彼を傷つけたくない・・・
でも、このままでは曖昧になっちゃう。
2つの気持ちが入り交じって、何て返事したらいいか分からなかった。
でも、やっぱり気持ちに応えることはできないよ・・・
これ以上、あたしが曖昧だったら慶介クンを期待させちゃうかもしれない。
余計に傷つけちゃうかもしれない・・・

はっきり断らなきゃ・・・言わなきゃ・・・

「俺、別にはるかを困らせようって思って、こんなこと言ったんじゃないから。
だから、そんな顔されると悲しくなるよ。はるかには笑ってて欲しいから。」
そう、力無く笑う慶介クンを見てたら、喉まで出てきた言葉が出てこなくて。

そんなこと言われたら、何も言えなくなっちゃうよ。
慶介クンってズルイよ・・・


バスケの試合の最中も全然試合に集中できなくて、
頭の中はゴチャゴチャしてて、頭の中がおかしくなりそうだ。
「はるかちゃん、試合負けちゃったね。」
友達の言葉で我に返った。
でも、今は試合の結果なんてどうでもいい。
むしろ、負けてくれてよかったっていうか考える時間が欲しかった。
一人になりたい。
一人で考えたい・・・



「あ〜!試合負けちゃったよぉ〜。俺ちびっこだし。超役立たねぇ〜。」
「確かに〜!!!バレーに友哉はちっちゃいよな。ははっ。」
なんだとぉ〜!?
友人に怒りを覚えてチョップをくらわそうとした瞬間、
体育館から一人で出ていくはるかが目に入った。
はるか、どこ行くんだ?
「悪い。俺ちょっと教室戻るわ。」
そう言い捨てて、急いで体育館を出てはるかを追い掛けた。
昨日のこともあったし、今朝のこともあったし、なんかほっとけなかったんだ。


途中、購買で林檎紅茶が目に入った。
よし。

はるかは一人で教室にいた。
ずーと下を向いたままで、俺の存在すら気づいてないっぽい。
「あ、はるかじゃん。試合どうだった?」
はるかは驚いて俺を見たけど、また下を向いてしまった。
「あ・・・友哉クンも教室戻ってきたんだ・・・試合は負けちゃったよ。」
あまりにも声が小さくて、一瞬泣いてるのかと思った。
「具合悪いの?」
「ううん、大丈夫。昨日あんまり寝てなくて、眠たいだけだから。」
でも、どう見ても元気そうには見えない。

やっぱり、悩み事は全部一人で抱えこんじゃうんだ。
話を聞いてあげたいけど、俺なんかに絶対話すわけないし、
俺が聞いたところで、余計悪い方にいっちゃうかもしれない。
でも、なんかほっとけないし、力になってあげたい。

「俺達も負けちゃったんだ〜。女子バレーは勝ち続けてるけどさ。
はるかは、紫の応援に行ったりしないの?」
「うん・・・」
会話が続かない。重たい空気が流れている感じがする。
もしかしたら俺がここにいると迷惑なのかもしれない。
自分の無力さに悲しくなってくるよ・・・
「俺、他のヤツの応援行ってくるね。」
さっき購買で買った林檎紅茶を、さりげなくはるかの目の前に置いた。
教室から出ようとした時に、後ろから声が聞こえた気がした。

「ありがと・・・友哉クンってみんなに優しいよね・・・」

結局、俺じゃ力になってあげられなかった・・・



帰りのHRが終わって、あたしは急いで帰ろうとした。
でも、すぐに紫に声をかけられてしまって。
「朝のことだけど、どうだった?」
絶対、聞かれると思った。
慶介クンのコト教室で考えたけど、やっぱり答えはみつからなくて・・・
「あ、うん。友達でって・・・」
言えない。紫には話せない。話したくない。
「そうなんだ。ちゃんと断ったんだね。」
言えなかった。なんか紫には言えなかった・・・

気づいたら、紫の彼氏の中山浩嗣クンが教室にいた。
「あ、浩嗣。HR終わったんだ?」
二人を見てたら、なんだか羨ましくなる。
でも、今は見ていたくない・・・



家に着いたら、紫からメールが来てた。
『帰りゴメンね。明日また話教えてね!』
自分の中ではっきりしてないのに、紫には話せないよ・・・
話すのが恐い。
友哉クンが好きなことを紫には言えない・・・
紫みたいなオープンな性格に憧れる。
あたしは、甘いのかもしれない。
みんなの好意に甘えてるだけなのかもしれない。
紫がうらやましいよ・・・

『あたし、ゆかりんみたいにはなれない』

そう、一言メールを送って携帯の電源を切った。



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