盆踊り考

2002年8月25日執筆


土曜の夜8時頃、駅前のダイエーに買い物に行ったところ、駅前商店街で盆踊り大会が開催されていたので見物してきた。

30男のメンツと体裁上いちおう断っておくが、私は盆踊り大会があることは知らなかった。たまたま通りがかったら開催されていただけである。 決して狙って行ったわけではない。
だいたい、もし盆踊り大会があることを事前に知っていたら、夕方6時には駅前に到着して待機していたはずだ。

さて盆踊りに関してかねがね疑問に思っていたことに、こんなのがある。
『大阪でも、東京音頭を踊るのか?』
私の知る限り、岡山県および熊本県の盆踊り大会では、東京音頭が踊られる。下手をすると、トリがこの曲だったりする。
しかし大阪の場合はどうか?

大阪人の東京への対抗心は、世界が狭くなったと言われる今日においてもなお、根強く残っている。
東京出身の私が大阪の会社に入社した後、何回「東京のうどんの汁って、墨汁みたいやもんな」と言われたことか(東京在住の人間なら知っていようが、現在の東京のうどんはそれほど関西のと変わらない。と言うか、関東人はうどんにそれほどコダワリがないので、そんなことを言われても東京の典型的うどんを思い出せない。ちなみに汁が墨汁みたいなんは伊勢うどんである )。
また何回「もんじゃって、何やあれ? げろみたいやん。」と言われたことか。(これも東京在住の人間なら分かろうが、東京の人間は、もんじゃにそれほどコダワリを持っていない。 私も大阪で指弾されるまでもんじゃが東京発祥の食べ物だとは知らなかったくらいだ)。

話がそれたが、このように東京を何かと対抗意識を持つ大阪人たちが「と〜ぉきょ〜♪と〜ぉきょう♪だ〜いと〜ぉきょ〜♪」なんてのんきな東京賛歌を受け入れるはずはないのだ。 この点、「いい曲だからね。歌詞は言われてみれば東京だけど」と素朴に受け入れる他県と事情が全く異なる。
しかし希望がないわけでもない。 東西の壁はとうに崩壊しインターネットが先進国中をつなぐ今日は何でもありのボーダレスの時代に突入しているのだから、もしかしたらそんな大阪人のココロの壁が突然崩壊する可能性もありえなくはない。
大阪人が笑顔で東京音頭を踊れる時代・・・もしかしたらそんな時代の幕開けの歴史的瞬間に立ち会えるかもしれぬ。
こんな不安と期待を胸に秘めつつ、盆踊り会場をウロウロした。

さて、私が会場を訪れた時かかっていた曲は「およげたいやきくん音頭」とでも呼ぶべき曲であった(正式曲名未詳)。もちろん初めて聞いたのだが、内容に関しては以下の某相方との会話を参考にしていただきたい。
(青色が私、赤色が相方の発言である)。

「盆踊りで『およげたいやきくん音頭』を踊ってたよ。 『♪ハンァ〜〜ァ♪っおよげ、およげたいやきく〜〜ん♪』てやつ。 知ってる?」
「何それ。だいたい、もとの『およげたいやきくん』にそんな歌詞ないじゃん」(注:速いうえ理路整然としたツッコミである)
「ああ、たしかに、歌詞の内容は全然違ってて『日本全国のたいやきたちよ、みんな泳ぎましょう!』て感じだったよ」
「日本のたいやきが全部泳いだら大変だよっ!」
「うん」
「ふやけるよっっ!!」
「・・いや、別に一つだけ泳いでもふやけるって」(注:面白くもないツッコミである)
「あ、でも、魚が食べるからだいじょぶか。」
「なんの心配だよ!?」
「あ、でも、魚は魚でも鯉か。だめじゃん。」

これで大体「およげたいやきくん音頭」の内容がつかめていただけたと思う。 ちなみにこの後相方に、たいやき→麩的なもの→鯉のエサと連想したのかと訊ねたところ、にべもなく否定された。 正解は、たいやき→ビスケット的なもの→鯉のエサ、である。
このように、たいやきが泳ぐのはかまわないが、鯉は淡水魚であるため、泳ぐなら海ではなく川で、という結論となった。

そして、その後盆踊りは、阿波踊り(なんでやねん)→ずんどこ節→題名が分からない曲が数曲、と続いた。
途中、振り付けは盆踊りなのに動きがラテン系のおばちゃんを一人発見、皆が半歩動くところをワン跳躍、カラダをひねるのも皆が30°ならおばちゃん半回転ツウィスティング&ウィンクという大活躍ぶりに目を離せなくなったり、ずんどこ節のサビの部分だけ振り付けを覚えようとしたら同じサビでも1番と2番で振りが違ってて盆踊りの奥深さに驚嘆したり、ある曲で盆踊りの輪が回転方向の意思統一に失敗、こちら側は時計回り・反対側は反時計回りして踊りの輪が会場片側に寄ってしまい、ちょっとした派閥争いを目撃した気分になったりしつつ、盆踊りはフィナーレへ。

ラストは河内音頭で締め。 残念。やはり東京音頭を踊るにはまだ時期尚早であったようだ。

もちろん、可能性としては私が会場に訪れる前に東京音頭を消化してしまったこともありうる。
その場合、東京音頭がひどい扱いを受けていなかったことを祈るばかりである。たとえば、「ドラえもん音頭」と「およげたいやきくん音頭」の間という屈辱的な位置に挿入するとか。 いや、ドラえもん音頭ならまだいいが、あられちゃん音頭かも・・ いやあまつさえ、おじゃまじょドレミ音頭なんてことも・・、と心配は尽きない。

それにしても、この盆踊り大会、名が「曽根サマーフェスタ ’202」である。 この「’202」って何なのだろう? ひょっとして第202回? すると 第1回は西暦1801年開催ということになり、そのころは日本はまだ鎖国中しているわけだから、「サマーフェスタ」とは恐ろしく先進的である。 ひょっとして曽根は隠れキリシタンの里だったのかもしれぬ。
でも、昔からそんな異教の地なら、東京音頭くらい受け入れてくれたっていいのに。