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【や】

『天使のナイフ』   薬丸岳/講談社/1680円/★★★★☆
妻を子供の目の前で少年たちに殺害された桧山。ある日少年Aが何者かに殺害される事件がおきる。テレビカメラに向かって「国家が罰を与えないのなら、自分の手で犯人を殺してやりたい」と言った桧山に疑いの目が向けられる。
少年犯罪と少年法を扱ったこの作品は第51回江戸川乱歩賞受賞作。興味深いテーマと伏線をうまく使って最後まで一気に読ませる。面白かった。
けれども、内容が内容だけにやるせない、せつない気持ちでいっぱいになる。少年犯罪への罰し方、被害者への扱い、加害者への過剰な保護と憤りを湧き起こすものが多いからなんだろうけれど。宮部みゆきの『模倣犯』を読んだときも同じように感じた。

以下はネタバレあり

とはいえ、被害者の過去をたどれば加害者であり、被害者の先をみたら加害者でありとそんなに犯罪に縁がある環境というのもどうでしょう?やりすぎの感がなくもない。(しかし、そこが面白い伏線となっているんだけれど・・・)
この環境は、娘 愛美の将来もあやぶまれるよね?作者はそういう将来も匂わせているのだろうか。それではいつまでも終わらない復讐ゲームとなってしまう。
最後の方の、桧山と貫井の会話が印象的。極刑も過剰な保護もどこかずれてる気がするという意見は作者の最も言いたかったことかな?と思う。いつのときも被害者が置き去りである現実をもう一度考えなければならないと私も思った。社会復帰には被害者抜きの社会ってないものね。
『伊達政宗(一)、(二)』   山岡荘八/光文社/各466円/評価なし
NHKの大河ドラマで放送された「独眼流政宗」の原作。1987年ということなので今から15年前になる。当時、政宗役の渡辺謙さんがかっこよくて、大好きな番組だった。幼少時代の「梵天丸は醜いか」のセリフは忘れられない。

それにしても、母親の義姫の政宗に対する冷たさ、弟竺丸に対する愛情のかけ方はかわいそうだ。同じ息子なのにこんなに差をつけるなんて、だが、隻眼となった梵天丸に、「なくした左の目玉」に見立てた葡萄の実を、「もともとこの母の胎から出たものじゃ。胎へ返してよいであろう。」と飲み込む場面は形はどうであれ、母の愛情を感じた。

時代物は、人物の名前を覚えるのが苦手なのでなかなか前に進まない。歴史をきちんと把握していたらより楽しめるんでしょうね。
『山口瞳「男性自身」傑作選 熟年編』   嵐山光三郎編/新潮文庫/514円/★★☆☆☆
週刊新潮で31年続いたコラム「男性自身」を嵐山氏の手によって、再編集した本。
山口氏の生活身辺のつぶやきぼやきが「フフフ」と笑わせる。そして、彼の嫌いなもの多さにびっくりさせられる。こういう偏屈そうな人が自分の祖父だったら、きっと休みに遊びにいったりしないだろうとも思う。
しかし、第3者としてなら「何言ってるの」また、「よく言ってくれた」という気持ちでいられる。
興味深いのは向田邦子さんについてのエッセイ。彼女の作中では知りえない、大胆さ、おおらかさが垣間見えて面白かった。
『山口瞳「男性自身」傑作選 中年編』   重松清編/新潮文庫/552円/★★☆☆☆
2月に出た山口瞳氏傑作選の第2弾です。今回は中年編。週刊新潮で連載されたコラム「男性自身」から選りすぐり、40代にかかれた作品が中心だ。
ですから、前回の熟年編より勢いというか、鼻息の荒さが感じられる。そして、奥さんと、息子さんの話題も多い。
印象に残っているもので、「夫婦喧嘩」というのがある。奥さんと一緒に出かけたおりに、彼女を喜ばせようとして裏目になり・・・というくだりだ。近頃有名なホテルのレストランに誘うと「誰かに会うかもしれない。ピーター・オトゥールなんかに会うかもしれない」から急に言われてもこまると奥さん。それに山口氏は、「15年間連れ添った俺が一緒に食事をしようと言っているんだぜ。ピーターなんか関係ないじゃないか。きみは『アラビアのロレンス』1本みただけじゃないか」と応酬し、どんどん険悪になっていくのだ。読んでるこちらは「あるある」と苦笑しながらうなずいてしまう。
他人の「話」というのは疲れた身体に良く効きます。
『サンダカンまで』   山崎朋子/朝日新聞社/1785円/★★★★★
今年読んだ本の中でも特に心揺さぶられる1冊。山崎朋子という名前を知ったのは、仲良くしてもらっているフウさんから『サンダカン八番娼館』という本を紹介してもらってから。残念ながらすぐに手に入らなくて、それよりも先にこちらを手にすることになった。前出の本はいわゆるからゆきさんであるおサキさんから聞き取りして書いた話だそうだが、こちらは著者自身のことが。をされてきた山崎朋子さん自身も驚くほどの波乱万丈な道を歩いてこられている。

冒頭、山崎さんが今で言うストーカーに顔をめったぎりにされた事件から始まる。当時、心通じ合った朝鮮人の青年とのはじめての結婚も、民族間の圧力で身を引かされ、ようやく自立しかねてからの夢、女優をめざしすなかで起きた悲惨な事件。傷ついている娘に、母の里へは帰るなという言葉。貧しさと挫折と不幸の連続。しかし、不運に見舞われても、立ち上がること明るい方を向いて歩くことを忘れない、自分の生きる道を迷わない強さ、しなやかさに衝撃を受けた。もちろんそこには、彼女を支え共に歩いてくれる夫 上笙一郎氏と娘 美々という家族の力があり、周りの仲間の力も多くあったであろうけれど、なによりなにものにも翻弄されず貫く強い意志があったからだろう。
結びの文で
波瀾に満ちた分だけ不幸だったろうが、しかし、その不幸に拉がれ終わるのでなく、それを学んで向日的に生きようという決意しいささかながらそのように歩めたことは、幸せであったと言わなくてはならないだろう。
と書いてある。
捉え方を変えるだけで物事が180度違って見えるという。ピンチをチャンスにではないけれど、辛い辛いだけでは楽しく過ごせない。
何度か訪れた幸せで平穏な生活のチャンスを放棄しても選びとった人生には、私のような他人が見ればなぜ?と疑問を投げかけてしまいそうなところもある。しかし、何事かを成したかったという彼女にとっては必然で幸せな選択であったのだろう。だって、今まで目を向けられずに朽ちて消えてしまうだけだったであろう、からゆきさんたちの記憶をしっかりと歴史に刻む仕事を成し遂げているのだからね。
『サンダカン八番娼館』   山崎朋子/文春文庫/500円/★★★★★
天草で出会った、元”からゆきさん”のおサキさん。女性史研究のために、どうしても彼女たちの証言が欲しかった著者山崎朋子さんは彼女の元に飛び込み生活を共にする。ぽつぽつと語られるおサキさんが体験したボルネオ、サンダカンでの売春生活。近代日本が彼女たちに背負い込ませた歴史の重さを感じる。

