そこには巨大な顔があった。巨大すぎて顔だけですら全体が見渡せない。

「ロボット?」

「厳密に言うと、ロボットではないわ。現在、核に次いで人類の作り出すことのできる最強の局地決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオンよ。この初号機は実戦投入を見越したテストタイプ、運用試験型と呼ばれているの。」

「…これも、父の仕事ですか?」

カヲルは複雑な気持ちになる。父は自分を捨てた、そして『これ』をとった。いや、とられたのだ。いかにこれが人類にとって重要であっても、父に捨てられたという気持ちは変わらない。

「ひさしぶりだな。」

不意に頭上から声が聞こえる。聞きなれているようで、聞きなれていない声が。

「父さん!」

天井近くの窓のようになっている部分に、カヲルの実の父親にして特務機関ネルフ総司令官、碇ゲンドウがいた。

実の父親なのになぜ別姓なのかといえば、ひとえにこの国の法律にあった。カヲルは十年以上他人の家に預けられていた。この国の民法によると「法律上の父母のどちらか以外のものが五年以上保護者を務める場合、被保護者は原則として現在の保護者の姓を名乗ることとする。」となっている。

これはセカンドインパクト後の孤児問題を解決するための措置だったが、今となっては時代遅れな法律だ。ともかくこの法律のおかげでカヲルは預けられた先の姓である渚を名乗ることとなった。

「カヲル、私が今から言うことをよく聞け。」

間髪いれずにゲンドウは冷たい口調で言う。

「これにはお前が乗るのだ。そして『使徒』と戦うのだ。」

「な……。」

カヲルは声も出なかった。




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