| 『赤ちゃんをさがせ』 青井夏海/東京創元社/1890円/★★★★☆ |
| 助産婦の聡子さん、助手の陽奈ちゃん、2人の師匠明楽先生の三人が活躍するお産がらみのミステリー。 女性の大イベント妊娠・出産のこと、そして、相続問題、未成年者の妊娠、自宅出産と宗教となかなかむむむとうならされる逸品。テンポが良くて読みやすい。先輩2人がどーんと構えていてくれるから、下っ端の陽奈ちゃんの暴走振りもほほえましく見てられます。 以前NHKのドラマにもなったんですよね。この作品は青井さんの2作目。で、こんなにうまい!とうなっちゃうようなものを書けるのはもう才能なんでしょう。もっと読んでみたいです。 |
| 『ヴァージンスピリッツ』 青野朋子/ |
| そんなに処女って捨てたいものなのか。メロドラマか、ワイドショーちっくな話が続きます。救われない。でも最後の話はホッとします。 |
| 『アフリカにょろり旅』 青山潤/講談社/1680円/★★★★☆ |
| 今年は土用の丑の日が2回あったけど、私はうなぎのことどれだけ知ってるんだろ。少なくとも、著者たちのように、うなぎのあれこれを知るために、えらい目にあってる研究者がいることは知らなかった。 東京大学海洋研究所のウナギグループの、まだ収集されていないうなぎの標本を採取する旅の過酷さを面白おかしくつづったこの本、当人たちの苦労はいざ知らず、かなり笑わせてもありました。食べ物、暑さ、トイレ、先の見えない日々。なんという苦しい冒険。でも、悲惨も極めると笑い事になる、いい例です。人事だからね。日常を退屈に感じたら読んでみたらどうでしょうか?自分の幸せに気づきますよ。 |
| 『ひとり日和』 青山七恵/河出書房新社/1260円/★★★★☆ |
| 母の海外勤務を機に、親戚のおばあさん、吟子さんとの同居が始まる。ニートの若い女の子と老女というとりあわせが、ちょっとめずらしいが、それ以外はたいした事件も内容もないといえばない。二人が違和感なくしっくりと暮らしている様や、老人の文化(笑)をかいまみせるところ、ほんわかとして、こういうぼやーっとした話は好きなので心地よく読みました。 主人公の小さないじわると手癖の悪さという、思わぬ暗さをさらしてますが、それについての必然性があいまいで消化不良なのがちょっと残念。ただ、作者は、こういう方法で若者の抱える心の傷みたいなものを示したかったのかもしれない。 ただ、主人公が、まだまだ不安定ながら生きていくことに前向きな印象を与えてくれたのはよかったなと思いました。 |
| 『新解さんの謎』 赤瀬川原平/文春文庫/540円/★★★☆☆ |
| イニシャルSM嬢(赤瀬川氏の知人の娘)からの報告により発見される「新明解国語辞典」の”変”。みたこともない例文からにじみでる人間性、いっときの日本語ブームの火付け役となっていることはいうまでもないだろう。 発見から発見へとわたり歩き、どっぷりとはまる著者たちの様子は笑えるけれど、”新解さん”のすごさも際立ってくる。 同時収録の「紙がみの消息」、ふだんは意識しない紙について考えさせられます。 |
| 『超芸術トマソン』 赤瀬川原平/ちくま文庫/945円/★★★★☆ |
| 「京都オトナの修学旅行」で出会い、「新解さんの謎」ではまり、この本にはしりました。いまや定番となってる路上観察学の生みの親なんですね。誰もが目にしても見てなかった、道々の異常事態(オーバーでした)を細かく考察してみる(決してその理由を尋ねるようなマネはしないで)なんて、誰も思いつかなかったよね。 さて、文庫本の表紙をよく見ていただきたい。男性の足元に鳥瞰図が見えますね。これは、これは彼が煙突の上に立ってるんですよ!!この写真を見るたびに手に汗握ります。 |
| 『大和魂』 赤瀬川原平/新潮社/1575円/★★★☆☆ |
| 戦後さけられてきたこの言葉にそって、日本人について語っている。残念ながらそれほど面白いと思えなかったが、日本人の思考の源泉はちょこっとのぞけると思います。 |
| 『ウメ子』 阿川佐和子/小学館/1575円/★★★☆☆ |
| ドラマ化されているのをみて(といってもドラマはみていないけど)、どんな話なのよ?と興味を持ちました。すると図書館ですぐにこの本に出会いました。意識したらそれが目に付くようになるというのはこういうことでしょうか。 ストーリーは、幼稚園に転校してきたウメ子とみよちゃんの友情物語。紙芝居屋さんがでてきたらり、家出したり、大怪我したりと休む間もありません。意志が強く、決めたらやり抜き、ちょっとへんてこなウメ子の魅力全開ですが、彼女にあこがれ、弱虫で甘えっ子だったみよちゃんが成長していくその変貌ぶりもおもしろい。十一年ぶりに二人が再会する章は新たな発見があって胸がすっとしました。 |
| 『藪の中』 芥川龍之介/ちくま文庫「芥川龍之介全集4」より/★★★☆☆ |
| 死体を発見した木こり、旅の法師、盗人を捕まえた男、殺された男の舅、盗人で殺害者の多襄丸、清水寺で懺悔する女、巫女の口をかりてしゃべる死霊の話が、一つの事件について語る。それが、同じ事件を話しているようで立場により少しずつ状況が変わって見える。ひっかきまわしてなにも出てこないような、まさに真相は藪の中なストーリー。短編ながら深く考えさせられた。 |
| 『肝、焼ける』 朝倉かすみ/講談社/1575円/★★★☆☆ |
| 恋する年上女の、つっぱしれない恋模様がじれったくてせつない。思い立って訪れる彼の赴任先、稚内で、過ごす半日で自分の気持ちが形になってくるところがいい。なかなか彼の自宅へ向かえなくて、結果的に町内を何度も往復してるところなんか、まどろっこしいけど。下手したらストーカーだが、振り子みたいに揺れる気持ちが大人のふりをやめて、むき出しだけど素直な気持ちで飛び込むラストがいいね。そのまま放り出されたみたいで気になります。 銭湯で会ったおばちゃんの「キモ、焼けるわ」という言葉が印象的。タイトルにもなってるし、結局主人公もその意味を聞けなかったし。のれんに腕押しみたいな彼の態度の本音はどこにあるんでしょうねという後味が残る。 他「一番下の妹」、「春季カタル」、「コマドリさんのこと」、「一入」を収録。どれも、女性の一人語りでなんか冷静なうじうじだけど、共感しちゃうところも多し。主に北海道が舞台の作品です。 |
| 『毒婦の誕生』 朝倉喬司/洋泉社/777円/★★☆☆☆ |
| 明治、大正、昭和初期の文学作品を読んでるとときおりであう”毒婦”という単語。性悪女というイメージはわきますが、はたしていつからこの言葉が使われているのかしら?と疑問に思っているときにこの本に出会いました。 まさに知りたかった毒婦の由来を調べている本。要約すると、言葉がひろまり認知されたのは、明治10年西南戦争の終結とほぼ同時期、実在の女性犯罪者を主人公にした”毒婦もの”と称する一連の小説がバカ売れしたことにはじまる。女性犯罪者の生い立ちや犯罪に及んだ経緯の中に購買をあげるため、読者に面白く読ませるために、性欲が豊富で、男をつぎつぎと変えるやくざ的な女としてあることないことが付加された。この論理がいつのまにか裏返って毒婦=性欲、情欲にあふれる女賊という図式がなりたったようだ。 明治の犯罪歴のようなまじめな本にもそういう伝説が真実として取り扱われてたりしていて、思わずおいおい!と突っ込みたくなる。しかし、週刊誌やウワサなどその真偽がわからないうちに決め付けるように書き立てる方法、マスコミの集中砲火のような扱い未方が、100年以上たった平成未だに変わってないとも驚く。 明治の女性犯罪の歴史を知る上でも面白い一冊。 |
| 『四日間の奇蹟』 浅倉卓弥/宝島社文庫/725円/★★★☆☆ |
| 指の損失のためピアニストとしての将来を閉ざされた如月と、脳に障害を持つ少女千織。如月と千織は施設をまわり演奏を披露していた。ある日おとずれた診療所で起きた4日間の不思議な出来事はまさに命の不思議と奇蹟だった。 オーストリアの街で夢を断たれ、呆然としていた如月に、オーストリア人のピアノの先生が言うセリフがある。「君が失ったのは、指なのだ。・・・彼らは命を奪われた。・・・指だ。命ではない」と。夢や希望を断たれることの悲しみは計り知れない。でも、生きていれば何とかなる。この希望を私たちは忘れてはいけないんだと思う。作中にベートーベンの「月光」という曲が出てくる。その調べと共に訪れるクライマックスは感涙だ。 第1回このミステリーがすごい大賞受賞。 |
| 『広告放浪記』 浅暮三文/ポプラ社/1680円/★★★★☆ |
| 営業の仕事をしたことある人は、この新人広告代理店営業マンの彼の話に人ごとに感じないと思う。本当に身につまされる。彼のもがきを読んでいると、昔の自分を思い出してせつなくなる。ぐしゅんとなる。 大学卒業したての、社会人なんて名ばかりの、新人大人には自分がどういう風に大人をすればいいか全然わからない。会社や上司にむやみにたてついてみたり、飛び込みの営業なんてうまくいかないけど、会社にもいれないので空アポを書いてみたり、日報に嘘をかいたり。さぼるために喫茶店から、やがてはトイレの個室にたどりついたり。読んでいてもういたたまれない。 けれど、アサグレくんがえらいのは、会社ではみ出し者だけど、少しは自分の仕事をする努力をしているとこだ。日報へ書き込みできるお得意先(仕事はとれなくても)を得るために、話せる場所をみつける。最後はだまされちゃうけど、仕事も取ってくる。出向先では若者と組んで仕事を軌道に乗せる。ダメダメくんの日常も、小さいコツコツが続けば、倒れてももがき続けていれば実になるという事実を教えてくれている。彼が恥を重ねていく先にこういう成果がでてくるとちょっとうれしかった。 |
| 『活動寫眞の女』 浅田次郎/集英社文庫/580円/★★★★☆ |
| 三谷薫は京大に入学し京都の町に馴染めない自分をもてあましていた。そんなある日さびれた映画館で医学部に通う清家忠昭と出会う。日本映画ファン同士意気投合した二人は清家の紹介で太秦に撮影所へアルバイトに行くことにする。 京都の町と季節と風俗がそこで暮らしているように感じられる。そして京都という千年続く都市の閉鎖的な息苦しさも。学生運動も収束しつつある昭和44年、そして日本映画業界もその繁栄の時代をはるか過ぎ、テレビ業界にのみこまれ終焉を迎えていた。映画という仕事に憧れをもちつつもこの業界の先を見切っている三谷と公家の血筋をもつ清家。そして、同じ下宿の先輩早苗。彼らはエキストラとして出演した現場で絶世の美女に出会う。早い段階でこの「女」の正体がわかるが、その謎が解けたときよりも、途中で読んだ最後の解説の1行目でかなりゾッとさせられた。端的な短い状況説明のほうが怖さを引き出すものかもしれない。 大学生活とは長く退屈な、将来を決める最後の、そして夢を見れる愛すべき時間があった。振り返ればそうだったと思う。この時代の若者は今よりもずっと自分自身を見つめる時間が長かったかもしれない。 失われた懐かしい青春を思い出させる話だ。 |
| 『壬生義士伝(上)(下)』 浅田次郎/文春文庫/各620円/★★★★☆ |
| 南部藩から脱藩し、新選組に入隊した吉村貫一郎は、国に残した妻と子の為に守銭奴と蔑まれても仕送りする。 慶応4年1月の雪が舞う深夜、大阪南部藩蔵屋敷に満身創痍でたどりついた侍と一緒に、私もこの物語の中へ引き込まれていった。「壬生狼」と恐れられた新選組隊士として活躍する吉村貫一郎。元新選組隊士、藩校の生徒と1人1人から語られる話から「吉村」像が立体的に浮き上がってくる。髪も着る物も食べる物さえ削り、削り、「金、かね、カネ」と奔走して目を背けたくなるような守銭奴かと思うと、子供に愛される子供好きなおっとりした大人に変わり、鼻につくような「いい人間」かと思うと、薩長から恐れられる鬼の面を持った剣士となる。1人の人間でも、別々の人というフィルターを通すと何色にも変わっていくのだと気づかされる。そして、交互に織り交ぜられる南部なまりの侍の独り語りが、侍として生き抜くこと、人間として生き抜くことの辛さと難しさをさらに訴えかけてきた。 泣ける。とにかく涙がぼろぼろととまらなくなる。イチオシの作品だ。 |
| 『鉄道員』 浅田次郎/集英社文庫/500円/★★★☆☆ |
| これってホラーですよね。でも心がホッとする、少しホロリとさせてくれる、まさに浅田ワールドです。親子の情について考えさせられました。 |
| 『あやし うらめし あなかなし』 浅田次郎/双葉社/1575円/★★★★☆ |
| いとこやはとこたちと一緒に伯母の寝物語を聞く・・・という場面から始まる妖しく悲しい7つの物語。 幽霊はこの世に思いを残すので現れるともいいますが、激しい情念をつのらせるのは人。人と人が織り成すお話が悲しく怖い世界を創り出してます。 前後がこの伯母から語られる怪談で、途中そこを離れての怖い話へと繋がっていきます。「遠別離」というのが、目をひきました。あちらから見る景色とはこういうものなのか・・・などと、想像してしまいます。悟った瞬間涙があふれます。 「客人」ってのが一番怖かった。「帰りたくないの・・・」とはぜひにも愛しい人からだけ言われたい言葉です。ゾクゾク。 |
| 『憑神』 浅田次郎/新潮文庫/540円/★★★★☆ |
| 幕末江戸、御家人の別所彦四郎が拝んでしまったのは貧乏神の祠。能力はありながら不運に見舞われていた彦四郎の行く末は? 裕福な大棚の主人風の貧乏神に、巨体の相撲取りの疫病神、そして、いたいけな少女の死神。彦四郎と、彼が拝んだからと仕事(貧乏にしたり、病気にしたり)をまっとうしようとする神様とのやりとりは、絶妙だ。そうした、ユーモラスで少々胸もすくストーリーで終始するだけかと思うと、そうではない。浅田次郎の真骨頂は、泣かせてナンボ。幕末という時代、役割を終えてしまっている武士の始末についても、彦四郎に考えさせているのだ。 物事の最後には生贄が必要なのかもしれません。宇宙戦艦大和の艦長しかり、アルマゲドンでのパパしかり。腐りきった武士社会で、最後にきらりと光る彦四郎の信念というか、活躍の場を与えることで、神様との契約にも、時代の終焉にも花を添えている。でも、だからこそ、岩のように動かない彦四郎の頑固さは、もどかしい。かっこよすぎるぜ、兄さんようという掛け声とともに本を閉じました。 |
| 『東京育ちの京都案内』 麻生圭子/文春文庫/620円/★★★☆☆ |
| 京都関連本ってホント星の数ほどある。気がつけば京都本のコレクターとなっている。京都検定対策で読みまくった中、出会った1冊。 京都人が書く京都の本とは結構ある。もちろん、同じくらい京都を大好きなよそ者が書く本もある。その中でこの本がいいと思うのは、「よそ者として知りたかったこと」を、著者が実際体験して紹介していることと、ご当地の方が語るとき感じる鼻につく感じ(ごめんなさい)がないところ。東京育ちと銘打ってるが、著者は幼いころは愛媛で育ったともあるそうで、そこが余計に身近に感じるのかな? |
| 『京都がくれた「小さな生活」』 麻生圭子/集英社be文庫/730円/★★★☆☆ |
| 京都に住んで7年。著者が住んでみての目線の京都案内です。東京での暮らしから一転、生活の小さなことに喜びを感じたりしてるところ、いくつになってもがらりと目線を変えられるというのはいいことだと思います。外から来て京都の生活に惚れた人だけあって、少々マニア度も高い気がしまけど。京都人をもびびらす?という京都通ぶり。でも押し付けがましさがないのがこの人の京都本の魅力だなーと思います。 |
| 『失踪日記』 吾妻ひでお/イースト・プレス/1197円/★★★★☆ |