貧乏を逃れるため、家族を助けるために天草地方の女性は、海外に出稼ぎに行く。身につける技術もいらない、自分の肉体を売ることによってお金を得るために。おサキさんも、兄を助けるため、自らからゆきさんになることを申し出て旅だつ。しかし、その先に待っていたのは悲惨としかいえない現実。日本人の、西洋人のそして現地人の男たちに次々に身を任せお金を稼ぐ。その辛さは絶対に想像したくない。1日30人ものお客の相手をしたこともあるという、そのモノのような生活は、私の背筋を凍らせた。
家族を助け、ようやく帰国しても、待つのは安泰の生活ではない。身を売るという卑しい仕事をしたとしての世間の冷たい目、そして極貧の生活。おサキさんに待っていたのは、翻弄されつつたどりついた故郷で、崩れかけた家にムカデが棲む波打つ畳の部屋で、押し麦と白米がまぜられた飯と、くず芋の煮物だけという。
私の心を打ったのは、からゆきさん生活のひどさを語った部分よりも、おサキさんの心根の美しさだった。おそらく過去の経験から生まれたのであろう、相手の気持ちを思い、すっと包み込むように著者を受け入れたその大きな度量と優しさ、敬虔な姿である。
取材を終え、東京へと帰ってしまう著者にまたいつかうちに来て欲しいとたのむ彼女の孤独に涙がとまらなかった。
あまり上手いとは言えないけれど、歴史に埋もれていく底辺女性の心情をくみとりたいと思った著者の熱意と、それを感じ取り、ふところ深くまで受け入れてくれたおサキさんの優しさ、調査に協力してくれた天草の人々すべての思いが結晶していると感じさせる1冊。多くの人に、日本という国がしてきたこと、そして今もなんら変わってないその精神を直視してみてじっくりと考えて欲しいと思う。
『サンダカンの墓』   山崎朋子/文春文庫/357円/★★★★☆
前作『サンダカン八番娼館』の続編にあたるこの本は、サンダカンに在ったという”からゆきさん”のお墓が見つかり、著者が訪れたときの話が書かれている。いわゆる、からゆきさんの跡を追う内容となっている。
なかでも、そのまま日本に帰らなかった彼女たちと出会う話、それと、日本人墓地のそばにある殉難華僑記念の碑にまつわる話が印象的だ。子や孫に囲まれ平穏な老後を過ごす人、養老院で余生を過ごす人、とうとう故郷の土を踏まずにおえる彼女たちの人生はどんなだろう。そして、日本兵たちの残虐な行為によって命を奪われた者たちがそこにたくさんいたという事実の背筋の凍る思い。その二つが、日本という国が犯してきた事実が、実はいまなお改善されてないのではないかと思い至ると、私をさむざむとさせた。
『京都、オトナの修学旅行』   山下裕二×赤瀬川原平/淡交社/1600円/★★★☆☆
2年越しで探していた本がやっと見つかった。図書館でぶらぶらと通路を歩いていると、右斜め前の書棚にこの本が挟まっているのを発見!検索では引っかからなかったのに、置いてあるなんて不思議だ(笑)
本書は明治学院教授の山下裕二氏と、芥川賞作家の赤瀬川原平氏の2名が結成する「日本美術応援団」がミーハー気分を恐れずにここは一つ京都をじっくりと見直そうとオトナの修学旅行へと出かけている。
金閣から出発し、東寺、高台寺、清水寺、京都御所・・・とベタな観光名所を巡る。「修学旅行で子供に見せるのはよくない。寺嫌い、日本美術嫌いをむやみに増やしているだけ」と明言している。なんとなくそれはよくわかる。表紙で学生服で記念撮影が少々痛々しいが(笑)もう一度京都へといってみたいと思わせる一冊。
オトナにはオトナの楽しみ方があるんだもんね。と言い訳をしつつ旅を楽しめそうだ。
『ぼくは勉強ができない』   山田詠美/新潮社/400円/★★★☆☆
学校がすべてじゃない!当たり前だけど学生当時は気がつかないこと。コレ読んだら元気になるよ。ちょっと素敵な高校生時田秀美。サッカーが上手くてうらやましいような素敵な毎日をすごしてる。ただ、秀美くんはモテモテでちょっと鼻につく。
『ジェシーの背骨』   山田詠美/角川文庫/390円/★★★☆☆
恋愛をゲームとして楽しむココ。彼女が愛したのはアル中直前で子持ちの男リック。息子ジェシーはココに決して心をゆるさない。
愛らしい女ココと11歳のジェシーの関係が変化していく様子は、まるで兄弟間のできごとのよう。ココが語るという形式で話が進んでいく。彼女の可愛らしさが汲み取れる。

