黄僕射 |
虔州の庶民の頼仙芝が言ってたんだけどね。連州に黄損って僕射さんがいてさ、五代の時の人なんだそう。僕射さんは恐らく南漢に仕官してたんだろうけど、年食ってもいないのに辞めちゃって、ある日忽然と消えちゃって生きてるかどうかも知る人がなかったのさ。子孫に肖像に孝養を尽くして三十二年くらいしてさ。また帰ってきて、阼階の上に座って家の人を呼ぶのさ。子供はたまたまいなくって孫が会いに来たのね。したら筆を探して壁にこんなの書いたわけ。
『一別してから随分経った
帰ると世間のしがらみはもう消えてた
ただ門前の鏡のような池の水
春風でも変えられなかったのは昔の波』
筆を投げ捨てて去っていき、引き止められなかったんだ。子供が帰ってきて顔貌を尋ねたら、孫が言ったのさ。
「堂の老人に似た格好でした。」
連の人はずっとこんな風に伝えてるのさ。その後官途に就く者が沢山いたってさ。
あんな人にはなりたくないと思ったのかどうか(笑)。この手の話を読むたびに、仙人志願という連中は情が薄いんじゃないか?という気になります。残される家族が迷惑だというか、子供が帰ってくるまで待ってやれよというか。一歩間違えば無責任失踪親父。(笑)