| 『軽井沢幽霊邸の謎』 斎藤栄/光文社文庫/440円/★☆☆☆☆ |
| 結構ミステリーを書かれている有名な作家さんのようですが、完読するのが苦痛だった。まず、登場人物のあだ名をつけることに無理がある。推理の仕方に無理がある。会話がきつい。書評を書くべきか迷いましたが、とりあえずのせます。 |
| 『堕落論』 坂口安吾/集英社文庫/400円/★★☆☆☆ |
| 戦争は終わった!今までの考え方を全て捨てろと安吾は説く。堕ちるとこまで堕ち、もう一回生きろという。それは負けたからでなく人間が生きていく道だと言っている。新しくやり直すためにはそういう考え方も大切なことだろう。 ところで、本書では表題の堕落論の他に、日本文化私観、恋愛論、などがある。私が最も気に入っているのは、「桜の森の満開の下」というお話だ。 昔、春になると満開の桜が咲く鈴鹿峠に1人の盗賊がいた。彼は満開に咲く桜を恐れていたが、それが何の為であるかはわからなかった。ある日盗賊は、一人の美しい女を自分の妻とした。そして、彼の生活がガラリと変わっていく。 桜の満開なのを日本人はとても喜びます。しかし、1人でピンク色の花びらの下にいると何か感じませんか?しんしんと落ちてくる花びらのその静けさを、昔の人たちは空恐ろしと感じ取っていたのかもしれません。 そして、私たちが満開の桜に惹かれるのは、過去に失われたものを懐かしく思って、もう一回味わってみたいと集まっているからかもしれません。 |
| 『後宮小説』 酒見賢一/新潮文庫/500円/★★★★☆ |
| 素乾国の新帝槐宗の後宮に入京することとなった銀河。物怖じせず、何事にも興味をしめす彼女は正妃に選ばれる。けれども、時を同じくして蜂起した反乱軍に攻められ立ち向かう羽目に。 初読はもう10年くらい前。なーんとなく古本屋で購入した本だったので、読んでみて面白さに興奮したものです。それから、ちょっとドキドキしたいなと思ったら手に取る本のひとつ。槐宗ことコリューンの美しさにうっとり、銀河とコリューンの淡くせつない恋にうっとり。この本がハレークインとかコバルトとかならもっともっと恋愛至上となるだろう、おいしい設定なのに(おしい!)淡白なところ、国をひっくり返す反乱とセットになってるところも魅力なのです。 そしてなにより、後宮という場所が場所だけに房事、いわゆるアレの技術を教えるという女大学。技術うんぬんじゃなく(ホントは実技付である)、角先生が生命の哲学、男と女の哲学に走ってるところがおもしろくて深いと思うのです。 こちら第一回ファンタジーノベル大賞受賞作。こんなファンタジーもあるんだなぁとまた驚かされます。 |
| 『失恋』 鷺沢萠/実業之日本社/★★★★☆ |
| 失恋、悲しいけどこれって恋の醍醐味でしょ?思わず涙がこぼれる・・・だけじゃない短編集5話。 「記憶」が一番好きかな。何人も女の影のある、あきらかに自分を利用してる男。すごく不毛だけど、だけど・・とずるずる関係を続けちゃう。好きな相手、自分を欲してくれる相手の喜ぶ顔がみたくて駆け出したくなるときもあるじゃない。樹子は、政人の都合のいい女だけど、ある日、政人へが小さく矮小に見えて一気に冷め、そう思う自分の中に爽快感があふれる。そして、すぱっと切るところがいい。 |
| 『赤朽葉家の伝説』 桜庭一樹/東京創元社/1785円/★★★★★ |
| 製鉄業を営む旧家に嫁いだ万葉とその子と孫の話。女たちが家を支え、男たちが強かった時代の神話は、昭和という時代をなぞりなおして今、自分が生きているということを考えさせてくれる。千里眼の女の苦しみと、でも日々に生きる幸せ、足るを知る心の持ちようが、今の時代の新しい生き方の中で、寄る辺なく漂う女たちの苦しみを浮き彫りにしてるみたいだ。 だけど生きていく、時に伝統に取り込まれて、時に時代に逆らって、でも自分らしく頑固に変わらない信念を持って。3世代の大河ドラマ、大変おもしろうございました。 |
| 『アレ何?大辞典』 佐々木正孝/小学館/1365円/★★★☆☆ |
| いつも目にする、身の回りのアレ。何というのと問われたら、意外とその名前を知らないものが多いことに気づく。そんな『アレ』を調べたのがこの本。鍋の時に使う持ち手のついたとりわけ小鉢は”とんすい”、ソックスを買うと止めてある金属クリップは”ソクパス”など、へぇ〜的な知識を得られます。それはそうと、本当にトリビアで取りあげられている名前が多いのよね。 |
| 『四万十川 あつよしの夏』 笹山久三/河出文庫/460円/★★★☆☆ |
| 四万十川と山間の大自然、貧しいながら温かい父母兄弟に囲まれ育つ小学校3年生の篤義。普段はおとなしくて弱虫なアツ。でも伸びやかで素直で優しくて本当は強いのだ。非常にすがすがしい、愛情に満ち溢れている小説だ。猫のキィの子供、クロを守るため、同級生の千代子を助けるために彼はたちあがれるのだから。子供が子供らしい姿でいて、なんだか安心する。そして、まわりの大人、父と母の包容力。クロを守るためのアツが両親に初めての反抗した夜、父は「いろんな気持ちをいっぺんにもっているそれがぶつかる。ぶつかるたんびに何か自分を変えていくんだ。その一方を、強調してみせたり、いっぺんにふたぁつの違う気持ちをもっちょるいうて暴き立てたりしたら、子供の成長をつぶすことんなるけんね」と言う。子供の葛藤と反抗をがっちり受け止めてくれている。いつも正しい事を指し示す事は難しいけれど、いったん聞き入れてくれる大人がいるということはすごく大切なんだろうね。 |
| 『唐揚げで乾杯!』 佐田真一/SPC出版販売/1000円/★★☆☆☆ |
| 松山にあるビアホール「みゅんへん」物語。地元でとても有名なお店です。先日安価古本ハンティング(しばイヌの企画)にてゲットした本です。 父親から受けついだ食堂を、ターゲットをしぼり、ビールにあるメニューを追及した社長佐田氏の一本通ったお話が伺えます。んー、唐揚げが本当に美味しそう♪ |
| 『穴 HOLES』 ルイス・サッカー/講談社/1680円/★★★☆☆ |
| 靴をぬすんだことで、グリーン・レイク・キャンプへ行く事になったスタンリー。もちろん原因は”まずいときにまずいところにいてしまう”というイェルナッツ家の不幸のため。その不幸はあんぽんたんの豚泥棒のひいひいじいさんのせい。だから毎日毎日直径1.5m、深さ1・5mの穴を掘らされるはめに。キャンプには「更正」が必要な一癖もふた癖もある仲間たち。5代も続く不運を見事大逆転してしまう少年の冒険物語。 同じことを意味もなく繰り返させられるということの苦痛はひどい物。でも現実を受け入れる素直さが前へ進む推進力となることを、運命を切り開く力をもたらすと知る人はどれほどいるだろう。グリーン・レイクに入る前も太っちょで学校でもいじめられてたスタンリー。どこにいても特にいいことがなかったけれど、目の前にころがった幸運をのがさずにつかんでいくところ、友達への優しい気持ちを持ち合わせていて、自分を見失ってないいい子であるところがうれしい。不運な状況でも笑いがある、希望がある、あったかな気持ちを思い出させてくれる1冊。 |
| 『犬たちへの詫び状』 佐藤愛子/文春文庫/450円/★★★☆☆ |