11歳の少年、普通だったらまだまだ子供。しかし、両親の離婚、面倒を見ない母親、父親の恋人と安心できない環境で彼の心はゆがんでいる。最近この年代の子供による犯罪が多いが、両親の教育というのはむずかしいことなのだろうということがジンジン感じてくる。彼のためにココはジェシーにつくしているが、結局子供が欲しいのは母親なのだ。
さて、父親リックはどうなのか?
彼は常に悠然としている。ちょっとのことでは動じない。しかし、けして無視していない。息子のことをちゃんとわかっている。いい親父じゃない、父親というのは最後の防波堤でなければならないと思う。
『フリーク・ショウ』   山田詠美/角川文庫/390円/★★★☆☆
黒人(ブラザー)や黒人音楽そして黒人が好きな女性が集まるムゲン。数珠繋ぎの進むラブストーリは恋愛の疑似体験をしているようだ。
奔放で大胆で純粋な男と女たちは可愛い。今までディスコやクラブへ通った経験はないが、夜遊びを覚えたばかりのサオリの「ムゲンに週末だけ通いつめるようになって三ヶ月になる。始めて三ヶ月というのはいちんばん楽しい時期である。」という言葉にはうなずける。大学生のころお酒を覚え始めのころの記憶が甦ってくる。夜とアルコールと音楽と異性とが組み合わされるとそこにエッセンスとしての「やばさ」を求めてしまう気持ちもある。恋愛ゲームがどこにたどりつくのか、傍観者として楽しんでください。
『ラビット病』   山田詠美/新潮文庫/400円/★★★★☆
キュートだけど、わがままで奇行がめだつゆりちゃんと、彼女を愛し、慈しみ、振り回されるろばちゃん。ふーたりのーためーせーかいはあるのー的ラブラブカップルの物語。
愛し合う二人はだんだん血縁者のように似通ってくる。そう、何十年も連れ添ってきた老夫婦が「兄妹?」ってぐらい似ている事があるように。そして、愛し愛されたのしいなーというカップルがこの本を読むと、「私たちのことだ!」と共感の嵐に見舞われるのだ。また、言い換えれば独身者や、愛のないお付き合いをしている人がみると、うらやましくて「きーっ」となってしまうかもしれない。
でも、そこんとこ大目に見てもらって、バカバカしいくらい愛し合ってるゆーりーちゃんとローバーちゃんの話でほんわかしてほしいな。
ところで、この本うちの本棚にはあるけど購入した記憶がない。誰の本だろう?
『PAY DAY!!!』   山田詠美/新潮社/1575円/★★★★☆
2000年9月11日に起こった出来事がたくさんのアメリカ人の生活を一変させた。母親をテロで失った双子、ロビンとハーモニーも。すでに離婚した両親のそれぞれと暮らしていた二人。彼らは父・祖母・伯父・恋人や友人たちとの生活のなかで、ゆっくりゆっくり現実を受け入れ、何度も悲しみを反芻して乗り越えていく。その努力が報われるようにと願わずにわいられない。労働の成果が得られる幸せな日、PAY DAY(給料日)のように。
不幸な事件で母親を失うというきびしい現実にもそれを飲み込みつつ成長する二人の兄弟の姿がほほえましい。時には家族をも見えなくするほどの圧倒的な恋愛に傾くのは絶対有り!切なく甘酸っぱい青春気分を存分に楽しめる。
ところで、山田詠美の書く恋愛は大好き!!なのです。冬の朝の布団のようにそいつにずーっとくるまっていたいような・・・そんな感じ。ロビンとショーンの恋愛もラブラブでまだまだ恋の苦味がでていない最高に時もハーモーニーとヴェロニカの火傷しそうな逢瀬の時も、ウィリアム伯父とシャーリーンとの、そして父とケイトの大人の関係も。どれもステキで、彼らのドキドキ感が伝わってきそう。こういう恋愛の気持ち忘れたくないなぁ〜。
『風味絶佳』   山田詠美/文芸春秋/1290円/★★★★☆
恋愛にはまるというのにもいろいろあると思う。愛してるよ〜だけじゃなくねっとりとでも冷静な駆け引きがある。そういうさまざまな風景を切り取ってくれて、ばさりと広げてくれる、それだけで詠美はええわぁと思わせられるのだ。
それ以上に面白いと思ったのは登場人物達の職業。鳶にごみ収集職員、ガソリンスタンド店員、引越し屋、排水槽清掃、斎場総合メンテナンス・・・世の中にはいろんな仕事があるものだ。でもどれも大事な仕事で、そこで一生懸命働いている人がいるんだもの。そういうのがいいスパイスになってるみたいだ。
扇方に広げられたキレイなカード。それだけじゃない使い古されてでも愛着がある山田詠美の恋愛物語。これからどんなものを体験できるのかとやっぱり楽しみにしてしまう。
『さおだけ屋はなぜ潰れないのか』   山田真哉/光文社新書/735円/★★★★☆
「さおや〜さおだけ〜」、今日もおなじみのテンポで放送を繰り返しながらさおだけを積んだトラックが通り過ぎていく。しかしまてよ。彼らは私が小さなころから今までなんら変わらず営業を続けてているけれど、経営はなりたってるの?という素朴な疑問が頭をもたげます。小さな疑問をピンポイントでつくこの本、実は会計の本なんです。
会計入門とあっさりうちだして読者のやる気を削ぐことをせず、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」という、ちょっと読んでみたい気分をもりあげつつ、会計というものの真髄を紹介してくるとは・・・。結果から言えば、とても面白く読める。そのうえ会計にも興味がもてる1冊。そして、なんだか得して気分にもさせてくれますよ。
『あそこの席』   山田悠介/文芸社/1100円/★★★☆☆
新しい世界にはどんな人がいるかわからない。新学期から新しいクラスになじめるか、友達ができるのかと心配する、転校生の不安がうまく表現できている。
最初は学生の作文のようだなーと思いました。そういうのってちょっと読むのが恥ずかしくなる。そのせいか、説明くさいし、キャラクターの動きがギクシャクしている。でもね、章が進むほどに、ちょい異常な世界が広がってくる。なかなか怖い。かなり早い段階で先が読めてしまうのは難点だが、都市伝説に近い恐怖を感じさせてくれる。
『リアル鬼ごっこ』   山田悠介/文芸社/1050円/★★☆☆☆
国中の”佐藤”を根絶やしにするために1日1時間、1週間の間佐藤狩りの鬼ごっこがはじまる。国一の足の速さを持つ佐藤翼は最後まで逃げ切ることができるのか・・・。
子供の作文かと思いました。説明ベタだし、同じことばのくり返しだし、言葉の使い方を間違っているしで、何度も読むのを止めようと思いました。はっきり言って文章力は低いのですが、その発想は面白い。彼の文章の下手さをカバーしてます。そこそこ読ませます。だから、本になる前に何度か推敲をしてたらよかったのにねと思いました。
以前に「あそこの席」という作品を読んでましたけれど、「リアル〜」に比べると文章力が上がってますね。こんなに下手でも作家になれるというのはある意味勇気をくれます。今後より精進されることを期待します。
『よそさんは京都のことを勘違いしたはる。』   山中恵美子/学研/1029円/★★☆☆☆
京都生まれ京と育ちの著者が語る京都の暮し。忘れていた日本の古きよき習慣が思い出されます。でも、京と他との習慣の違いの多さにも驚かされる。どこか固い印象の文なので、うちらがやってることがいいんよと言っているような、よそのものを寄せ付けないようなふうに感じられて、少し反感を覚えてしまいました。たぶんそんなつもりじゃないと思うけれどね。
『CAFE WITH A VIEW』   山村光春/アスペクト/1900円/★★★☆☆
「カフェの本ではなく、カフェを本にしたもの」らしい。26箇所のお店を舞台にちょっとした話が写真と共に紹介されている。だから、お店の紹介文というつくりではないには、これがオススメというのもないし、はっきりどこのお店という風にも書いていない。(巻末に有り)
店が誕生するまでの話、スタッフが出会ったステキなお客の話、お客として見かけたスタッフの心温まる逸話。実は創作部分もあるらしいけど、どれも素朴で暖かい。誰かに会いたくなる。誰かと話したくなる。そう、いつものカフェのあの席に座ったら私から声掛けてみようかしら?という気分になった。
『あかね空』   山本一力/文芸春秋/1762円/★★★☆☆
江戸を舞台に親子2代続く豆腐屋の人情味あふれる物語。
上方から1人で京の豆腐を江戸で売ろうとやってきた永吉と、長屋のおふみが力をあわせて京やを盛り立てていくところでは、「がんばれー」っと声援をおくり、商品が売れなくて捨てるシーンは悔しくて涙が出、意地悪な同業者は蹴飛ばしてやりたくなる。後半おふみの栄太郎猫かわいがりは非常に腹が立って、悶えてしまったが涙涙の人情物語には拍手だ。
しかし、夫婦、親子、兄弟間でも本心が通じ合えない部分はなんとも「よくあること」ちっくで、ラストで簡単に納得しあえる部分は不満が残った。
できれば、永吉の京にいる両親と再開するシーンが欲しかった。
読了後は豆腐を見る目が少し変わった気がする。
『つゆのひぬま』   山本周五郎/新潮文庫/552円/★★★☆☆
9話の短編で構成されている本である。時代は主に江戸。どれにも共通して、ラストが「ホッ」としている。安心できる内容だ。
私が好きな話は「武家草鞋」「水たたき」だ。
「武家草鞋」では人間不信に陥ったお武家さんが、ある田舎の老人と娘に助けられ、自らの心構えを反省させられる話だ。宗方伝三郎が見かねた老人にいさめられるところがあるが、ズキリとさせられる。
また、「水たたき」では妻に逃げられた辰造と隣の家に越してきた侍与十郎が、逃げた妻の「ほんとう」を知る話。人間素直に、何かあったらすぐ行動だなと思いました。辰造と妻おうらが心底好きあっていると言う様子がほほえましい。

ちょっと疲れたときに読んでみたい本です。
『大炊介始末』   山本周五郎/新潮文庫/590円/★★★☆☆
短編集。主に江戸が舞台。ほろりと泣かされる話がそろっている。
ところでこの本のタイトルになっている「大炊介始末」を何回フリガナを見ても読めなくて困った。(笑)

特に気に入っているのは「大炊介始末」と「なんの花か薫る」だ。
「大炊介始末」はとてもよくできた藩主の息子が、突然ご乱心される。殿から「命を縮めろ」という命を受けた兵衛は大炊介の幼少の頃からの学友だ。彼は乱心には分けがあると見て、何とか助ける道を探す。
大炊介の側にいるものが皆彼を信頼し、「かわいそうな人だ助けてあげたい」と思っている。他人にそう思わせるとはよっぽどの人物だろう。突然人を切りつけても何か分けありだと思ってもらえるのだから。だが、斬られたほうはもちろん怒ってますが。それは理由が彼らにはわからないから。そういう点では問題はありますね。