| めずらしくマンガを取りあげてみました。現在、話題の本にもなってますね。めずらしくダンナと趣味が一致したので購入してみました。 漫画家(当時人気作家)でありながら突然失踪→自殺未遂→路上生活→つれもどされて→失踪→路上生活→肉体労働→自宅に帰る、その後アルコール中毒→強制入院という、さらっと聞いてもその強烈な半生に驚かされます。あまり生々しい部分は書きたくなかったという吾妻氏のマンガは「あれ?結構社会生活を捨てても生きてけるのね」、あるいは「おもしろそーじゃん」という錯覚すら抱かせます。他人の赤裸々話は不幸なほど面白いっていいますけれど。路上生活話も面白いのですが、お気に入りは配管工として働いたときの話。アル中になり強制入院させられる話は笑えません。酒飲みには、こ、怖いわぁ!な話。 |
| 『インディヴィジュアル・プロジェクション』 阿部和重/新潮文庫/380円/★★★★☆ |
| 渋谷の映画館で映写技師をするオヌマ。彼には隠された過去、スパイ私塾で訓練した5年間がある。東京で密かに暮らす彼の前に、次々と難問トラブルが。過去の塾のしがらみか、新たな敵か。錯乱と混乱の局地。 オヌマの日記調で書かれる一人称の文体は、最後には読むものを混乱させていく。しかもその混乱さえ確信できない終りだなんて!!こいつは面白い!です。正直、最後は何が何だかわからなくなっちゃって、解説を読むことで少々そのフラストレーションは解消されましたが、自分が読み違えたのか、そこに作為があるのかといつまでも目が離せないところがよかった。時間をおいてもう一回読み直したい1冊。 |
| 『未亡人の一年(上下)』 ジョン・アーヴィング/新潮文庫/860・820円/★★★★☆ |
| 主人公のルースが4歳の夏とその後小説家として成功し、エディと再会してから41歳までをつづられている。しかし、スポットライトが当たっているのは彼女だけではない。主要な人物はルースとルースの両親テッドとマリアン、そして、マリアンの若い愛人エディの4人。連鎖と奇跡を信じさせる物語。アメリカ版大河ドラマである。とてもとても長い話でもったいぶっててなに!という翻訳特有の言い回しにくじけそうでしたけれど、積み重ねたミルフィーユがパリッとした食感をもたらすように、幾重にも重なったバームクーヘンの重厚さがお腹を満たすように(←食べ物にたとえちゃうなんて・・・)この物語もたっぷりと心を満たしてくれる。 次々に出てくるセックスシーンに驚かされるけれど、(現場も会話としても)包み隠してないぶん、さらりと自然に読める。というか、お互いに興味を持って、合意すれば結ばれるのはやっぱり自然なことなのだ!とあらためて教えられた気分。ただ、セックスについて普通に会話するテッドとルースの親子は信じられないけれど。父とそんな赤裸々な話をするなんて信じられない!! さて、興味深いのは作家の様々なヴァリエーション。何とこの小説には4人の小説家がでてくるのだ。絵本と挿絵作家である父、成功する女流作家ルース、年上の女性、マリアンへの愛をつづり続けるエディ、そして息子の喪失を乗り越えるために書き続ける推理小説家。創作することの苦しみ、そして熱意をも上手くストーリーにしみこませていて面白い。 |
| 『鳴風荘事件 殺人方程式U』 綾辻行人/光文社文庫/720円/★★☆☆☆ |
| 明日香井叶の妻深雪が10年ぶりに学生時代の仲間たちと再会した。訪れた鳴風荘で殺人事件が発生!深雪は叶の双子の兄響とともに事件を探る。 トリック云々は置いておいて、これはまぁ面白かった。だが、この推理小説にピリリと味を加える双子の兄弟叶と響の入れ替わりはどうも・・・。一卵性双子の1人として言わせてもらえれば、少々無理があるような気がします。一度でも2人に会ったことがあればアウトですね。 |
| 『迷路館の殺人』 綾辻行人/講談社文庫/620円/★★☆☆☆ |
| まず迷路な家に住む人がいるのだろうか。いやまず建てる人がいるのか?ファンの方には申し訳ないですが、気になって気になって。どうやら綾辻氏の本にはなじめないようです。 |
| 『ざぶん 文士放湯記』 嵐山光三郎/講談社/1995円/★★★☆☆ |
| 温泉温泉となんとも辛気臭い気がしないでもないが、お台場にオープンしたお湯のテーマパークがもてはやされる今、温泉を「嫌い」と言い切る日本人は果たして存在するのだろうか? 温泉地の自然に囲まれた環境、美味しい料理、そしてなによりも心と身体を溶かすようなお湯。その効果は、日常疲れきった身体を復活させ病気を治癒するだけでなく、想像力もかきたてることだろう。そして、現代人もさることながら、明治、大正、昭和と活躍した作家たちに不可欠なのはどうやらお湯らしい。いや、温泉がなければ数々の名作も生まれなかったのかもしれない。鴎外が闘志を燃やし、子規と漱石が親交を深め、紅葉が小説のネタをひろい、有島と厚吉が愛にふけり(?)、与謝野鉄幹が浮気をし、啄木が愛人と短歌を詠み合い、康成が新しい小説を生み出す。日本の誇るべき文化がここにあると言えるだろう。 赤裸々に、そしてなんとも普通な人間として登場する文士たちは、名ばかり知っている近代日本文学の数々を身近に感じさせる。 どこいっても同じの温泉街なんて味気ないところはそうそうやめて、ひっそりと休める温泉宿がふえることを希望する。そういう宿の露天風呂で文豪たちがと語らうことは贅沢なことかもしれない。 |
| 『温泉旅行記』 嵐山光三郎/JTB/1575円/★★★☆☆ |
| 温泉と文士。きっても切り離せないようなゴールデンコンビだが、嵐山節と温泉も切り離すことはできない。というほどこの旅行記を読むとまったりしながらムムムとさせられる。 「なぜブンシは温泉にはまったか」では@原稿を書くのに静かな環境を求めてからK妻からの逃亡派まで12通りの分類をしたり、温泉と作家の関係をAからEまで分類している。また、母親の腰の療養のために出かけた湯治の旅での俳句合戦もほのぼのできる。地元松山の道後温泉もでてくる。そういえば先日読んだ、荒俣宏さんの『妖やしの秘湯案内』で読んだ温泉ともかぶっている部分が多かった。ちょっと温泉まで行ってみようかなと気分が誘われてしまった。 |
| 『日本一周ローカル線温泉旅』 嵐山光三郎/講談社現代新書/714円/★★★☆☆ |
| 嵐山氏の文章は歯切れがいい。リズムがあって、旅に出た時に味わう興奮の鼓動のようだ。今回は「ゆったりのんびりだらりと日本一周の旅」にでることにしたらしい。その内容は、@ローカル線を利用するA上等の旅館やホテルに泊まるBうまい料理を食べるC温泉にも泊まるD気の会った友人と一緒の旅Eのんびりふらふら気ままに旅することをモットーとしている。 北から南まで、ローカル線にゆらゆらゆられ、うまい駅弁をビールと一緒にいただきつつ、いい温泉をみつけるとひょいと駅に降り立つ。時には自転車ももちこんで、四万十川沿いにサイクリングなんてのもしてみる。頑固な温泉の主人にへこへこ頭も下げてみる。ビールくれよ、といって断られてみたりもする。本当に気ままである。楽しそうだ。そんな気まま旅、みんながみんなできるものではない。しょうがないので、われわれはこの本を読むことで旅した気分を味わうのみだ。 |
| 『妖やしの秘湯案内』 荒俣宏/BE-PAL BOOKS 小学館/1529円/★★★☆☆ |
| 単なる温泉ガイドブックではなく、隠れ里にあり「鬼気(すだま)の気配」と「薬師如来がまつられている」という2点をおさえた秘湯案内。それをピンホールカメラで撮っていくという面白い企画。何といっても針穴ほどにあけた穴から写真を撮るという、ピンホールカメラで撮った写真がいい。人の目で見たのと同じような写真ができあがるというだけあって、「何かの気配を感じる写真」が見ることが出来る。温泉は昔ながら・・・であるから、山奥、混浴である場所が多いが、苦労しても行ってみたいという秘湯が何点かあった。特にいいのが、昔高峰美枝子と上原謙が出ていたTVコマーシャルフルムーン旅行で出ていた、群馬県・法師温泉の長寿館。暗い屋内にやわらかく差し込む光の美しさ。黒部渓谷にあるという、桜を見ながらはいれる富山県・宇奈月温泉の喜泉。黒部の絶景と舞い散る桜、温泉・・・すばらしい! |
| 『風水先生 地相占術の驚異』 荒俣宏/集英社文庫/550円/★★★☆☆ |
| Drコパに代表されるように、私の中で風水とは、家具の配置、部屋の方位で個人の生活環境を向させる占いという認識があった。金運をアップさせるには西に黄色いものとかいう。もちろんそういう個人風水の面ももつが、もともとは地相の吉凶をよみ例えば国家の繁栄を願ったりする大きなものが本義であるらしい。 香港での風水戦争からはじまり、国内の有名企業の風水を見るところまでくると、なんとなく引き込まれてしまっていた。次の章の自分の家の風水を見てみようなんてところでは、気がつけば目が血走って、部屋の吉凶を占い模様替えまでしてしまった。げに恐ろしき風水の魔力(笑) 読み物としては後半の日本の風水を検証して歩く紀行文がおもしろい。10年ほど前の内容なので、企業や都市の現状を見比べてみてみるという楽しみもある。奥深く魅力あふれる世界なわけです。 |
| 『日本妖怪巡礼団』 荒俣宏/集英社文庫/650円/★★☆☆☆ |
| 霊鎮めをしよう。そう銘打って、各地の怪異スポットを訪ね歩いたレポート。 20年位前の本なので、少々古臭い感じはしますが、20年たっても変わらないものはあります。それは、祟りや妖怪、霊というものがあると思われていること。もちろん、消えてしまっているものもあります。それは、怪異があると語られている場所。土地の開発、時代の流れで消えてしまっている。世紀末という場所で、過去の恐怖を体験しようという企画物です。 悪ふざけともとれそうなところがありますが、平将門あたりで決着つけるところなどは荒俣さんらしいです。 |
| 『図書館戦争』 有川浩/メディアワークス/1680円/★★★★☆ |
| 本を護るために戦う。そして、平和な図書館がアクティブに、デンジャラスワールドに。はじめはポカン。テンションの高い郁を見ていられなくて、でも、いつのまにか引き込まれてしまう。そういうおもしろさがありました。 同僚の手塚との微妙な関係、上司の堂上との確執そしてまた微妙な関係、ちょっと現実とはずれた未来世界をドキドキワクワク楽しみました。本当に本を権力に狩られる世界なんてきてほしくない。 |
| 『阪急電車』 有川浩/幻冬舎/1470円/★★★★☆ |
| 阪急電車という関西ローカル線で垣間見る人々のドラマ。停車駅ごとに1話。それもちゃんと折り返して収拾つけている。ほのぼのあり、考えさせられることあり。別れあり出会いあり。とてもいい話で、以前読んだ「図書館戦争」よりは断然こちらが好きでした。 まったく関わりのない人たちが、一緒の電車に乗り合わせることでつながったり、話を耳にすることで勇気付けられたり。ありそうでないような、でも、意外とアリなことかもしれないなと思うのです。私は普段の生活で電車を使うということはないので、この沿線を利用できる人にちょっとあこがれたりもしました。 小さな孫の女の子を連れたおばあちゃんはきついけどかっこいいなぁ。 |
| 『狂人の部屋』 ポール・アルテ/ハヤカワ・ミステリ/1260円/★★★★☆ |
| このミス2008海外編で7位になってた本。タイトルが魅力的でしょ。 過去に、恐ろしい小説を書いた青年が密室で不可解な死を遂げたという館。開かずの間だった、この部屋を開いたときなされた予言通り、不可解な死が連続する。 古典の雰囲気ただよう、本格ミステリー。親族間に起こる不気味な死、不思議な現象というお膳立てが非常によくて、ありえない出来事を鮮やかに解き明かす手並みがすばらしい。ツイスト博士(のシリーズらしい)の登場ぐあいも絶妙です。 また、ミステリーとは別立てでも楽しめるロマンス(これがはじめからうまく行ってたらこの事件はなかった?)も見逃せません。サービス満点です。 ポール・アルテは注目の作家だと思います。フランスのジョン・ディクスン・カーと称されるそうですが、カーを知らないので私にはピンとこないのですが、みんなが言ってるのでそうなのでしょう。作品は年1作品ずつ翻訳されています。これは、6作目です。 |
| 『赤い霧』 ポール・アルテ/ハヤカワ・ミステリ/1155円/★★★☆☆ |
| 『狂人の部屋』がおもしろくて、”じゃあ、つぎ!”という感じで読んでみました。 ツイスト博士はでてきませんが、かつて、ブラックフィールド村で起こった密室殺人を解くために、”帰ってきた”デイリー・テレグラフの記者を名乗る男が登場します。娘の誕生日に、手品を披露する予定だった父親。カーテンで仕切られた密室で殺されたこの事件を再調査しはじめると、次々に殺人事件を起こり始めます。二重にも三重にも仕掛けがあり、その上、当時ロンドンを震撼させたあの「切り裂きジャック」まで融合させたミステリ。これをおもしろいと言わないで何をおもしろいというのでしょう。 トリックや動機などは、『狂人の部屋』の方が好みですが、誰が犯人か、誰が語り手かを不確かなものにし、全体を不安であおっているところなど、陰惨で謎が深まってます。「切り裂きジャック」がらみの犯行にうってつけです。下手したら作者が示す犯人すら信じられなくなるんですけどね。 |
| 『第四の扉』 ポール・アルテ/ハヤカワ・ミステリ/1155円/★★★☆☆ |
| ツイスト博士シリーズ。 切り刻まれて死んだ霊が出るという<呪いの部屋>、<交霊術>、<密室殺人>、<奇術>と、これでもかというほどたくさんの要素を盛り込んでます。 舞台はイギリス、ある小さな村での出来事です。二重にも三重にトリックが仕組まれてて、休む間もなく、結末にも驚かされました。 ポール・アルテによる最初の長編作品(いわゆるツイスト博士シリーズの1作目ですね)。本格ミステリが楽しめます。 |
| 『七番目の仮説』 ポール・アルテ/ハヤカワ・ミステリ/★★★★☆ |
| ツイスト博士シリーズ。 中世の奇妙な医者の扮装、密室で消えてしまったペストの患者。奇抜な装飾が目を引きます。劇作家と名俳優の奇妙な賭け事とどうつながっていくのかが、見もの。おどろおどろしい、恐怖をかき立ててくれて、横溝正史を彷彿とさせます。正統派のトリックです。こういう味付けは大好きなので、ポール・アルテは好きなんですが、今回は読むのに時間をかけてしまい、ぶつぎれで理解がしにくくなっちゃって惜しいことをしました。ミステリはどっぷり浸かることがいいのです。 |
| 『亜愛一郎の狼狽』 泡坂妻夫/創元推理文庫/714円/★★☆☆☆ |
| 「亜」さんなんて、いきなり自己紹介されると困りますね。本人に罪はないんですけど。カメラマンで美青年の亜愛一郎が活躍するというか、巻き込まれる探偵小説。亜さんの飄々としたところがいい味出してます。事件の度に登場の三角形の顔をした洋装の小柄なの老婦人。気になります。 |
| 『陰桔梗』 泡坂妻夫/新潮文庫/388円/★★★☆☆ |
| 「紋章上絵師」という職業を初めて知った。泡坂さんの実家は紋章上絵師の職人で、自身もその三代目として家業を継いだそうだ。タイトル通り、男女間のそして、人生の陰、悲しみが伝わる短編集である。第103回直木賞受賞作。 |
| 『大衆食堂へ行こう』 安西水丸/朝日文庫/630円/★★★☆☆ |
| 流行や世間に流されず、町にしっかり根づいている大衆食堂。水丸さんが実際に訪ねて味わったエッセイ。 ほのぼのしつつ、あのケチャップいっぱいのオムライス、ナポリタン、お子様ランチを思い出した。それはデパートの食堂か。焼き魚に小鉢、ご飯とおみそ汁っていう家庭的な食事を出す店はいつまでもがんばっていてほしいものです。 |