| 「犬は犬らしく。」 佐藤愛子さんは決して犬と人間の垣根をあいまいにしないし、愛玩ものにしないし、甘やかさない愛犬家だ。だから、なるべく自然なままをもっとうとし、鎖につながないし、体を洗ってあげることもない。自由放任タイプで、犬の犬らしさを尊重するタイプといえよう。その放任っぷりに拍手喝さいとはいかないけれど、少なくとも、家に上げ、お洋服を着せ、我が子のように大事にするという、今の愛犬家の姿にも眉をひそめる今日この頃。だから、こんな強気で、けじめをつけられる飼い主がいてくれるというのは愛犬家のはしくれにいる私にとってはちょっとうれしいことだった。 |
| 『ぬかるんでから』 佐藤哲也/文芸春秋/1700円/★★★☆☆ |
| 冷静な様でいて、とんでもない異常事態。そういう話です。非日常的空間こそ人の本性は浮き彫りになる。おとなのおとぎ話のような短編集。こんなんでも(だから?)愛妻小説らしい。不思議な話ばかりです。 読んで思ったのは、こわいなということ。主人公の男性の語り口が落ち着いていて(異常事態に対して)、そして、相手の女性に対して必要以上に言いなりなところ。一歩といわず二歩も三歩もまちがっていて、でも、その落ち着きがゆがんだ世界を作り出している。不条理な愛というのでしょうか?読後さわやかとはいきませんが、クセになる世界感です。 |
| 『ガクの冒険』 佐藤秀明/本の雑誌社/1264円/★★★☆☆ |
| カヌーイストの野田知佑の飼い犬 ガクに密着して撮った写真とエッセイ。犬好きにはたまらない1冊です。身近に犬と接した経験のある方にはよくわかると思うんですが、彼ら(犬)がどれだけ表情が豊かか!笑い、スネ、困り、おどろいて照れる。体いっぱいで表現をする愛らしい生き物です。その一瞬を見せられるとムフフフと頬の筋肉がゆるんでしまいます。 「犬が幸せな一生を送れるかどうかは、その犬の飼い主である人間が出会った一瞬で決まる」 と冒頭で佐藤氏は書いています。親を選べない子どものように、飼い主を選べない犬にとってはまさに死活問題。彼らが1日も幸せに暮らせるように、人間ができることはたくさんあると思います。 |
| 『間取りの手帖』 佐藤和歌子/リトル・モア/998円/★★★☆☆ |
| ただ間取り図だけの本である。そして、それはすごく変な…。 間取りを見て何が楽しいか?なのである。間取りと言うのは、これから住むところを探すために必要な家の説明書みたいなものである。とても実用的なものなのである。 しかし、こんな娯楽があるとは思わなかった!のです。まず、集められている物件の見取り図は本当にコレを見て住むことを決定する人がいるのか?というものも多いのだ。妄想がふくらみますよ。 |
| 『間取りの相談室』 佐藤和歌子/ぴあ/★★★☆☆ |
| 前作「間取りの手帖」に続き、間取り図の本。それにそえられた相談ごとと答えが、かみ合ってるようでずれてて、シュールです。想像力の大切さを噛み締める本。 |
| 『深夜特急1』 沢木耕太郎/新潮文庫/400円/★★★☆☆ |
| 「ミットナイト・エクスプレスとは、トルコの刑務所に入れられた外国人受刑者たちの間の隠語である。脱獄することを、ミッドナイト・エクスプレスに乗る、と言ったのだ。」 沢木氏の旅行記が始まる前に書かれている一文を見るだけで、彼の旅が尋常なものでないことが想像できる。机の中の1円玉までかき集め、トラベラーズチェックに換え仕事も一切投げ出して旅立つ気持ちをわからないでもない。一度はあこがれる。でも私にはできない。だから旅について書かれた本は大好きだ。 インドのデリーでこれからどうしようか迷いながらだらだらと沈殿し、香港では連れ込みホテルを中心に香港の人々があふれるお祭りのような街を徘徊し、マカオではカジノで天国と地獄をみる。思うまま、まさに風が吹くままに海外ですごすその気分を一緒に味わってほしい。 |
| 『深夜特急2』 沢木耕太郎/新潮文庫/400円/★★★☆☆ |
| 香港でビザの更新をするのが急に面倒になり、そのままバンコクへと移動。しかし、バンコクも、ペナンも、クアラルンプールも、シンガポールもなぜか物足りなく感じてしまう。途中で「第2の香港」を求めていた自分に気がつくが、時すでに遅し。潮時と思い、ついにデリーへと出発する。 いい思いを1度でもすれば、次に多大な期待を抱いてしまう。そんなもんだ。それが叶えられなければ、叶えてくれないそいつが悪い!とつい思ってしまう。でも本当はフィルターを通して見てしまっている自分が悪い。悪いというか損をしている。沢木さんの経験を通して私も経験している、そんな気分になった。 そして、バンコクからシンガポールへといたるマレー半島縦断をしているが、そのつど彼が泊まるのは安ホテル。地元の人が使い、その中でも安いところというと、どうしても連れ込み旅館(今でもこういうのだろうか?)になるようだ。毎回怪しげなことになりそうになるのでちょっと笑ってしまった。そこは普通のツーリストが経験できない、アンダーグラウンドな世界が広がっている。娼婦、娼婦についているヒモ男、アヘンをすすめる宿主。こういう旅がいいとは言わないが、観光観光したところを見て回るよりも、その国、そこの国民を理解する上ではもっとも早い手だろう。物騒な世の中生きて帰りたければこんなことできないけどね。 |
| 『深夜特急3』 沢木耕太郎/新潮文庫/400円/★★★★☆ |
| 日本で買ったデリー行きの航空チケットをカルカッタへと変更してようやくインドへ到着。たどり着いたそこは、忍耐とあきらめを身に付けさせる国だった。 印象に残ったらのは、ガンジス川のほとりにあるベナレスという街で、著者が死体焼場に偶然行き当たったところだ。天寿を全うしたものは焼かれ、人生の半ばで死したものはガンジスへと流される。次の日もその場を訪れ、半日その様子を見続ける。焼場をうろつく牛、死体をついばむ鳥、ガンジスの流れ。行ったことはないが、インドとは繁華も静寂も死も生も隣り合わせという言葉が浮かんできた。 |
| 『深夜特急4』 沢木耕太郎/新潮文庫/400円/★★★★☆ |
| 高熱と頭痛によりフラフラの身体でたどりついたデリー。「インドの病気はインドの薬で」とYMCAの年配ボーイからもらった薬のおかげでようやく回復する。東から西へと続くシルクロードを進みながら、旅と言う長いトンネルの中に迷い込んだ自分に不安を感じるようになる。 同じ状態が続くと「今のままでよいのか」とふと不安がもたげてくることがある。デリーからイランへと進む沢木氏も、半年という時が流れ、刺激よりも、移動→安宿を探す→移動という単調な作業に不安定さを感じてくる。もちろん行く先々で同じことは起こらない。 途中、ヒッピー宿で出会った日本人の「ヨーロッパの冬は寒いぜ。でもそれは、雨が降るから、雪が降るからという寒さじゃない。宿に帰っても誰もいないという寒さなんだ」という話を聞く。テヘランでは、日本で親しくしていた磯崎夫妻に会うことで里心がつく。そして、シラーズのドミトリーで寝込んだまま起きない白人ヒッピーにアドレス交換しようかと持ちかけると「アドレスを交換するほど親しくなってはいない」と言われる。 旅のはじめよりもどことなく暗さというか疲労を感じるようになる。季節も冬へと向かっているが、氏の中でも冬へと向かっているのかもしれない。 |
| 『深夜特急5』 沢木耕太郎/新潮文庫/438円/★★★☆☆ |
| 旅もいよいよ終わりに近づいている。 トルコからギリシャ、地中海へとむかい、既に経験したこと、同じことの繰り返しのように感じる自分に、とうとう旅に「終わり」を決めてしまわなければならないことを感じる。 クライマックスはもうすぐ。 ところでこの『深夜特急』、以前大沢たかおが主役でドラマというか、ドキュメンタリーというか、そういうものが製作され、放送されていたんですね。 定例会で教えてもらって初めて知りました。96年〜98年の間全3回の放送で、なにやらビデオも出ているよう。これはチェックしなくては! |
