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【中島らも】

『とらちゃん的日常』   中島らも/文芸春秋/1500円/★★☆☆☆
7月末(H16)の訃報から中島らも熱が再燃してきました。初らもは「しりとりえっせい」あれから1×年。久しぶりのらもさんのエッセイは、う〜ん困ったオヤジ(笑)こいつは困った困ったオヤジです。
ある日突然飼いたくなった猫。ペットショップで買ってきたトラじまの雌猫とらちゃんは、中島らもの事務所で飼われることになる。しかし、情熱は初めだけだったため、やがてとらちゃんは大家さんにとられてしまう(笑)いまや中島らもの部屋はとらちゃんのトイレとして使用される始末。でも、過去にもペットを取られて経験をもつらも氏は気にしない。とらちゃんかわいいといいつつ、らも氏の忙しい毎日をつづっている。
『バンド・オブ・ザ・ナイト』   中島らも/講談社/1890円/★★★★☆
80年代大島と嫁の み、居候の岡本さん、エス、ガド君。みんなクスリでラリっていた。浴びるほど酒を飲んでいた。獣のように秩序なくセックスしていた。

「ヘルハウス」と呼ばれる家に出入りするいかれた人々。日がな一日働きもせず、とっかえひっかえ人の出入りがあるその場所、やってることからして異常地帯だし、非常に危ない人たちだ。しかし、秩序やルールを取っ払った中で、本能のまま生きてる彼らは、吐きそうなほとの嫌悪をあおる半面、抱きしめたくなる愛らしさがある。
ラリるとあらわれる単語の洪水。多いものでは20ページにもわたる言葉の羅列。読むものの頭の中に侵入して理性を飲みこんでいく。とぎれることのない、脈絡もない思考は酒に酔っ払ってるのと似ている。ならアルコールで充分だなと思うのは臆病な人間の発言になるのでしょうか?
大島が働いていた丹波屋を辞めるとき、引継ぎをうける新人をみて”人身御供”という四文字熟語が浮かんできたというのには大笑いしてしまった。私も、そうやって突然上司に去られたし、自分もそうやって会社を辞めていたから。ピタッとくる言葉をその場に持ってくるところが、さすがは後の”彼”を彷彿とさせていていい。割り切ったところ、凹みそうな状況も楽しむくらいの素直さもまた気持ちいい。
でも、いいとこばかりじゃない。8年ぶりにあった親友(男)とセックスしてしまったり、みの前で他の女を抱いたり、みの浮気を許したり、そういうのはわからんな〜。もち、クスリとかシャブとかそういうのも。自分は間違いなく”普通の人”にとどまっているようだ。うん、よかった。
『ガダラの豚』   中島らも/実業之日本社/2039円/★★★☆☆
超能力に呪い、テレビ番組に新興宗教、トリック暴きにアフリカの呪術。次々にだされるテーマ、ドラマ「TRICK」でまんまネタみたな〜っという内容になんじゃこりゃ?とあきれてたら、まだまだ序章。ちゃんと最後まで引っ張ってくる面白さがありました。
注目は、大阪弁丸出しのケニア人とか、アル中の大学教授、格闘好きの助手に、クスリ漬けのテレビ屋と、どこかでらも氏自身とかぶってる人々。テレビ界の裏や、薬の陶酔シーン、禁断症状がでた様子とかはさすがですね。淫乱症のセラピスト秋山ルイ先生が、助手道満をからかうところがお気に入りです。娘の事故死に呪いと深刻になりそうなところを、わきあいあいとのどかにすすむのでるかと思うと、グログロな顛末が待っていて油断大敵。呪いの効果について、それぞれの登場人物の意見も面白かった。
『”せんべろ”探偵が行く』   中島らも+小堀純/文芸春秋/1450円/★★★★☆
千円でべろべろに酔える…を意味する”せんべろ”。安くて美味いアテと酒が飲める大衆的な飲み屋(立ち飲みとかネ)をめぐる酔いどれ紀行。一軒目の大阪新世界でさっそく五体当地(これは身を投げ出すように倒れる酔っ払いのこと。らもさんは座り込んでしまう。)もどきをしてしまうらも氏。結局彼はお酒が原因で亡くなってしまいましたが、小堀氏と仲間達との安酒酔いどれ旅はなんとなくあったかな気分にさせてくれます。小堀氏の絶妙で軽快な筆の運びが、読むものをグフフフフとさせる。
こういうお店のアテってなんでこんなに美味そうなんだろう。モツ煮をぐわっと口に放り込んで、冷酒をキュッと含んだら、じわ〜っと効いてくるんだろうなぁ。読んでたら飲んで酔いたくなります。
『頭の中がカユいんだ』   中島らも/★★★☆☆
妻子を残し、家出して泊り込む広告代理店。ギョーカイ丸見えで書かれた小説。これはらもさんの自伝?と思ったら、どうやらそのようですね。いろいろ彼の作品は読んできましたが、この初期の本は未読でした。非常にうっかりだったと思いました。彼の作品のすべての原点なんでしょうね。素直に感動できます。
『ロカ』   中島らも/実業之日本社/1575円/★★★★☆
かつて大ヒットをとばした作家のインタビューシーンからはじまる。手にしているのは2本首のギター”ロカ”。すでに、創作活動は開店休業。しかし、気ままにホテル暮らしで暮らしていけるだけの金はあり。終わった人生がもう一度花開く。ふたたびの春へ・・・。
惜しい、実に惜しい。老人を気ままに楽しんでいる(半分死んでる)男の生き様が潔くて、でも、新しい出会いの渦に巻き込まれ、また生きなおしている、その様が心地よい。
らもさん、急逝のために絶筆となってしまったこの作品。やっぱり、作中にらもさんの生き様や、自伝的な内容が含まれてて、どこまでも、この人の作風は変わらないなと思いました。けれど、かつては退廃したからっとした内容に、老いの力みたいなのが付加されてるのです。もっと読みたいという気分にもりあげてくれてて。いまさら言ってもしかたないけれど、本当に惜しいですね。らもさんのご冥福をお祈りします。
『らもチチ わたしの半生 青春篇』   中島らも・チチ松村/講談社/★★★☆☆
らもさんとチチさんのラジオをおこした本。0歳〜20代前半まで、ふたりが交互に話してます。
いったい何歳から記憶があったのか?らもさんは1歳未満、チチさんは3歳ぐらい。本当のようなウソのような・・・。自分を振り返ってみたら、はっきりと何歳!とはいえません。どれが一番古いかはっきりしない。全体的にエロな話も多いです。らもさんの中高時代の話がおもしろかったかな?ちょうど、学生運動が華やかな頃のようで、ちょっと考えられないような逸脱がすごい。こういう経験がこういう人間を作るということを思いました。
『らもチチ わたしの半生 中年篇』   中島らも・チチ松村/講談社/★★★☆☆
らもチチの続編。中年期になりました。このあたりからは、私達も知ってるらもさんのこと。チチさんもあわせ、どんどん世間へ出て行くあたりの話はおもしろいですね。
『異人伝』   中島らも/ベストセラーズ/1365円/★★★☆☆
時々無性にらもさんの世界に触れたくなることがある。これは、らも氏の自伝語りの内容で、彼の亡くなる少し前に出版されたので本当に遺言みたいなものになってしまった。
この人はほんまアウトローだよね。しかし、自由なゆるい生き方はうらやましくなる。肩に力が入りすぎたら読んでゆるんで欲しい。

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