| 『頭のうちどころが悪かった熊の話』 安東みきえ/理論社/1575円/★★★★☆ |
| 7つの動物寓話。子供向けのおとぎ話にみえて、大人に受けそうな内容です。思わずクスリと笑っちゃうような。 生きてりゃありそうなことがわかりやすくまとめられてる。ところどころにちりばめられたブラックユーモアもありでツボにはまりました。7つの話の登場人物たちがちょっとちょっとリンクしてます。 子どもが読んだらどういう風に受け取るんでしょうね?人生の機微がちょこっとわかります。 |
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| 『神無き月十番目の夜』 飯嶋和一/小学館文庫/670円/★★★★☆ |
| 戦国時代が終わって、江戸という新しい世が始まるとき歴史から消えてしまった村がある。 旅人が迷い込んだ山奥、いまさっきまでの生活のにおいがあるのに村人が忽然と消えている・・・という民話や昔話を思い出させるミステリーにこんな事実があった!という驚きのストーリー。 実は村一揆を思わせる内容に、はじめ抵抗があって、「この本読めねー」と放り出してたんですよ。しかし、読んでみたら引き込まれました。歴史の舞台にぜったいあがらない小さな人々(ホントに背が小さいとかではないよ!)の実像がくっきりと浮かび上がっています。時代の端境期には実際こういうことがあったんでしょうね。消えていった村や人への思いが募る作品でした。 |
| 『墜落遺体 御巣鷹山の日航機123便』 飯塚訓/講談社/1575円/★★★★☆ |
| 1985年夏、日航のジャンボ機が墜落した。当時、私は小学生で、一休さんの実写ドラマの放送中に速報が入ったことを思いだす。「飛行機の墜落」大変なことが起こってしまったと思った。 空前絶後の大惨事に当時マスコミは連日事故の報道していた。生存者4名がいたことと、その多くの被害者について、一瞬にして愛する人を奪われた遺族の方々について。しかし、現場にはまず、生存者を救助しにいった者、ご遺体を回収した人たち、微細を見逃さずに身元を確認し、遺族の元へと返してあげた人たちがいたのだ。この本は身元確認の指揮をした高崎署元刑事一課に在職していた飯塚訓氏の壮絶な現場の話である。 警察関係者たちが、医師や看護婦たちが、ボランティアの人々が不眠不休で一心にうちこんだ確認作業は、八月のさなかというだけでなく、墜落遺体のすさまじさにまさに地獄のようだった。遺体を、たとえ腕の1本指の1本でも持ち帰りたいと願う遺族のために、何の準備もなく死ななければならなかった被害者のためにみんながある種の使命感をもって仕事をしたようだ。一時も休まず作業を続ける現場の人々に涙した。一体一体、たとえ皮だけ、指だけの体でも、ていねいに汚れや血をふき取って人の形にもどしてあげようとした、日本赤十字社群馬支部の看護婦の方々、最後までご遺体の一部でも見つけ出そうとマン・ツー・マン方式で棺の間を確認して回る警察関係者。事故を起こした立場であり、罵倒されながらも遺族につきそいお世話をした日航の社員たち。現場の記録ほど壮絶でリアルなものはない。呆然としながら泣きながら読みきった最後には力が抜けてしまった。死を知ることで生の貴さをいやというほど感じた。事故からはや19年。記憶が風化しつつある今、この本を読めて本当によかったと思う。 |
| 『墜落現場 残された人たち』 飯塚訓/講談社/1575円/★★★☆☆ |
| 前作『墜落遺体』が当時の現場の騒然とした記録ならば、この『墜落現場』はその後の話である。墜落までの短い時間に家族にあてた遺書を残した被害者の思いは家族たちにどう伝わったか、奇跡の生存者として生き残った4人の人々と、彼らを守るために奮闘した病院現場の人たちの話、最も過酷だった墜落現場で作業をした自衛隊の人たちの話、葬儀をとりしきった葬儀社の話と、別の角度で日航機墜落事故の当時を振り返っている。時は否応なく人々の記憶を薄れさせていく。あの事故では忘れてはならない部分が多くある。それをもう一度考えさせられた。 |
| 『リカ』 五十嵐貴久/幻冬舎/1575円/★★★☆☆ |
| 都市伝説の面白さは、「友達の友達」が「何かわからない者」によって「恐怖」に陥れられることだろう。そして、その対象が隣の部屋の住人かもしれないし、もしかしたら明日には自分かもしれない恐怖だ。だが、身近な話であっても、決して自分には降りかからないだろう恐怖であるから刺激的で面白い。 本間は40前半の妻子ある普通のサラリーマンのおじさんだ。ある時、知人から出会いサイトの存在を聞き、その架空の世界で遊ぶ面白さを知る。そこで「リカ」に出会うのだ。 過剰な思い込みと妄想、留守電に何回も吹き込まれるメッセージ、いつの間にか身辺に近寄ってくる恐怖・・・。自分には関係がないと思っていた恐怖を体験させられることは、一番恐ろしそうだ。それは、誰にもわかってもらえない恐怖でもある。そして、何度殺しても死なない自然に反したものの持つ恐ろしさは、絶望を感じさせられる。 「こわい」でも「みたい」まさにこの作品のためにある言葉かもしれない。 |
| 『だめだこりゃ』 いかりや長介/新潮文庫/460円/★★☆☆☆ |
| 私の中でいかりやさんと言えば、ドリフターズ→8時だよ!全員集合→お化けがでてくるコントで「うしろ、うしろ〜」の三段論法だ(笑)昨年の突然の入院、その後復帰するもドラマでセリフが聞き取れない様子をみて少々心配になった。そんな中「こんな本出してたな・・・」と手にとってみた長さんの自伝書。 ドリフターズ結成秘話、コントを作り上げるまでの苦労、メンバーの話などを、「そうだったのか」と拝見した。彼はあとがきで「苦労話も可笑しい話もあったがそんなもんは棺桶に持っていけばいい」と思っていたと言う。しかし、荒井注氏、ジミー時田氏の死にあって、彼らの記憶が自分が死ぬ事で風化していくのは申しわけないと「自分が書き残しておかないといけないかもしれないと思った」と考え直している。 しかし私は言いたい!長さんの言う「四流芸人の寄せ集めバンドマンの四流人生」、一所懸命でいいじゃない!と。これからも俳優いかりや長介のしぶい活躍を期待したい。 |
| 『カニバリズムの系譜』 池田智子/メタ・ブレーン/1575円/★★★☆☆ |
| 動物は同種同士、いわゆる共食いをする。しかし、人は人を食べない。たぶん、だいたいは・・・。 はじめに言っておきます。この本は誰にでもはすすめません。まず、怖いモノがダメな方、気持ち悪いものがダメな方は避けてください。そして、書き方が淡々としている分、途中おぞましくなることがあります。そういう本です。 しかし、なぜ?という強い疑問をもたれている方、恐い、それでもやっぱり好奇心には勝てないという方ははどうぞ。私もその一人。どうしてヒトを喰うことができるのかについて少しでも知れたらと思って挑戦してみました。 人が人を食べるという”カニバリズム”について書かれたこの本。古今東西ヒトを食べたという話は尽きないという。 そこには飢饉があったから。食べるものがなくなれば・・・食べなくてはならないという究極の状況設定はうなずける。 が、しかし、そうじゃなく食べるヒトもいます。有名なのはいわゆる猟奇殺人事件を行った人たち。ノーマン・ベイツやバッファロービル、エドワード・ゲインなど。日本では佐川一政。彼らはどんな誘惑に負けてしまったのか・・・。また、北朝鮮で飢餓を緩和するために、食の国、中国で占める人肉の地位などなど、きわめて気持ち悪い話が紹介されています。はじめは面白く読んでましたが、だんだん、具合が悪くなっていきました。著者はよくもこれだけの人喰い話を集めたもの。それを嬉々として(←?)書かれてるものだと感心します。 私がこの本から学んだのはヒトがヒトを喰うという行為はそれほど不思議ではないということ。相手を自分の中に取り込むことで、力を得たり、同一になったり、または単純に生き残るために食べる。そういう習慣があったということは事実。もちろん今は倫理的にありえない話ですが。そこで私が願うのは、今後ヒトがヒトを食べるという状況が出てこないことです。もうそれを願うばかりです。 |
| 『ポーの話』 いしいしんじ/新潮社/1890円/★★★☆☆ |
| うなぎ女が母親のポーは川で生まれた。町に住むメリーゴーランドやひまし油、天気売りと出会い、川が流れるように世界も広がっていく。そんなポーのお話。 昔大好きだったものを思い出させる懐かしくせつない物語でした。童話を思わせる優しい顔を見せながらずるくて辛らつな印象もある。大まかにいうとポーがいろいろな出会いをして、成長していく話であるが、彼が物知らずで素直なだけでなく(バカ正直に信じるところもあるけれど)、ずる賢さをちゃんともったしっかりした子であるところが気に入りました。ポーの意志の強さがぴりりとしていてかっこよかった。彼を見ていると「ドラゴンボール」の悟空の小さい頃を思い出させます。ほんと不思議なお話です。独特のいしいしんじワールド気に入りました。 |
| 『トリツカレ男』 いしいしんじ |
| →コチラ |
| 『ぶらんこ乗り』 いしいしんじ/新潮文庫/500円/★★★★☆ |
| 「トリツカレ男」でやっぱりいしいしんじはダメかもしれないと思っていたところ、またこの本で引き寄せられました。まさに、ぶらんこの力・・なのか? 小さな頃から頭がよくて、3つで文字を書き、ぶらんこも上手にこぐ、そんな弟は姉の”わたし”の自慢の弟でした。声を失い、両親を失う中で書き綴ったノートは、なんでもすばらしくよくできる弟が抱えていた弱さや不安を浮き彫りにしてくれている、そして、”わたし”たちのもとへもう一度帰ってくるためのプロローグなのでした。 弟が夜中に聞くという動物の話がステキです。そして、どんな辛い場面でも決して目をそらさない、気持ちを包み隠さない、怒ったみたいにしゃべるおばあちゃんも好き。優秀な弟をもつのに、いたって普通でがさつな年相応な”わたし”も好き。毛なしの半身を掲示板として差し出す犬”指の音”も。 彼らの存在は絶妙なハーモーニーをもっていて、さみしくて、悲しくてつらいときにも、さみしくなくて、それは、ひとつまみいれたお塩のように人生を甘くしてくれることなのよと言っているみたいです。あったかいお話です。 |
| 『盲導犬クィールの一生』 石黒謙吾/文芸春秋/1429円/★★★☆☆ |
| 泣きました。思わず感情移入。何気ない写真なのに、そこからうける喜びや悲しみが強くて、以前飼っていた犬とダブってしまいました。動物を飼ったことがある人なら、特に犬好きの人なら同じように感じるでしょうね。でも’04春に映画の公開ですが、どうなんでしょう?・・・私は観に行かないな。 |
| 『陽気なギャングが地球を回す』 伊坂幸太郎/ノン・ノベル/880円/★★★☆☆ |
| 銀行強盗なのにイイやつら。成瀬、響野、久遠、雪子。行員にも、客にも何が起きたか認識しないうちに仕事を終わらせる凄腕の彼らの獲得した金を横取りしたギャングが現れる。最後に誰が笑うのか! テンポのいい映画のようなストーリーだ。ちょっと映画「バンディッツ」やドラマ「特攻野郎Aチーム」を思い出した。人間嘘発見器、演説名人、天才的スリ、体内時計を持つ女と一人一人に特技があって、ちらちら出してくるところもいい。こんな軽い読み物はスイスイ読めていいな。 |
| 『踏切趣味』 石田千/筑摩書房1575/円/★★★☆☆ |
| 踏切、俳句、下町。とぼとぼ帰宅中に夕げの匂いがただよってくる・・・そんなエッセイ。王様のブランチにてこの本を知りました。 はじめ、小説に登場する踏切というのを題材に取材してというのだったらしいこのシリーズ。回が進むごとに何となくうやむやになってしまうのは、それ以外に面白いところがでてきたからかもしれません。踏切を通してみる生活風景。列車マニアでもない石田さんの素直な目線を通して見える風景は、普通の人と普通の町が普通に見えてきます。 |
| 『月と菓子パン』 石田千/晶文社/1890円/★★★☆☆ |
| 日々の生活の中のふとした瞬間を書き綴ったエッセイ。やさしい眼差しを感じます。著者がお酒好きなのも身近に感じさせるところかな?近所の猫たち、近所の人たちとの交流も楽しい。 |
| 『京のわる口、ほめころし』 石橋郁子/淡交社/1680円/★★☆☆☆ |
| 同じときに読んだ『よそさんは京都のことを勘違いしたはる。』の書き方、内容がすごく似てて同じ人?かと思ってしまった。ただ、文章の書き方はこちらのほうが好きかな?とにかく京都という街が大好きなので、こういう本を読むと気分が高まってしまう。 |
| 『JULIET』 伊島りすと/角川書店/1400円/★★☆☆☆ |
| 全てを失い、都会から逃げるように新しい仕事を求めてやってきた健次。観光資源しかない島で、建設途中で放棄されたゴルフ場に住み込みの管理人となる事になった。しかし、到着した晩に水字貝の魂抜けを目撃してしまう。島の老人の怪しげな話を聞かされるが彼らは一笑にふした。だが、住み込んだ施設で子供たちの様子はおかしくなっていく。そんな健次たちの前には死んだはずの人間が現れた。 死んだ妻の顔を描く水字貝、貝の中身が抜ける瞬間を目撃するととりつかれる話、前任者が激しく入れ替わる施設。ところどころに「なにかありそう」感をばんばん挿入している。しかし、そんないわくありげな話よりも、長女ルカの自傷行為のシーンが気持ち悪い。それ以外にも自殺シーンや動物の死ぬところなどが細かく詳しく書かれていて、ほとんど正視できない。すごくくらーい気分にさせられるし気分が悪い。その上、回想シーンや心象シーンが多すぎて退屈。おかげで読みきるのにすごく時間がかかりました。 フォローしときますと、後半はテンポ良く進みます。半分くらいまでをうまく乗り切れたら一気に読めるでしょう。 第8回ホラー小説大賞 大賞受賞作。 |
| 『国語辞書事件簿』 石山茂利夫/草思社/1890円/★★★☆☆ |
| 家庭に1冊必ずあるであろう国語辞書にまつわる実は誰も知らなかった事件。世の中の辞書は、それぞれに編者が独自の解釈もまぜつつ作っていて、辞書ごとに語の解釈にちがいがあると思っていた私には驚きの事実が。実は辞書間に親子関係があるって知ってました?要するに、先行する辞書の切り貼りということがあるということ。1冊ではばれるので2〜3冊をもちよってパッチワークしたり、語尾を変えたり・・・。正直おどろいちゃいました。限られた字数で一つの語を説明すれば似たり寄ったりになるのはわかりますけれど。そのうえ名義貸しというのがまかり通っているのですね。有名どころでは金田一京助氏とか・・・。また広辞苑のルーツにせまる章は読み応えありです。 石山氏の「もっとよい辞書を!」の叫びが満載。比較をする部分が長かったり、著者の心の変遷をだらだら・・・というとこもあって少々間延びしますが、身近な書物をより身近に感じられる1冊です。 |
| 『乳房』 伊集院静/講談社文庫/420円/★★★☆☆ |
| 伊集院さんの本はこれが初めて。実はずっと昔に大学の先輩から、「三年坂」をもらっているが、まだ本棚に入れっぱなしで読んでいない。すごく薄かったので(笑)まずこれを読んでみる事にした。 「くらげ」「乳房」「残塁」「桃の宵橋」「クレープ」5編の短編でなりたっている。私が一番好きだと思ったのは「乳房」。癌に侵されている妻を看病する夫。妻と夫との微妙な関係は少し悲しい。 最後に妻が病室で、夫の手を乳房に押し付けるシーンは詩的だなぁと感じた。夫婦のこういうエロティックなシーン、いがいと感動します。 |
| 『気になる物件』 泉麻人/扶桑社/1300円/★★★☆☆ |