| 『深夜特急6』 沢木耕太郎/新潮文庫/438円/★★★☆☆ |
| ローマからスペインへと移動したあと、全てがむなしく感じる毎日を過ごす。しかし、偶然出会った腕に傷のある男から、ユーラシア大陸の端っこザグレスの話を聞き、乗り合いバスに乗った。ついに旅は終わろうとしている。ポルトガルの後パリ→ロンドンと当初の目的地へと到着する。ロンドンでの電報を、なぜか郵便局で打つという思い違いがわかったとき、旅はまだ終わらなくていいと悟る。また日本へ帰るのか・・・という終わり方でなかったのがよかった。 旅してきた国を理解しているかどうか。何年住んでいても、その国の人間を「何もわからないということがわかった」という言葉は重要な言葉だ。自分以外の人間を心底理解できないという意味においても。 アジア→ヨーロッパへと行く道筋で、お茶のことを「C」から始まるチャイなのか、「T」から始まるティーなのかで、自分たちと同じかどうか判断する話が出てくる。最後ユーラシア大陸の端、ザグレスではお茶が「C」から始まっていることに何かしら感動を覚えた。 |
| 『1号線を北上せよ』 沢木耕太郎/講談社/1500円/★★★★☆ |
| うちなる声に、「1号線を北上せよ」と命じられたときーそれが、旅のはじまり。その1号線は人によって違うだろう、と沢木氏はいう。大好きな「深夜特急」に思いをはせながら読みすすんだ。もちろん若い頃のような貧乏旅行ではない。むちゃをすることは少なくなっている。しかし、ガイドブックを見ずに旅すること。気に入るまでホテルを探しあるここと。地元に飛び込んでみる事。わくわくさせてくれるところはあいかわらずだった。年にあった旅をする。自分の心の赴くままに。それが大切なんだろう。うちなる声に耳を傾けながら。 |
| 『京都はんなり暮らし』 澤田瞳子/徳間文庫/580円/★★★☆☆ |
| 京都生まれ京都育ちの著者が教える京都のガイドブック。お決まりな感じでお決まりな内容ですが、お店紹介とかの内容じゃないのは救われます。お店紹介のガイドブックはもう読みたくないので。 ひとつだけ驚いたこと。著者の年齢が私と変わらなかったこと。勝手に年上の方だと思ってました。 |
| 『THE 狛犬!コレクション』 三遊亭円丈/立風書房/1575円/★★★★☆ |
| 図書館で何となく手にした1冊。しかし、侮ってはいけなかった。読み終わるころには私まで狛犬の魅力に虜にされてしまいました。流れるようなたてがみの江戸タイプの狛犬。恐ろしく怖そうな顔をしているのに、仔獅子たちを足元で慈しんでる母獅子。境内の隅にうちすてられた先代(古くなってのけられた狛犬)に涙を誘われ、広島の玉乗り獅子が北海道にまで進出しているのに拍手する。神社や寺の参道で厄をはらっている狛犬たちに、これからはもっと注目してみようと思いました。 |
【し】
| 『ビタミンF』 重松清/新潮社/1500円/★★★☆☆ |
| 元気ないおじさん読んでみて! |
| 『トワイライト』 重松清/文春文庫/660円/★★★☆☆ |
| タイムカプセルを開くために、26年ぶりに再会した同級生たち。あの頃の夢ははかなく消え、あの頃の未来の自分たちは現実に押しつぶされそうになっている。 過去はまだ懐かしい・・・だけでは終わらない。厳しくも励まされる話。リストラ、離婚、過去の栄光。しがみつける夢を持たなくなった大人たちは脆くか弱く感じられる。タイムカプセルの開封というきっかけから、過去の自分から、そして、当時の担任から叱責されるような結果となる。が、彼らなりにもう一度立ち上がろうという姿がたまらない。 |
| 『カノン』 篠田節子/文春文庫/552円/★★★★☆ |
| 小学校の音楽教師をしている瑞穂はもう39歳。このごろ焦りが心の中に芽生え当惑していた。そこへ大学時代からの友人小田嶋正寛から、香西康臣が死んだと知らされる。 大学3回生の夏、瑞穂は香西と小田嶋の3人で20日間過ごした。康臣へのかなわなかった恋、チェリストとしての道を歩こうとしていた自分。瑞穂は、康臣の通夜の帰りに彼からというカセットテープを受け取る。そのテープを手にしてから彼女の周りで奇怪な現象が起こるのだが。 ヴァイオリンの音が耳の奥で聞こえる、白いワイシャツ姿の20歳の変わらない康臣の姿が現れる。瑞穂の周りで起きる出来事はぞっとするような心霊現象だが、どこか胸を切なくさせる。音が彼女を遡行させ、昔のお前を取り戻せ取り戻せと言っているようだ。 抱いた夢を実現して今に至っている人は少ない。ほとんどの人がどこかで妥協し、何かを切り捨てて生活を続けていることだろう。後10年たって、もし私が20歳の自分を考えた時、はたしてどんな風に感じるだろう。夢や恋やいろんなことを思い出して納得できるだろうか。悲しくなるだろうか。後悔しないで年はとりたいものだ。 |
| 『弥勒』 篠田節子/講談社文庫/914円/★★★★☆ |
| ヒマラヤの小国・パスキムの仏教美術に見せられた永岡。政変がおこり、美術品が破壊されていると聞き、一人潜入する。革命軍にとらえられた彼の前に想像を絶する生活が待っていた。 価値観の違いというのはどんな事をしてもぬぐいきれない、溝は埋まらないものだと感じた。革命軍が信じる「平等に働き、食べ、生活する」世界は、報道されている北朝鮮の生活を髣髴とさせゾッとした。死の一歩手前まで追い込まれた人間が、どんどん無関心になっていく姿も怖かった。誰かを救うと言う行為は1年、2年ではどうにもならない。ただ単に「みんな同じ」を実践する事は不幸で悲しいことを生み出していくだけなのかもしれない。 毎日畑を耕し、質素な食事をし、粗末な寝床で眠る。しかし、自由を奪われ、飢え、明日をも知れない生活が続くと衝突がおきる。処刑された人間を「畑の肥やしになった」と言わなくてはならないこともつらいが、もう目の前で誰かが死んでも何も感じなくなるという事実が辛すぎる。非常に重たい。しんどい時に読むとこちらもやられてしまいそうな作品。ぜひ体調を整えて挑戦してほしい。 |
| 『アクアリウム』 篠田節子/新潮文庫/476円/★★★☆☆ |
| 奥多摩の地底湖で遭難した友人を探すために、水没した鍾乳洞にもぐった正人。迷路のような水中で、死を覚悟した彼の前に現れた未知の生命体のおかげで無事生還する。「彼女」は正人に甘く優しい幻覚を見せてくれる。 幻想的な前半と、正人が過激派となっていく後半のギャップに気持ち悪くなってしまった。正人はなんだかクスリにやられていく麻薬患者のようだ。しかし、地底湖であう「彼女」イクティの姿と、幻覚か知的な印象部分の描写はロマンティック。人間と自然、環境問題という難しいテーマながら、結局は「自分のこと」として考えなければ、人とは行動を起こさないんだなと感じた。 |
| 『贋作師』 篠田節子/講談社文庫/591円/★★★☆☆ |