「なんの花か薫る」はある日ふと助けた侍が遊女お新と心から結婚したいとお新の仲間に話す。身を売る事を辞め、侍が結婚の申込にきてくれるのをまつのだが・・・。
胸がキュウとなる。問題を起こし、勘当された侍房之助とお新たちとの間の行き違いが悲劇をおこす。結局自分の境遇を悲しみヤケで言ったとしか認識がない房之助を信じた方がバカだ。そんな房之助に今までのことをおくびにもださず対応する姿が悲しい。
『あなたには帰る家がある』   山本文緒/集英社文庫/724円/★★★☆☆
主婦業に疑問を持つ真弓は、子供を預けて保険の外交員の仕事を始める。夫婦の考え方のずれ、女が仕事をするということなど考えさせられます。特に真弓の「なぜ女だけが家事をしなければならないのだ!」という考え方と、行動があまりに今の自分の行動と同じに見えて、読み進みながらゾッとしてしまいました。結婚している人間には、かなり身につまされるところもあるのではないでしょうか。もしかしたら、みんなが一度は通る問題なのかもしれません。
「恋愛中毒」の片鱗をみせるこの話しは、ドキドキハラハラさせられました。

しかし、真弓の夫の煮え切らない事。。。本気のない人間はなんてつまんないんでしょうか。真弓じゃなくても、イライラしちゃって、強気にでたくなります。気をつけないといけませんね。
『恋愛中毒』   山本文緒/角川文庫/571円/★★★★☆
読み終わって感想は・・・、「やばい。私も近い事したことある。」である。
1度や2度相手の気持ちなんかお構いなしの、「自分が考えたとおりに進む(進ませる)恋愛」をしたことのある女性はきっといることでしょう。でも、結局はどこかで「おかしい」事に気がついて(覚めてしまって)反省したりするかもしれない。
しかし、中年女性水無月はいつまでも「恋愛中毒」からぬけきれてない。どうして相手が去っていったのか理解できていないのだ。
1回読んだだけではこの話しの面白さはわからないかも。2度目に挑戦してみよう!
『笑う招き猫』   山本幸久/集英社/1575円/★★★★☆
芸人を目指す2人の女。1人は見上げるほど背が高くて、1人は小太り。1人はお金持ちで、1人は普通の家の子。1人は常識人で、1人はちょっと変わった子。いい感じにお笑いなコンビで、彼女達が”笑いの道”を選んでちょっとづつだけど売れていくところ、ワクワクでした。昨今のお笑いブームもあって、非常に共感できるし、興味もある内容。
ずっと、舞台に立ちたい!がTV出演をきっかけに、2人の関係もまわりも変化していく。女の幸せか芸人として生きていくことが大切かなどなど、悩みも尽きないけれど、この2人が生み出す”笑い”のエナジーみたいなのがほほえましくて、”笑い”が彼女達を幸せにしているようで、応援してあげたいという気持ちになりました。
『島暮らしの記録』   トーベ・ヤンソン/筑摩書房/1995円/★★★☆☆
トーベ・ヤンソンといえば、誰もが知ってるムーミンの作者。以前、雑誌でトーベがフィンランドの小さな島に小屋を建てて住んでいたことを知って、ずっと気になっていました。そして、これが島で暮らした日々の事をつづった本。彼女は作家としても有名なのです。ゆったりした贅沢な気分になります。すごく好きなものがそばにあれば何もいらないのよ。たぶん。


【ゆ】

『夜明け前に会いたい』   唯川恵/新潮文庫/476円/★★★☆☆
金沢を舞台に、元芸妓の娘希和子と、新進友禅作家瀬尾との恋愛を書いている。
季節は冬。しんしんと積もる雪。石畳の街。古都の風景の中でストーリーは進む。激しいぶつかり合いはないが、静かに進む希和子の心模様と冬から春へと移り変わる様子がシンクロしていて、その映像が浮かんでくるようだった。
とても読みやすい。
『刹那に似てせつなく』   唯川恵/光文社文庫/514円/★★★☆☆
2人の犯罪者の逃亡劇・・・というとなぜか男女でしょうと思います。しかし、主役は2人の女性。娘を玩具にされ殺された母 響子、恋人と子供を殺されたユミ。同じ日に殺人を犯した彼女たちは逃亡できるのか?
唯川恵といったら恋愛小説と思ってました。本書は復習する女の話。ちょっと驚きです。周囲の人間と犯罪に踏みつけにされた彼女たちが、「うらみはらします」物語は痛快なようで痛々しくて仕方がない。見捨てられたと思ってた人が最後に得られるのは?
登場人物が多くなって、消化不良部分もないことはないです。もっと書いてほしかった。でも一気に読みきれます。
『肩ごしの恋人』   唯川恵/マガジンハウス/1470円/★★★★☆
幼稚園からの幼なじみ、るり子の3度目の結婚式に参列する萌。女を武器に生きることに努力を惜しまないるり子に愛想を尽かさないところ(ほとんどの女性はこういう同姓を大いに嫌います)、友達の域を超えてしまっている彼女たちの関係はすごい。興味津々でした。その上、家出少年崇まで加わった奇妙な生活。最後までぐいぐい読まされました。
親友の恋人を略奪婚したり、不倫したり、ゲイがでてきたりと濃厚そうな内容なのに、あくまでもあっさりさっぱり。登場人物が生き生きしてて面白かった。とりあえず、しぶとく生きても、つっぱって生きても、女に女友達というのは必需品ですね。
第126回直木賞受賞作。
『陰陽師 鳳凰ノ巻』   夢枕獏/文春文庫/448円/★★★☆☆
待ちに待った、陰陽師シリーズ第4弾が文庫ででた。相変わらず晴明は飄々としているし、博雅は人間くさい。最近映画版の「陰陽師」を見たので、本を読んでいると安倍晴明が野村萬斎の顔をしている。

ところで、鳳凰の巻は7話からなっている。私が気に入っているのは「青鬼の瀬に乗りたる男の譚」だ。
新しい女ができたため、12年間連れ添った妻と離縁した男。その妻の行動が最近おかしいと聞き、見に行ってみると、すでに事切れていた。しかしその死体は何日たっても腐ることがない。思いを強く残した妻が夫を食い殺そうとするところを晴明たちに救われる。
夫は自分が捨てた女を最後に哀れに思い、鬼の背にいる時「わたしはここにいるよ」と声をかけたかったと後悔するシーンに胸を打たれた。だが、そんな仕打ち、はじめからするなよとも思ったが。後悔先に立たず。
『陰陽師 生成姫』   夢枕獏/文春文庫/581円/★★★☆☆
この秋映画「陰陽師U」が公開される。今から野村萬斎さんの安倍晴明が楽しみだ。

今回の作品は以前書かれた「鉄輪」の話を長編にしたもの。博雅がかつて堀川の川岸で出会った女性の話だ。
ところで晴明と博雅の二人の魅力にやられている方もかなりいることだろう。彼ら1人1人の能力や人間性もさることながら、2人の呼吸に「ハッ」っとさせられることが多い。互いを尊重し、尊敬し、誇りに思っているであろう様子は見ていて気持ちがいい。そして誰も隙間にさえ入り込めないような親密さに嫉妬もいだいてしまう。

