妹以上恋人未満
第一話「ある朝、突然の重大発表」
あの亜弥ちゃん、松浦亜弥ちゃんが、美貴の義理の妹になるって?
そんな、急に言われてもさ、美貴だって心の準備ってもんがあるんだから。
それに、亜弥ちゃんと会うのって超、久しぶりなんだよ?
その辺、オヤジ分かってんのかなぁ?
それに、亜弥ちゃんって幼なじみだったんだけど、いつの間にオヤジのヤツ…。
亜弥ちゃんは小さい頃、美貴の家の隣りに住んでて、毎日良く遊んでた。
二人とも活発で、亜弥ちゃんも木に登ったり、かなりのお転婆娘だったことをよく覚えてる。
でも、小学校に入学する前に、亜弥ちゃんのお父さんの転勤で姫路の方に引っ越してしまい、
それ以来、疎遠になってた。
これから話す事は、全てオヤジから聞いた話。美貴自身ビックリだったんだけど、
亜弥ちゃんちのお父さんが事故で亡くなってから、亜弥ちゃんとお母さんは、こちらに戻って来て、
偶然に仕事先でうちのオヤジと再会したらしい。そして、何度か一緒に食事をしたりしているうちに、
親しくなり、交際する事2年!結婚すると言う話を聞いたのは、昨日の事。
オヤジが誰かと付き合ってる事は知ってたけど、まさか、それが亜弥ちゃんのお母さんだったとは!!
「なんで、そういう大事な事、今まで黙ってたんだよ!」
「ごめんな、美貴。なかなか言い出せなくてな」
拝むように手を合わせて謝るオヤジを見てたら、なんだか美貴も怒る気が失せてきた。
まぁ、別にめでたい話だし、美貴も怒る事ないんだけど、せめてもう少し早く教えて欲しかったわけで。
そして、急ついでに、明日は四人揃って食事会。だと言う。
「オヤジ、今度から大事な事は、美貴に真っ先に言ってよね!」
「わかったわかったよ」
オヤジの「わかった」は、美貴も信用してないんだけどね実際。
それは、ともかく久しぶりに亜弥ちゃんに会える!
それはそれで、凄く楽しみでもあり、不安でもある。
亜弥ちゃん、小さい頃二人で誓ったあの約束。覚えてるよね?
ドキドキしながら、美貴は来たる明日に備えて早めに布団に入った。
第二話「再会!」
「亜弥ちゃん、ひさしぶり!」
そう言おうとしていた言葉を美貴は一瞬にして呑み込んだ。
だって、亜弥ちゃん、美貴と同じ制服を着ていたから…。
それに、亜弥ちゃんに突っ込まれてしまった。
「美貴たん、全然ひさしぶりじゃないよ?」
「え?」
美貴は頭ん中がパニックになる。
「だって、私は美貴たんの事、ずっと見てたもん」
あの頃と変わらない笑顔で話す亜弥ちゃん。
や、あの頃よりも一段と可愛くなってるよ?亜弥ちゃん。
それに、ずっと見てたなんて…。ヤダ、美貴カン違いしていい?
食事会とは名ばかりで、ファミレスで食事して、早々に解散。
だから、今、美貴は亜弥ちゃんと二人っきりでファミレスに居残り中。
「亜弥ちゃん…。今度から美貴と同じ学校―――じゃないの?」
狐に包まれた様子で、美貴はキョトンと亜弥ちゃんの事を見つめていた。
「ヤダなぁ美貴たん。興味のない事には、ホント疎いのは昔から変わってないんだね」
「えー?」
「私、中等部から編入して来てるんだよ?」
「マジデカ!?」
殊更声が大きくなり、周囲のお客さんの目が美貴に集中してしまった。
うちの学校は共学ながら、中等部・高等部とあって、エスカレーター式であがれる。
共学と言っても、男子よりも女子の方が多いんだけど。
「美貴たん、相変わらず声も大きいんだねぇ…」
いちいち亜弥ちゃんは懐かしい様子でニコニコ笑っている。
そんなことよりも、説明プリーズ!
「美貴たんのお友達に石川梨華先輩っているでしょ?私、石川先輩と同じテニス部だよ」
「梨華ちゃん、何も言ってなかったよ?」
もちろん、梨華ちゃんが悪い訳ではない。だって、梨華ちゃんは美貴と亜弥ちゃんが
実は知り合いだった事なんて知らないのだから。でも、なんで話に出て来なかったのか不思議だ。
でも、亜弥ちゃんも人が悪い。美貴が、梨華ちゃんと友達だって事まで知ってるのに、今まで
何も言ってこなかったなんて!