| 洋画界の大御所高岡荘三郎が自殺した。遺作の修復を依頼された成美は、仕事を進めるうちに、彼の弟子となるために美大を去った友人、慧の死に疑問を持つようになる。真相を追究するうちに慧が高岡の代作をしていたと知るが。 美術界で成功するためには、才能と想像力が絶対条件と思ってしまうが、大成するのは、社会のいかなる仕事ともかわらない現実があるようだ。生き抜くためのバイタリティ、それからうまく立ち回れることが不可欠らしい。だからこそ、壁にあたってあきらめたら最後。 美大時代、同じ悩みを抱えていた成美と慧。一方は大家の下につき、一方は別の道をたどる。名をはせることなく自殺した者と、別の道で自分の場所を確保した者。はたしてどちらが最良の道だったか?また、売れる絵のみに固執し、権力に執着する者と、寝ることでしか自己表現のできぬ者。ミステリーの謎解きの中で見え隠れする、それぞれの生き方と苦悩に引き込まれた。 贋を真にかえたのが愛の力というの、いいんだよなぁ(笑)成美をフォローするゲイの才一の優しさもピカイチ☆ |
| 『きょうのできごと』 柴崎友香/河出文庫/450円/★★★☆☆ |
| 京の町屋へ引っ越した友達の家に集まる数人の若者。その日の出来事を5つの視点で書く。 20代前半の学生と社会人とのはざまのせつなくなつかしい時間を思い出した。深夜まで続くはてない飲み会。友達とぶらりと出かけるコンビニ。夜のドライブ。学生のころの思い出話。失恋。彼氏とそして大事な友達。恋の予感。未来がまだふわふわと確定してなくて、今がすごく魅力的な時代だ。大阪弁と小さな物語がすごく大切に思えてくる1冊。 |
| 『青空感傷ツアー』 柴崎友香/河出書房/1365円/★★★☆☆ |
| 美人でゴーマンな友人音生。彼女のいいなりになる芽衣。マイペースな音生にムカッとくるけど、思うままに生きて、自分の信頼できる人を待ちわびている彼女は、本当はカワイイヤツなのかもしれない。彼女に振り回される芽衣や千秋なんてのは、”あわよくば・・・”という下心のある困った人々なのかもね。幸運がたなぼた式にやってくると、甘えてるのかも。失恋して、仕事を辞めて、パーッと旅立っちゃうことができるのはうらやましいと思う。 |
| 『炎都』 柴田よしき/徳間NOVELS/900円/★★★☆☆ |
| 京都の地下水が異常に低下した時、体液が全て抜き取られるという奇妙な連続殺人事件がおこる。犯人はどうして人間の干物を作れるのか?1000年の時を越えて京都を恐怖のどん底へと突き落とす大災厄がふりかかる。 裏表紙の著者の写真でげんなり(柴田さん、ファンの方ごめんなさい)しながら読み始めたが、この歴史妖怪パニック小説は面白かった。事の発端の部分が少々気に入らないが、その場にいる人間を完璧に絶望させる。これでもかー、これでもかーという災厄が容赦なくてよい。こういうものは中途半端が一番いけないもの。そして、ダイハードばりに活躍する香流の豪胆さもいい。ラストの、偶然(本当は必然かな)的な決着もわりあいよかった。数時間で一気に読みきらせる魅力がある。 |
| 『佐賀のがばいばあちゃん』 島田洋七/徳間文庫/540円/★★★★☆ |
| 親戚の中1の子のために買った本。あげてしまう前にどんなものか読んでみました。(われながらケチクサイ・・・)かつて一生風靡したお笑いコンビ「B&B」の島田洋七さんが書いた自伝小説。本屋でちらりと見たときから「これは面白そうだ!」と直感しました。 戦後すぐ、母の元から離され母方の祖母のもとに預けられた昭宏。そのすさまじい貧乏な生活に圧倒されながらも、笑いの耐えない毎日。読みながらなんど腹を抱えて笑ったか。財布の底が抜けてるぐらい金もないけれど、底抜けの明るさに発見と笑いの耐えない日々。どんな生活も心構えひとつで変わるということを教えてくれました。くず野菜を運んでくる川をスーパーマーケットとよび、腹が減ったと訴えると、「気のせいや」と一括。成績が悪くても、「足したら5。人生は総合力」と言い切るばあちゃんの強さ。かっこいい!それに反抗もせずナルホドとついてきた洋七氏の素直さもいいね。当時はもうすこし考え方が違ったかもしれないけれど・・・。さすがお笑いの大御所。笑わせ感動させるツボを心得ている。心地いい本でした。 |
| 『がばいばあちゃんの笑顔で生きんしゃい!』 島田洋七/徳間文庫/540円/★★★☆☆ |
| 前作は、親戚の子用に買ったけれど、あまりの面白さに続編も買い!ました。 貧乏暮らしも心の持ちよう、工夫できることはいくらでもある、笑顔で生きれば何倍も得をする・・・と生きるコツを教えてくれます。案外楽に生きられると、ふと肩の力が抜ける1冊。前作ほどの力は感じませんが、毎日を明るく楽しくしてくれますヨ。 |
| 『情事』 志水辰夫/新潮文庫/552円/★★★☆☆ |
| 母親の看病のため東京と岡山を行き来する静夫。会社を辞め、自由な時間も持ち、主夫としての新境地もひろげる柔軟な男。キャリアウーマンとして活躍する妻治子と娘聡子がいる。妻の仕事を優先し、母親の看病もし、娘にも寛大な父親だ。 表面上(仕事をしていないということを除いて)とても出来た男だが、その内面はどうだろう。偶然知り合った若い女、亜紀を手に入れるために上手に立ち回り、その身体に溺れていく。そして亜紀の父親という男の秘密も暴こうとする。 岡山にいる間は亜紀を抱き、週末自宅へ帰ると妻治子の身体を追求する。彼、年の割には頑張ってます。 静夫のように外でなんの問題もなさそうな夫が、実は別の顔を持っているなんて、妻の立場としては穏やかじゃないですね。こんなに自分のことを大切に扱うのに他にもいい人がいて・・・って、いいの?それでいいの??と思っちゃいます。しかし、そんなことやっぱりうまくいくもんじゃない。どっかでかみ合わなくなるものですね。 皆さんお気をつけ下さい。 |
| 『ずっとお城で暮らしてる』 シャーリィ・ジャクスン/学研/1445円/★★★★☆ |
| お城のような豪邸に暮らしながら、買い物のたびに、街で不当な扱いを受けている少女メアリー・キャサリン。姉のコンスタンス、そして、伯父と暮らすメアリーは何年か前に家族を毒殺の惨劇で失い、ひっそりと3人で暮らしています。事件以来静かに平和で暮らしていた彼ら、しかし、いとこの出現で平和な生活も一変します。 一見いい人のようなチャールズの下心を、メアリーがはからずも暴き出し、彼の不逞な行動にイライラしていた私は、すっとするのですが、そこで、はじめておかしいな?と気がついてゾッとしました。この本を読んでまず思うのは、居心地の悪さ。外では、あんなに人の興味を引くのに、家では姉のコンスタンス以外からはいないも同然のメアリー・キャサリンの存在が鍵となっているようです。ここには幽霊も怪物も出てきません。けれど、万人が一度は思うように怖いのは人なのです。単調でいて驚くべき狂気を秘める人たち。そして、狂人に仕立て上げていく人たち。内へ内へと収束していく話はホラーよりも怖いかもしれません。 |
| 『山荘綺談』 シャーリィ・ジャクスン/ハヤカワ/★★★★☆ |
| 心霊現象を研究する博士によって集められた、セオドラ、エリーナー、ルークの3人。不気味で不思議な現象が起こる山荘、そして、日に日におかしくなる人間関係。サイコ・サスペンスの傑作です。 巧みだと思うのは、エリーナーの心象風景と4人が交わす会話。その端々にそこにいない、何者かの意思を感じさせます。怖いです。 |
| 『花まんま』 朱川湊人/文芸春秋/1650円/★★★★☆ |
| 日常のふとした不思議。それが郷愁ただよう昭和の中でくりひろげられる。昭和の空気が不思議をかもしだしているのか?6編の短篇を収録。どれも心の深いところに沁みてくる。 なかでも、表題作「花まんま」はすばらしい。狂人に殺された娘だったと言う小学生のフミ子。大人びて奇妙なことを語る妹。母や自分から遠くなりそうなフミ子を必死で守ろうとする兄の、幼いけれど強い思いと使命感に打たれた。娘を殺された父・兄妹との邂逅シーンも泣ける。ホントにすばらしい作家だ。 |
