「待って下さい、司令!」
たまらずミサトが声を上げる。
「レイでさえシンクロに7ヶ月かかったんですよ。今日来たばかりのこの子にできるとは思えません!」
ごもっとも。操縦が難しいからこそ、最大の敵が迫っているというのに国連軍に主導権を握られざるを得なかったのだ。
「座っていればいい、それ以上は望まん。」
「でもっ!」
メチャクチャだ。座っているだけでいいなどとは。
「葛城一尉!今は使徒撃退が最優先事項よ。そのためには誰であれエヴァとシンクロの可能性のある人間を乗せるしか方法はないの。それ以外にいい方法があるの?」
「………。」
ミサトはそれ以上何もいえなかった。
「さ、カヲル君こっちへ来て。」
リツコはカヲルにエヴァに乗るように進める。しかし…。
「僕が?僕がこれに乗って戦えだって?あの怪物と?ははっ、ジョーダンだろ?そんなことできるワケないだろ!」
当然だ。いきなり呼びつけておいて、そりゃなかろう。
「説明を受けろ、お前が適任だ。いや、お前以外の人間には無理なのだ。」
「……父さんも、ずいぶんと迷惑なもの作ってくれたね。なぜ僕なの?ワケがわからない。自分のつくったものくらい、自分で操縦しろよ!」
カヲルも必死だ。無理もない、一歩間違えば死にかねない問題だ。
「その問いには後で答える。時間が無いんだ、早くしろ!」
「いやだ!父さんは僕を殺すためにここに呼んだのか?10年間ほったらかしといて虫が良すぎるじゃないか!!」
カヲルは精一杯の声を張り上げてみるのだが、ゲンドウはまったく動じない。
「これはお前に『やって下さい』とお願いしているわけではない。『やれ』と命令しているのだ。」
「いやだ!なんと言われようとやる気はない!」
カヲルはゲンドウをにらみつける。十年間の憎しみを込めて。
「そうか、ならばお前など必要ない。二度と会うこともあるまい、帰れ。そして忘れろ。ここで見たものすべてを。」
カヲルの顔色が変わる。今まで父は自分をほったらかしにした。しかし明らかな拒絶の言葉を言われたのはこれが初めてだった。
「冬月、レイを起こせ。」
ゲンドウは何事もなかったように無線で冬月に指示を飛ばす。しかしレイとは?
「使えるのかね?」
どうやらレイというのもエヴァのパイロットの1人らしい。しかしなにやら事情があってそれができないようだ。
「死んでいるわけではない、こっちへまわせ。」
しばらくして移動ベッドに乗った少女が運ばれてきた。体中に包帯。そして戦闘服のようなものを身に着けている。
「システムをレイに書き換えて!起動準備!」
「くっ…!」
カヲルはその場にひざをつく。もう誰もシンジを見ていない。たった一人、葛城ミサトを除いては。
(こんな子が、パイロットをしてるなんて……。)
カヲルはレイと呼ばれたパイロットのあまりの姿に思わずそう思った。
「レイ、予備が使えなくなった。」
「はい。」
「はい」とは言っているものの、激痛をこらえているのは誰が見ても明らかだ。
(ズズン…ズズン…)
地響きがする。おそらく使途だろう。
「ヤツめ、ここに気付いたか。」
ゲンドウの読み通り、使徒は外輪山を突破し、次第に第三新東京市、強いて言えばネルフ本部に迫っていた。
つづく――
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