激走!文化祭 10
//青海詩織//
「…ッ」
階段から飛び降りた瞬間、右足首に負荷がかかった。一瞬よろめいた身体を左足で立て
直し、走り続ける。
右足を踏み出すたびに走る痛みはだんだん酷くなっている。
さっきまではなんともなかったのに、息もあがってしまっていて、かなりまずい状況だった。
速度も明らかに落ちている。背後からは五六人の教師の集団が執拗に追いかけてきている。
すれ違いざまに、見知らぬ男の子が声をかけてくれた。
「あと十分、がんばれ!!」
……十分もあるの!?
一瞬頭に浮かんだ「絶望」の二文字を振り払って、脚に力を入れた。
残り、たったの十分なんだ。
それだけ逃げ切れば、勝てる。
そう言い聞かせて、迫り来る足音にせきたてられるように走った。
廊下の端までもう少し。
階段を上がろうか、下りようか。
悩んだのは一瞬だった。
廊下を九十度に近いカーブで曲がり、痛む足をこらえて階段を駆け上がろうとした。
疲れているのは教師たちも一緒。しかも、向こうの方が普段の運動不足や年齢があいまって疲労度は上だ。ここへきて階段を駆け上るなんてマネができるものはいないだろう、そう判断してのことだった。
案の定、階段を駆け上がる少女の姿に教師たちのあいだから不満の一言では片付けられないさまざまな声があがった。
教師たちを振り切って、上の階に飛び込む。
そして廊下の状況を見たとたん、思い切り顔をしかめてしまった。
教師たちが、そこにいた。
うろうろと、廊下を歩き回っているのはおよそ六人。
しかも、さっきまでとは違ってみな若い。
…勘弁してよー。
泣きそうになりながら踵を返したときだった。
「いたぞ!!」
大声が聞こえて、直後どかどかとこちらへかけてくる足音が聞こえてきた。
目の前には階段がある。
下からは、階段を上がってくる教師たちの声と足音が。
考える暇すらなかった。
脚の痛みも、今はどうでもいい。いや良くないけど、気にしてられない。
軽く唇を噛み、腹を決めて階段に足をかけ、二段飛ばしで駆け上がった。
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