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【三津田信三】

『ホラー作家の棲む家』   三津田信三/講談社ノベルズ/861円/★★★★☆
英国の正統な怪奇小説を目指す三津田。『迷宮草紙』なる同人誌に寄稿を依頼され、連載をはじめる。作品を完成させるために、偶然発見した人形荘へ住むことになるが?
夏から続く、私のホラーブーム。小池真理子さんの『墓地を見おろす家』に続く怖さ。ただ今回は気持ち悪さもすごかった・・・。現実世界と、三津田の書く(?)小説世界が交錯してくるあたりや、追われる恐怖が満載で、途中から単に猟奇殺人で怖がらせようという魂胆なのか?と疑わせつつも、最後は納得の締めくくり。このすっきりした後味の悪さ(変な言葉ですけど)は気に入りました。また、熱心にというか、ほとんど憑かれたように語られる、怪奇小説の作品や、作家、映画やビデオの話題はふむふむでした。これ読んでみたいな〜と思わずメモもとってしまいました。
ところで、作中にでてくる登場人物や書籍は実在する方や物なんですよね。三津田氏が編集している「ワールド・ミステリー・ツアー13」のロンドン編、イタリア編、京都編、東京編は楽しく読ませてもらいました。
『蛇棺葬』   三津田信三/講談社ノベルズ/945円/★★★☆☆   
幼い頃、父の実家百巳家で体験した不気味で身も凍るような体験。旧家に伝わる曰くありげな葬送百儀礼、百蛇堂とよばれるお堂、村人からむけられる視線・・・。そして父親の失踪。ねっとりとした恐怖漂うジャパネスクホラー。
一族にまつわるいわくありげな話というのは好奇心を誘うもので、大半が子どもの視線、体験という書き方に、もどかしくも追い込まれるような怖さを感じた。名前や挿入されるキーワードによって”蛇”に関するなにかだろうなぁと察しはつくものの、結局はホントのところ誰も真相を知らないという、当の本人以外に知るすべもないすっきりしなさ、なぜ?という説明のできない怖さが魅力。「ずずず・・・」「はぁぁぁ・・・」「ぜぇぜぇ・・・」とそこにいるなにかの効果音は腐臭すら嗅げそうだ。しかし、続編もあるためか、最後まで読んでも真相には突き当たれない。やっぱりすっきりしない。
『百蛇堂』   三津田信三/講談社ノベルズ/1260円/★★★★☆
『蛇棺葬』の続編。龍巳のその後と、彼の体験をまとめた本を出版するためにかかわった『ホラー作家の棲む家』の三津田信三らの周辺ですさまじい怪異が・・。
私としては前作より、断然おもしろかった。なにわともあれ、最後の最後に謎という謎がちゃんと解きほぐされたから。また不可解な謎が残りますけどね。前作は過去の記憶のあいまいさばかりがめだってイライラさせられたが、えー!今回への伏線だったんですか?!ということで、『蛇棺葬』を読まれた方はこちらもどうぞ。そして、こちらを読まれたい方は前作もどうぞ。じわじわと真綿で締められます。気持ちが悪い。殺すなら殺してくれ〜!と発狂しそうです。「リング」や「呪怨」を髣髴とさせる作品。
で、読み終えた私にもなんかあるんでしょうか?それを考えると怖くて眠れません。
ちょいイネタバレはいりますが、三津田信三氏がいなくなっちゃったらもう他の作品は読めないの?えぇ!と思ったら「シェルター終末の殺人」という新作がでていました。安心。
『作者不詳』   三津田信三/講談社ノベルズ/1575円/★★★★☆
『迷宮草子』というミステリ同人誌を幼馴染の信一郎が手にしてから、三津田のまわりに忍び寄る怪異。1話ごとの謎解きで怪異を食い止めることができそうなのだが・・・。
1作目の『ホラー作家の棲む家』のニュアンスを残しながら、後の『蛇棺葬』『百蛇堂』のおどろおどろしさを髣髴とさせる。小説の中の小説というマトリョーシカ や箱の中に箱のように『迷宮草子』の作品が紹介されていて楽しい。ただそれはかなりゾゾゾとさせる内容だけれど。本格ミステリ仕立てでいてホラーな作品たち。どこを読むのも気を抜いてはいけない。そして今回も余すところなくミステリ系の薀蓄がと盛り込まれている。
ところで、本書は薀蓄、和服着流しの信一郎、古本屋となんとも私の好む3点セットとなった作品。それにホラー要素と最後まで気の抜けない仕掛けがあって、楽しめる。
『シェルター終末の殺人』   三津田信三/東京創元社/1785円/★★★☆☆
新作長編小説のためにシェルターの取材にきた三津田信三。他の見学者と一緒にシェルターの入り口まで来たとき空に閃光が。急いでシェルター内へと避難し、見知らぬ6人の共同生活が始まる。しかし、二日目に一つの死体が発見される。
あらあら、三津田信三、やはり帰ってきましたね。今回はいつもの怪奇ホラー的要素はなりをひそめ、本格ミステリの様相をていしています。突然の核戦争?それとも原発の事故?とにかく分厚い鉄壁の向こうのことはわからず、放射線が安全レベルまでさがるまで避難生活。そんな心細いなかに、なぜ人殺しが?犯人は仲間の中に?と気をもませます。でも、三津田氏のねっとりみっちりとした言いようのない恐怖と不快感が少なくてざんね〜ん。あれが大好きなんですけどお。殺人事件の謎解きのなかに、これでもか〜と三津田氏のミステリ、ホラー系の本、映像の知識がひけらかされています。つきあいきれない(笑)しかし、そういう体系的な見方ができないのでお勉強になるのはたしか!彼のいう屑ホラー、私は結構好きですけどね。マニアにはゆるされないことなんでしょうね。