ところで、生成姫において鬼に変わろうとしていた徳子姫が博雅に
「こんなに、わたくしは歳をとりました」
というと
「歳をとられたそなたが愛しいのだよ」
と返し、
「皺が増えました」
というと
「増えたそなたの皺が愛しいのだよ」
と返すシーンがある。
女としてこんな台詞をはいてもらえてうれしくない人はいない。しかし長年つれそった伴侶にさえそう言える人はなかなかないだろう。こういう優しさのこもった台詞が沸いてくる博雅の心根の清さを私たちは愛するし、晴明も愛しているのだと思う。こんな人間が1人でもそばにいると穏やかに生きていけるだろう。
『陰陽師 瘤取り晴明』   夢枕獏/文芸春秋/1333円/★★★☆☆
絵を担当の村上豊さんと絵本『陰陽師』をイメージして作った本らしい。小説陰陽師の世界がより鮮明に、生々しく感じられる1冊。瘤もちの双子の爺さん大成と中成や、百鬼夜行の魑魅魍魎たちのなんと生き生きしたことでしょう。イラストのおかげでいつも以上に楽しめた。ただ、晴明と博雅が私のイメージより老けてるのが残念。しかし、「好い漢だなあー博雅ー」と言う晴明は今回も色っぽかった(笑)私は彼のような強引でおおらかで聡明な男性に弱からね。イヒ。
『ものいふ髑髏』   夢枕獏/集英社/1500円/★★★★☆
最近自分の言動がずいぶんと壊れていたような気がする。そして、恐怖を感じる器官もずいぶんとにぶくなっちゃった。『ものいう髑髏』、真っ黒の表紙に白いドクロ。タイトルからして意味深だ。そう、正直少々侮っていた。10作の短編。どれもものすごく怖い!というものはない。な〜んだこれくらい。・・・と思いあとがきを読んだあとに「やられた!」だ。ある作品をもう一回読み直した。またちがう感触。だまされることに少々快感を感じる私にはこれはよかった(あくまでも小説の上でですよ!)。読まれる方はあとがきは全部読みきってからにしてくださいね。
『陰陽師 龍笛ノ巻』   夢枕獏/文春文庫/500円/★★★☆☆
陰陽師シリーズ第7弾。この作品でいちばん好きなのは、晴明と博雅の関係。関係(笑)というと友人以上の何かあるのか?と変な意味にとられそうだがそうではなく、冷静で隙のない晴明を、博雅の率直さ、まっすぐさが簡単にゆるませ、困らせるのが面白いのだ。もちろん、博雅はまったくそのことに気がついていないけれど。彼らの良好な関係をあらわにする会話の〆、晴明の「ゆくか」に好奇心に押されながらも、思うままに動かされたようでちょっと悔しい博雅の「ゆこう」というシーン。ついつい頬のがゆるみまする〜♪
『瀧夜叉姫』   夢枕獏/文芸春秋/各1500円/★★★☆☆
陰陽師シリーズ。
平将門に材をとっています。都で起きる不可解な出来事。物取らぬ女盗賊、奇怪な腫れ物。やがて、すべてが一つになって、都を脅かす陰謀へと繋がっていく。安部晴明の修行時代から引っ張っているところなど、怨念の強さを印象づけている。
いつも、晴明が活躍するとはいえ、おいしいところは博雅が持っていくのですが、今回は晴明がすべていいとこどりの印象だった。蘆屋道満の立ち位置もおいしい。
いつも思うのですが、夢枕氏の妖怪・鬼に関する筆致はすばらしい。すごく妖怪らしいというか。人の世の悲しみが染みわたるような作品です。

【よ】

『バカの壁』   養老孟司/新潮新書/680円/★★★☆☆
2003年ベストセラー本。なんとか年内に読了しました。
誰もが陥りそうな危険な穴を教えてもらったといった感じでしょうか。非常に興味深く読了しました。目からうろこも落ちました。
しかし、養老氏が言っていることは当たり前のこと。
他の著書もぜひ挑戦してみようと思います。
『クライマーズ・ハイ』   横山秀夫/文芸春秋/1650円/★★★★☆
1985年、御巣鷹山に墜落した日航機事故を追う地元紙の記者悠木の濃密な1週間。新聞の正義のありかたのみならず、親子や友人、会社の人間関係までも”みっちり”と書き込まれている。
フィクションといいつつも、作者の横山氏が記者時代に体験した日航機墜落事故報道は事実にそっている。地方紙としての報道の姿勢や事実”もらい事故”という印象をマスコミが持っていたこと少々驚きです。小説の体裁ですがこれも事実に近い言葉なんでしょうね。緊迫した編集部の雰囲気、現場とデスクとの温度差、足の引っ張り合いと臨場感いっぱい・・・見所はたくさんあって何度も息を呑む場面も。なかでも事故原因でスクープをすっぱ抜けるという高揚感といったら!先へ先へと身を乗り出すように読みました。登山仲間の安西から聞かされる”クライマーズ・ハイ”状態(※登山中に興奮状態が極限まで達すると、恐怖感がマヒする状態)とはこんな感じなんでしょうか?
あれから17年という形で衝立へ向かう場面と、過去ノ息子との不和、社内の人間関係と権力争いが交錯する。そういえばこれミステリーなんだよね。・・・そのあたりは抜きにしても人間ドラマとして充分読ませます。敏腕といわれつつも決して順調とはいえない仕事ぶりに、息子とうまく関われない父親ぶりに歯噛みしたくなる場面もありますが、決して人生を下りなかった悠木に拍手。どんなに躓いても転んでもやめなければやり直しはきくんだというのはうれしいですね。”下りる選択もあるが下りない選択もある”ふっと気持ちが軽くなる言葉。
『犬神家の一族』   横溝正史/角川文庫/700円/★★★☆☆
犬神財閥の創始者犬神佐兵衛が残した遺言書が読まれてから奇妙な殺人事件が起こる。横溝正史独特の血の系譜をめぐる因縁。探偵、金田一耕介シリーズ。
映画では何度も見たことがあるが、原作を読むのは初めて。映画では池から突き出した佐清の逆さ死体が猟奇的で印象的だが、小説の方も充分面白い。むしろ細部まで書かれているから、映画→小説とすすむのがオススメでしょう。映画の印象が強いため、正直読むのがためらわれていましたが、それはもったいないことかも。他の作品もじゃんじゃん読んでみたいと思います。
『真珠郎』   横溝正史/角川文庫/★★★☆☆
何がいいって、タイトルの「真珠郎」でしょう。いったいどういう話なんだと食いついてしまいます。
鬼気迫るような美少年真珠郎が引き起こす殺人事件。さすがの殺人シーンというか、さすがの遺体損傷というか、首チョンの死体などもでてきます。猟奇的な殺人ですね。結構早い段階で殺人事件のからくりはみえ、犯人はわかり・・・ですが、その前ふりの幻想的なところは味わい深いです。横溝=金田一だけじゃないんですね。こちらは由利燐太郎という探偵が登場する作品群のひとつだそうです。
それはそうと、真珠郎が受けたという、到底活字にはできないであろう責め道具にてのあれやこれ・・・気になります。
『悪魔が来りて笛を吹く』   横溝正史/角川文庫/★★★☆☆
宝石店毒殺強盗、椿元子爵の失踪。父親の死に疑問を持った美禰子は金田一耕助に調査を依頼する。しかし、金田一が乗り込んだ椿家ではつぎつぎと殺人事件が起きてしまう。
一族にまつわる背景、陰湿で、人との結びつきの強さが生む濃厚な空気。つまりは、妖気的な雰囲気を存分に楽しめる探偵小説なんですね。
いまの作家がこういうのを書くと、たぶん興ざめなのだけれど、時代を経てきた横溝正史の作品には、なにかを期待させる(でも、それほどたいしたことない)世界観があって好きです。実は、小説という不動のものにも、歳月を経た味がでてくるのかもしれない。戦後間もないころの時代を存分に楽しめる小説。
『仮面劇場』   横溝正史/★★★☆☆
虹之助という三重苦(目が見えず、しゃべれず、聞こえない)の少年を有閑マダムが拾ったことから始まる惨殺劇。最初から犯人はうすうすわかってるし、事件を調査する人たちのぬるさ、きめつけ、天啓みたいな事件解決法が気になりますが、昭和初期の雰囲気が濃厚に楽しめます。横溝正史の真骨頂である、グロテスクと美が堪能できる作品です。
『死よりも遠くへ』   吉岡忍/新潮文庫/407円/★★★☆☆
当時日本を騒がせてセンセーショナルな事件を追ったルポタージュ。どれも色濃い死のにおいがする。
悪徳商法で二千億円を詐取した豊田商事の永野一男の最期、人気絶頂だったアイドル歌手の自殺、国鉄民営化とともに起こった自殺、昭和最後の日。丹念に聞き込んだ関係者の声は、いままで目耳にしてきた報道から受ける印象とは少し違う。
一番読みたいと思ったのはビルから飛び降り自殺をした岡田有希子の章。当時、このアイドル歌手死は幼かった私にはショックが強かった。しかし、その後の報道の熾烈さは、彼女の死体の写真公開を含め、いやらしいくらいどぎつく痛々しい。マスコミはどうして死んだと同時に故人の何もかもを世間にさらしてしまおうとするのだろう。みなが知りたがるから、今後こういうことのないように原因究明といいつつ、どこも同じ内容をくり返し報道する。
著者の吉岡氏はあとがきにこう記している。
私は「結婚式より葬式に行く方が気が楽だ」と、小さな文章に書いたことがある。
・・・葬式は他者との関係をこれから勝手に作りかえ、自由に解釈しなおすことのはじまりだからだ。