| 「物件とは、物品などの動産のほか、土地・建物などの不動産についてもいう」ということで、街角で著者なる泉麻人氏の目にとまった”気になる物件”を紹介している。「週刊アスキー」にて連載されていたコーナーが本になった。VOWほど笑わされることなくのんびりほのぼの感覚で郷愁を誘ってくれる。時々”フッ”と笑わせてくれる物件。何がよいかというと、「こんな面白いものがありました」と言いっ放しにならないで、きちんと物件主にお話を伺っているところ。な〜るほどと腑に落としてくれていていい。 |
| 『夜叉ヶ池・天守物語』 泉鏡花/岩波文庫/378円/★★★☆☆ |
| 泉鏡花による戯曲。 越前国三国嶽の麓の里、夜叉ヶ池の竜神との約束を守り1日三度鐘を鳴らす夫婦が住む。また、姫路の白鷺城天守に住むという物の怪の元を訪れる若者。どちらも怪しげな世界と人間世界が交わる空間の話だ。人の世界など破壊してしまえ!という生々しい荒々しさを持ちながら、清い心を持つ人間への哀れみもあわせ持つ妖怪たち。しかし、ふと人間の傲慢さから隙を見せた時、自ら好むものとともに幻想の世界も閉じてしまう。 黄昏時、この戯曲の世界を開くとどうなるだろう。とうに忘れ去った伝説の世界を覗き込むことができるかもしれない。 |
| 『女たちよ!』 伊丹十三/文春文庫/500円/★★★☆☆ |
| 俳優であり映画監督でもあった伊丹十三氏。彼との初対面は、初監督作「お葬式」。公開間もない時期に母と一緒に映画館に見に行きました。ただただ、どたばたコメディの笑いを期待していた私達。あろうことか現れたのはあられもない愛人との濡れ場。嫉妬する女房などなど葬式とは思えない不謹慎な場面たち。(だから可笑しいんだろうけど)小学生の私には強烈すぎました。同伴した母もきっと戸惑ったことだったでしょう。 しかし、その強烈な個性、人間関係の面白さは今でも忘れられません。その後撮られた「マルサの女」を含め、伊丹十三は気になる映画監督に昇格したのでした。 さて、伊丹氏のこのエッセイ。映画に負けず劣らずの毒舌ぶり。ああ感服しました。 女性の理想の姿、日本人のあるべき姿、食べ物、車、服装・・・と次々に繰り出している叱咤は、こちらを激しくうんざりさせますが、その言葉の中に、美しいものへの強いこだわりというか思慕のようなものを感じられます。現状をそのまま受け入れるのではなく、より理想的な形へ昇華させたいという伊丹氏の思いでしょうか?職業柄なのか、生まれ持つ性癖なのか。映画では醜いものをみせることで、エッセイでは現状を見直すことで我々に問いかけていた気がします。留まればそこで終わり。「おいお前!それでいいのか?」と聞かれている思いがしました。 |
| 『ヨーロッパ退屈日記』 伊丹十三/新潮文庫/500円/★★★★☆ |
| 俳優としてヨーロッパに滞在した頃のエッセイ。 当時、まだまだ海外旅行が夢のまた夢のころのこと。現地の人とのやりとり、海外での日本人の心がまえ、こだわりのオシャレなど、いまでも読む人の心をワクワクさせる内容です。 「女たちよ!」よりもとっつきやすかったです。読むと満足できる一冊。 |
| 『晴れた日には鏡をわすれて』 五木寛之/角川書店/567円/★★★☆☆ |
| 醜い顔を持つアカネは隠岐の島後の民宿で隠れるように暮らしていた。そこに訪れたクサカゲマコトとの出会いをさかいに、運命が一変する。 「マイ・フェア・レディ」を髣髴とさせる内容、顔を根本から変えてしまうという、SFのような、ホラーのような話にはかなり引き込まれた。自分の顔を気にすることは誰にでもあることだ。もう少し、目がパッチリしていたら、もう少し鼻が高かったら・・・、言い出したらきりがない。わたしだって、もし叶うなら、美しく生まれ変わりたいと思う。 しかし、見た目は内面の現れたものではないだろうか。心の優しさや、自信、知性また反対に、意地悪さ、卑屈さはすべて外ににじみ出てくるのだ。 美しく生まれ変わったアカネはその事を知っている。最後に山岸猛男ともう一度会い、魔天崖から飛び降りようとすることを受け入れるシーンは泣けた。そして、そこでアカネがまた戻ってくる事を信じ、待っていた山岸にも。 |
| 『奇妙な味の物語』 五木寛之/集英社/819円/★★★☆☆ |
| 口に含んだら、見た目からは想像もつかない不思議な感覚に包まれる。これはそういう話。純粋無垢だと思っていた子供たちが、無機質な車が、常識と思っていたことが・・・ふたを開け見たら全然違ってた。裏切られる感覚が心地よいことばかりならばいいのですが。中には首筋に冷たいものをあてられたような恐怖もあります。・・・正直怖かった。特に「ストレンジ・フルーツ」が。そして、「無理心中恨辺本」は好き。タイトルから全てがわかるところが。 |
| 『言いまつがい』 糸井重里監修/新潮文庫/540円/★★★★☆ |
| 腹がよじれるほど笑える本です。最初に、「外では読まないこと」みたいなことが書いてあって、なんのことかと思ったら・・・、たしかに、ページをめくるたびに吹き出していたら変な人と思われるもの。本を貸してた妊婦も「(笑いすぎて)出産するかと思った」と大好評です。 さて、HP「ほぼ日刊イトイ新聞」に投稿されたこの本。世の中にはどんだけ「言いまちがい」があふれているのやら。人はどれほどたくさん、どれほど驚くべき言葉を吐いてるのかってのがわかります。もちろん、言いまちがいですから故意じゃない。だから、不意をつかれたみたいに笑いがこみ上げてきます。思いっきり笑いたいときにお勧めです。 |
| 『見仏記3 海外編』 いとうせいこう・みうらじゅん/角川文庫/600円/★★★☆☆ |
| 見仏シリーズ第三弾。(『見仏記』) みうらさんから発した「仏像を見学してまわる」趣味はいとうさんに伝染し、とうとう海外へと出掛けている。 韓国からインドへと仏教伝来の逆をたどりながら、あれこれ想像した意見をポツリポツリと語りあいこしているのがほほえましい。百済観音をみて「プレスリーの里にきてるよんなもんじゃん」、ブラ・アッチャンをみて「この人スタローン入ってるよ」、寝釈迦仏をみて「入ったとたん、十六文キックくらっちゃうよ。」神をも、いや仏をも恐れぬ暴言ながら、その素直な一言に愛情がいっぱいこもっていることに気がつく。そして、みうらさんがお土産物屋を嬉々として眺めまわる姿、まるで自分自身のよう(笑)コレクターやファン心理を刺激する本だ。 |
| 『秘見仏記』 いとうせいこう・みうらじゅん/中央公論社/1529円/★★★☆☆ |
| 順番は入れ替わってしまったが、見仏シリーズ第2弾。 みうら氏に無理やり引き込まれた見仏趣味がしっかり根ざしてきている感のいとう氏。 仏を見るために日本各地へ出かけるが、今回は編集者抜きの男2人だけの旅。ところどころで、「ホモと間違えられるのではないか」と自分たちの異様さに不安を持ちながら、「見仏旅行を定着させるために男二人旅をはやらせよう!」と画策する(笑) 京都周辺から四国、意外と穴場の東京とその近郊、島流し気分の佐渡の旅と盛りだくさん。見仏本を33冊出すということだから、かげながら応援してあげたいと思う。 |
| 『見仏記 親孝行編』 いとうせいこう・みうらじゅん/角川書店/1575円/★★★★☆ |
| 見仏人の旅行記もついに4冊目。正直こんなに続くとは思わなかった。世の中には「見仏人」をあたたかく受け入れる人がわりと多いんだな。捨てたもんじゃない(笑)今回はお二人のご両親を連れての旅。いとうせいこうさんのご両親とは奈良へ。みうらじゅんさんのご両親とは新潟へと旅している。仏に寺に親孝行。心温まる話だ(笑)本人たちもいっているが、以前より「見仏度」が低くなっている。庭見たり、空見たり、自然に親しんだり。より老人度もアップしている感が強いが、笑わせられ度も上がっている。 |
| 『自己流園芸ベランダ派』 いとうせいこう/毎日新聞社/1470円/★★★★★ |
| 読んだ本に影響されることが、私には多々あるのだが、今回はこれ。いとうせいこうさんが、毎日新聞に連載していたご自宅のベランダでの観察日記。 園芸と耳にしたら、まっとうな植物育成(どのように上手に咲かせ、長持ちさせ、実を収穫したか)かと思うけれど、いざ読んでみると、”素敵♪”と、スーパーの片隅で、あるいは、花屋で、私たちが興奮し購入した鉢植えたちの末路とだいたい同じなのだ。つまり、いつの間にか枯れてしまった・・・という、まったく自分は植物の世話もできない出来損ないだ認識する作業のくりかえしなのです。非常に共感する部分が多いし、かといって、植物をふやし続けることをやめないしぶとさは、ちょっと尊敬の念すら湧いてきます。難しいことは抜きで、好きな花買ってきて、自己流でも愛情を持って育てるのは楽しいということ、世話をしなければダメになるということ、どんな努力をしても自然には逆らえないという当たり前のことを気がつきます。そして、やっぱり園芸はやめられないのです。私もさっそくいろんな植物を買ってきました。 |
| 『ボタニカル・ライフ』 いとうせいこう/新潮文庫/620円/★★★☆☆ |
| 前回読んだ「自己流園芸ベランダ派」より以前の本。今回初めて知ったのですが、この原稿は自身のHPで自発的に書いたものだそうで、これこそベランダーとしての愛がなせる業なのでしょう。 基本、「自己流〜」とまったく変わらない内容です。季節の植物との出会い、別れ、そして、金魚やめだか、やごとの生活記です。まったりとしたい休日の午後、寝る前のひとときとしての読書などにオススメです。ちなみに、”ボタニカル”とは「植物学的な」というような意味そうです。 |
| 『八月の路上に捨てる』 伊藤たかみ/文芸春秋/1050円/★★★☆☆ |
| 離婚と離職を向かえる二人の同僚。自販機の補充をしながら交わされる告白は夏の暑さの中にとろけるみたいだった。嫌なことも悲しいことも、汗みたいに流れてってくれて、シャワーなんかでさっぱりできたらいいのにね。ムリだけど。 とにかく、敦という男は嫌なヤツだ。人間として最低。八つ当たりして逆恨みして逃げてるようなヤツ。まぁ、相手にもよるけどね。 同時収録の「貝からみる風景」の雰囲気が好きだ。”ふう太スナック”に固執する女のメモ、その女についてあれこれ想像しまくるところがほほえましい。 |
| 『東京てくてくすたこら散歩』 伊藤まさこ/文芸春秋/1200円/★★★☆☆ |
| こういう、写真と短い文章でなりたっている本を、私は昔、本とは認めてませんでした。最近はながめるのが楽しくてよく手に取るのですが。行った気になれる、歩いた気になれる。そういう楽しみにあふれています。 東京の歩いて楽しむところ、といった内容でしょうか。どこかで連載していたものの書籍化のようです。あまり、都会ぽくないところがいいです。 |
| 『京都てくてくはんなり散歩』 伊藤まさこ/文芸春秋/1300円/★★★★☆ |
| てくてくとお散歩で感じる京都の四季。京都検定前にこの本を見かけたんで、ついつい買ってしまった。ガイドブックも腐るほど家にあってもこの手の本は欲しくなる。紹介された場所に行きたいというより、見て行った気分を味わいたいから。 |
| 『つくも神』 伊藤遊/ポプラ社/1365円/★★★☆☆ |
| ほのかの住むマンションのごみ置き場で放火事件がおこる。次の日エレベーターにこわい顔をした奇妙な置物があるのを見つけた。それ以来、ほのかとお兄ちゃんのまわりで不思議なことがおこり始める。 つくも神ってどういうものか知っていますか?長年使われて魂を持った道具のこと。物を大切にしないことが多い現代ではつくも神も激減。もはや絶滅種(笑)になりつつあります。この本では古いもの(物であったり絆であったり)を大切にすることをやんわりと書いてあります。児童書といってもあなどれませんね。いちばんのおすすめポイントは、表紙のイラスト。着物とはかまを身につけたガマカエルが、小学校の黄色い傘を抱えて走ってる姿。かわいいです。 |
| 『袋小路の男』 絲山秋子/講談社/1365円/★★★☆☆ |
| セックスもなく18年間、つかずはなれずの男女。不毛っぽいけど、そんなプラトニックもいいと思う。きっと女を幸せにできないだとう(と思っているよりも面倒なだけかもだけど)男と、のれんに腕押し的な男をいつまでも忘れられない女。案外二人は互いを深く想っていて、楽しんでるのかもしれないし。同性同士の友情的恋愛にもみえる。真綿にくるまれた宝物みたいな恋愛にもみえる。 |
| 『沖で待つ』 絲山秋子/文芸春秋/1000円/★★★☆☆ |
| 「勤労感謝の日」、「沖で待つ」の二篇収録。 求職中の女の怒り含みの文章にゲンナリさせられる「勤労感謝の日」。なんでこんなにこの人は怒ってるのだ!と返って心配になるころ、彼女の怒る理由がすぅっと入ってくる感じ。バブル期を過ごした働く女性の苦悩が身にしみる。 「沖で待つ」は第134回芥川賞受賞作品。 同期の男女の小気味いい関係。でも、おっとりと語る口調とは裏腹な悲しさが行間に感じられる。割と驚きの結末。でも、この雰囲気は好きだな。 |
| 『逃亡くそたわけ』 絲山秋子/中央公論新社/1365円/★★★☆☆ |
| 精神病院をぬけだした男女の迷走型逃亡旅。時々、人は突発的に行動するのが正解?なのかもしれない。なんらかの活路はひらけると思うから。誰でも”逃げたい!”ときがあるものだ。仲良かったというだけで、とくに意識しあってなかった二人が車中で一夜をともにして意識しあう描写がいい。 ”あたし”と”なごやん”がオンボロ車でいく九州縦断の旅は、しっかりと九州の名所をまわっている。ちょっとした観光気分を味わえておもしろい。 |
| 『まだ見ぬホテルへ』 稲葉なおと/新潮文庫/700円/★★★☆☆ |
| 旅先の思い出で一番印象に残ったのはなんでしょう。食べ物?お酒?景色?やはり宿泊場所のホテルってのもありますよね。 観光であっても仕事であっても、生活の場所を離れたときふっと気を許せる場所ですから。 私自身はまだホテルに保養をもとめられるほど熟達してないので、ただたんに寝る場所でしかないですが、素敵なホテルに憧れはあります。 稲葉氏が20代後半から訪れた各国のすてきなホテルとの出会いが綴られています。飛び込みのエグゼクティブ・フロアでの食事、駐車場での宿泊、忘れ物を急いで届けてくれるスタッフの話、ぼったくりタクシーの運ちゃんを追い返してくれたマネージャー、ビーチでの撮影会での失態、エジプトでの少年との出会い・・・。「ちょっとこんなことがあってね・・・」というふうに隣で話して聞かせてもらっているような感じです。 戦争や、SARS、テロなど不穏な昨今。この本でちょっと旅気分はいかがですか? ところで著者の稲葉なおと氏はB’zの稲葉さんのいとこなんですね。 |
| 『T.R.Y.』 井上尚登/角川文庫/720円/★★★☆☆ |
| 1911年上海で服役中の詐欺師井沢修の前に暗殺者と革命家が現れる。革命のための武器調達への協力を要請された井沢は昔仲間と一緒に、二度と戻らないと決めていた日本へと向かう。 騙す、奪い取る、騙される、息をつかせぬスピード感とドキドキ感が心地いい。 誰を信じていいのか、何が本当なのか最後までわからない。「あ、やられた!」が積み重なっていくのが面白かった。 詐欺師という職業(?)なのに人情家である井沢、男勝りで怖いけど、かっこいい新橋芸者屋の喜春の存在がいい 日本が太平洋戦争へと向かっていく時期が舞台。そのころの雰囲気が伝わってくる。 第19回横溝正史賞受賞。。 |
| 『百年戦争(上・下)』 井上ひさし/講談社文庫/673円、632円/★★★☆☆ |