| 『都市伝説セピア』 朱川湊人/文芸春秋/1650円/★★★★☆ |
| 懐かしさの中に怖さが織り込まれている。朱川氏の作品の醍醐味だ。 ノスタルジックに酔っていたら、ふいにひやりとさせられる。そして、思わず泣かされる。 見世物小屋の暗い好奇心、幼いころの友情と奇跡に、都市と人の暗闇を嫌というほどみせつけられた。血が出た、怪獣が出たでは楽しめない世界へどうぞ。 |
| 『いっぺんさん』 朱川湊人/実業之日本社/1680円/★★★★☆ |
| 心温まるどんでん返しと、情け容赦ない結末、ノスタルジックな童話の形で語られる朱川氏の真骨頂のような作品だ。 子どもの目線(もしくは子どもの心をもった目線)から見る曇りない世界は容赦なく残酷にできているんですね。 表題作の「いっぺんさん」は特に気に入りました。いっぺんだけ願い事を叶えてくれるという神様のおこす奇跡がなんとも絶品で、現実世界もこれくらい気が利いててくれたらとないものねだりしそうになりました。 |
| 『脳男』 首藤爪於/講談社文庫/590円/★★★★☆ |
| 連続爆弾事件のアジトで逮捕された鈴木一郎。彼の精神鑑定を受け持った鷲谷真梨子は、隠された過去をさぐる。そんなとき、愛宕医療センターに爆弾を仕掛けたとの脅迫メールが届く。 「私が私でいるということ」についてよーく考えさせられた。専門の知識をわかりやすく書いてくれてるのでよけいにへぇ〜だった。文章のリズムがよくてスッと読みきらせる。半分くらいまで読むとインパクト大のタイトルの意味もわかる。登場人物の名前が、皆凝ってるのね。ふりがなないと読めないよ!う〜むもっと言いたいけど、これ以上しゃべると内容にふれちゃうかも。興味ある方は読んでくれ! 書評とは関係ないけど「瓜於=うりお」さんを「爪於=つめお」さんだと思ってた!漢字の見間違い!キャッ! 第46回江戸川乱歩賞受賞作。 |
| 『香水』 パトリック・ジュースキント/文春文庫/770円/★★★☆☆ |
| ゴミの中に生み捨てられたジャン=バティスト・グルヌイユ。体臭を持たない彼は超人的な嗅覚を所有していた。欲望のおもむくまま匂いの究極を求めた男の悲しくも恐ろしい物語。 映画化されるときもしかりだけれど、匂いがメインテーマなのにそれを小説で扱って、これほどピンとさせるなんて、誰が気がつくだろうね。パトリック・ジュースキントはしっかり成功しちゃってる。ということは、彼が天才とも言えるけれど(それを日本語訳した翻訳者もすごい?)、実は匂いは活字との相性がいいのかもしれない。 究極の香水を完成させるために、うら若き乙女を次々に殺していくグルヌイユは怖いヤツだ。でも、孤児からスタートした彼が、香水の調合師として出世していく姿も見逃せない。ほとんどおとぎ話だが、成功譚はワクワクさせてもくれる。ちょっと勇気もくれたるする。目標達成のためには手段を選ばない、人としての情もなにもないグルヌイユの冷血ぶりも怖いけれど、本当に怖いところは、彼に関わった人たちの末路。もしかしたら、彼は、驕る人間を罰する、本当に天からの使いかもしれないと思わせるから。 |
| 『伊勢エビの丸かじり』 東海林さだお/文春文庫/467円/★★★☆☆ |
| 25の食べ物に関するエッセイ。 ある時はぐれながら8,000円の味噌汁をとりあげ、ある時はお子様ランチを食べないまま死ぬのは哀れだと言う。突然くさやの食べ方に言及し、名古屋弁になったりする。 おもわず「ムフッ」と忍び笑いをしていまう。これはそういう本だ。 |
| 『駅弁の丸かじり』 東海林さだお/文春文庫/486円/★★★☆☆ |
| 「缶詰の夜」から始まる全部で25編のエッセイ。 今回は主に秋ネタが多かった。 それにしても東海林さんの食べ物に関する微細な表現と愛着は素晴らしいと思う。彼が声高に食べ物のことを話していると、口の中に唾液があふれてくる。そして「今晩はさんまをカリカリになるまで焼いて食べよう。大根おろしを付けて、ビールも飲もう」と思うのだ。また、プルトップがない時代のジュース缶にちっちゃな缶きりがついているというイラストや、クリームソーダのなんとも言えない緑色のソーダの上にのったアイスクリームをくずして・・・なんて文章を読むと、「あのころは」というしみじみした気分にもさせてくれる。 なんにしても、疲れたときに「クスッ」とさせてくれる1冊なのだ。 |
| 『行くぞ!冷麺探検隊』 東海林さだお/文春文庫/448円/★★★☆☆ |
| 東海林さんのエッセイは「フフフ」って笑える。それは東海林さんの洞察力と行動力のすごさとばかばかしさにあると思う。「盛岡は冷麺の本場であるか?」「じゃーじゃーあ麺の本場であるか?」「わんこそばの本場じゃないのか?」とその事を確認するために探検隊JGKSD(じゃーじゃー疑惑個人的査察団)を結成して乗り込んでしまうのだ。また、小樽へは客を怒るというすし屋へとわざわざ出かけるし、また、ハワイ旅行の正しい団体旅行も経験、最終的にアフリカまで行っている。たのみますからそんなに笑わさないで〜といいながら、東海林ワールドへと飲み込まれてしまうのだ。それから、最後の解説もぜひ読んでもらいたい。東海林ワールドにはまり込んだ方の末路(笑)が知れます。 |
| 『ニッポン清貧旅行』 東海林さだお/文春文庫/450円/★★★☆☆ |
| 「いま、貧乏が贅沢だ」ということでアラマタ青年と貧乏旅行へとでかける。旅行のコンセプトは”貧乏”、キーワードは”みじめ”、合言葉は”ひがむ”、”ねたむ”、”そねむ”である。厳しい選考を耐え抜いたのは「千鹿谷鉱泉」。はたして、彼らは貧乏旅行をできるのか?・・・はぜひ読んで確かめてほしい。 対話形式の「尾辻克彦さんとの対話」、「鮪は男か」、「総合病院・内科・外科・魚科」は笑えます。 |
| 『ショージ君のにっぽん拝見』 東海林さだお/文春文庫/400円/★★☆☆☆ |
| ショージ君シリーズの第一弾。漫画家東海林さだおが書いたエッセイだ。ところで今回はじめて東海林氏が漫画家である事を知りました。本文中の挿絵は本人が描いてたんですね。へぇ〜。 30年以上前の作品のせいか、ひじょ〜に批判があらあらしい。言葉にこもる恨み度(笑)が強いですね。若さのせいでしょうか?最近のエッセイを読んでいる身としてはそれがむつこくて少々胃もたれ。 |
| 『ショージ君のぐうたら旅行』 東海林さだお/文春文庫/400円/★★☆☆☆ |
| 傷心旅行にヤング、買い物かご・・・。郷愁を誘う言葉がてんこもりです。そして、しつこいくらいに登場する「モテたい」衝動にあふれているショージ君。笑ってください。泣いてください。この本読みながらゆっくりしてください(笑) |
| 『ショージ君の面白半分』 東海林さだお/文春文庫/400円/★★☆☆☆ |
| 時代を感じます。20数年の時を(笑) 「アメリカ面白半分」でディナーパーティーの失敗談が書かれている。隣の人のパンを食べ、必要なスプーンをここにいっぱい並んでいるからと断り、思わず食事中にたばこを吸ってしまう。次々に襲われる、もう救いようのない、畳み掛けるような窮地に追い込まれ、立ち上がれないほどのダメージをうけてしまうショージ君。誰でも時にはそういうことってありますよね。顔から火がでるような失敗も、ショージ君もやったんだから大丈夫と、この本を読んで心を穏やかにしましょう。 |
| 『ショージ君の東奔西走』 東海林さだお/文集文庫/400円/★★★☆☆ |
