「はるか!」
夕焼けで真っ赤に染まってしまっていて、
触れてしまったら壊れてしまいそうなくらい脆く見えて。
でも、俺は何故か声をかけずにいられなかったんだ・・・



名前を呼ばれた気がして、少しびくつきながら後ろを振り返った。
周りの人に悟られるのが恐くて、
つい沖くんから逃げるように教室を出てきてしまって・・・
「はるか・・・って呼んでもいい?」
沖くんの言葉が頭から離れない・・・
沖くんの視線が頭から離れない・・・
振り返ってしまったら何もかもが終わってしまう気さえ感じた。

「はるか〜!今帰り?俺も今部活終わって帰るとこなんだ〜。」
振り返って目に入ったのは沖くんじゃなくて、
無邪気な笑顔で走ってくる友哉くんだった。
少しホッとした気持ちになって、肩の力が抜けていく。
・・・榎本友哉くんと偶然の帰り道・・・
いつもだったら、凄く嬉しいことなハズなのに、
さっきの出来事が頭から離れなくて。
いつもだったら、たわいもない会話が楽しいハズなのに、
沖くんの言葉が頭から離れなくて。
あたしは言葉を返すことができなかった。
友哉君と二人で肩を並べて歩いてる。
もし、これを沖くんに見られてたら・・・?
不安なことばかりが頭に浮かんできてしまってる。
「どうした〜?何かあった?なんか元気なくない?」
心配そうに顔をのぞき込まれた。
ドキッとした。
きっと、一瞬ヒドイ顔をしてしまったと思う。
友哉くんに知られちゃいけない。
友哉くんに心配かけちゃいけない。
あたしは、とびきりの笑顔で答えた。
自分の中では、とびきりの笑顔・・・のハズだった。
「ううん。どうもしないよ?」
あたしの言葉に笑顔で返してくれる。
「分かったっ!明日のスポーツ大会嫌なんでしょ?俺もだよぉ。
俺バレーなんだけどさ、どうせちびっこいし、
明日マジ学校行きたくないって。」
そう言って、「ははは」って笑った。
彼の笑顔を見ると何故か元気になれる。
一瞬でも、さっきのコトが頭からなくなってしまっている自分に、
少し驚いてしまうくらいに。

学校から駅までの帰り道。
一人で歩くと15分って凄く長く感じるのに、
なんで友哉くんと一緒だと、こんなに短く感じるんだろ。
電車逆方向だし、ここでお別れ・・・
「あぁ〜、電車行ったばっかじゃん。」
改札前の電光掲示板を見て、少し残念そうな顔して小さく笑った。
「はるか。」
さっきまで無邪気だった笑顔が、 いきなり、あたしに向けられて・・・
「もし、なんか悩み事あったら気軽にメールでもしてよ!
相談にはのれなくても、愚痴とか聞くからさ。」
一瞬、泣きそうになってしまった。
友哉くんに悩んでること気づかれてる・・・?
「ありがとう。」
それだけ言うのが精一杯だった。
「あっ!もうすぐ電車来る!」
そう言って、二人で急いで改札をくぐって。
「じゃあ、また明日!」
別々の階段に向かった。
一人でホームに降りたら、今まであんなに楽しかったのに、
とてつもない寂しさと不安感が襲ってきて。
なんでだろ・・・?



天井を見上げた。
今日のことが頭の中をぐるぐる回って眠れない・・・
早く寝なきゃって思ってベットの中に入ったんだけど、
目を閉じると余計に頭の中に浮かんできてしまう。
「俺さ…、美月のこと好きなんだ。」
沖くんの言葉。
逃げるように帰ってきてしまったけど、
急いで帰ろうとして廊下に出たあたしを追い掛けてきて。
「待ってるから」
確かに、そう聞こえた。
沖くんは、そのあと教室に戻っていってしまったけど、
あたしはどうしたらいいか分からなくて。
帰りに偶然逢った友哉くん。
「もし、なんか悩み事あったら気軽にメールでもしてよ!」
心の中を見透かされてるような気がしてビックリしたけど、
でも、凄く嬉しかったんだ。
友哉くんは優しい。笑顔を見ると元気になれる。
でも、友哉くんはあたしだけじゃなくて、
みんなに優しい・・・
・・・ダメだ眠れない。
次から次へといろいろなことが頭に浮かんできてしまう。
明日・・・沖くんに返事しなきゃ。
はっきり断らないと期待されてしまうかもしれない。
ふと、沖くんの言葉が頭に浮かんできた。
「榎本だろ」
これって・・・?もしかして・・・
あたしは混乱してしまった。
何も考えたくなかった。眠ってしまいたかった。
そして、ウトウトしてきた頃に目覚まし時計の音がなった。


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