まさにこの本は、死者の生きた軌跡をたどりなおし、自由に解釈しなおした結果なのだ。そこでは、いい意味でも悪い意味でも書き直しが行われる。しかし、死者がいない今、生きていく者にとってこれは必要な作業だと思う。私たちはこれからも生きていかなければならない。
闇が暗ければ光はより明るい。死を通して生の鮮やかさを強く感じた。
『フィンガーボウルの話のつづき』   吉田篤弘/新潮社/1500円/★★★★☆
吉田君とゴンベン先生は串焼き屋で物語の書き出しについて話している。串焼きの煙と、豚の串ののったお皿、黒ビール、食欲をそそる場面だ。話のしっぽをどうつかむのか?ビートルズのホワイトアルバムに関わる物語が始まる。
町なかの普通の人の小さな話。ほのぼのしてます。「私は殺し屋ではない」、「キリントン先生」、「白鯨詩人」、「ピザを水平に持って帰った日」が特に好きな物語。疲れた時に読んでほしい。やんわりと包み込んでくれる毛布のようなお話です。明日もがんばろうかなって思えます。
『つむじ風食堂の夜』   吉田篤弘/筑摩書房/1500円/★★★☆☆
十字路の角にぽつんと建っている食堂。東西南北から吹き込む風のためにいつもつむじ風がおこるので、その食堂をみなつむじ風食堂と呼んでいる。そんな小さな食堂の物語。
万歩計を「二重空間移動装置」と言って売ろうとする帽子屋のおじさん、主役をもらえない女優奈々津さん、暗い夜道を照らすために一軒だけ遅くまでやってる果物屋さん。気負わなくていいゆうなれば普段着のお話だ。私が惹かれるのは出てくる小物。エスプレッソマシーン、唐辛子について書かれた『唐辛子千夜一夜奇譚』、光を反射するオレンジ。そして、「私」の父の手品用の袖口だ。
『針がとぶ』   吉田篤弘/新潮社/1400円/★★★★☆
拳にメモをとること。クロークルームに忘れられたコート。白い家。日記。一片一片バラバラなのに、いつか一つになるジグソーパズルのような話。世界はつながっていると感じた。ユイと伯母の血のつながりばかりでない、偶然とか運命そういうつながりの奇蹟に心がポッとなる。伯母の日記もいいな。アッタカイ。それから、クローク係の私が残されたコートに寄せる愛情(?)もわ、わかる〜っという感じ。あら、私ってばすっかり吉田篤弘さんにはまってるのかしら?
『百鼠』   吉田篤弘/筑摩書房/1575円/★★★★☆
吉田篤弘の物語は抱擁に似ていると思う。温かくて優しい。時間がゆったりと流れていく感じがするまったりとした日常の3つの物語。ちょっと恋につまずいて、ちょっと秘密をもった、ちょっと母親からひとり立ちしようとする人たちが愛らしい。温かい飲み物を用意してゆっくり読みたい1冊。
『という、はなし』   吉田篤弘/筑摩書房/1470円/★★★☆☆
フジモトマサル氏のイラストと小さなお話がおだやかに優しく語りかけてきます。彼のイラストの人物(というよりも動物)はどれも読書中。それも、実にいい感じの読書中なのです。さりげなくのんびりとしていて、そのうえ共感まである。フジモト氏のイラストをみてからショートストーリーをつけるという形で連載されていたそうです。心温まります。
『十字路のあるところ』   吉田篤弘/朝日新聞社/1575円/★★★☆☆
十字路にまつわり、十字路にある物語たち。さりげなく短いストーリーと、その世界に追随する写真との構成がいい感じなのです。読むものにそれぞれの想像力を残している。
『78』   吉田篤弘/小学館/1680円/★★★☆☆
78回転のSPレコード、昔の話、奇妙な物語。連鎖していくお話の中にあるのは78回転のSPレコード。連鎖しているようでほほえましい奇妙な三角四角恋愛関係。なつかしい香りのする物語です。音楽には疎くて、そのうえレコードとかはよくわからないけれど、こういうテイストはキライじゃない。温かいハニーストロベリーティ飲みながら読みたい。
『それからはスープのことばかり考えて暮らした』   吉田篤弘/暮らしの手帖社/1890円/★★★★★
久々にこれだ!と思いました。ゆったりと安心して身を委ねられる話。
失業中のオーリィ君が出会う、3(トロワ)というサンドウィッチ屋さん、名前のないスープのレシピ、古い映画の中のチョイ役の女優さん、アパートの大家さん、トロワのしっかり者の息子。しばらくぶりに、ああ吉田篤彦の本を読んだ気分になりました。タイトルはスープのことばかり考えてたみたいですが、私は、しばらくサンドウィッチのことばかり考えてしまいました。トロワのサンドウィッチは美味しそうだもの。そして、この平凡だけど住み心地のよさそうな町に行ってみたい。
『Think 夜に猫が身をひそめるところ』   吉田音/筑摩書房/1800円/★★★★☆
母が気にする、「この世で・いちばん・おいしい・お菓子!らしい、ミルリトン」。音は円田さんと一緒に円田さん家の「考える猫」Thinkが持ち帰る「お土産」について推理する、謎を解かないミルリトン探偵局を結成する。16個の青いボタン、古い釘、紙袋の切れ端、古い映画のチラシ・・・。黒猫Thinkはいったいどんなところを訪れているのだろう?
途中挿入される写真のおかげで、自分も探偵となってThinkの足取りを想像しちゃう。彼はどこで誰と会ってるんだろう?何を思ってこれを持ち帰るのだろう?と。途中、音が水道管がいろんなところとつながっていると想像し愕然とするシーンがある。生きているとみんなとつながっている。心がポカポカする驚きだ。ミルリトン探偵局の話と交互に入っている話。その中の「奏者」というのが好き。この葛藤笑っちゃいます。
ところで、「クラフト・エヴィング商會」の3代目をつとめる吉田篤弘・浩美を両親に持つ音。彼女がThinkの持ち帰るものについて考えるミルリトン探偵局の仕事を本にしたのがこれ。といっても、「クラフト・エヴィング商會」も娘音も架空の話。
『Bolero 世界でいちばん幸せな屋上』   吉田音/筑摩書房/1800円/★★★★☆
『Think』に引き続き、ミルリトン探偵局その2。
Thinkの持ち帰るものと、ピザ屋「アンジェリーナ」の皿洗い仲間たちとの話。ちょっとファンタジー入ってきました。Thinkって何者?そして円田さんの創作のアイデアが果てしなく広がりづれていくところが面白い。また、前作に引き続きでてくる「奏者U」の話。猫と遊ぼうと、ピンポン球を「うぉりゃー」と投球し、脱臼してしまう彼に爆笑。愛すべき人ですな(笑)
『パレード』   吉田修一/幻冬舎/1600円/★★★★☆
2LDKで同居する5人の男女。
甘え上手な大学生良介、恋愛で夢見る無職の琴美、「夜のお仕事」で働くサトル、酒におぼれるイラストレーター兼雑貨屋店長未来、映画配給会社ではたらく健康オタク直輝。一人一人の目線でみる共同生活はすごく上手くいっている。演じられる自分を持っているから?「チャットやBBSの世界みたい」というセリフがでてくるが、ちょっとドキッとさせられた。最後まで気を抜かないで読んでほしい。むーもっと語りたいがここまで!