| お母さんに、「食べてすぐに寝ると猫になってしまいますよ」と言われ、「牛じゃないの?」と思いつつ「猫になってもいいや」といった清くんはなんと猫になっちゃった。花嫁争奪戦で銀座の猫のトップに立つことになった清くんは、ねずみとなった幼なじみと会うが・・・。 先日読んだポール・ギャリコの「ジェニィ」みたいだなと思って読み進むと、神様や悪魔まででてきて、人間を滅ぼそうという話がはじまり、そのどたばたぶりにちょっとビックリ。 児童文学とはいえこの飛躍ぶり、登場してくる神様のバカぶりは「どうなの?」と笑ってしまいました。いやはや、子供向けとはあなどれない、そして見逃せない部分(人間の愚かさとか)もあり、楽しく読める一冊です。 最後のオチはどうなのかな?ちょっとこわいかも。 |
| 『黒い雨』 井伏鱒二/新潮文庫/620円★★★☆☆ |
| 重松と妻シゲ子、姪の矢須子の原爆被爆体験を日記を通して書いている。当時、広島で何が起こっていたか、人々はどう考えていたかが生々しく書かれている。時にリアルすぎて想像したくない感じもしたが、戦争は平気でそれを日常にもたらすものだ。明日肉親や、友、自分さえも生きていられるかどうかわからない。 重松の「正義の為の戦争より、不正義の平和の方がいい」という(少し違うかも)言葉が頭から離れない。特に2001年9月11日のテロから戦争を肯定するような意見も出がちだが、たとえそれが正義の為でも良くはない。殺しあいをするコトに代わりがない。そこには悲しむ人間、憎しみや恨みを持つ人間も出てくることを忘れてはいけない。 また、戦が終わっても人々の身体を蝕む兵器を使うということがどういうことか、私達はもっと理解しなくてはいけないと思った。 |
| 『山椒大夫』 井伏鱒二/新潮文庫/★★★★☆ |
| 山椒魚は井伏氏の処女作で有名だ。 長いあいだ洞穴の中で悩んでいた山椒魚が気がついた時には、その穴から出られなくなる。いつも穴の向こうで動き回る生き物を睥睨している。 「山椒魚」からは孤独とさみしさがひしひしと感じられる。短い言葉の間から、取り残された山椒魚の叫び声が聞こえてきそうだ。そのさみしさと憎さのために、迷い込んだ蛙を閉じ込める。自分を穴に独りぼっちにした何かへ、憂さ晴らしをしようとするかのようだ。 しかし、最後のセリフはほろほろとさせるものだ。長いあいだ閉じ込められ、弱ってきた蛙を心配した山椒魚は「もう駄目なようか」とたずねる。蛙はそうだと答え、「今でもべつにお前のことをおこってはいないんだ」という。 これはなんなのか?どんな運命も受け入れられるということか、彼の孤独に同情したからなのか、とにかく張り詰めていた二人の関係が同化した瞬間のように感じた。 他「へんろう宿」「夜更けと梅の花」「女人来訪」「屋根の上のサワン」などが好きな作品。全部で12の短編たちだ。 |
| 『京都人だけが知っている』 入江敦彦/新書y/★★★☆☆ |
| 「怖いこわい京都、教えます」を読んで、手にとってみました。京都の内情暴露本(?)シリーズの第一弾といえるこの本。京都人の本質とはそういうものか、と納得できるところもあるし、そんなの地方のどの町でもあることでは?と思うこともある。読んで思ったのは、どんだけこの都が好きでも住むのには躊躇するだろうということです。 |
| 『怖いこわい京都、教えます』 入江敦彦/新潮社/1365円/★★★★☆ |
| ミステリースポットという意味では当たらずとも遠からず。しかし、そういった心霊系な内容ではなく、その場、そこにあるであろう京都らしい怖さを著者が感じたまま書いてあると思います。 とはいえ、怖いモノを著者が知らず知らずに引き寄せているような気も。こういうアプローチで京都を見るのもおもしろいです。 |
| 『秘密の京都』 入江敦彦/新潮社/1470円/★★★☆☆ |
| 散歩して見えてくる京都。京都を知るには歩くことが最もよいと著者はいってます。確かにその通り。 船岡山から始まり、京都駅までの歩いてみる京都。ところどころ、というか、かなりの分量で入江氏のいろんな思いがつまってます。おかげで、読みにくいことになっている気がする。 全部は無理かもしれませんが、一部でも、こんな感じでまちを歩けたら楽しいでしょうね。 |
| 『ほんまに京都人だけが知っている』 入江敦彦/洋泉社/798円/★★★☆☆ |
| 京都人だけが知っているシリーズ。 頭の中だけで作られた京都を捨てよ。市井を歩け。観光客の京都のイメージを払拭して本当の京都を知ってほしいというのが著者の本音でしょう。こっちもしょっちゅう行けるならどっぷりと浸かってみたい!と叫びたいところです。仕方がないのでこの本を読みますが・・・。 石、町屋ショップ、タクシー、花、映画、商店街など、身近なものにスポットがあたってます。犯罪にまで手を広げているし。でも、うちとこも同じようなもんだよ・・・と声を荒げられないところがあるのが京都。同じなようで違うのは、今も昔もやっぱり都だからでしょうね。 |
| 『裏京都検定』 入江敦彦/幻冬舎/1365円/★★★☆☆ |
| ちょうど京都検定が始まったころに出された本。「京都検定ですか。ええんとちゃいますか」という、私たち京都人はまったく取り合ってないですけどねといういけず味が漂ってくるタイトル。さすが。 京都検定。取ったからといってなんの資格になるともない京都通の知識欲を満たす試験。現在、3級を所持している私としては、そこをつかれると言葉もないけれど、やりたいんだから、いいじゃないか。 とはいっても、この本で京都検定受験者をいびるような内容が書かれているわけではない。寺社仏閣の知識なんかより、こんなこと知ってたほうが面白いんじゃないの?というものだ。 例えば、「清水の舞台から飛び降りたときの死亡率は?」とかいう、一瞬肝が冷えそうなものもある。「清水の舞台から飛び降りた気持ちで」ということわざがあるように、昔、自分の願い事をかなえるために清水の舞台から飛び降りることが流行っていたそうだ。前向きの姿勢が幸いしてか、この場合意外と人は死んでない。とはいえ、現在も投身者は少なくないらしく、こちらは、「死にたい」という希望が聞き届けられることが多いようで、死亡率も上がってるみたいだ。 |
| 『京都な暮らし』 入江敦彦/幻冬舎文庫/600円/★★★★☆ |
| 京都の四季折々のしきたりを知ることができます。最近は伝統的な行事というのはおろそかにされやすいもの。でも ハハハっと笑ってしまったのは、冒頭の丸もち白みそ仕立ての雑煮の話。京都人夫婦のやりとりがいかにも!て感じでした。 |
| 『イケズの構造』 入江敦彦/新潮社/★★★☆☆ |
| 京都のイケズ。「ぶぶ漬け伝説」。はいはい・・・。はっきりいって、京都人が繰り広げるというイケズな世界は、よそさんである私たちには大変恐ろしい気がする。もちろん、そんな世界があればとしたらね。彼らが繰り出すイケズな言葉の正体とは、相手を傷つけない思いやりであり、他人との距離感の取り方であり、けっして悪意はこもってないものだそうです。 でも、そんなに京都は特別なのだろうか?千年の都とはいえ、あそこも日本なのだ。入江さんの書き方からは「京都だけが特別で、よそさんはそれを理解してくれへんから」という言い分がにじみでる。そこが鼻について彼の言い分のいやなところだが、最果ての(笑)四国ですらもそういう心づかいはあるし、きっと他でも同じことはある。あえて言えば、京都は非常に日本的な場所だということだと思います。まぁよー知らんけど(笑) 相手との距離の取り方は難しいものだ。嫌な人ならただ突き放せばいいけど、今後も付き合いたい人が間違った距離感で近づいてきたら、穏便にそのことを知ってほしいし、言いっぱなしではうさが晴れない時は、なんとか一矢報いたい。イケズの構造とは、難しい人付き合いをスムーズにさせてくれるツールなんだね。 |
| 『KYOのお言葉』 入江敦彦/マガジンハウス/1575円/★★★☆☆ |
| 今回は京都の言葉をつかって京都人を解体。京都初心者よりも、京都通になりかけの人が読むほうがいいですね。 入江氏の本には多分の毒が含まれてるのでなれないとやられますから。 「京都は好きやけど京都人は嫌い」と平気で京都の人にいう人たちがいるらしいです。初めは優しい京都の人たちも通い続けているうちに(慣れてきて甘えてきてずかずかしてくると)、ぴしゃりとやられる時が来る。すると「何それ」となり、この台詞がでてくる。もしくは、ぶぶ漬け伝説を恐れている人たちに発せられる。 わかりますよ、言いたいことは。知ったかぶりの奴はひきますもんねぇ。でも相変わらず著者の自己擁護みたいな書きぶりは気に障ります。ほやけど、気が付いたらまた本読んでるやないか〜い。 |
| 『京味深々 京都人だけが食べているA』 入江敦彦/WAVE出版/★★★☆☆ |
| 京都の食ガイド。ガイドブックにのらないような(もちろん有名なべたなものも有り)、特別に敷居が高いわけでなく、庶民の味を紹介してます。もちろん、いつもの入江節でね。 京都ラーメン、ぜんざい、食べてみたいものがいっぱい。本当に私は食べ物に弱い。 |
| 『岡山女』 岩井志麻子/角川書店/1365円/★★★★☆ |
| かつて妾として暮らしていたタミエは、旦那の宮一に左目を切りつけられやがて新しい能力を発見する。霊媒師となったタミエは、此の世でない世界を失った左目でみていく。 「ぼっけえ、きょうてえ」は本当に恐ろしかった。岡山女もあんなおそろしい話かとおもったら、全然恐くない。どちらかというと物悲しいものだった。 タミエは妾のときも霊媒師となっても、自分じゃないものに身体を良いように扱われる。それは、旦那か霊かの違いだ。依頼者の後ろにはこの世のものではないものがついている。「こしらえばえのする女」がうっすら笑みを浮かべていたり、暗い底のような目が口をあけていたり、時にはすえたような匂いをはなったりしながら。でも決して霊が恐てえばかりではないのだ。人間の暗闇の部分がうかびあがってくるだけだから。恐いのは人間なのだ。 生きる為とはいえタミエは一生懸命だ。霊に対しても人間に対しても優しい。岡山女は恐いばかりではなかったのだ。 |
| 『自由戀愛』 岩井志麻子/中央公論新社/1470円/★★★☆☆ |
| 岩井志麻子さんの作品は、女のどろどろした部分をホラー仕立てで書かれているものしか読んだことがなかったので、これは新鮮でした。 時は大正時代、女学生気分の抜けない明子と、その夫優一朗、明子の女学校時代の友人清子の三角関係の話だ。明子の楽観主義的性格と子供ぽい性格とは反対に、清子は暗く思慮深く、深みがある。その二人の女を同じように好きになる優一朗。 優一朗は名前の通り優しい男。だが、母親に決断をしてもらうようなマザコンでもあり、明子と離縁してからも彼女の元に通う、どうしようもない男だ。しかも、明子も清子も「同じくらいすきだ」と言ってしまう、わがままの優柔不断男でもある。 最後に誰が一番幸せなのか。誰が一番不幸なのか。 後で振り返ったら、時はあっという間に過ぎているということかもしれない。我慢したり、あきらめたり、過去にこだわってはもったいないな、と感じる話だった。いや〜やっぱり最後には女は強い。 |
| 『夜啼きの森』 岩井志麻子/角川書店/1575円/★★★☆☆ |
| 岡山の山奥にある村には皆がお森様といううっそうとした森がある。そこは神聖な場所であり、死者が帰る場所でもある。 辰男は常にみなのうわさの的だ。肺病をわずらい、徴兵検査にも落ち、村の行事にも参加しない。そして、女の尻ばかりおっかけているから。昔は秀才と言われた男は、お婆が亡くなったら確実に村の除け者になる。分限者である砂子も、辰男の伯父仁平も、金中の婿養子虔吉も、よそから流れてきた石野一家も、貧乏な村の中で一番貧乏な治夫も村の中で少し外れていることを自覚している。村中が親戚のような血縁関係をもつ閉鎖された村で、のけ者になることは恐い。だから、当たりさわりなく生きている。村八分になれば、共同体の中で生きていけないからだ。やがて森からじわじわと不吉なものが村の中に広がっていく。この閉鎖的な村から逃げるには、ここを戦場にしなければならない。 村人大量殺人事件が起こるまでの村の様子が描かれている。村の閉鎖されている様子、そこで生きる人間のあきらめたような生活、鬼となった殺人者が出来上がっただろう背景。 頭にナショナルの懐中電灯をしばりつけ、猟銃と日本刀をもって、自分を罵り、バカにしてきた村人たちを次々に殺していくシーンは映画のクライマックスのように、また神の制裁のようにも感じた。 人と人との交流ができなくなっていくと恐ろしい結果が起こるのでは?引きこもりや、人間と人間の直接のふれあいのない生活はわれわれに何をもたらすのか?もう一度考えてみたい。 |
| 『黒焦げ美人』 岩井志麻子/文芸春秋/1200円/★★☆☆☆ |
| 作者、岩井志麻子さんのテレビで拝見する異常さにおののく今日この頃(笑)小説ももう妄想度が強いです。読んでると自分もおかしくなりそう。背筋がぞぞぞ。 |
| 『海ちゃん』 岩合光昭・岩合日出子/新潮文庫/620円/★★★☆☆ |
| 猫ってホントにかわいいもんだなと思わせる1冊。海ちゃんはかなりの美猫です。子猫から母親となっていってもその美しさと愛らしさが変わらない。海ちゃんはもう天国へ逝ってしまいましたが、彼女の一瞬を納めた写真が私達に語りかけてきます。写真として残っているのも切ないものですね。 |
| 『芸妓峰子の花いくさ』 岩崎峰子/講談社/1680円/★★★★☆ |
| 祇園甲部の芸妓だった峰子の半生を振り返った自伝。伝統と華やかさの裏にある1人の女性の誇りがヒシヒシと伝わってくる。意思と努力で運命を切り開いていった峰子さんに拍手を送りたくなった。 ところで、舞妓・芸妓=芸者=ホステスと誤解している人も多い。「フジヤマ・芸者」と、日本を知らない外国人並に祇園甲部の花柳界について認識している日本人は多いだろう。日本の文化を日本人が知らないと言うのは恥ずかしい。間違った認識を改めてほしいという気持ちが文章の端々で感じた。 京都で生まれ、縁あって置屋をしていた岩崎家の跡取りとなった峰子は、つらくても妥協をしない。傷つきやすく、寂しがりやでも、自分に甘えない頑固さが、見ていて気持ちよかった。だから、舞妓、芸妓時代に売れっ子となれたのだろう。 注目したいのは彼女のけじめのつけ方。なかでも酔っ払ったふりをしたお客さまから仰向けにたおされ、裾を太ももまでまくりあげられるといういけずをされたときのエピソードが印象的。部屋を出た峰子は水屋で包丁を持ち出し、 「体の傷は治る。心の傷は一生治らない。私は、自分でもあきれるぐらい気位も誇りも高い人間です。今日のこのことを、私は生涯忘れません。・・・(中略)・・・私が本気であったことだけはよく覚えておくように」 と包丁を畳につきたてながら言い放つ。また、お座敷で胸をさわる客には、木魚で頭を叩き「討ち取った!南無阿弥陀仏」とこらしめ、道端で痴漢行為をする者も血が出るまで思い知らせる。峰子はすごい。 まじめな峰子が一度だけしたという恋の話も印象的。某有名俳優との道ならぬ恋、これはぜひ読んでもらいたい。 人として、同じ女として、お手本にしたい人だ。 |
| 『祇園の課外授業』 岩崎峰子/集英社/1575円/★★★☆☆ |
| 祇園で舞妓、芸妓時代に会ったたくさんの人々。その中でも著者を成長させた人々との逸話を紹介。『芸妓峰子の花いくさ』、『祇園の教訓』につづく第3作目。どの話も興味深い。こちらが素直に積極的に吸収してやろうという気持ちを持てばどれほどで身になるんですね。表紙の写真もそうですが、巻頭に入れられている舞妓、芸妓時代の写真はどれもうつくしい! |
