。と教本はなおも続いたのであった。

『U弦は弾きやすく響きもよい』

だああああっ?!
ひっ、弾きやすいのか?こんな密集地帯にあるような弦がか?!
隣のV弦を巻き込まないよう、震える手で恐る恐る弾いてみると……。

きゅい〜いい〜(んぎぎ)いい〜☆
ぶつっ…(んぎ)ゅい〜い〜☆

首を締められた人みたいな音になりました。ちなみにV弦もしっかりと巻き込みました。カッコ内が巻き込み事故の起こったところだと思ってください。(笑)
とても『響きがよい』と思えたシロモノじゃありません。ばよりん練習中の人間に近付くなという昔からの言い伝えは真実です。(笑)

きぃい〜いぃい…ゅいー(んぎ)いぃ……☆

あの『〜♪』はどこへ行ってしまったのだ……!
悲しいのでまたG線を鳴らしてみたりするのですが、初心者入門編の第一段階の音階はU弦からスタートなのです。つまり、
「どこをこすればどんな音が出るのか皆目不明」
な状態なので、否が応でもU弦と格闘しなければ「きー☆」から脱出できないのです。
…わかったよ、やるよ!U弦と格闘するよ!
そして、「ら・し・ど・れ」の音階に立ち向かう羽目になった高松ですが。

きぃいいーい〜ききゅきゅきゅ(んぎ)ゅき〜ぃいぃ〜☆

「とりあえずV弦をこすらないこと」
という低レベル極まりない目標を立てた瞬間でありました。

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