余談だが、帯に現実は厳しい!(リアリティ・バイツ)って書いてあって、映画「リアリティ・バイツ」を思い出した。みた事ないんですけどね(^_^;
第15回山本周五郎賞受賞作。
『熱帯魚』   吉田修一/文芸春秋/1429円/★★★☆☆
内縁の妻真実、その娘小麦、昔兄弟だった光男と暮らす大輔。水槽に魚を押し込めるように身近なものを手近なところに置いておこうとする男と押し込められる人たちを描いた「熱帯魚」。わがままな男とその彼女。マンネリ化した恋人関係のじわじわと訪れる破局を書く「グリンピース」。自分の感に導かれるままたどり着き民宿でアルバイトを始めた新田。無口な主人と異常な行動をする奥さん。新田の緊張した生活をゆるめるような「突風」。
当たり前の中のハッとする瞬間を書くのがうまいと思う。かっこよくも感動もないけれど、日常の見逃せない一瞬をとらえている。冗漫なのにするどい切れ味の作品。
『吉田電車』   吉田戦車/講談社文庫/540円/★★★☆☆
吉田戦車=「伝染るんです」の世代ですが、吉田戦車が吉田電車って・・・と手に取ってしまいました。
内容は、吉田戦車のエッセイですが、電車となっているだけあって、鉄道系の話。でも、特別好きということではなく、実にゆるーい。「旅に出て乗ってみた、麺類食べた、それだけ」という感じが彼のマンガと似ててよかったです。また、吉田戦車さんもイメージ通りの方のようでその点でも裏切られなくてよかった。
まだ読んでないですが、「吉田自転車」というのもあるそうで、実はこっちの方が力はいってんのかな?
『なめこインサマー』   吉田戦車/講談社文庫/500円/★★★☆☆
先日は「吉田電車」なるエッセイを読んで、いまの吉田戦車を垣間見ましたが、このエッセイは「伝染るんです」をはじめて読んだときの強烈なインパクトを感じました。それもそのはず、20〜30代のころに書いた雑文をまとめたものらしいです。現実なのか虚構なのか??簡単に煙にまかれます。結構真面目に読んでたら、犬が友だちとかいう。単なる犬好きかと思うと、本気で友だちしていて頭がおかしくなりそうです。
『a piece of cake』   吉田浩美/筑摩書房/1600円/★★★★★
「ひときれのケーキ」というタイトルのこの本。日常の断片にこそ大切な物があるのではないかという思いで、ささやかな本を作ってみようという試みだ。12冊の本。ほん(本)のちょびっとだけど、心を打つ物がある。アルファベットの「a」を集めた本。ゆっくり犬の本。夜更かしのためのパン焼きレシピ。誤字標本・・・。感心したり、笑ったり、やってみようと思ったり、怖い話もあったり。ちょこっとでも侮れないのだ。これはお気に入りの1冊になりそう。ところで、ちいさな本たちの発行元は「ゆっくり犬書房」。なんと挿入されてる写真にゆっくり犬書房のしおりが!あ〜〜〜ほしい!!
『クチュクチュバーン』   吉村萬壱/文芸春秋/1300円/★★★☆☆
遠い未来を創造するとき、悲劇的で悲惨な話というのがある。たぶん、そのなかでもこれはいちばんあってほしくないパターンだ、と思う。過激な環境の変化で人間の体から余分な手足がにょきにょき生えてきたり(何の前触れもなく!!)、机やかばんと同化したり、動物に変異したりする。はたまた、突然空から大量の卵がふりそそぎ、孵化した緑色や藍色の化け物に次々喰われていく。そんなのってありえない!ゾッとする世界だ。
けれども、人間は不思議なもので、そんな世界でもちゃんと生きているのだ。突然訪れた変化に対応しようとする。肛門から腸をひっぱりだして、活路を見出そうとする、同化して生き残ろうとする。そういう柔軟で貪欲な生きる努力に驚くけれど、その真剣さとまじめさがかえって滑稽でちょっと笑ってしまった。
頭がバーンとはじけそうでグロテスクで救いようがない話だけれども、読後に残ったのはさっぱりした気持ちだった。なぜなら、軽快なタッチが悲観的な空気をまったく感じさせないから。それくらい、からっからに感情が乾燥してしまった話でもある。誰にでも薦められる本ではないけれど、かえっていろいろなことを考えてしまった。一読の価値はあると思います。
『アルゼンチンババア』   よしもとばなな/幻冬舎文庫/★★★☆☆
母親の死、父の行方不明、地元の名物おばさん”アルゼンチンババア”。私の周りで起こる衝撃のできごと(母の死、父の恋をこうヨバズシテなんという)を、淡々とそしてあったかい気分で書いている。
これがはじめて読んだよしもとばなな本。彼女との出会いまで長かった。どうしても近づけなかったけれど、この本で一気にスムーズに仲良くなれたと思う。変わっているユリさんと父との恋愛をあたたかく見守ってあげるなんて、なんて心の広くてやさしい子なんだ!いい子だ。奈良美智の画ともしっくりいっている。近くにあるけれど、夢みたいに遠くのお話だよなぁと思った。
『よしもとばななドットコム見参!』   よしもとばなな/新潮文庫/500円/★★★★☆
さて、続いてはよしもとばなながHPにて書いた日記を書籍化した本。
こういう、他人の日常を逐一知れる本というのは意外と好きです(一億総日記公開時代だよね)。毎日お出掛けして、毎日スペシャルな感じがするところがとくに。いやー、普通じゃないよね。でも、仲間を大切にして、家族を大切にして、自分の仕事を大切にしているところがよくわかる。とりたてて役に立つ内容ではないけれどまったりと楽しめる本。
『キッチン』   吉本ばなな/角川文庫/420円/★★★★☆
超超有名な、ばななさんの著書。ようやく、読んでみました。
家族の心もとなさ、孤独と運命など、彼女の作品の多分根底になるような作品だろうと思いました。自分のすることは、実は道はすでに決まってるとふと気づく瞬間が印象的です。ぱぁって視界が晴れたような。「こうやって屋上でねっころがってるのも・・・」ってとこ好きでした。せつなくて泣けるけど、まだまだがんばれるって気持ちにしてくれる本です。
『ミルクチャンのような日々、そして妊娠!?』   よしもとばなな/新潮文庫/460円/★★★☆☆
「よしもとばななドットコム見参!」の続き。第2弾です。相変わらずのお忙しい毎日。そして、ついに妊娠報告で終わります。
エッセイの魅力は、どこからでも読めるて構えなくていいのに、まったりできてその人の考えがわかる点。この人の日常を読ませてもらうと、大体元気になります。自分の生き方に自信ももてます。備忘録感が強いから、相変わらずの人物相関がわかりにくいですが、親や親戚の話を聞いていても、この程度しかわからないからまあいっかです。
『子供ができました』   よしもとばなな/新潮文庫/460円/★★★☆☆