| 年をとりたくない!40歳をむかえたショージ君の悪あがき、海での過ごし方など東海林ワールド炸裂。中でも小池真理子さんとの対談がおもしろかった。いつものごとくどうすればモテル男になるのか、根掘り葉掘り食らいつくように質問するオヤジを適当にあしらう小池さん。これをよんだおかげで積読本となっていた小池真理子さんの「欲望」に取り掛かることができました。 |
| 『ずいぶんなおねだり』 東海林さだお/文芸春秋/1048円/★★★☆☆ |
| 今回の目玉は対談。B級鉄人と、グルメ姫ライターと、江川紹子さんと、草井是好氏と、ナンシー関さん。中でもB級鉄人里美さんが高校時代に学校内でラーメン屋を開店したという話が面白い。授業に出ずに営業。客は生徒と先生。考えられないような状況。当時そんな寛大な学校があったんですね。で、ぽしゃった理由が食中毒事件。落ちがつきました。 |
| 『ショージ君のコラムで一杯』 東海林さだお/文春文庫/400円/★★★☆☆ |
| 「ずいぶんなおねだり」より10年ほど前の著書。67編!(多いな)のコラム。 やっぱりオロオロしながらも(笑)ショージ君のすばらしい洞察欲でテーマを書いている。ややラストが近づいたときに、武者小路実篤との対談を発見。編集部のN氏ににこやかに丸め込まれながらも、なんとかこの事態を回避しようと努力するショージ君。結果、武者小路先生宅を訪問している。文章のところどころに冷や汗たらたらの氏が見え隠れしている。お気の毒に。 |
| 『僕のなかの壊れていない部分』 白石一文/光文社/1500円/★★★☆☆ |
| 知りすぎてしまう事が嫌で、恋人と距離を置く。しかし、彼女の過去を調べ、嫌がらせのように元彼のいる京都旅行を提案する。子連れのスナックのママと週末お出掛けする。月に一回人妻とスポーツ的なセックスをする・・・男。こいつ悪いやつです(笑)三股状態が良いか悪いかは置いておいて、それを苦もなく続けているところ、どの人に対しても丁寧に付き合っているのに無理がないところが奇妙。心がないですね。自分が傷つかないようにというよりは、人を傷つけないために、そうする資格がないからだそうですが。 彼がそうなってしまったのは、子供の頃母親に「捨てられた」という経験かららしい。動物園に置いてこられたという捨てられ経験だけじゃなく、共働きによって生後3ヶ月から他人に預けるという行為からも、感情のない子が育てられていく可能性をすごく感じました。男女の恋愛部分よりも生と死、そしてなにより生きている事とは?をがんがんに考えて問いかけている作品です。 |
| 『マッチメイク』 不知火京介/講談社/1680円/★★★☆☆ |
| プロレス団体新大阪プロレスの会長ダリウス佐々木が試合中に変死した。新人の山田聡は佐々木の死に疑問をもち同期の本庄と犯人探しをはじめるが。 江戸川乱歩賞受賞作品。プロレス業界とミステリー、桐野夏生の「ファイアー・ボール・ブルース」を思い出しました。これは女子プロレスの話でしたが。新米レスラーの山田は、入門して業界にいながら、まだまだお客と同じ立場にいるプロレスを愛する純朴な青年。裏事情をからっきし知らないところ、まごまごしてておいしっかりしろ!と激をとばしたくなります。しかし、強くなることへの情熱、肉体が鍛えあがっていく快感、試合の臨場感にどんどん読み進められる。結末か?と思うと二転三転し最後までハラハラ。また脇を固めるの登場人物が魅力的でいい。 |
| 『おもちゃ』 新藤兼人/集英社/514円/★★★☆☆ |
| 京都の花街を舞台に、置屋で下働きする少女がいろいろな経験をしてやがて舞妓となるまでを書いている。舞妓さんの生活がわかる。彼女たちの努力にカンシンする。 |
| 『ホワイトアウト』 真保裕一/新潮社/781円/★★★☆☆ |
| 私も戦ってる気になりました。 |
| 『朽ちた樹々の枝の下で』 真保裕一/講談社文庫/920円/★★★☆☆ |
| 人生の再起をかける・・・それぞれの方法があって、それぞれの道がある。1年前に妻を事故で亡くし、北海道の森林組合作業員となった尾高は、ある朝、森の中で逃げ出す女性と遭遇する。これをきっかけに、女性の秘密を調べ、自分と向き合っていく。自衛隊内部の陰謀も含めハラハラドキドキのサスペンス。 死んだ妻と自分の間の不具合を、初対面の見ず知らずの女性に重ねあわせるのは無理があるような気がするなぁと思ったけれど、そのあたりはそのうち気にならなくなりました。有無を言わさず話の中にひきこまれます。 |
| 『奪取』 真保裕一/講談社文庫/上下各750円/★★★★★ |
| 闇金で莫大な借金を背負い、ヤクザに追い詰められた友人と自分を救うため、偽札作りに手を出す道郎。二転三転するジェットコースターストーリーに引き込まれます。 まず第一弾は、ATMの紙幣選別機に挑み成功。けれども、すぐにトラブルに巻き込まれ逃亡。また別の仲間と今度は見た目にも通用する偽札作りに取り掛かる・・・と、まったく読者を安心させない。次はどうなる?とハラハラしっぱなしです。期待を裏切らないすばらしい一冊。 |
【す】
| 『カジノを罠にかけろ』 ジェイムズ・スウェイン/文春文庫/810円/★★★★☆ |
| ブラックジャックで不審な大勝する男。けれども決してイカサマの跡は見られない・・・。カジノの依頼でイカサマハンター、トニー・ヴァレンタインはこの謎に挑む。ディーラーの裏切りか?はたまた新たな手口か?最後の最後まで真の狙いは見抜けないギャンブル・ミステリ。 主役は、自らをコンサルタントと称する元刑事トニー・ヴァレンタイン、62歳。彼の終始ぶれない頑強な意見、息子に対する頑なな態度に「なんだこの頑固者め!」と、食いつきつつ読み進みました。 しかし、大きな事件を通して変化していく息子へ態度、彼の「イカサマセンス」、常に失われないクールさに、気がつけばノックアウトです。hふふふ。ハードボイルドな男は女性に優しいのですね。 さて、ギャンブルとはとんと縁のない私ですが、ラスベガスってのは魅力的な場所のようです。しかし、客には勝たせないというのがカジノの世界。夢を買うのがギャンブルの魅力なのか。とにかくびっくりするほどお高い買い物となるようですよ。試される方はお気をつけて。裏世界をのぞき見たら、小さく勝ってホクホク帰るというのが一等いいのかも。小市民すぎて夢も希望もありませんが・・・。 ストーリーの大筋、詐欺師軍団の真の狙いを暴くのも楽しみですが、もう一つ、登場人物のキャラクターが魅力。カジノのオーナーで、女と見ればすぐ手を出し、結婚離婚を繰り返すニック。元イカサマ師で改心したサミー。小心者のフロアマネージャー、ワイリー。ウイットにとんだ広告を出すことに血道をあげるメイベル。クールな探偵トニーの周辺で熱を発し、暴れまわる彼ら。終盤の大捕り物へと収斂していく過程は見ものです。 |
| 『無人島に生きる十六人』 須川邦彦/新潮文庫/400円/★★★☆☆ |
| 嵐で船が難破した!乗組員十六人はサンゴ礁に浮かぶ無人島に漂着し、飲み水、食べ物、小屋などなど自給自足でつくり、励まし助け合い、希望を持って助けを待つ日々。おじさんたちは祖国日本へと帰れるのか?!感動の実話。 明治31年、龍睡丸が座礁し救出されるまでの無人島での生活が、非常に前向きで建設的。しかもいろいろな工夫がされて目を見張ります。食料確保のためにウミガメ牧場をつくったり、船を見つけるための見張り櫓を用意したり。生き残るための知恵を絞るだけでなく、いつ助かるかわからないという精神面の苦痛を乗り切るための工夫までも抜かりない。さすがは年経てきたものの力。この一冊があれば、どこの無人島へ取り残されても生きていけそうです。でも・・・1人では無理かな〜。 |