【う】
| 『狐笛のかなた』 上橋菜穂子/新潮文庫/620円/★★★☆☆ |
| 人の心の声が聞こえてしまう小夜と、あわい棲む霊狐の野火。ある日、犬に追われた野火を助けた小夜は森陰屋敷に閉じ込められていた少年と出会う。 「守人シリーズ」で有名な上橋さん。「虚空の旅人」を読んで(なんとも途中だ・・・)、力強いファンタジーに惹かれました。こちらは、昔の日本のファンタジーというのでしょうか。国と国の争いに呪術者や妖狐を使ってなおも争いが絶えないなか、いつの間にか野火は敵の小夜に惹かれていくのです。淡い思慕がベースとなって、国家間の駆引きが書かれています。野火の純粋な心が胸を打ちます。幻想的な雰囲気が、いままでにない感じでした。 |
| 『死体を買う男』 歌野晶午/講談社文庫/730円/★★★☆☆ |
| 作中作のミステリ。期待してなかったけれど、予想に反しておもしろい。 江戸川乱歩に萩原朔太郎という、文壇アイドル(?)をどうどう登場させて、殺人事件を解明するというのがよかった。朔太郎のキャラが際立っている。からくりはすぐに読めてしまうけれど、当時の怪奇ロマンの雰囲気が楽しめます。 |
| 『半身』 サラ・ウォーターズ/創元推理文庫/1113円/★★★★☆ |
| 2004年のこのミス1位と紹介されていた本。貴婦人と監獄にとらえられている女囚との出会い。霊媒だという彼女との交流で驚きとなくてはならない絆を培っていく。 ラストまで続く、静謐で妖しい雰囲気は物語をよりいっそう謎のムードに包んで、この世界にどっぷりと浸かってしまうとかなり酩酊することでしょう。作者(翻訳者)のすばらしい描写力で描かれる風景は、監獄の底冷えまで感じられ、暗く狭いそこから出ると、こっちまでようやく息がつける感じがしました。 とにかく、ラストで激しくショックを受けたので☆は一個減点。 |
| 『百鬼園随筆』 内田百閨^新潮文庫/540円/★★★☆☆ |
| 名前は知れどもまだ未読だった内田百閨B芥川龍之介による、「百關謳カ邂逅百關謳カ図」なる文庫本の表紙を見て迷わず手に取った。 借金をたのむためにタクシーに乗り知人宅を訪問し、あまりに再々の借金を森田草平に小言を言われても馬耳東風。二人の会話の細かい描写に、ちょっとそばで立ち聞きしてしまって・・・うふふ的な可笑しさがある。また、頭の大きな私に会う帽子がない!ので(貧乏ゆえに買えない)、入院中の頭囲の太い人間の物を拝借する、着古したコートをもらう。そのずうずうしいなかにも引け目など全然感じられない明るさがいい。一人笑いをかみ締めてしまう話が満載である。百闔≠ヘずいぶんとひねくれた頑固者だったらしいが、そんな性格だからこそが笑いにつながるのかな〜と思う。 なかでもお気に入りなのはずっこけネタ2品。ドイツ語の教師として初のお披露目の折、教壇にのぼるさいに階段を踏み外す話、玄関先で足拭きマットで転び顎をしたたか打つ話、真面目くさった時にこれをやるともう収拾つかないですよね。お気の毒ながら笑いごろげました。 |
| 『新編ノラや』 内田百閨^福武文庫/591円/★★☆☆☆ |
| 百闔≠フ家へいつのまにかいついてしまった野良猫のノラ。ある日突然いなくなり、いつもいじめてばかりいた猫への思いがつのってつのって・・・という見ていて気の毒になるほどの、百閧フ狼狽ぶりがたっぷりと味わえる1冊。また、猫好き、過去に猫をなんらかの理由で亡くした人には涙が止まらない1冊でしょう。猫の皿を見ては泣き、お気に入りだった、風呂のふたの上を確認しに行っては泣き、折りこみチラシを入れて近所に非飛び地に呼びかけ、何とかして帰ってきてくれと祈る。生き物を飼ったことのある人間なら誰でも同情します。私も以前飼っていたアルフという雑種が死んだ時は、扇風機がアルフに見えましたから。 しかし、その悲しみはどこからくるのか?時間がたつほどに募るというその思いは、どこか、悲しんでいる自分がかわいそうというのかもしれません。 |
| 『イーハトーブの幽霊』 内田康夫/中央公論社/1427円/★★★☆☆ |
| 浅見光彦シリーズ。彼が岩手県花巻市へ取材に出た折に出くわした事件。宮沢賢治のことがよくわかりました。 |
【え】
| 『ホリー・ガーデン』 江國香織/新潮文庫/500円/★★★☆☆ |
| 失恋を引きずる果歩と、それを苦々しく思っている親友の静江。優しく見守る事もあり、そのしつこさに辟易することもあり、相手の男を憎くも思っている。そして、果歩に好意を持ち暖かく見守る中野君。3人の心模様が面白い。 女同士の親友はどこか恋人に近くもある。また、男と比べたとき簡単に忘れ去られる存在でもある。果歩と静江の関係は、日常の中特別な存在を持ちながら距離を保っている。お互いに何でも知っているが、踏み込んでいけない領域もあるのだ。 ストーリーは浮き沈みなく淡々と進む。 ラストの果歩と中野君の会話が気に入っている。自分の気持ちというのは意外とわかりにくい。なんかの拍子にぽこっと飛び出してくるものなのかもしれない。 |
| 『流しの下の骨』 江國香織/新潮文庫/540円/★★★☆☆ |
| ちっちゃい頃は自分の周りだけが世界のすべてで、しかし、ある程度大人になっても以外とそれはかわらない。世界が一変するような大事件ではないが、人とちょっと違うのかも、うちの家族だけだったのかとわかるのは結婚してからだ。こんな世界もあるのだと気がつく。目からウロコが落ちる。 こと子の家の変な習慣が冒頭ででてくる。お母さんがご飯の支度のときに頼むこと、「葉っぱをとってきてほしいんだけど」お手伝いのため公園へ行き、出来るだけ素敵な葉っぱを取って帰る。夕餉のお料理を飾るためだ。少なくとも私の家ではそんな効率の悪そうなことはしなかった。また、「豆の筋をとるのか本を読むか」、という選択はない。これまた面白い習慣。 こと子にはおっとりした姉そよと、毎月給料日にプレゼントをくれる2番目の姉しま子、まだ中学生で未亡人シリーズの人形を作るのを得意とする弟律と父母の6人家族。変だけだど、暖かくて居心地がよさそうな家族だ。 知られざる他人のお家事情を知る喜びがわかる?話です。 |
| 『なつのひかり』 江國香織/集英社/1,529円/★★★☆☆ |
| 隣の家の薫平がやどがりが逃げ込んでいないか訪ねて来る。「それ」を探しに行ってしまった兄嫁 遙子はフランスにいちゃうし、兄には愛人 順子がいる。その上めぐという鳥の巣頭の女と重婚したらしい。結構な修羅場になりそうなのに誰もあわてない。野菜売りのおばさんの小屋から見る切り取られた真夏の風景のようだ。それは明るくて眩しくて現実味がない。 異常に親密な兄弟関係の栞と兄幸裕にも驚くが、彼らの理不尽さを飲み込んでいく頓着のなさとかが、どんどん現実から読むものを切り離していくようだ。しかし、時々栞が教えてくれる逸話を重ねていくとなんとなくそれをとどめてくれているような気がした。 真夏に白昼夢。この言葉がぴったりだな。 |
| 『ぼくの小鳥ちゃん』 江國香織/新潮文庫/500円/★★★☆☆ |
| ある日ぼくの家にやってきた小鳥ちゃん。家族や友達と離れ離れになった小鳥ちゃんはぼくの家にで暮らす事になった。ラム酒がかかったアイスクリームが好き。お散歩が好き。時々病気になってみたりする。アイススケートもする。わがままたっぷりの小鳥ちゃん。第三者からみれば、彼女との間に割り込んできた親戚の女の子。でもその強がりが寂しさをぐっとがまんするけなげさが見て取れてウルウルしてきた。 荒井良二氏のイラストもほんわかさせてくれる。 |
| 『落下する夕方』 江國佳織/角川文庫/560円/★★★☆☆ |
| 別れた恋人との新しい彼女となぜか一緒に暮らす。信じられないシュチエーションだが、なんとなくされりと流してしまう空気がある。でも切ない。しかし後味すっきり。 |
| 『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』 江國香織/集英社/円/★★★☆☆ |
| いろんな人のいろんな恋愛。特別ドラマチックでも、ないけれど、それぞれにハッとするほど強烈な甘さと印象を残していくだろう記憶。そういう恋愛の短編集です。10人の女性たちの想い泳ぎきるのには安全さも適切さもない人生のなかの一瞬が閉じ込められてます。通り過ぎた恋愛的なできごとがふんわりと想い出せれる思いです。 |
| 『吸血鬼』 江戸川乱歩/角川文庫/567円/★★☆☆☆ |
| 明智小五郎、小林少年が活躍する怪奇推理小説。 初めて江戸川乱歩を読んだのは、小学生の時。恐いもの、殺人事件物が大好きだった私は、そういう場面にありつけそうな「少年探偵団シリーズ」を読み漁りました。残念ながら内容一個も覚えてませんけどね。 さて、この本を手にとったのはタイトルのせい。明智小五郎ものとは、読みはじめるまで気がつきませんでした。 美しい未亡人と美青年。そして火傷で鼻が欠け、唇のない残忍な男が出てきますが、どこが「吸血鬼」なの?吸血鬼は1匹も出てきません(そりゃそうだ) 名探偵明智小五郎の推理のほどは読んでみてのお楽しみ。 |
| 『孤島の鬼』 江戸川乱歩/春陽堂書店/510円/★★★☆☆ |
| 貿易商社に勤めるわたしは、職場で知り合った結婚を約束した女性初代を奇怪な密室殺人で亡くしてしまう。憎しみを抱え、復讐を誓ったわたしは、友人深山木幸吉に探偵を依頼する。しかし、初代から預かった家系図、そして七宝の花瓶から謎をつかんだ彼は真昼間の海水浴場で刺殺された。 江戸川乱歩らしい作品。身障者=怪しいものとしてバンバンだしてくるところはいかにも時代です。それに、まだまだ日本には不思議と、未開があってこそ引き立つ内容。そして、血と復讐全体のテーマとなって、あっちこちに絡み合ってて最後の最後まで油断できません。また、わたしこと蓑浦と医大卒のあやしい美青年諸戸道雄とのあやうい関係(笑)ハラハラさせますよ。 |
| 『D坂の殺人事件』 江戸川乱歩/創元推理文庫/546円/★★★☆☆ |
| 表題作で、あの明智小五郎の初登場である『D坂の殺人事件』を含む20編の短編を収録。どの作品もすばらしくて、江戸川乱歩を初めて読んだウン十年前のようにゾクゾクと興奮しました。 特に面白かったのは「防空壕」。帰宅途中に空襲警報にあった会社員が、偶然避難した防空壕で出会った美しい女性との狂乱の一夜をすごす。もう一度彼女に会いたいと探し求めるが、見つけ出したのはその日同じ壕に避難したという老婆のみ。しかもそんな2人はいなかったという。その後の老婆の述懐に驚かされる。極限の人間がみる夢幻なのかと人の脳の不思議さ、怖さにうなってしまった。 |
| 『黒蜥蜴』 江戸川乱歩/創元推理文庫/★★★☆☆ |
| 左腕に黒蜥蜴の刺青をしている美貌の女賊 黒トカゲ。妖艶な怪盗と名探偵の淡い恋。ずーと昔に一度読んだことがあることが判明。それはそれは大昔だったのに、人間椅子とか、生人形とかちゃんと印象に残ってるものだ。大胆不敵で用意周到な盗賊なのに、どこかしら間抜けなところがあって、ちょっと笑っちゃうけど、探偵の方も同じような抜け方なのでおあいこ。おっとりとした時代を感じられた。明智と黒トカゲの淡い恋。最後の最後までいまいち気がつかないほど淡くて残念。もっと濃厚なシーンとかあれば・・・みたい。 |
| 『屋根裏の散歩者』 江戸川乱歩/角川ホラー文庫/693円/★★★☆☆ |
| 世の中の何にも興味をもてない男を惹きつけた楽しみ。それは、下宿の屋根裏を歩き回ること。他人の秘密をのぞきみするだけにとどまらず、完全犯罪を目論む『屋根裏の散歩者』ほか3編収録。 明智小五郎と小林少年(未成年者の労働基準に違反するのでは? 笑)が活躍する『人間豹』の、ホラー的な怖さがおもしろい。怪しげな研究者の老人とその息子、飼われている豹。息子の動物的な奇態な態度。老人が彼に何かしたのでは?もしくは、彼は老人と豹との間に生まれたのか?と思わせぶりな態度(作中の登場人物はなんの疑問もなく、豹人間と思っているが。)を見せるのみで、事実は明かされていない。 また、『押し絵と旅する男』の奇想天外で恐ろしい出来事をさらっと他人に話す旅人が実は一番ゾッとさせる。 『恐ろしい錯誤』では、妻を火事で失った男の執念が満ち満ちている。 |
| 『江原啓之神紀行3 京都』 江原啓之/マガジンハウス/1100円/★★★☆☆ |
| 「スピリチュアル・サンクチュアリ」シリーズ第三弾。 江原さんが日本の聖地を訪ねる・・・という企画のものなのでしょうね。京都ということで読んでみました。古都京都という土地柄、人の念によって聖地となっている場所であるということが書かれています。山奥や人を拒むような場所へ癒されにいくのは大変ですから、身近にそういう場所があるというのはいいと思うし、大好きな京都という都がその場所でとてもうれしいです。あまた出版されている京都本の中で、こういう目線で書かれているものがあるのも目新しくて面白い。だからこそ、宿とか食べ物とか、そのあたりは触れなくてもよかったのになぁと思うところ。江原さんがくつろいでるとこみてもなぁ・・・。 |
| 『人はなぜバーテンダーになるのか』 海老沢泰久/TBSブリタニカ/1300円/★★★☆☆ |
| 暗い室内、バックバーに並べられた見たことのないようなお酒のビンたち。そして、カウンターの向こうにたたずみ、一心にシェイカーを振るバーテンダー。お酒を覚え始めた頃、バーテンダーと対面に座ってカクテルを飲むことはすごい大人になった気分がしました。まだまだ、酒を語るには未熟すぎますが、鮮やかな手つきで作り出される美しいカクテルの美味しさは少しは分かるようになったかしら?私たちを楽しませ、心地よくさせてくれるバーテンダーたち。13人のバーテンダーの履歴書を覗き見できます。 |
| 『ONE DAY 死ぬまでにやりたい10のこと』 ダニエル・エーレンハフト/ポプラ社/1680円/★★★★☆ |
| 行きつけの店で食べたフライドポテトのには毒が盛られていた!死ぬまでに残された時間は24時間。ボクは残りの時間で人生を取りもどすんだ!とチャンスを最大限に活用する男の子テッド・バーガーの物語。 初めは友達に急き立てられて、でもすぐに自分から決心して(病院にいくという建設的で前向きな考えはしたくないから)、死ぬまでにやりたいこと10の項目を達成するために邁進する。展開がはやくておもしろい話。逃げてきたことに立ち向かうと言うのはすごく勇気がいることだけれど、「もう死ぬ」気でやると失敗も成功も気持ちいい。”1初体験をすます”というのはまぁわかるとして、”8危険なことをする。ジョージ・ワシントン橋からバンジージャンプをするとか”やら、”9宗教の教祖になる”とかはぶっ飛んでしまって何でもありだ。さて、テッド・バーガーの未来がどうなるかは、ぜひ読んで確認してもらいたいところ。 ところで、著者の写真がビミョーに好奇心をくすぐる。なんだかボーっとしていいヤツです。 |
| 『深い河』 遠藤周作/講談社文庫/620円/★★★★☆ |