以下はネタバレ。
結局はすべて三津田信三の中の人格という設定は映画「アイデンティティ」とそっくり。おいおい。映画では、もともと多重人格者の犯罪者が、殺人をおこした人格を消すために、一人ずつ殺していきました。嵐の山荘スタイルです。というか、本当に大嵐で、外界と連絡がとれないモーテルという設定。
「シェルター終末の殺人」では、同行者を見捨てた罪悪感とシェルター内にいるのは自分だけという恐怖を逃れるため、現実逃避のため作り出した人物を不必要になった時点で殺していきます。ところどころに、張られる伏線でもしかしたら気がつく人もいるかもしれません。私は最後までわかりませんでしたけれど。
ところで、結局外の世界で何が起こったのでしょうか?そこのところが一番気になります。
『凶鳥の如き忌むもの』    三津田信三/講談社NOVELS/1134円/★★★★☆
久々の三津田信三でした。本当は「厭魅の如き憑くもの」を読んでたのですが、まだこちらは完読しておらず、2作目を先に読んでしまいました。ということで、こちら、刀城言耶という怪談・奇談好きで収集家の作家が巻き込まれるシリーズの第2作目。どことなく、横溝正史の世界を彷彿ともさせます。瀬戸内海の島が舞台ですし、時代が、戦後しばらくしてからという設定なので。
凶鳥(まがとり)という、字の如く、鳥が事件に深く関わってます。ほどよいホラー風味と、ほどよい探偵小説風味がよろしいようで、読み応えあります。考えられる線を一つ一つ解いていくという、地道な言耶の方法論が好きです。袋小路に追い込まれ、じゃあ、もう化け物の仕業でいいよね、そうだよね?と思うと、ちゃんと抜け道がある。おかげで怖さの深みにはまれました。ただ、アタマがこんがらがりますが。ちょっと悲しいお話。
『厭魅の如き憑くもの』   三津田信三/原書房/1995円/★★★★☆
因習と閉塞の村で起こる、殺人事件。巫女の一族を襲う殺人事件の犯人は?過去の神隠しとは?
怪談収集作家 刀城言耶シリーズの1作目。
カカシ様とかいう厭魅もの、神隠しが、作品の空気をおどろおどろしくして盛り上げてます。閉塞的な空間とあいまって、さまざまな謎が謎を呼ぶ・・・みたいな。忌むべきもの、昔話、生霊、そういうねっとりと怖いものばかりを寄せ集めて、殺人事件と絡めてるバリエーションはなかなかのもの。でも、ふたを開けてみたら結構反則気味の結末なの〜?いやいや、不思議なものの正体というのは案外そういうもの。恐怖心が高まれば、暗闇で揺れるシーツもお化けだもんね。ホラーミステリーが好きな方にオススメ。
『スラッシャー廃園の殺人』   三津田信三/講談社ノベルス/903円/★★★☆☆
始まりは三津田信三らしい冗漫でつまらない会話。苦手ですがそこを越えれば彼らしいホラーミステリーに出会えます。ラストの〆方も以外だけれど、彼らしい。
『首無の如き祟るもの』   三津田信三/原書房/1995円/★★★★☆
奥多摩に代々続く旧家、秘守家。長男・長寿郎の花嫁探しの儀式中、恐ろしい事件が。花嫁候補の一人が首無遺体で発見されたのだった。旧家と祟り神の伝説という、三津田氏のお得意パターンのホラーミステリ。刀城言耶シリーズ3作目。
連続殺人事件は、戦前の秘守家での双子の妹の事故死と絡まり、秘守家の隠された秘密にもふれていく。今回は、過去の三津田作品にも登場する、「迷宮草子」に投稿した作品として書かれている。作者は、事件を捜査した、地元の警官高屋敷の奥さん。有名作家となった彼女が、本名で書き下ろした形をとっている。いつものパターンと違うのは、なんと、刀城言耶は怪談・奇談を収集するため媛首村へと行く前に途中下車してしまうからなんですね。ということで、ちゃんと活躍しないんですが、決して無関係ではないと・・・(ちょっと気を持たす書き方をしてしまった)。
トリックで推理を楽しませるだけでなく、例え、事件を解決した気分になっても、初めから漂うおどろおどろしい気持ち悪さは解消させない(読み終わってもコワイ)、いやーな感じ。この作者は読者をまったく裏切りません。
『山魔の如き嗤うもの』   三津田信三/原書房/1995円/★★★★☆
刀城言耶シリーズ第4弾。忌み山で暮す一家の消失事件。そしてその後に起こる連続殺人事件。しかしながら、私にとってはおどろしさが半減して、普通のミステリでした。そこが三津田信三らしくなくて残念でした。
さて、前作で途中下車しちゃった刀城言耶のその時の話と続くのですが、お世話になった先でまた厄介ごとを拾ってきているみたいな?はじめはこのキャラで押してって大丈夫なのかというほど、弱いキャラクターだったのがいまや様になってきましたね。結末までのどんでん返しもいいですが、次回作はもっとすごいのを!期待してます。

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