| 『お散歩ブック』 杉浦さやか/角川文庫/580円/★★★☆☆ |
| 本屋で一目ぼれして購入。イラストでお散歩の楽しみ方を紹介。でも、せっかくこういう本に出会えても、一度も実行したためしがない(笑) |
| 『とっておきの気分転換』 廣瀬 裕子・杉浦 さやか/ベストセラーズ/1050円/★★★☆☆ |
| つまずいたり落ちこんだり立ち止まってしまったり・・・毎日起こる心の悩みを軽くする50の方法。 日記をつける、目を閉じてみる、近所の猫と友達になるなど、とっても簡単な気分転換を紹介。これを読むだけでも気分転換になるかも。 |
| 『東京ホリディ』 杉浦さやか/祥伝社黄金文庫/750円/★★★☆☆ |
| 彼女の他の著書と同様、イラストとてくてくぶらり旅がメイン。観光ガイドの本には載ってない、親切ていねい細かなガイドというか。お休みの日に楽しめる東京を紹介しています。 私には東京はなじみのないところですが、まーったりとしたい時にゆっくり楽しめる本です。 |
| 『スクラップ帖のつくりかた』 杉浦さやか/ベストセラーズ/1365円/★★★☆☆ |
| 子どものころからノートに向かうと落ち着くという杉浦さん。たしかに、日記からはじまり、旅先の思い出、ちょっとかわいい物などをノートに仕立てていく過程は楽しいものです。ノート作りの参考になります。 |
| 『大江戸観光』 杉浦日向子/ちくま文庫/546円/★★★☆☆ |
| 私たちはうっかり、江戸はほんの約140年ほど前の昔ということを忘れてしまってます。もちろん、江戸という時代にも幅があって、ずっと初期ならば200年は越えますけれど・・・。しかし、意外と近いことなのに、びっくりするほど生活の何もかもが違う。文化はもちろん、考え方や生活習慣まで一変しています。ですから、江戸という町が遠い、とおーい別世界と思っても無理はない。杉浦さんはそのお江戸に惚れこみ憧れ、恋焦がれていました・・・ということが充分わかる1冊。彼女は先日46歳という若さで亡くなられてしまいました。さて、彼女を偲んでページをくってみましょう。歌舞伎に黄本、浮世絵からはじまり、着物、当時のオシャレ、はたまた現代のテレビ時代劇まで幅広く語られる江戸への恋文。こちらまで感化されそうです。ミーハーに語られる江戸は現代の追っかけとそう変わりませんね。 |
| 『銀のエンゼル 出会えない5枚目を探して』 鈴井貴之/幻冬舎/1260円/★★★☆☆ |
| 水曜どうでしょうのミスターこと鈴井貴之さんが本書いちゃいました。これは映画「銀のエンゼル」の続編となるもの。内容はさておき(笑)、出世しましたねと目頭が熱くなってきました。 田舎町のコンビニを経営する父と母。東京へと進学した娘。町の人々。必ずしも夢や幸せにあふれる毎日ではないけれど、当たり外れがあっても大切な日々。帰ってこれる場所。ちょっとだけあったかな気持ちになれます。 |
| 『シーズ ザ ディ』 鈴木光司/新潮社/1800円/★★★☆☆ |
| 妻に離婚を言い渡された船越は長年の夢であった外洋クルーザーを手に入れる。快適な暮らしを始めようと思った矢先、昔の恋人月子から電話が入り、自分に娘がいたことを告げられる。 面々と続いていく「血」を感じさせられる作品だ。父と子の関係がどんなに深く自分に影響をあたえているかということを神秘的に表現してる。少し出来すぎかな・・・と感じた。 しかし、男の何と身勝手なこと。また船越の元恋人も本当にひどい女なのだ。しかし、事実最低最悪の魔女だけど、自分の目の前で愛する人が別の人に心寄せているのを見たら正常なら怒ります。もちろんそれにも度がありますが。精神に異常をきたしていく女がありながら、「運命の女」と感じたら突き進めとおっしゃる。これはちょっとひどいな。捨てられていく女の気持ちがなおざりな気がして少々腹立たしくも感じた。 身近にいなくても血のつながりは何よりも深いと鈴木氏はいいたいのだろう。親子について考えさせられる作品だ。 |
| 『楽園』 鈴木光司/新潮文庫/480円/★★★★☆ |
| 大陸をそして時間を越えて、愛する人を探し求める旅をする。究極のラブストーリー。想いは奇跡をおこすんだ! |
| 『お稲荷さんの路地』 鈴木真砂女/角川文庫/571円/★★☆☆☆ |
| 女流俳人、鈴木真砂女が銀座にもつお店「卯波」には常連さんが集う。彼女のまわりにつどう人々との交流を描くエッセイ。 2003年96歳で永眠された鈴木真砂女さん。彼女の波乱万丈な人生は、丹羽文雄氏の小説『帰らざる故郷』のモデルにもなっている。俳句について詳しくはないが、随筆のところどころにのせられる句の素直さにハッとさせられる。このエッセイ連載とう時87歳という高齢ながら、店を切り盛りし、旅行や句会に飛び回り、はてはデパートのポスターモデルにまで活躍する姿は目を見張る。老人扱いされたくない、生涯現役を貫く彼女の強く、そして、マイペースさは見習えるところがありそうだ。 |
| 『レッド』 エリカ・スピンドラー/ハーレクイン/648円/★★★☆☆ |
| 何年か前昼メロでやっていて、原作本を探していたら、古本屋で見つけた。 ヒサンな少女時代、家出、都会、夢、成功への階段、そしてイロ男。これだけそろって面白くなかったら問題だ! 過去は不幸なほど、未来は明るくなるんですよね。お話では。それから2人の男に翻弄される。(実際は少し違います。)うらやましい。それがイケ面てっ。あるかーそんなこと。でもサイコ〜。 しかもヒロインのベッキー・リン・リーは現状に甘んじていない。(アメリカの女だな)悲惨な過去も、男の裏切りも、バネにしてボーンとのし上がっていくサクセスストーリーであるから、憧れるんでしょうね。 これ書いてる時に、ハーレクインの本と気がついた。 ハーレクインはすごいなぁ。 |
| 『アサッテの人』 諏訪哲史/講談社/1575円/★★★☆☆ |
| 突然失踪した叔父の部屋をかたづけることになる主人公は、そこで叔父の残した日記をみつける。「ポンパ」などという意味不明の奇声を発し、ついには消えてしまった彼の足跡を小説化することを試みるのだが。 実験的でおもしろい作品。まずは、叔母の目線を借り自分の言葉で→日記そのものを紹介してと試行錯誤しつつ、新しい小説を組み立てているところが目新しい。なにより主人公が小さい頃から、「イッテシマッテル」叔父の奇妙な発言には驚かされる。衝撃的でおもしろくもあり、奇をてらいすぎていて胡散臭げでもあり。 でも、小説としておもしろいのかは微妙なところです。 |
【せ】
| 『女子中学生の小さな大発見』 清邦彦/新潮文庫/400円/★★★☆☆ |
| 女子中学生の日常の理科実験がず〜と並んでます。プッと笑えるものから、なるほどと納得するもの、それはどうかなと思うもの、あきらかに間違っているものまで所狭しと並んでます。 たとえ、実験の結果が間違っていても勘違いでも、「やってみようと思って、やってみたらそれがわかった」という経験をすることがここでの一番大切なこと。小学生のとき「間違ってても手を上げる」精神に近いものがあります。それを今の子供たちに自然にさせる事ができたことがすばらしいな〜と思います。 こういう経験をさせられる教師、いや大人って今いないですよね。 反省。 どうのこうのいうよりは単純に内容も面白いので、軽く読みたいときはオススメです。 |
