頭をつかんでいる使徒の腕を、初号機が握り締める。しかし頭には依然、槍が刺さったまま。
「信じられない…、フィードバックが3000を超えているのに…。並の人間なら、気を失うレベルよ!」
リツコが愕然として言う。しかし初号機は、まるで痛みなど感じないかのように動き続けていた。
「本当に、カヲル君なの?」
ミサトも呆然として言う。どこの世界に、頭に槍が刺さったのと同じだけの痛みを感じた状態で動ける生き物がいるだろう。
「パイロット、依然モニターしています。中枢神経にも、目立った異常は見当たりません。」
動かしているのは、間違いなくカヲルだった。カヲルの顔には一切の表情がない。ただ、目は血走り、時々笑みにも似たゆがみが口元に走る。
(ギギギギギ……。)
使徒にされたように、つかんだ両手に力を込める初号機。
(ぼきっ!)
鈍い音と共にへし折れる使徒の左腕。ふっ、と槍が消えた。
「グオオオオオオオ!!」
雄叫びと共に、腕をつかんだまま、使徒の顔面に蹴りを入れる初号機。左腕がちぎれ、兵装ビルに激突する使徒。優劣は逆転した。
「―殺す。」
カヲルは、またぼそっとつぶやいた。
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「シンクロ率、再び上昇。52を突破!」
「マギの予想では、あと5分27秒で70を突破します!」
そのころ、発令所はてんやわんやの大騒ぎだった。シンクロ率が初戦で50を突破するなど、理論上ありえないことだ。
「レギュレーターを30番まで開放。少しでもいいから上げ幅を小さくして!」
「ダメです!効果ありません!」
いつもは冷静なリツコも、今回は慌てている。
「シンクロ率が70を超えたら、技術一課としては、パイロットの安全は保障できないわ。」
「止める方法は、ないの?」
ミサトの顔が青くなる。カヲルだけが頼りの今、カヲルの身に何かあっては大変なことになる。
「カヲル君!聞こえる!?落ち着いて、冷静になって!」
「………………。」
ミサトの呼びかけにも、カヲルは答えない。
「シンクロ率、60を突破!それに伴い、ヘフリックが著しく低下!パイロットが危険です!」
「あれが、起こるのね…。」
「何が、起こるの?」
リツコの意味深な言葉。どうやら、かなりまずい事になるようだ。
「形容する言葉を、失うわ。たぶん。」
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