あたしは、目の前に聳え立ち不気味な雰囲気を漂わしている洋館に思わず足が竦んだ。
「……はるか…? 」
 ふいに声を掛けられる。
 まだ中にも入ってないというのにビクッとしてしまう。その雰囲気だけでイヤだった。
―ダメ…怖い。
「……なんだ…はるかも苦手なのか?」
 しばし沈黙が流れる。
「…………え?」
 あたしは思わず聞き返した。
 ここに来ようと言い出したからには好きなんだとばっかり思ってしまっていた。
「…え…って、変な顔すんなよ」
 慶介くんがプッとふき出した。あははっ!と声を立てて笑いはじめてる。こんなに彼が笑ってるのを見るのは初めてだった。いつも感情をあんまり表に出さないからいつもとのギャップにドキッとした。「大人びてる」というイメージしかなかったから、こんなに少年らしく笑うイメージが全く湧かなかったからかもしれない。
「はるかが一緒だったら大丈夫かなって思ったんだけどな。」
 またドキリとするようなことを言う。
「……。」
 どう反応して良いのかわからなくて俯くしか出来ない。
「…困ってるのも可愛いな。困らすのが趣味になりそ…」
 勝手に腕が伸びて気が付いたら彼の頬をつねっていた。
「悪趣味!」
 思わず言葉を投げかけていた。
「…っ…いってー…そーか…俺って悪趣味だったのか…」
 すごく真面目な顔して慶介くんが言った。そんな真面目に受け取ることじゃないのに。普通は「悪趣味」だなんて言われたら否定するんじゃないだろうか?変な人だなって思ってなんだか笑いがこみ上げてきた。だんだん可笑しくなってきて声をたてて笑ってしまった。こんなに笑ったのは久しぶりかもしれない。
「…何か変なこと言ったか?」
 あんまりあたしが笑うもんだから、慶介くんが今度は困っていた。それがまた可笑しくて笑いのツボにはまっていく。しばらく笑ってなかったからそのギャップかもしれない。
「普通は否定しない?悪趣味だなんて言われたら…」
 やっと笑いがおさまって、あたしはそう言った。
「そうなのか?そういうもんなのか?」
 心底不思議そうな顔して慶介くんが問う。また笑いそうになってしまった。
「まあ、いいけど。」
 あたしは、コホンとひとつ咳払いして笑いを追いやる。
 不安はいっぱいだったけど、可笑しいことがあったせいで足が竦むほどの怖さはなくなっていた。

 そう思ったのは最初だけだったのかもしれない。

 ふたりともお化け屋敷から出てきたときは、絶叫しすぎて疲れてしまった。
 やっぱり怖いものは怖い…。でも、お化け屋敷が苦手な人と一緒だったせいか今までとは怖さの度合いが違っていた。怖さを共有出来るから、その分怖さが少なくなっていたように思う。

 今まで緊張していたのがウソみたいに慶介くんと話すことにさほど抵抗がなくなっていた。あたしが警戒しすぎてただけかもしれない。一緒に笑ったり出来るなんて全然考えられなかった。そもそも彼はクラス委員で頭も良かったし、あんまり関わり合いにもならなかったから尚更だった。

 

 


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