| 『新しい単位』 世界単位認定協会編/扶桑社/1000円/★★☆☆☆ |
| BSフジで放送中の番組から生まれた「世界の単位認定協会」の本。 新しい単位を作るという涙ぐましいながらも、593Chin(バカっぽさを表す数値)ほどのバカっぽさがかえって新鮮。製作者は実用書として国語辞典、冠婚葬祭入門などと並べられることを願っているようですが(笑) 単位認定の経緯も笑えますが、例題とともに添えられる五月女ケイ子さんのイラストがストライクゾーンです。いますぐにでも使ってしまいたい単位満載といいたいところですが、読み終えるとすっかり忘れてしまうのが10Npr(玉にキズを表す単位)。 |
| 『〔新しい〕新しい単位』 世界単位認定協会編/扶桑社/1000円/★★☆☆☆ |
| 上の本から2年。あきもせず続編がでました。3bk(しつこさを表す単位)ほどのしつこさですが、続編というものはまったくもってそういうもの。1冊目にもまして熱の入った五月女ケイ子さんのイラストもすばらしい。より生活に密着した新しい単位たちが私達の生活を豊かにしてくれることでしょう。 キョーレツなイラストに目が行きがちですが、添えられている文章も見逃せません。笑えます。 |
| 『場所』 瀬戸内寂聴/新潮社/1785円/★★★★☆ |
| 世知に長けていて、面白くてためになるお話をする尼さん。これが、彼女が作家から出家したという流れを知らない私の瀬戸内寂聴のイメージだった。両親が彼女の法話集をよく聞くので前々から身近に感じ、説教くさくないその話しぶりはユーモアがあふれ好きだった。 先日、あるテレビ局が、昭和の女のドラマを連続で放映していた。1夜目が、瀬戸内さんということと、彼女の役を宮沢りえが演じるということにも興味をそそられ観ることにした。彼女の激しさと真剣さが恋の情熱の熱さと共にせまってきて、2時間という身近さながら大変面白く感じた。このドラマの元となった「場所」を読んでみることにした。 結婚、不貞、家出、離婚、不倫と、思いの向くまま、しかし、真剣に男との情事をくりかえし、仕事に没頭してきた半生を、生まれ育った徳島から、東京、京都と点々と居を移したその後をもう一度たどりなおすと言う内容で、思い出と共に何十年ぶりに訪れた地で、ハッとするような不思議な再会が待ち受けれいるところが仏の道へ住まう彼女らしいと思った。 寂聴さんのお父さんが、彼女が離婚した後に言う 「これでお前は人の道を外れ、人非人になったのであるから、鬼の世界に入ったと思え。鬼になったからには、〜せいぜい大鬼になってくれ」 という言葉が印象的だった。 |
| 『八月の博物館』 瀬名秀明/角川文庫/743円/★★★☆☆ |
| 小6の夏休み、トオルは古ぼけた洋館で黒猫をつれた美宇という少女と出会う。美術館、博物館、水族館、時には時空を超えさまざまな空間を体験する。小説を書く事、その意味を問い、悩む作家。19世紀の考古学者マリエット。3つのストーリーがエンディングで絡み合う。 ミュージアムのミュージアム。なんてステキな場所なんでしょう♪飛行機や列車、車で移動することなく、世界中のすばらしい作品たちを見られたら、触れられたら・・・と考えるとヨダレものです(笑)それはおいておいて、別々の話に訪れるラストはなかなか見もの。そう、幼い頃に読んだ「物語」というものをじっくりと味あわせてくれます。 |
| 『少年H(上・下)』 妹尾河童/講談社文庫/600円/★★★☆☆ |
| 「河童のタクアンかじり歩き」(文春文庫)が妹尾氏との初めての出会いだった。あの緻密なタッチで描かれたタクアンたちをみていると「ご飯とタクアン食べたーい」と叫びながらスーパーへ駆け込みたくなったものだ。だから、この本の著者が彼だと知ったとき見間違いかと思った。 しかし、時代の波に乗り遅れ、やっと読むことができたのは最近のこと。 読んでみてまず驚いたのは、ルビがふられている事。でも誰にでも読める!というのは大切なことだ。そして、戦中に「この戦争はおかしい」と思っていた人が意外にたくさんいたこと。でも、誰も止められなかったから、悲劇は回避できなかったのだ。このことはぜったい忘れてはいけない。 50編にわたるH少年の話は、好奇心と活発さと、自分自身の子供のころ(世代は違いますが)をぼこぼこと思い出させてくれた。 私の好きな話は『三つの宝』だ。”ドンちゃん図書館”とH少年が呼ぶドンちゃん家の本棚から本を借りるために骨折する話だ。子供なりに、筋を通し、約束を守り、敬意を表する。そして、その世界を遠巻きに見守っていてくれる大人がちゃんといること。いい時代だったんですね。 つまんない事があったらいつでもH少年とこに遊びにいってみてください。泣いて笑って、走り回ってたら忘れちゃいますよ。 |
【そ】
| 『いちげんさん』 ディビッド・ゾペティ/集英社文庫/400円/★★★☆☆ |
| 当時、外国人作家ということで話題をさらっていたように思う。タイトル「いちげんさん」から、単純に日本に来た外人の料亭を舞台にした話だと思い込んでいた。実際は京都を舞台としたさわやかな恋愛話であった。 あらすじは、日本の大学に留学している「僕」が、ある日ボランティアで目の不自由な京子の対面朗読をすることになる。やがて二人はうちとけ恋に落ちていく・・・というもの。 ある時、京子が朗読する本をを日本文学でなく、ラブシーンが盛り込まれたものをねだるところがある。「僕」がベッドシーンにたどり着いたときそれ以上進むのをためらう。 そこで、京子が 「ねえ、そうしたの?ずるいわ。こんな所で止まらないでよ。美味しい所を私にもわけてちょうだい」(P53) というところ。 まだ恋人同士でない二人(たぶん、どちらともお互いに興味をもっている)状況でこのセリフは無邪気と言うか・・、実は計算なのか?と疑りたくもなるが、私が気に入っているシーンです。 話の中で「僕」は日本人の思い込み、というか決め付けというか、「外人は○○」という固定概念に苦しめられている。いい加減こんな習慣やめないといけないですね。 1996年第20回すばる文学賞受賞。 |
| 『六枚のとんかつ』 蘇部健一/講談社NOVELS/880円/★★★☆☆ |
| 保険調査員、小野由一と友人小藤、後輩早乙女が保険金がらみに事件を解決する! もう!トリックがこんなにアホでいいんでしょうか?あまりのバカバカしさに爆笑するか、すごく怒るか・・・。さあどちらになるのでしょう?私は笑っちゃいましたけど。 |
| 『木乃伊男』 蘇部健一/講談社NOVELS/798円/★★★☆☆ |
| 布部正男の曽祖父の代から続くミイラ男の伝説。兄の不審な死と、ミイラ男の呪いは正男にまで忍び寄る。ミイラ男の正体は誰なのか? 新感覚の推理小説本。何が新しいかというと、第一に1冊丸まる袋とじであるということ。講談社ノベルズ20周年記念企画として出された”密室本”。第二に、漫画家里中満智子氏による(懐かしい!)”犯人が絵でわかる”というスタイルであるということ。要するに、うかつにパラパラページをめくると犯人の顔がじゃーんと出てるんですね。一種○○ワイド劇場、○○サスペンスというような、2時間ドラマの小説版といいましょうか。ストーリーとしてはオーソドックスな内容ですが、犯人がわかっちゃうのでうっかりページをめくれないという、別の意味でドキドキが楽しめたりして(笑) ネタバレしちゃうといけないのでこれ以上ふれませんが、ラストのイラストの意味が非常に気になります。 |