>TOP >書評TOP

【島田荘司】

『占星術殺人事件』   島田荘司/講談社文庫/700円/★★★★☆
ひとりの画家の遺書の通り、6人の処女の肉体の各部を使って人体を合成するという猟奇的な内容に沿うように、6人の女性が行方不明になった。しかし、当の画家はそれ以前に密室で殺害されていた。事件は解決せぬまま40年の歳月が流れた。名探偵御手洗潔が初登場する名作。
作品の感想を書いてしまうとネタばれになるのでココではおいておいて、御手洗氏についての感想。突拍子のない言動と頭の回転の速さ、奇抜な発想、ミステリーファンには非常に魅力的な人物だ。社会不適合者(笑)である氏の「好きなときに、好きな事ができる。はっきりものが言える。気兼ねなく生きていける今の環境が気に入っている」という。名誉や金に翻弄されない飄々とした、人間が好きだという彼の今後の活躍をもっともっと見てみたいと思う。
『斜め屋敷の犯罪』   島田荘司/光文社文庫/480円/★★★☆☆
北海道宗谷岬に斜めに傾けて建てられた館「流氷館」。主の浜本幸三郎はクリスマスの夜に客を招待してパーティを開くが、その夜から連続殺人事件が起こる。
時期として「占星術殺人事件」から2回目の登場となる御手洗氏の事件簿。変な建物+殺人事件という設定のミステリーはいまいち好きではないが、コレだけきちんと説明していただけると納得しました。躁状態でも丁寧な御手洗氏が拝めます。石岡さんの影がう、うすいよ〜。
『切り裂きジャック・百年の孤独』   島田荘司/集英社文庫/480円/★★★☆☆
ベルリンの町を恐怖に落とし込んだ、娼婦連続猟奇殺人事件。のど笛をかき切り、腹を割き内臓をつかみ出す残忍な手口は19世紀のロンドンを震撼させた切り裂きジャック事件と酷似していた。
迷宮入りした切り裂きジャック事件から100年目の1988年前後、切り裂きジャックものの本が多数出版された。島田氏の独創的なアイデアで、西ベルリン(1988年当時)に起きた娼婦事件も、本家の切り裂きジャック事件も鮮やかに解明している。ははー!そうか!とうならせる推理と、繰り返される悲劇がすばらしい。
『御手洗潔のダンス』   島田荘司/講談社NOVELS/760円/★★★☆☆
人間は飛ぶ事ができると信じる男の奇妙な死「山高帽のイカロス」、1人の女性を取り囲む男性4人、彼らの過去にあった事件は?「ある騎士の物語」、夜な夜な奇妙なダンスをする老人「舞踏病」、そして、御手洗氏たちの近況を書いた「近況報告」
またまた難事件をするりと解決する御手洗潔と友人石岡が活躍する。御手洗の医学面の博識さと人に対する愛情に驚かされた。
『暗闇坂の人喰いの木』   島田荘司/講談社文庫/895円/★★★☆☆
暗闇坂の頂上にたつ、樹齢2千年の大楠は近寄る人々を狂気におとしいれる恐ろしい植物なのか?怪事件に挑戦するのは、われらが御手洗潔。あのレオナ初登場の作品。
藤並家に起こる殺人事件の真相は衝撃の事実が!といってもこの後に出た作品を先に読んでしまい、うすうす気がついてましたが、その異常さにゾゾゾっとさせられました。
ま、中身についてはこの辺にしておいて、初登場のレオナ、わがまま娘ですね。しかし、ちゃんと大人になっている彼女を知った上で読んだので、抵抗はあまりませんでした。御手洗さんの優しさにふれられる1冊。
『水晶のピラミッド』   島田荘司/講談社NOVELS/1200円/★★★★☆
なかなかの分厚さの本だ。5千年の昔のエジプトと、タイタニック号の船内、そして現代のアメリカと日本を舞台にしていて壮大さを感じた。「驕れる文明は復讐される」、「文明は西へ西へとすすむ」という御手洗氏のセリフが印象的。アメリカのある富豪が建てたガラスのピラミッドで密室殺人がおこる。7階で溺死体が発見された。完全犯罪は暴かれるのか?