自分が気づかなかった事が一番悪いのに、そんな事は棚に上げて美貴は憤慨していた。
「そんな事よりさ…」
いつの間にか亜弥ちゃんが向かいの席から美貴の真横に移動してきた。
「美貴たんと毎日一緒に居れるなんて、幸せだなぁ。ねぇ?」
「う、うん。そうだね」
幸せって言うか、亜弥ちゃん、美貴の妹になるんだよね。
全然実感わかないんだけど。
第三話「彼女はアイドル!?」
正式には、まだ亜弥ちゃんは美貴の家には越して来ない。
徐々に荷物を運んで来るらしい。亜弥ちゃんのお母さんも仕事に忙しいらしく殆ど家には居ない人だった。
更に学校に行って、美貴は衝撃的な事実を知る。
「美貴ちゃん、松浦亜弥を知らなかったの!?」
なんて、親友の石川梨華ちゃんに甲高い声で(元々アニメ声だけど)言われては、美貴は相当校内で
鈍い人種みたいだ。ま、実際鈍いし疎いんだけど。
梨華ちゃんは、中等部から、何故かずっと同じクラスで誕生日も約一月くらいしか違わない。
性格も全く反対なんだけど、結構それが逆に合ったりして、いつの間にか親友と呼べる仲までになっていた。
腐れ縁ってヤツですか?美貴よりも、とっても女の子してるんだけど彼氏はいまだにいないから、
良く合コンに美貴も無理矢理かり出されたりしてる。
「だって、梨華ちゃんだって教えてくれなかったじゃんか」
美貴もここぞとばかりに口を尖らせて文句を言う。
「亜弥ちゃんを知らない人なんていたんだ」
呆れた顔で美貴を見る梨華ちゃんが、ちょっと憎たらしい。
「それどういう意味?」
なんでも、亜弥ちゃんは、この学校内でのトップアイドルな存在だと言う。
更に、ファンクラブまで存在すると言うのだから驚いた。
「そんなに凄いんだ…」
まぁ、あのルックスからすれば、普通にアイドルとして通用するし納得もするけど。
あらら、なんだか凄い人の知り合いみたいだよ、美貴ってば。
「で、亜弥ちゃんの事、どうして知ったの?」
梨華ちゃんが不思議そうに聞いてくる。
まぁ、それはそうだろう。亜弥ちゃんの事知らないのに、聞いてくるからには何かあると思うのが普通。
「え?ま、まぁ色々と事情がありまして…」
美貴の声が極端に小さくなる。
亜弥ちゃんが他校ならともかく、同じ学校で、しかもアイドルなんて聞いたからには、迂闊に、
話せる内容ではなかった。クラスの男子から、敵意の目で見られるのも必須だろう。
別にその事自体は構わないんだけど。
「それは、あとで話すよ。梨華ちゃんありがと!」
美貴は愛想笑いをして、梨華ちゃんの肩をポンと叩くと席を立った。
「美貴ちゃん、これから授業だよ?」
美貴を見上げる梨華ちゃんに、美貴は一言。
「さぼりまっす」
そう言って、教室を出て行った。
第四話「屋上で…」
自慢じゃないけど美貴の成績は中の下。授業態度も、この通り、あまり良くはない。
つまらない授業の時とか、考えたい時や、寝たい時は、勝手に授業をエスケープする。
特に今日みたいに、天気の良い日は、教室にいるなんて勿体ないじゃん。
勿論、それは美貴の勝手な持論なんだけどさ。
屋上にあがり、校庭を見下ろす。
丁度、体育の授業が始まったようで、準備体操をしてる様子。
美貴は、フェンスを掴みながら、ぼんやりと見つめていたんだけど…。
なにやら一人、美貴を見つけて、手を振ってる女の子がいる。
「ん?」
美貴は、その女の子を凝視する…。
「――――たぁ〜ん!」
微かに聞こえる声。それは、紛れもなく、亜弥ちゃんなわけで―――。
一人固まる美貴に、亜弥ちゃんのクラス全員の目が一斉に美貴に向けられた。
「たん…じゃないよ、まったくぅ…」
結局美貴は、その後、すぐに担任の保田に怒られるオマケ付きだった。
川 v )ノつづく 从‘ 。‘)ノ もどる