劉原父かくのたまわく


昔、僕は鳳翔府の幕にいたのね。長安を過ぎた時、劉原父に会ったの。僕のことを引き止めたんで、数日しこたま飲んだなあ。酒たけなわになった頃、僕にね。
「昔さあ、陳季弼が陳元龍に言ったことなんだけどさ。
『あちこちの話では、貴方がおごってて高ビーだって思われてるとこ、あるみたいですが。』
だって。したらば元龍がね。
『そだなあ、家族仲良く、徳も行いも、ってったら陳元方兄弟を尊敬してますね。慎み深く潔癖で礼も法も弁えているといったら華子魚さんでしょう。清く正しく悪憎むったら、知識も義もある趙元達さんだね。博聞強記のずば抜けた才気権謀ったら孔文挙さん、傑出した雄姿、王覇の才略といったら劉玄徳さんを尊敬してます。尊敬してる人達がこんななのに、どこで驕れるというんだね?他のは雑魚雑魚、覚えとくほどじゃないよ!』」
そこで、天を仰いで大きく息を付いたんだ。それもまた、原父の雅趣だったんだね。後に僕が黄州に行った時、作詩してこんなこと書いたっけ。
     「平生我亦輕餘子、    (普段は僕も他の人達を軽く見てた)
      晩歳誰人念此翁?」   (晩年誰が、この爺さんを覚えていてくれると?)
きっと原父のコメントを書いたんだと思う。原父が死んでしばらくになる。それでも貢父がいて、よく話をしたんだけど、この人も死んじゃった。いつになったらこんな素晴らしい人達とまた会えることやら。悲しいや!



実は…このセンテンス、自分の訳が心配でアップしていなかったのですが、ひょんなところから訳が手に入ったので。華子魚さんが出て来た辺りで「?」、孔融が出て来た辺りで「!」、そして真打登場劉備玄徳…「!!」。(笑)はい、出典は三国志でした。で、たまさかうちにあった正史で「この陳元方もきっと三国志キャラに違いない!」と確信してあさっていると…なんと、劉原父のかぎかっこ丸ごと乗っている陳季弼こと陳矯の伝を先に発見!わああ、らっきー☆というわけで、このかぎかっこはちくま学芸文庫の『正史三国志』の訳を自分なりに崩していることをお知らせします。
陳元方とは陳紀さん。曹操の普通でない参謀、郭嘉をよく弾劾したという陳羣のお父様です。華子魚は華歆さんで、これまた曹操の部下です。元達さんは、趙cさん。半ば脅迫されるようにして(劉備も居候していたことがある)陶謙に仕えさせられ、後に殺されたそうです。孔文挙、孔融です。かの孔子の子孫で、曹操に殺された人です。真打に解説はいりませんでしょう…後の蜀漢皇帝劉備さんでした。
問題は、この話をした劉原父さんの雅趣が一体何処にあるのか疑問なのだが…つまり、忘れ去られるのは嫌だ、というとこなんでしょうか。(^^;)お気楽に読み飛ばしているだけなので、かなりきわどいな。