御手洗ファンにとっては天敵といえるレオナ登場。私はぜんぜん目障りじゃなかったですよ。あまりに邪険にされる彼女が哀れで、そして、御手洗氏とレオナのやりとりはちょっとコミカルだった。今回はトリック途中でわかったよ〜っと思っていたが、どうやら思い過ごしのようでした。石岡さんレベルにも達しない私が、御手洗氏の思考回路に近づけるわけないか。
『眩暈』   島田荘司/講談社/2039円/★★★★☆
古井教授から渡された不可思議な日記。そこには殺人事件と、『占星術殺人事件』に影響された青年の死体損壊が書かれていた。
思わず眩暈がしそうだ。特に、東大内部の奇形児や、病気の症例などのホルマリン漬けの標本室の描写にくらくらきた。実物をみるよりも、そういうものを想像するほうがよほど怖いものができあがるのだろう。ただ、失神してしまうとは石岡さん・・・さすが。
事件の結果をみてみれば、隠さば隠すほど、事態は悪化し、ウソをつくろえば奇怪なものができあがるということか?御手洗さんが、テーブルを蹴ってピストルの弾をよける、というのがかっこよかったかな(笑)読み応えのアル1冊。
『アトポス』   島田荘司/講談社NOVELS/1359円/★★★★★
血で爛れた顔を持つ怪人が、ハリウッドに出没。ホラー作家の首切り殺人、嬰児の誘拐、女優の失踪。事件の舞台は、映画「サロメ」の撮影中の死海へと移る。吸血鬼エリザベート・バートリ伯爵夫人の物語とともにまたもや事件は謎に包まれる。
ハラハラしまし〜た。レオナがまたまた映画撮影中に事件に巻き込まれるんだもの。それにしても御手洗氏の登場シーンはかっこよかったわ(笑)本気で白馬に乗った王子様かと思いましたよ。
前半のエピソードもすごくよかった。吸血鬼好きにはたまりませんね。それにしても、女性の「美」に対する情熱と執念は恐ろしい。くわばらくわばら・・・。しかし、私も、目の下にシワを見つけて時のショックとあせりはありますね。
『龍臥亭事件(上・下)』   島田荘司/各940円/カッパノベルズ/★★★★☆
横浜馬車道の古いアパートで、御手洗が去った後、ひっそりと暮らしていた石岡の前に1人の女性が現れる。不幸な連鎖を断ち切るために、霊媒師に言われた「木の下に埋まっている手首を探し出して供養する」のに同行するように依頼される。
2人が出かけた岡山の山奥、深夜たどり着いた旅館、「龍臥亭」を舞台に壮絶な殺人事件が始まる。

御手洗氏なしで事件解決へ奔走する石岡さんを応援せずにはいられなかった。といっても、ノベルズが上下巻になっていると言う事からわかるように、ものすごく時間がかかっている。上巻終わって下巻へいっても、事件の解決が見えなそうなときは、正直イライラしてしまった。でも石岡さん本当にがんばってるんです。今までが、ものすごい天才の影で自信も才能も剥ぎ取られたようになってた彼が、自信を回復していくプロセスがじーっくり味わえました。
途中、とどく御手洗からの手紙はちょっと泣けますぞ!
『異邦の騎士』   島田荘司/講談社NOVELS/720円/★★★★☆
記憶をなくした男と、彼を助けた女。彼女を愛するほどに過去を探さなければとする彼の前に犯罪を匂わせる衝撃的な事実が。御手洗潔の初めての事件簿。
敬介と良子の互いに対する優しさと突きつけられた過去の大きさに息が詰まりそうになった。あれ?あれ?というまに開かされる真実にやられた!という思いと、目の前の霧が晴れたような感じがした。
そして御手洗氏の若い頃に出会えたこと。やっぱりあいかわらずだったが、若い分、少し感情の部分が出ていてムフフ(笑)だった。作品の順番をバラバラで読んでいるので、最後の真実に「ふぎゃ!」っと叫びそうだった。あ〜そうだったのか。
『御手洗潔のメロディ』   島田荘司/講談社文庫/629円/★★★★☆