HPの日記シリーズ第3弾。妊娠届けを出してから、出産まで、仕事と妊婦生活の両立の苦労が忍ばれます。・・・にしても、妊婦とは思えないアクティブさ。最近の妊婦は、だいたい活動的ですが、こんなにあちこちしていいのかな?とこちらが心配してしまいます。昔の人なら叱っちゃいそう。
明るく楽しい毎日が書かれてますが、その心の中は、本人にしかわからない。いろんな悩み辛さ、地獄を抱えているそうです。行間からはまったく信じられないですけどね。
『白河夜船』   吉本ばなな/福武文庫/★★★☆☆
孤独と夜の三部作。
「白川夜船」とは、京都見物してきた、といううそを言った者が名所白河についてたずねられ、川のことだと思って、夜中に船で通ったから知らないと答えた話に基づいて、熟睡していて何が起こったかまったく知らないことをいう。不毛で悲しい恋愛をしてる女性が、友人の死をうけ、より自分の孤独を感じ、そこから、立ち直る話。いつも、すごく寝てしまうというところが、身近に感じる。よく寝てよく働くことが、体だけじゃなく心も癒すのね。
夜が甘くやさしく感じられて、傷ついた心を癒す。そういう、話です。
『パイナツプリン』   吉本ばなな/角川文庫/441円/★★★☆☆
吉本ばななとしてデビューしたてのころのエッセイ。
当時の彼女が思ってたこと、気になるもの、生活など垣間見えて、のちのHPのそぞろ書きの本よりも真摯でおもしろく読みました。基本、同じ人だから変わらないんだけど。わかりやすいからの印象かもしれません。
とにかく、売れて、賞をとる人というのは大変なんですね。文庫版のあとがきにもご自分で書いてましたが「この頃にくらべ日に日に態度がでかくなっている」そうなので、まぁ、それは貫禄みたいなものだと思いますが、初々しさを楽しめる本でした。
『体は全部知っている』   吉本ばなな/文春文庫/480円/★★★☆☆
彼女の本は読みやすくて、他人を拒否しない印象がある。これも、読み始めたらスッと体にはいってくるような話たち。
一番好き(?)なのは、「みどりのゆび」という話。育ちすぎたアロエと、植物を愛していた祖母の死についての話。まったく関係ないのですが、最近あまりに育ちすぎたアロエを自分は切ったことを思い出しました。吉本ばななの作品には、こういう、日常のふとした瞬間を浮かび上がらせる力があります。
『B級BANANA』   吉本ばなな/角川文庫/★★★☆☆
吉本ばななのエッセイ。というか、「月光」という短編あり、読者の悩み相談にのったり、岡崎京子さんからのQ&A、「フェミナ」編集部からの質問、お姉さんである漫画家のハルノ宵子さんの文章ありと、雑多ですが、フランクな素のばななさんを感じることができます。
意外と面白いのが悩み相談。真面目に答えてたり、つつつーっと脱線したり彼女の思考回路の一端が垣間見えるようでした。
『TUGUMI』   吉本ばなな/中公文庫/★★★★☆
病弱で生意気で美少女のつぐみ。彼女とすごした最後のふるさとの夏の海辺の町、家族のこと、少女たちが大人になっていく一瞬を閉じ込めた物語。
タイトルだけ知っている=読んでない本の一つでした。ばななさんの本は姉からどっさり貸してもらって最近ようやく消化中です。
さて、つぐみという女性はいやな子なのかかわいい子なのか。正直で健気で恥ずかしがり屋な子じゃないかな?近くにいたら迷惑だけど。遠くで見てるのがちょうどいい子だ。まりあとともに結構好感をもった。
このお話の中で一番心に残ってるのは、恭一の犬、権五郎のこと。彼に起こったことを思うと胸がはりさけそうです。
『ハチ公最後の恋人』   吉本ばなな/中公文庫/★★★☆☆
宗教団体、インド、恋。なんともつながりが悪そうな題材だけど、ここではしっくりとした愛の物語になっている。霊能者の祖母が預言したハチという青年と出会い、恋に落ちる私。それは「最後の恋人」になることだったけど。運命ってあるし、避けようと思えば避けられるけど、変えられないものもあるんだなと思いました。
『ハネムーン』   吉本ばなな/中公文庫/★★★☆☆
2人は隣の家の幼なじみ。裕志とまなかは18歳の時に入籍した。そんなに早く結婚したというなら、いっぱい恋愛の感情があったのかな?と思うけどそういうことではない気がする。もちろん好きじゃないわけじゃないけれど、必要な2人という関係。裕志を捨てていった両親のこと、ずっと育ててくれたおじいさんのこと、オリーブのこと、平和で愛情に満ちているまなかの両親の話。静かに進む物語の中で彼らの周辺の事情にハッとさせられる。孤独で、残酷な戦いがあったり、孤独で愛情深い悲しい物語がありました。2人がいる場所が家。彼らの帰る家がこれからはいっそう幸せにと祈りたくなった。
『ガセネッタ&シモネッタ』   米原万里/文春文庫/552円/★★★☆☆
通訳とは別の文化の間を取り持つという性質状、誤訳が致命的な結果を招いてしまう事も。そんなちょっと普段は知れない業界の裏話は意外や意外、腹を抱えて笑えます。国際会議や首脳間の大切なやり取り、はたまた企業間の秘密にも触れてしまう重要ポジションのための緊迫感とプレッシャーがかえって笑いを誘うのでしょう。通訳中頭を悩ませるのが、笑いだそう。なぜなら、本当の意味からのずれや言葉のイントネーションなどを笑うダジャレは、同じ文化間でしか通用しないから。でも普段悩まされるダジャレを通訳者は好きとか、万国共通の笑いネタの下ネタが飛び交ってるとか、同時通訳ブースの殺気を帯びた雰囲気とか。言葉には人間は欠かせないから面白いのね。
『魔女の1ダース』   米原万里/新潮文庫/500円/★★★☆☆
1ダースは12という常識は魔女の世界では通用しない。魔女界では1ダース=13。自分の世界の常識をくつがえすことがなんと多いことか。同時通訳界の米原さんが紹介する、文化の違いの不思議さ、奥深さを実感してください。いくら違うといってもシモネタは万国共通ですが・・・。
『ヒトのオスは飼わないの?』   米原万里/文春文庫/650円/★★★★★
ロシア語通訳者の米原万里さん。家族は8人。ヒトのメス2、猫のメス3オス1、犬のオス1メス1・・・。米原家の動物との共同生活珍道中。彼女の愛がいかに大きいかということがよくわかります。
もともと猫好きということで、猫たちの話に重きがいっていますが、初めて飼ったという捨て犬ゲンがかわいくてかわいくて・・・。ヒトにも猫にも愛情を最大限に表現するその健気さに胸がぎゅーんとなりました。それにしても、彼はどこへ行ってしまったのでしょう。雷怖さに飛び出していくところ、死んだらん丸のことを思い出しました。いつかきっとゲンが戻ってきてくれることを祈っています。
さて、犬好き、猫好きどちらにも心底楽しめるこのエッセイですが、タイトル通り、米原さんはヒトのオスは飼わないのでしょうか?いつの日か、ノラの犬猫を引き取ったように、ヒトのオスも引き取る日が来ると・・いいなぁ。なんとなく。

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