
数日前の朝。いつものように紋すけを会社に送り届け、帰り道に、いつものようにローソンで
おにぎりを購入するために、いつもの場所に車を止める。その日はいつにもまして寒かったの
で、エンジンをかけたまま車の中でしばしヒーターにあたる。大分体も温まったので、外に出て
鍵をかけてドアを閉める。エンジンをかけたまま…。いつもと違う朝が始まった。
車内を覗く。携帯電話も無事、車内にあった。家に電話すらかけられない。とりあえず、ロー
ソンまで行き公衆電話から父さんに電話をしよう。
公衆電話から家に電話で、救助要請をしたのであとは待つのみ。と、電話から離れようとす
ると、電話の上に二冊の手帳(うち一冊は敬老手帳なるもの)があった。誰かがここに忘れて
行ったらしい。電話をかけるとき、ぽんっと上にのせてそのまま忘れていったのだろう。絶対に
警察に届けなければ。
そう思ったのはつい数週間前、数ヶ月ぶりに財布を無くし、半ば諦めていたら、奇跡的に財
布が警察に届けられていた。いい人はいるものだ。早速警察に引き取りに行き、ホクホク顔で
いたら、その日のうちに携帯電話を無くすという大偉業をやってのけた。(電話も後に見つ
かり同じ警察署に届けられる)
そのとき、財布を拾ってくれた人が伊藤さんという方だった(落としたのも伊藤さんという方だという話もあ
る)。そして今日拾った手帳の持ち主も伊藤さんだった。きっと、これも何かの縁だ。一刻も早く
警察に届けよう。
待ってる間、腹が減ったのでいつものようにおにぎり二つとお茶を買い、いつもなら車の中で
食べるのだが、今日はローソンの前で食べる。いつにもまして寒い朝に。なぜ、暖かいものを
選択しないのかが我ながら不思議だ。
そうこうしてるうちに父さんが助けに来てくれた。車なら5分でつく距離を、実に一時間もかけ
て来てくれるありがたい親だ。
いつものように富士屋の掃除をして、すぐさま警察へ。手続きを済ませて家に戻る。いい事を
した日はなんて気持ちがいいのだろう。すぐに伊藤さんからお礼の電話が。なにやらすごい大
切なもので、是非お礼がしたいので住所を教えて欲しいと言われたが、自分の中では恩返しみ
たいなものなので、辞退しておいた。そのとき伊藤さんが
「そうですか、残念です。でも本当によかった、電話にぽんっと置いたのをすぐに思い出し
てとりに戻ったんですけど、すでに無くて…。えぇ、あっというまでした。」
そのまま置いといた方が親切だったかも…。


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