御手洗氏の大学時代の事件「ボストン幽霊絵画事件」と「SIVAD SELIM」が面白い。ただ事件を書き記した・・・というのではなくて、御手洗氏のできるまで(笑)、そして別の顔が垣間見られる。また、「さらば遠い輝き」では登場人物2名、同人誌の企画のために書かれたというこの作品は、彼らの会話で御手洗氏の現状を知る事ができる。
『Pの密室』   島田荘司/講談社NOVELS/800円/★★★☆☆
少年時代というか幼稚園児の御手洗潔が活躍する「鈴蘭事件」。そして、小学生の時の事件「Pの密室」。ほとんど子供とは思えない頭脳と話し方、そして気の使い方。しゃべり方が子供っぽいだけで、もう大人おも超えているその才能は、まさに「御手洗さんらしい」状態だ。
著者のことばで、当初漫画のプロットとして書かれたが内容が濃いので小説にしたら・・・といわれ、「鈴蘭事件」ができたとある。その通り。幼稚園児が解決するにはなかなか内容です。
『最後のディナー』   島田荘司/講談社ノベルズ/800円/★★★☆☆
石岡さんと里美の周りで起きるちょっとした事件。生きていくって大変、だけどその気になれば奇跡は起きるという短編3編。収録。「龍臥亭事件」をまだ未読状態でどんどん進めてます。里美登場の事件を知らなくても、いけます。
江戸時代の末期に起きた、薩摩の村での奇跡を書いた「大根奇聞」はちょっと感動。御手洗さんも電話でですが、登場です。
『ミタライ・カフェ』   島田荘司/原書房/1600円/★★☆☆☆
スウェーデンにいる御手洗潔氏の近況報告とHPで連載中島田氏によるのデジカメ日記などから成る。
実は島田氏の作品は1冊しか読んだことがなくて、それは「御手洗潔の挨拶」だったが、1年前のことなのでストーリはすっかり忘れてしまっている。特に御手洗潔ファンでもないけれど、ダ・ヴィンチで見かけたときから読んでみたいと思っていた。
島田氏によるデジカメ日記はLAのこと、近所の井の頭公園のこと、賞の選考のこと、SSKというファンクラブの方とのオフ会のことなど何も知らない人間が見ても面白かった。
『透明人間の納屋』   島田荘司/講談社/2100円/★★★☆☆
ヨウイチは母と二人暮し。友達もいない彼の時間は、隣の印刷工場の真鍋さんと過ごすことで埋められていた。ある日、ヨウイチと真鍋さんの住むG市でマスコミを騒がす失踪事件が起こった。
さすが島田荘司!という作品。全体的に暗めで、シリアスなところなんかが特に!優しく理解のある大人真鍋さんと、「透明人間の薬」という謎、少年が興味をひく宇宙や、プラモデルなんかもある。でも、町の事件を解決する痛快少年という流れでなく、子供の範囲を超えないところ、大人になってからの発見、そして社会的な事件を絡めて進むストーリーに感服しました。驚きのラストは泣かせます。
『ネジ式ザゼツキー』   島田荘司/講談社ノベルズ/1208円/★★★★☆
スウェーデンで脳の研究をしている御手洗の前に、記憶をなくした男が現れる。彼が書いた奇妙な童話「タンジール蜜柑共和国への帰還」には、蜜柑の木の上に生活する人々、ネジ式の関節をを持つ妖精がでてくる。帰るべき場所を忘れてしまった男を御手洗は救えるのか?
まず、御手洗氏登場!のミステリーといううれしさがある。そして、妄想としかいえないような話の中から、真実をつきとめるあざやかさに拍手。常人とは違う発想、このあたりはさすがである。記憶を正しく呼び起こせないと、脳が勝手に物語を作り出してつじつまをあわせてしまう。自分の記憶に自信をなくしてしまいそうだ。
『龍臥亭幻想(上・下)』   島田荘司/光文社カッパ・ノベルス/各920円/★★★☆☆
龍臥亭事件から8年。事件の関係者がまた龍臥亭に集まった。神隠しのように消えた巫女の謎を調べ始めた石岡たちの前に、貝繁村に伝わる「森孝魔王伝説」が再現される?
