COLUMN   "もの思ひ"とは…

「物思い」って日常的にまぁまぁ使われる言葉デスね。
でもその言葉を、私が「えぇなぁ…」と思うようになったのは、つい最近。
"Symbolic attitude and reverie: problems of symbolization in childnen and adlescents"
とゆう論文を読んでから。(おぉ、何か賢そう、あたし!)

その論文は、私が、施設でplay therapyをしていた男の子との
2年間の過程を振り返る中で参考にしたんだけど、
その中で、reverieって言葉が出てきたのです。
それは一応日本語では「物思い」って訳されてる。
通常の用途では、「物思い」っていうのは、↓こんな意味。
新明解国語辞典より
  物思い…「心配したりして、普通は考えないことまでも、いろいろ考えること」
でもって、英語のreverieはもうちょっと違う感じで↓こんな意味。
研究社 リーダース英和辞典より
  reverie…瞑想にふけること、沈思、空想、幻想、夢想、白昼夢 (古)妄想

最初に日本語に訳した人が、
このまま和訳するとちょっと違うニュアンスになるかもしれない、と思って
ちょっと気を効かしたんだと思う。

だって、例えば「沈思」っていったら、→「深く考え込むこと」になる。
それがどうしてちょっと違うかという説明をするには、reverieが
上の論文でどんな風に使われていたかを書かなきゃならない。

この言葉は、精神分析家のBionっていう人が言い出した。
Bionが言っているのは、reverieっていうのは、
お母さんが、泣いてる赤ちゃんをあやしながら、
「この子どうしたのかなー。どこか痛いのかなぁ、おなかすいてるんかなぁ」
って色々と、その子がどんな苦痛を感じてるのか、考えながら
「よしよし、大丈夫だよ〜」ってあやしてあげてる時の心もようのこと。
そんな風にして色々考えて対応してあげることで、
その赤ちゃんの苦痛や不安はなくなって、赤ちゃんは快適になる。
例えばお乳をやったり、あやしてあげたり。

そしたら赤ちゃんは、どう体験するかというと、
自分の苦痛をお母さんの中に追いやることができた!
という体験になるという。
お母さんっていうのは、あんなイヤなものを全部受け止めてくれるんだなー、
お母さんに追いやれば自分は快適なんだなー、という体験。
そういうのがなければ、赤ちゃんはきっと、何がなんだかわけのわからない苦痛に
脅かされたまま生きていかなきゃならなくなるんだろう。
そういうやりとりの繰り返しを積み重ねるうちに
赤ちゃんは、「自分の中にあるこんなイヤな感じは、"んま、んま"っていう言葉で
表わせばいいんだ〜」
として、一つの体験として自分の思考の中に組み込むことができるようになる。
それは、成長していくうちに「おなかすいたよ〜」というもっと抽象的な表現へと
移り変わってゆく。

つまり、お母さんのreverieは、赤ちゃんが自分の感覚体験を
現実とすりあわせてゆくための、とってもとっても大事な機能なんだな。

そういう機能を、セラピストが担うことで、セラピーを受ける側の不安が
取り除かれて、象徴機能とか、新たな機能が発達してくる、云々…というのが
さっきから言ってる論文の趣旨なんだけど、
それは今はやめとこう。

ともかく、「もの思ひ」には、
そんな
深いふか〜い、私の思いがこめられていたのであります。
私の物思いは、このサイトを見てくれる人にどんな影響を与えるやろか…
なんちって。
ちなみに、「い」を「ひ」にしたのは、
なんとなく、その方がさらに、「ほわ〜ん」とぼんやり物思う感じが
でるかなぁ って思ったからだけどね。

どうですか?
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