| 人は皆それぞれの悲しみを抱えている。深い河のように。それぞれが背負ったものの重さは外からは見えない。インドの母なる河ガンジスのほとりで彼らは何を感じるのか。死も生もすべてを包みこみ流れゆく河に。 非常に重いテーマながら、読み進むほどに心がしんとしてきた。生と死、冨と貧、健康と病、そして輪廻転生。すべてが混沌として共存するインドという場所へ、それぞれのエピソードとともに私自身が運ばれていくような気がした。 ビルマのジャングルで地獄よりもひどいものを見、体験した木口の話も、両親の離婚のため、そばにいてくれた犬クロとの別れを体験した沼田の話しも忘れられない。一番興味深かったのは本当の愛に出会えない美津子の話だ。 小説の中では宗教について多く語られている。主にキリスト教徒とヒンズー教だが、どちらについてもそれほど深い知識があるわけでもない。だが、学生時代美津子に誘惑された、大津の神に対する考え方は自然と受け入れられる。 「神は存在というより、働きです。玉ねぎは愛の働く塊なのです」 だから、「イスラム教徒の家にも、仏教徒の家にも玉ねぎは存在する」と。 (※神ということばをいらいらするという美津子のために玉ねぎという名前に置き換えている) そんな考えが、神父仲間から認められるわけもなく、精神の上昇に反して大津の生活は落ちぶれていってしまう。美津子の転機とおぼしきときに、まるで、神からの啓示のように、大津との出逢いがセッティングされている。もちろん、美津子から近寄っていくのだが、本当にそうだろうか?それは神からの働きであったのではないだろうか?それを知っているから、彼女は愛の姿を確認しに行ったのではないだろうか。 キレイ好きの自分にはインドという国は受け入れがたいと思う。でも、すべてを受け入れてくれる母なるガンジス、いつか見てみたいと思った。 |
| 『弁頭屋』 遠藤徹/角川書店/1470円/★★★☆☆ |
| これほど、言葉どおりのタイトルもないのでは?大学生向けに弁当を売りに来る双子の話。そして、弁当箱はずばり頭蓋骨、いや人間の頭部なのである。ご想像のとおりホラーなのだが、ぐちゃぐろというよりは、不条理な世界観が印象的。グロテスクだから、好き嫌いははっきりするでしょう。でも、ココまで真摯に貫き通してくれたら、誰もが感心してしまうのではないだろうか?ホラーに笑いはよく似合う。バカバカしさも、最後までやりきった者の勝ちなのだ。 「カデンツァ」が気に入りました。ある夫婦と家電の話。逃げ出さないで最後までお付き合いください。もう笑うしかありません。 |
| 『人の心を持った犬』 遠藤初江/幻冬舎文庫/480円/★★★☆☆ |
| 近所を徘徊していた野犬、太郎を飼いならすまでの奮闘記。残酷だと思ったのは、著者が太郎を飼おうと決心し、自分の家まで導くまでの長い間の近所の人たちの反応。あまりにも過敏で、排他的な正義感が、身も縮むほど怖いと思いました。本人達は、もっともなことを言ってるのだけれど、本音は異端者を追い出そうという、余裕のないいじめ心のようでした。人よりも気高く生きていた太郎といい比較になっています。 しかし、これだけ辛い目に会っても、太郎を飼うことを諦めなかった著者。彼女もそこまで固執しなくてはと思うところもありますね。太郎の最期もむごかったようで、彼(太郎)を飼うということが、正しかったのかどうなのかすっきりしないところもありました。 |
【お】
| 『パイロットフィッシュ』 大崎善生/角川文庫/500円/★★★☆☆ |
| 青春小説・・・なんでしょうね。別れた恋人から19年ぶりに電話。別れた原因は女関係。現在と過去の交錯。そしてセックス。ちょっとちょっとベタベタじゃない!再会して仲が復活?と思ってましたが、それは杞憂。山崎と由希子の再会の後の別れの場面がせつなかった。透明感と繊細さただよう内容でした。 それに、主人公の仕事がアダルト雑誌の編集長で、その雑誌のコンセプトがガツンときました。ちょっとここに書くにははばかられますが(*^m^*)普通女は知ることができない世界なので興味津々(笑) |
| 『天使の牙(上・下)』 大沢在昌/角川文庫/600円・680円/★★★★☆ |
| 新型麻薬アフター・バーナーを牛耳る「クライン」のボス君国の愛人、はつみが逃亡した。組織の重要な情報をもつ、彼女の保護をするために接触した女刑事明日香ははつみとともにヘリからの銃撃をうけ瀕死の重体に。しかし、はつみの体に明日香の脳を移植する事でアスカは奇跡的にもう一度目覚める事になった。 バイオレンス、アクション、そしてロマンス。ドキドキハラハラの展開で一気に読了した。警視庁内の裏切り者をあぶりだすためにもう一度「クライン」に囮として挑むアスカが、恋人を失い自暴自棄になってしまった古芳と再会するところは胸がキュっとなった。個人的には非常に悪者である君国の偏った愛情なんかも好みだが、彼の容姿を書かれている部分が少なくて感情移入がしずらくイマイチで、残念。しかし、ものすごく美しい女である、元はつみのアスカは女から見ても魅力的!だ。ハリウッド映画のような派手なアクションとロマンスたっぷりのストーリーが好きな人にはオススメ。 |
| 『らんぼう』 大沢在昌/新潮文庫/620円/★★★★☆ |
| 体がでかくて喧嘩っ早い刑事、大浦こと「ウラ」。体が小さくて喧嘩っ早い刑事、赤池こと「イケ」。とにかく荒々しい凶暴な凸凹コンビは、その腕力に訴えて検挙率をあげている。もちろん被疑者の受傷率もナンバーワン。 思わず「あぶない刑事」を思い出しました。そして映画「リーサル・ウエポン」も。ほとんどマルBさんのような容貌、服装、そして、まず手が出るんです(笑) 「やるか」 「やるべ」 ニヤって感じで悪をぶった切るところが・・・もう楽しい!そして、単なる正義の味方ではなく、彼ら自身、皆が恐れる爆弾のような厄介者。でも、私は好きだな〜。特にウラさん♪なんだろね。イケさんよりは微妙に優しいからかな?らんぼう者だけど、やんちゃな男の子みたいに感じてしまうのは、おかしいのかしら? 解説を見ると、大沢氏は「西原理恵子さんのまんが金角銀角をモデルに・・・」したらしい。そのつながりで、表紙も西原さん画。この画をみるだけで、この話の面白さがバシバシ伝わってきます! タイトルまんまのらんぼうものが大暴れする短編10編収録。ストレスたまってる人はこれ読んでスカッとしてください。 |
| 『アルバイト探偵』 大沢在昌/講談社文庫/560円/★★☆☆☆ |
| 不良高校生をモットーとしている冴木隆。そして一緒に暮らしているのが「社会不適合者」の父、冴木涼介。こんなダンディなパパがいたらええなーというタイプ。父がやっている冴木探偵事務所を手伝ってるから「アルバイト探偵」?(笑)4編からなる短編集。 |
| 『新宿鮫』 大沢在昌/光文社文庫/620円/★★★★☆ |
| 音もなく近づきいきなり襲い掛かる、新宿鮫こと新宿署防犯課の鮫島。キャリア組のエリートだった彼は、ある出来事のせいで飛ばされていた。捜査は単独行動しかし検挙率はトップ。権力に屈しない、わが道を行く彼はハードな男。カッコイイです。孤高で孤独な彼を人間たら占めるのが、恋人の晶。ロックシンガーの彼女は一回り以上の年下。ずばずばと男の子みたいにはっきりモノを言うところ、さっぱりした性格で「ロケットおっぱい」の持ち主。でもちゃんと鮫島を立てるんだよね。魅力的♪ 読むまではハード刑事小説?男の世界?苦手だなと思っていたが、ものすごい勘違い。最後までまでのハラハラさせられる。 |
| 『毒猿 新宿鮫U』 大沢在昌/カッパノベルズ/860円/★★★☆☆ |
| 新宿鮫シリーズ第2弾。 トルエン、シンナー、しゃぶ。丸Bと台湾シンジケートの関係。前作よりももっと濃い。犯人はだれだ?という興奮は少ないが、ハードな中にロマンスの甘いにおいがして、ショートカクテルの度数の強いのを一気飲みしたような気分。もうクラクラです。 |
| 『屍蘭 新宿鮫V』 大沢在昌/光文社文庫/700円/★★★★☆ |
| 新宿鮫シリーズ第3弾。 新宿の高級娼婦の元締めだった浜倉が不審な死をとげる。殺しのにおいを感じが鮫島の前に「釜石クリニック」という産婦人科医院が浮かび上がるが? 鮫島危機一髪!汚職・殺人の容疑をかけられ、刑事生命を絶たれそうになる。前作にもましてハラハラした。雰囲気としては1作目に近い。犯人の犯罪の背景の書き方が、いやおうなく話の盛り上がりを誘っている。恋人晶のいい女っぷりも見逃せないところ。 |
| 『無間人形 新宿鮫W』 大沢在昌/カッパノベルス/860円/★★★☆☆ |
| 新宿鮫シリーズ第4弾。 「アイスキャンディー」という薬が若者の間で流行していた。鮫島は薬の売買の現場を抑え、卸元、製造元を叩こうとするが、麻薬取締官事務所から妨害を受ける。 鮫島の、悪を追い詰めるしつこさと目的を達成するのならあっさりとしがらみをもさらりとかわすそっけなさが気持ちいい。今回は”ロケットおっぱい”を持つ恋人晶ちゃんがあやうく、あやうくぅ〜! 巻末の、大沢氏によるあとがき、新宿鮫誕生話、面白く読ませていただきました。 |
| 『自負と偏見(上下)』 オースティン/新潮文庫/★★★★☆ |
| 田舎町に住む5人の姉妹と、近所にこしてきたピングリーとその友人で気難し屋のダーシー。そして、周囲の人々の巻き起こす恋愛物語。「ブリジット・ジョーンズの日記」のヘレン・フィールディングがリスペクトし、小説の元としたというこの話。作中にも出てくるのでずっと気になっていました。若草物語を彷彿とさせる、明るくさわやかなラブストーリー。 ピングリーと長女ジェインもいいのですが、だんまりで高慢なダーシーと偏見に流されるエリザベスの恋の行方にドキドキしました。すぐに愛情を確かめるのではなく、思いを温めゆっくりと愛情を育む。徐々に思い込みや偏見が消え、惹かれていくというのは美しいものです。恋物語だけでなく、個性豊かな登場人物たちにも注目! |
| 『ニッポン居酒屋放浪記 立志篇』 太田和彦/新潮文庫/580円/★★★☆☆ |
| 居酒屋に行きたくなりますけどなにか?そう、酒飲みの心をいたく刺激する本。大坂・松本・静岡・松山・房総・新潟・京都・秋田・鳥取・青森・小倉・釧路・広島・金沢と14か所の酒飲み記録で、当地の居酒屋をたくさん訪問している。 「私が好きなのは古い居酒屋である。」と本人も宣言するように、太田氏が訪れてるのは、裏路地で地元の方に長く愛されているような、じっくりしんみりと飲めそうな場所たちだ。 もちろんすべてが最高な店でなく、そこの主人がぐわっと血圧をあげそうな嫌な店も遭遇してるけどね。人生いろいろあります。 |
| 『わたくし的読書』 大田垣晴子/メディアファクトリー/620円/★★★☆☆ |
| 大田垣さんによる書評コミック。テーマごとに2〜3冊の本を紹介しています。単なる本の紹介というよりは、わたくしが思うには〜というようないたって軽い読み物。軽く読みたいとき、あまり頭を使いたくないときなどにオススメです。紹介されている本は多岐にわたっていておもしろい。 それにしてもHな感じの本もというか話をわりかしされている。そういえば『オトコとオンナの深い穴』を書いたのも大田垣さんだな。 |
| 『サンサル@』 大田垣晴子/廣済堂出版/1223円/★★★☆☆ |
| 「話の特集」にて連載された、「サンサル」をまとめた本。 太田垣さんの雑誌、「Oオー」につながるものを感じます。デビュー作です。採取もの(一定時間一般人の観察をすること)がお気に入りです。 |
| 『オトコとオンナの深い穴』 大田垣晴子/ダ・ヴィンチブックス/1050円/★★★★☆ |
| 性にまつわる体験調査型エッセイ。単純に興味のツボを刺激してくれます。普段はのぞけない裏や奥、本音なんかをサラリとのぞき見する感じ。どぎつさもかわいいマンガでマイルドになってます。 |
| 『太古、ブスは女神だった』 大塚ひかり/マガジンハウス/1575円/★★★☆☆ |
| なんと衝撃的なタイトルでしょう(笑)女なら、一番言われたくない言葉、もって生まれたくない資質、”ブス”。しかし、日本最古の神話にに登場する女神イザナミノ命が、黄泉の国へ行くことで腐乱死体として夫イザナキノ命に醜い姿をさらしたことをブスの誕生とし、源氏物語の末摘花、おたふく、嫁にもいけないから学校を卒業できる明治時代のブスにいたるまでの考察がすばらしいです。太古、醜さは、富と長寿、権力といったパワーとともに存在していました。ブスを袖にすることで、その価値にありつけなかったり、逆にブスをとることで得たり。女性というものを、女性の地位の変遷をこんなおもしろ角度でとらえるなんて。ブ男の歴史も同時に書かれていますが、その力の弱いこと。ある意味現代もブスの威力を思い知らされた気分。普通”美”というプラス面をとりがちですが、逆手をとった”醜”をさぐることで、”美”と”醜”の価値の変遷をじっくりと味わいたい1冊です。 |
| 『わたしの家』 大橋歩/講談社/★★★☆☆ |
| 2軒の家を建てた著者の家についてのイロイロ。結構詳細なこともホンネもずばり描いてます。家を建てよう!と考えてるわたしには、心構えみたいなものが参考になりました。2軒も家を建てれませんけどね。 |
| 『くらしの一日一日』 大橋歩/★★★☆☆ |
| 住まいと暮らしのこと。子どもや親との同居と住まいのこと。「わたしの家」と同様にセカンドハウスについても触れられてますが、中古マンションリフォームがメイン。暮らしにあわせて住まいを住み替えていく、憧れの生活がのぞきみできます。とはいえ、一般の庶民にはむずかしいかな。家一軒建てるだけで精一杯ですもん。それとも努力すればできるのか。必要なのはお金とイメージと忍耐力ですね。 |
| 『しょっぱいドライブ』 大道珠貴/文芸春秋/1238円/★★★☆☆ |
| 表題作「しょっぱいドライブ」の他、「富士額」、「タンポポと流星」3編収録。 「しょっぱいドライブ」は、金をいくらでも貸してくれて、弱腰の九十九さんと、暗くて、影が薄くて、いまだに昔の男に未練があるわたしが出てくる、二人はなんとなく寝て、ドライブデートも時々している。しょーもなくだらだらしていて、ふにゃふにゃだ。だが、夢も未来もないくせに、「どうすれば働かなくて生きていけるかな」とそこだけはちゃんと考えている「わたし」に自分を見るようで、ちょっとおかしかった。 「富士額」のお相撲さんと女子中学生のセックスの話も、「タンポポと流星」の腐れ縁の毬子と灰田未散の腐れ縁っぷりも結構いい味出している。芥川賞選考委員会で高橋のぶ子さんは「人間と人間の関係を描ききったのはこの一作だけ」と「しょっぱいドライブ」について評している。私もそう思う。作中の人物間の関係もまあいいが、特に1対1の様子がもっといい。 ところで、「しょっぱいドライブ」を読んで、北森鴻の「桜の下にて春死なむ」を思い出した。老人とセックスという部分だけが同じなのだが、そのせいで姉が北森氏に低い評価を付けた(この本しか読んでないのに!)。果たして大道さんにはどういう評価をくだすのだろう。この本は読書サークル内でまわしているものだ。姉から受け取ったので彼女はもう読んでいる。早速感想を聞いてみなければ! 「しょっぱいドライブ」第128回芥川賞受賞。 後日談:やはり姉は、『しょっぱいドライブ』はだめやったと言ってました。 |
| 『東京 居酒屋探訪』 大道珠貴/講談社/1575円/★★☆☆☆ |
| 大道さんは酒豪なんですね。朝から・・・道々・・・というときどき出てくる飲酒スタイルが、身近な友人にそっくりで、同じような人が他にもいるのが驚きでした。 これは飲み屋を紹介するエッセイで、大道さんの過去のこと、作家としての日常のこと、お酒にまつわる話と、素の彼女を身近に感じられる内容だけれど、私は彼女のことが嫌いかもしれない。暗いし後ろ向きだし皮肉っぽい書き方が嫌で、きっと彼女と一緒にいたら楽しくなさそうだから。私の勝手な思い込みでしょうけれど。 |
| 『文庫本雑学ノート』 岡崎武志/ダイヤモンド社/★★★☆☆ |
| 角田光代との共著『古本道場』で岡崎武志を知りました。古書にお詳しい方らしい。そして、文庫本が大好きみたいですね。愛してやまない<文庫>についての本で、うんちくがたくさん並べられてます。いろんな視点があるもんです。 一番よかった!と思ったのは、後半の「しおり」の項目。そう、文庫にはしおりがつきもの。今でも残る新潮文庫の紐からはじまり(昔はどの本にもついていた)、途中現れた文庫本のおまけのしおりについて紹介されています。 岡崎氏は(この時点では)知らなかったみたいですが、しおりコレクターとしても見ごたえのあるものでしたよ。 |