石岡さん、がんばってます。過去の自分と生き写しのような青年を守ろうとするところ、冷静に事件を解決しようと努力するところ、鮮やかにとはいいがたい推理ですが、すごい成長です。それよりなにより、人に対する暖かなまなざしと誠意ある対応は石岡さんならでは。好感が持てます。それにしても、森孝魔王が登場、活躍する場面はイリュージョンだったなぁ。トリック自体はかなり早めにわかりました。
『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』   島田荘司/原書房/1575円/★★★☆☆
少女誘拐未遂事件に御手洗が挑む。時は占星術殺人事件からしばらくしてのこと。世間話にやってきた老婦人の言葉から誘拐事件をあてる御手洗だが・・・。書き下ろしの短篇も収録。
クリスマスにぴったりなお話。でも、短篇の方が気に入りました。御手洗氏の少女への優しさがほほえましい。単行本は2002年の発行(もちろんクリスマスイヴに!)だが、2004年、2005年のクリスマスシーズンにも新たに文庫化されているようだ。
『魔神の遊戯』   島田荘司/文春文庫/860円/★★★☆☆
ネス湖のそばにあるティモシー村で起こる連続バラバラ殺人事件。記憶の画家ロドニー・ラーヒムの未来の記憶の再生なのか?御手洗が推理に挑む。
アル中のバーニーと、事件など経験したことのない平和な村の警察署長バグリーのやりとりが悲惨な事件を牧歌的なものにしている。しかし、意外なラストに頭が大混乱でした。まさに術中にはまったとはこのこと。
『ロシア幽霊軍艦事件』   島田荘司/講談社ノベルス/861円/★★★★☆
レオナ宛てに届いた不思議なファンレター。誰も死なない、誰も事件に巻き込まれたわけでないこの難問は、歴史をゆるがす壮大なストーリーが隠されていた。
ロシア、ロマノフ家最後のミステリーをこんなに感動的で悲しい話に仕立て上げるなんて!すばらしかったです。アナスタシアは自分だと名乗り、そう振舞い続けたアナ・アンダーソンの事を知ったのは、この本ですが、彼女の死ぬまで抱えていた苦悩みたいなものの一端を見られたんじゃないかなとも思います。
事の真相はおいておいて、御手洗氏の導き出す結論が、心地よくピタリピタリとはまっていく鮮やかさ、いつもながら感動的でした。
『溺れる人魚』   島田荘司/原書房/1680円/★★★★☆
表題「溺れる人魚」、「人魚兵器」、「耳の光る児」、「海と毒薬」の4編。
直接、御手洗氏は出てきません(石岡くんは「海と毒薬」で)。でも、医療と戦争の暗部をじっとみつめたような内容。驚きと悲しみが同時に迫ってきます。「人魚兵器」はかなりグロテスクでした。
遠藤周作の小説と同じタイトルの「海と毒薬」。これが一番心にせまりました。「異邦の騎士」のその後というのでしょうか?せつない話でした。
『リベルタスの寓話』   島田荘司/講談社/1890円/★★★☆☆
ボスニア・ヘルツェゴビナでの惨劇の謎を解く御手洗。ブリキ人間、民族紛争、オンラインゲームにリアルマネー。たくさん盛り込みましたね?リアルマネーの抱える闇の部分が「進化した」のかな。そこが時代を感じさせられる事件ですが、用意された枝葉でちょっとかき混ぜたわりには事件のトリックはあっさりしたものでした。殺人事件の酸鼻さよりも、身近な人々の間で繰り返される、人がケダモノになる瞬間に激しくムカつきました。
同時収録の「クロアチア人の手」もトリックはかなり無理があるように思いました。物語がスムーズに入ってこないんですよね。急いで書かれたのか、まとめきれてないのか。クロアチア人同士でありながら、争っている民族の血が半分入っているという事実がいつ吹き出してくるかわからない、深い確執と悲劇、こういうところは面白かったんですが。こちらは、石岡くんが出てきています。電話越しで御手洗とうまくやり取りできてない感じとか、ちょっとかわいそうだったなぁ。
『摩天楼の怪人』   島田荘司/東京創元社/3000円/★★★★★
死ぬ間際に告白された、大女優の犯罪。摩天楼にそびえるゴシック建築のマンションを舞台に不可能犯罪に御手洗が挑む。
マンハッタンに乱立する高層建築。華やかなNYのショウビジネスの世界で成功していった女優の過去に起こった不可解な事件の真相を鮮やかに解き放ちます。もうそれは見事に・・・(キラキラ♪)
安藤忠雄の建築が融合したり、せつないロマンスがあったり。結末の美しさにハッとさせられました。分厚い本ですが読み応えもあって裏切りませんぞ。
ただひとつ気になるのは挿入されている、地下の街の話。アレはどう理解したらいいんだろう?真相をイメージさせるものなのかな。
『UFO大通り』  島田荘司/講談社/1785円/★★★★☆
御手洗と石岡くんがまだ一緒に暮してたころの話。わかんない奴と刑事にオレ様な横柄な態度をとる御手洗にあえます。
「UFO大通り」「傘を折る女」の2つの中篇を収録。最近なかった昔の作品を彷彿とさせる内容で、意外に私は気に入ってます。多少、そんな大胆な!と思うところもありますが・・・ね。とくに「傘〜」の事件。発端は悲劇ですが、顛末はコントみたいであっけにとられちゃいました。

>TOP >書評TOP