お薬どうぞ! |
欧陽文忠公が言ってたっけ。お医者さんって、どーしてこんな症状が出たのかって聞くじゃない。でさ。
「船に乗ってて嵐に遭ったらば、びっくりしてなっちゃいました。」
ってったんだって。このお医者さんはずっと柂牙を取っててさ、それを加工して汗びっしょりの手に使ってさ、雑丹を粉末にして砂茯神の流れにして飲んだらば、すぱっと治っちゃったんだって。『本草注別薬草論』ではね。
「汗を止めるには、麻黄の根っこと故竹扇を粉末にして服用します」
なの。だから文忠さんがさ。
「お医者さんが処方できる薬の選択肢って多いじゃん?初めは子供のお遊びみたいなもんだけどさ、効き目があったらその後ほとんど変えないよねえ。」
って。だから僕も公にさ。
「じゃあ、筆墨の焼いた灰なんか学者に飲ませたら、おばかとものぐさを解消!なーんて。あ、こんな感じで手を広げて、『伯夷の盥に入ってた水』を飲んで貴方の貪欲を退治します!とか、『比干の残飯』を食べれば諂い性も一発撃退!とか、『樊噲の盾』を嘗めて小心を叩きなおそう☆とか、『西子の珥』をかげば悪癖も雲散霧消!なんてどーでしょーね♪」
公ったら、げらげら笑っちゃってさ。元祐六年閏八月十七日、船が潁州の境に入った時、文忠公と二十年前にここで会った時のことを思い出した。たまたまちょっとおしゃべりした事を書いただけなんだけど、そんなこともあったよなあ。
えーと、このセンテンスだけ読んだらとーばが(特にうちの崩壊東坡は)滅茶苦茶なものを飲ませていると誤解される可能性が出そうなので、注。
蘇軾には共著ですが、『蘇沈良方』という、れっきとた漢方の著作がございます。書庫官は一回チャレンジして、頭が痛くなりました。文系には手ごわすぎる代物です。せめて、博物学か植物学か薬学知識がなくては……。相方の沈括は北宋どころか中国史上屈指の科学者。(「さろん・ど・て」の存中さんです)だから、ある程度まともなものを作っていると信用して掛かってよいです。決して、このセンテンスのようにいい加減なものを人に飲ませているわけではありません。(笑)飲ませてもいいけどさ。
伯夷は御存知、首陽山わらびブラザーズ。比干さんは殷王紂さんに説教食らわせて逆ギレされ、解剖されちゃった人。樊噲はかのなまずひげ劉邦の手下ですね。鴻門の会の立役者、彼の豪快な食べっぷりで劉邦は助かった。(ひどい解説だな、我ながら)西子さんは西門豹。(某四大奇書とは無関係。戦国時代、秦の人)キレそうになった時に、珥をもみもみして気を静めたそうです。