泉の鯉


眉州の青神県の道端に、ちっちゃな祠があって、俗に『猪母仏』って呼ばれてる。百年前雌の豚がここに寝てたのが泉になって、その中では二匹の鯉がいるって話さ。
「多分猪龍だよ。」
って言われてる。蜀の人は雌の豚を母って言うから、仏堂をその上に建てたときそういう名前にしたんだよ。泉は石の上に湧いてて、深さは二尺もない。大旱魃になっても涸れないんだけど、二匹の鯉ってのは誰も見た人がなかったのさ。僕、ある日たまたま見ちゃってね。奥さんのお兄さんの王愿に報告したのさ。愿ったらえらく疑って、僕のでっち上げだと思うんだもん。僕も疑われちゃって不満あり!だしさ。だから愿と泉上で祈ったんだ。
「僕が嘘吐きじゃなかったら、魚よまた現れろっ!」
そしたら鯉二匹が再び登場したもんで、愿ったら目茶目茶たまげて、再拝して謝ってから去ってったもんなあ。この地方ってミステリーゾーンでね。青神の文及さんはお父さんが病気になって医者を探してたんだけど、夜にそこの側を通ったわけ。未亡人がいてさ、琴を背負って待ち受けてて、部屋に連れてくるのさ。及さんはお父さんが病気だから長居できないって断ったんだけどね。けどその人が苦労して引き止めて、明け方になってから行かせてくれたんだ。進んで数里もしない内に、路傍で強盗に殺された人がいるわけ。赫然としてまだ冷たくなってもいなかったんだけど、あの時断ってたら及さんも逃げられなかったってことだよね。泉は石仏鎮の南五里のとこ、青神から二十五里のとこにあるよ。


あやしい話です。久し振りにやったらこんなのに出くわした。私はこれをランダムに読んでるんで前後関係が不明になっているのですが、これは『異事 下』というカテゴリの中に入っていまして、これの前に出てきたトピックが「かわったこと」後に出てくるトピックが「桃から出てきた」です。まあ、この訳タイトルは勝手に改竄しているのですが(笑。だってタイトルまんま訳して載せたら長すぎて罫線の中に入らなかったりするんだもん)。
ちなみに王愿さんの素性でも調べようかとネットを引いたら、お目当ては出なかったんだが、なんとこのネタにヒット。『眉山日報』の2005.1.1付けの記事の模様。現在の瑞峰鎮というところにこの『母猪池』があるそうでして、10アールくらいで豚形の池だそうです。やっぱり涸れないのが売りらしい。宋代、村人の家から豚二頭脱走し、村人が池まで探しに来たら二匹の鯉に化けて池にどぼんしたという伝説が残っているらしい。根性の悪い豚だ。(笑)とーばのこのネタも参照されてます。全集のほうから引いてる感じだったけど。