使途が目と思われる部分から光線を放つ。着弾あとには瓦礫の山。その衝撃は地下深くのジオフロントまで伝わってくる。
「天井都市が、崩れ始めた!」
ついに第三新東京市が使徒の攻撃に耐えられなくなり、ジオフロント内に落下する。ピラミッド型の本部にあたらないのは奇跡だ。
「蛍光灯が!」
天井に増設してある仮設蛍光灯がはずれ、レイのベッドめがけて落下してきた。
「危ない!」
思わずカヲルがかけよる。蛍光灯は間一髪で外れたものの、その衝撃でレイはベッドから投げ出される。苦痛に顔をゆがませるレイ。
(こんな子が、乗るなんて……。)
カヲルの心はゆれた。自分がやらなければ、この傷を負った少女を乗せることになる。
「カヲル君、私達はあなたを必要としているわ。でもエヴァに乗らなければ、あなたはここでは用のない人間になるのよ。わかる?」
「…………。」
カヲルの顔に汗が浮かぶ。追い打ちをかけるようなミサトさんの言葉。カヲルも頭では理解している。しかし今は恐怖心のほうが勝っていた。
「あなただって、お父さんとの再会を喜び合うためにここに来たんじゃないってことは分かってたんでしょ?何のためにここに来たの?お父さんにあそこまで言われてのこのこ帰るつもり?自分を情けないと思わないの?」
「………っ。」
「もういい、放っておけ、葛城一尉。」
ミサトの言葉にも、カヲルは何も答えない。ゲンドウにいたっては乗せること自体をあきらめたようだ。
「カヲル、帰るのならぐずぐずするな。さっさといけ!」
ついにゲンドウが声を荒げる。
「――――分かったよ、父さん。乗ればいいんでしょ?乗ってやるよ。」
少々投げやり気味だったが、カヲルははっきりとそういった。
「よく言ったわ、カヲル君。こっちよ、簡単にシステムを説明するわ。」
黙ってリツコの後にしたがうカヲル。『乗る』とはいったものの、やはり気持ちの整理はついていない。
「………フッ。」
ゲンドウは、ただただ不敵な笑みを浮かべるだけだった。
(僕を必要としなかった父さんが造ったロボット。そいつが僕を必要としてるって?
おもしろい、やってやろうじゃないか。死ぬのなんか怖くない。父さんに臆病者なんて言わせない!)
カヲルは決断した。父を見返す、その一点のみで、自分を納得させて。
『機体冷却完了、冷却液排水開始。』
『パイロット、エントリープラグ内インテリア定位置につきました。』
『了解、プラグ固定開始。』
エントリープラグといわれる、コックピット兼脱出ポットにカヲルは入った。そのままクレーンで移動し、人間の脊髄にあたる部分からそれを挿入する。
『プラグ固定終了。第一次接続開始。LCL注水』
「! 何だこれ!?」
カヲルは慌てる。いきなりコックピットに水が入ってきたのだ。水位はどんどん上がっていく。
「うっ…うわっ!」
LCLが口まで達する。カヲルはパニック寸前だ。
「心配しないで、肺がLCLで満たされれば直接酸素を取り込んでくれるから。」
リツコがフォローを入れるが、カヲルは相変わらずパニくったまま。
(くそ、これじゃあ、戦う前に溺れる…。)
『主電源接続。動力伝達問題なし。起動スタート。』
今まで暗かったエントリープラグ内に、電気がともる。変な文字も同時に表示される。
「………。」
カヲルは呆けた顔をしている。なにが起こったか分からない。
「すごい…。」
リツコが感嘆の声を上げる。
「シンクロ誤差が0.3パーセント、いけるわ。」
それは技術課からの作戦ゴーサインと同義だ。
「エヴァンゲリオン初号機、発進準備!」
ミサトの号令と同時に、エヴァ初号機は発進準備に入る。
使徒はもうそこまで迫っている。もはや一刻の猶予もなかった。
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