| 『博士の愛した数式』 小川洋子/新潮社/1575円/★★★★★ |
| 「僕の記憶は80分しかもたない」背広にクリップ止めされたメモ用紙。事故のため記憶に障害がある博士と家政婦の私と息子の√(ルート)3人の交流が、胸を温かくしてくれます。博士の数字を介しての会話、子どもへの惜しみない愛情、それにこたえるかのように数式と博士の魅力に惹かれていく”私”と√の素直さと思いやり。それが決して押し付けがましくなく自然。小川さんの作品のやさしさに心を打たれました。三人三様の苦しみを抱えているからこそ、こんなに素直に相手の気持ちを受け入れられてるんでしょう。目線を変えれば違うものが見える。素直に受け入れてみることが、なんと楽で違った世界をみれるきっかけとなるのでしょう。ついでに友愛数やら完全数、素数にと数字や数式に美しさがあるということを一緒に発見できたことがうれしかったです。 ところで博士が数字と数字の関係に感嘆し、その話をしているところ、私の好きな漫画山下和美の「天才柳沢教授の生活」を思い出しました。自分の研究対象に対する観察眼といいますか、得意分野における子どものような無邪気さというか。やさしさと、同じだけの悲しさがブレンドされた作品でした。 |
| 『貴婦人Aの蘇生』 小川洋子/朝日文庫/525円/★★★☆☆ |
| なんとも言えない空気感。硬質な文章ながら、色彩臭いそして死という生々しさがついて離れない。 まず、おびただしい剥製。なりゆきで”私”と伯母が共同生活をすることとなった洋館に足の踏み場のないほどの剥製なのだ。しかも、”私”がこらえきれずにトランクルームを借りていくつか持ち出しても、それがわからないほどの。剥製の目が始終向けられる空間というのは死したものであるけれども、どんなに緊張感があふれるだろうかと想像してしまう。 そこに、なんにでもAという刺繍を繰り返す伯母と、ある儀式を終えないと(上手く終えないと)絶対に扉をくぐれない”私”の恋人ニコ、剥製マニアのオハラが出入りする。奇妙な舞台を見ているようだ。 彼ら4人が過ごした夏の奇妙ながら温かなお話と言ってしまうことも出来るけれど、それでは物足りないような言葉ではうまく表現の出来ない不思議な読後感だった。 |
| 『世にも美しい数学入門』 藤原正彦/小川洋子/798円/★★★☆☆ |
| 『博士の愛した数式』を書いた小川洋子さんと、数学者藤原正彦さんの対談。遠い遠い世界だと思ってた数学の世界が、思った以上に縮まりました。数学者とは美しいものに見せられた人という話題が印象的。 |
| 『明日の記憶』 荻野浩/光文社/1575円/★★★☆☆ |
| 若年性アルツハイマーのため、日に日に記憶をなくしていく。佐伯と家族の苦悩がせつなく苦しかった。完治しない、病気がばれることへの恐怖、愛するものを忘れてしまう恐怖、死への恐怖。もがいてもがいても這い上がれないような不幸のようで読むのもずいぶんと悲しい思いをしました。自分が、家族がもし・・・と考えるとやるせないやら恐ろしいやら。 佐伯の目線で書かれているので、家族の思いはちらちらとしかうかがえません。しかし、そのちらちらと見え隠れする悲しみは想像を絶します。忘れてしまうというのは本当の恐ろしいことです。家族のきずなって大事ですね。後半の、同じ病に冒されている陶芸家との一夜の話が滑稽で悲しい幸福感が漂います。 |
| 『愛しの座敷わらし』 荻野浩/朝日新聞出版/1890円/★★★★★ |
| なんちゅう可愛らしい話なんだ。表紙に描かれた、牧歌的な農村の古い家の縁側にちらりと見える座敷わらしを見てもすぐわかるでしょう? 会社の転勤を機に、KY親父が家族に内緒で借りた田舎の一軒家。けれど、家族との平和な日常を望みながらも、家族との関係から完全に浮きまくった父親の思うようには行きません。まだまだ子どもらしい息子はいいとして、夫の勝手に激怒する妻、いまどきの悩める中学生の娘に、ボケかけてきた母親。この家族の窮地を救うのは家に取り付いていた座敷わらしなのです。 都会からやってきた家族の田舎暮らしのドタバタと、ひょっこり現れる座敷わらしとのやりとりにプッと笑わされ、息子の智也と座敷わらしの交流に和まされ、やがて、家族がそれぞれに変わってきて団結していく一連の様子を楽しませてくれます。なんでも心の持ちよう、身近な人を思いやることで幸せがやってくるという単純明快な内容ですが、やっぱりそこがとてもよかったです。あったかい気持ちになれる一冊。 |
| 『東海道ちんたら旅』 小沢昭一&宮腰太郎/新潮文庫/660円/★★☆☆☆ |
| ずーっとまえから積読本になってました。なぜって?当時は小沢さんのスケベトークをどうしてもうけいれられなかったから。でももう大丈夫(笑) 東海道在来線をちんたらと大阪まで旅する、いわゆる目的地へを目的にしてなくて、目的地までの道程を楽しむ旅。途中下車しつつ、地元の面白いところを楽しむ、なるべく有名で大きな駅には降りない(ときどきそれはなかったことになる)、スケベネタをまぜる(笑)というところでしょうか。 私じつは小沢さんを存じなくて、「小沢昭一的こころ」というラジオ番組をされているんですね。今はどうなんでしょう?カバーの見返しの顔写真をときどき拝見しつつ読み進みました。あくが強くて、風俗が古いので少々??となりながらでしたが、味があって面白い旅ができました。 |
| 『ヨーロッパ本と書店の物語』 小田光雄/平凡社新書/798円/★★☆☆☆ |
| 書物の流通、書店のおこり、作家の苦悩、出版業界の裏。本をめぐる近世〜近代ヨーロッパの物語をおもしろくまとめてある。書痴、本好きの始まりは「ドン・キホーテ」からだとか、バルザックの「幻滅」は自分が体験した出版業界の裏事情だとか、貸本業界は賃金を多く得るために三巻本じゃないと出版を拒否されたとか、そのためにブロンテ姉妹の作品はエミリー・ブロンテの「嵐が丘」と妹の「アグネス・グレイ」がセットで出版されたとか。(シャーロット・ブロンテの「ジェーン・エア」は三巻本の要求に満たされていた)本と書店、作家と出版者、取次者、書店の攻防があったとは・・・。作品=商品、金儲けがメインにでてくるあたり、現代もそんなに状況がかわらないんですね。売れなきゃダメというところ辛いですね。 |
| 『かわいい図鑑』 小田切竜太郎・すずきまさみ/KKベエストセラーズ/1260円/★★★☆☆ |
| アップリケ、こけし人形、中原淳一の「それいゆ」。小田切竜太郎さんとすずきまさみさんによって再発見されたかわいいものたち。時代に見捨てられていったものたちを発掘していくセンス。時代はめぐるといいますが、あらあらよく見たらかわいいじゃないのと納得です。時々は身近なものをみつめなおしてみるというのもいいものです。 |
| 『ZOO』 乙一/集英社/1575円/★★★★☆ |
| 10編の短編集。語り口が独特。そして、ひやりとする怖さがあった。入れ替わり、殺人、寿命、事故、理不尽。タイプは違えど、すべての作品に”死”が盛り込まれている。「血液を探せ!」、「SOーfar そ・ふぁー」、「SEVEN ROOMS」が特にお気に入り。「血液〜」では痛みを感じない”ワシ”の達観っぷり、「SO−far」ではラストのあっと言わせる結末、「SEVEN ROOMS」の設定。とにかく読んでみてほしい。 |
| 『失はれる物語』 乙一/角川書店/1575円/★★★★☆ |
| かつてはライトノベルで発表されていたという作品を集めた本。 表題作「失はれる物語」他5編収録。はっきりいって泣きました。どれもいい感じにせつない。しかし、作者があとがきでも言っているが、交通事故、多すぎ(笑) とにかく読んでみて、わかるからと言いたくなる。ライトノベルへの偏見はとれます。 |
| 『暗黒童話』 乙一/集英社文庫/620円/★★★★☆ |
| 事故で左目を失ってしまう菜深。彼女は眼球の移植手術を受けるが、その左目はさまざまな映像を見せるようになる。新しい「記憶」に導かれ、眼球提供者の故郷へとむかうが・・・。 不気味な童話と平行して目を失った少女の物語が進みます。特有の自己しゃべり口調で独特の孤独感が支配している。なんとなくひとりぼっちにされた気分になります。左目が見せる記憶に取り付かれる菜深は、ある事件に巻き込まれてしまう。結末の二転三転は面白かったです。青い館に住む画家、潮崎さんになんとなく強い興味を持ってしまった。黒い服を着て長髪、美しい顔やばそうな雰囲気・・・笑 なんだかいい男の予感だったんだけどなぁ。 |
| 『屋烏』 乙川優三郎/講談社文庫/520円/★★★★☆ |
| 表題作『屋烏』他全5編収録。中でも一番『屋烏』がいい。 父親は政変に巻き込まれ惨殺され、揺枝と幼い弟が残された。揺枝は一家の大黒柱として家を守るが、弟が一人前になる頃には自分の婚期はとうに過ぎていた。そんなある日気晴らしの海神山の茶屋からの帰りに、顔に傷のある侍と出会う。生まれて初めて異性に恋心をもつ揺枝。しかし、彼は城下でも評判の暴れ者であった。 揺枝はよくできた姉である。家をとりしきり、弟を育て上げ、嫁に行かない自分が皆の重荷になってはと、自立する算段もつけている。しかし、それであなたの人生いいんですか?と心配したくなるほど味気ない毎日の彼女の前に現れる一人の男性。ちょっとありきたりだが、初恋っていいな♪とそのすがすがしさをあじわえた。 どれも失くしかけていた幸せを引き寄せようと努力してみる人がでてくる。一回落ちても「あきらめたくない」という気持ちで歩き始める彼らはどれもまぶしく感じられた。 |
| 『冬の標』 乙川優三郎/文春文庫/650円/★★★★★ |
| 女が結婚をせずに、絵への一念を貫き通す・・・。これは現代でも難しいことにちがいない。 時代が急激に変化を遂げた幕末。ある小藩に暮らす明世は絵の魅力にとりつかれていく。しかし、仕来りを重んじる両親に夢は砕かれ、”女としての幸せ”である結婚を余儀なくされる。泣く泣く従った明世に待つのは幸せな未来ではなかった。理解のない夫、きびしく締め付ける舅と姑、子供。相次ぐ夫と舅の死に見舞われ零落した生活。明世にはこれでもか〜!というほど、世間の荒波が押し寄せる。 女性がきびしい現実と対峙しながらも、しなやかに闘う姿というのが好きだ。そこには、単なるがむしゃらさや反抗心はないほど良い。冷や冷やとした、強情なまでの意志の強さが見え隠れする明世だが、本当は奥底で情熱がマグマのように感じられるのだ。好きなことを続けるというのはこういう絶え間ない欲望がないといけない。りりしく強い女性の美しさが心をゆさぶる。冬の寒い日、旅立つ姿がさみしくも揺るがすことの出来ない強さを印象深かった。 |
| 『東亰異聞』 小野不由美/新潮文庫/590円/★★★☆☆ |
| 帝都 東亰の夜毎現れるのは、全身火達磨にして突き落とす火炎魔人や赤い内掛けを着、夜道で人を切り裂く闇御前。他に魂売りや般若蕎麦屋と魑魅魍魎が跋扈する。 公爵家のお家騒動に絡んでいるのでは・・・と事件の解決に立ち上がる新聞記者の平河とか、「この世に不思議なことはないんですよ」という香具師の元締め万蔵が出てきて「京極堂」チックな話だな〜と思っていたら、ラストのどんでん返しに仰天させられた。 人の心の闇を官能的に扱うところは小野さんらしいと思った。ただ、話の飛躍が大きくてムムム・・・と言う点もあって残念。 |
| 『十二国記シリーズ』 小野不由美 |
| →こちらです |
| 『魔性の子』 小野不由美 |
| →こちらです |
| 『黒祠の島』 小野不由美/祥伝社ノベルズ/930円/★★★★☆ |
| 閉鎖された島で起こる殺人事件。人間関係の濃厚さに脱帽。小さな島は「一島一家族」とゆうが、内の人間同士の開けっぴろげのよさと、外の人間に対しての閉塞感と疎外感がつらい。 |
| 『貧好きの骨董』 尾久彰三/晶文社/2625円/★★☆☆☆ |
| 「骨董」という言葉を聞いて皆さんは何を思い浮かべますか?「高い?」「お宝?」「なんでも鑑定団?」もし自分の家から古く曰く付きのものがでてきたらいくらするだろう・・とお金の勘定をしてしまうかもしれない。 しかし、著者は言う。「その価値を金銭に求めるのは違うのではないか」と。「骨董の価値は美にある。ものの美しさを通して真理に触れる価値がある」と。金銭はあくまで誰にでもわかりやすい一つの目安であるのだ。 そう考えると以外と簡単だと思いませんか?なぜなら、その物を見て、「美しい!」とか、「形がいい」とか、「時代を経て使い手の気持ちが伝わってくる」とか、私たち自身の価値観で決められるから。ようするに、自分が「好きだ」「美しい」と思えばいいわけだから。もちろん、良い物を見抜く目も大切ですが。 本書からは尾久氏の蒐集してきた物たちへの愛情が溢れている。磨耗した仏像や、阿弥陀三尊来迎図、沖縄の焼き物、捨てられていた落書き・・。ものは違えど、彼らが持つ美しさが伝わってきた。 「骨董の楽しみ」それは、自分の「良いな」を発見する楽しみなんでしょう。 |
| 『六番目の小夜子』 恩田陸/新潮文庫/540円/★★★☆☆ |
| 「小夜子」は10年ほど前から続く、この学校の伝統行事?です。今年の「小夜子」が6番目。しかし、今年は水面に石を投じたごとく事件が起こります。今年の「小夜子」がいるクラスに、津村小夜子と言う名前の転校生が来たことで・・・。 学校を舞台にした小説を読むと、無性に学生時代が懐かしくなります。特にドラマチックな事も、がんばった事も、感激した事もないけれど、大切な、特別な思い出としてよみがえって来ます。転校生、学園祭、学校の伝説、淡い恋。なんとも懐かしく、淡い思い出を喚起させられる言葉、心躍らされる言葉ですね。 懐かしさと、期待感、そして、あの時自分もこうだったらよかった!という気持ちをもう一度「やりなおし」させてくれる作品です。 |
| 『光の帝国』 恩田陸/集英社/520円/★★★☆☆ |
| 「常野」から来たという不思議な力をもつ家族。SFファンタジー。彼らは日常にとけこみながら、生きている彼らの意思がイマイチつかめない。 |
| 『Q&A』 恩田陸/幻冬舎/1785円/★★★★★ |
| キター!私はホラー系の本が好きで、書評にもよく”ゾッとする”と書くけれど、これほどゾクゾク背筋が凍る思いをさせられたのは久しぶり。 2月のとある休日。人があふれかえる大型スーパーで大惨事が起こる。死者69名、負傷者116名。その原因は不明。恐怖心が伝染し発生したと見られるこの事故はその後も人々の中に影を落としていく。 質問と答えでなりたっていく構成。特定のだれかでない登場人物、政府の陰謀に心の闇。一つ一つがあらぬ想像を呼び起こす。なまじかなホラーなんて目じゃない出来。こわい。 |
| 『夜のピクニック』 恩田陸/新潮社/1680円/★★★★☆ |
| 学生時代、無意味に辛い学校行事ってありました?私の高校時代は男子ハーフマラソン、女子10キロマラソン、が毎年。だから、丸々一日、歩くこの行事他人事じゃなく読みました。 異母兄妹が同じ学年にいる。それも、父親の浮気相手の子。同じ学校だけでももてあまし気味なのに、高3でとうとう同じクラスになってしまう。憎く思ったり、近づきたかったり。そこが、この過酷な行事でお互いの壁みたいなのが取り払われる、その瞬間が印象的で、読みながら一緒に歩いていた(気分の)読者を爽快な気持ちにするんでしょうね。 青春っていいな(よかったなぁ)と思わせる一冊。 |