激走!文化祭 11
//渡会直哉//
隠れていた教室の前を、影が走り去った。その後に続いてどやどやと数人の影が走り去る。
今の、まさか青海か?
あの髪の長さからして、多分青海に間違いない。
だけど。
今、走り方が変じゃなかったか。
足を引きずっていた。
見間違いじゃない。
「…あのバカ!」
隠れていた教室を飛び出す。教師たちが階段のほうへと消えていく姿が見えた。
青海は、階段を上るだろうか、下りるだろうか。
―――多分、上るだろう。下に下りることはないんじゃないだろうか。
なんとなく、そう思い、反対側の階段を目指した。
廊下側の窓から校庭の様子が見える。なにやら騒がしいが、気にしている余裕はない。多分住吉あたりがなにかやらかしてるんだろう。もしかしたら軽音のやつらかもしれないが。
いやいや、今はそれよりも青海だ。
別にあいつのことが心配だからじゃなくって、あいつがつかまったらみんなの苦労も生徒の協力も全て水の泡だ。だから、こうして俺が心配しているんだ。
なんでそんな言い訳をぐちぐちしているのか自分でも良くわからないが、とにかく廊下を爆走して階段を駆け上がる。奇跡的に教師にはかち合わない。
マントがばさばさして邪魔だ。
だけど、これは目印代わりにとつけているもの。
これを見て、青海に群がる教師の数が少しでも減ればいいと、そう思ってつけたままにしていた。
ここまで来たらもう用はないかもしれないけれど、それでも外している暇なんかない。
三階の廊下に飛び込むと、教師たちが大声でわめきたてながら廊下の向こうに走っていくのが見えた。
見つかったんだ。
「くそっ」
逃げ切れよ。
俺が行くまで、がんばれよ。
もう一度階段に引き返し、再び駆け上がる。あいつが下の階に下りることはないだろう、との判断だ。それは正解だったようで、向かいの校舎とをつなぐ渡り廊下を走る青海の姿が見えた。
やっぱり、脚を引きずっている。
しかも一昨日の体育祭のときより断然酷くなっている。
なんで、ああ無茶をするんだよ。
無性に悔しくて、向かいの棟に消えた教師たちの後を追って渡り廊下を走り抜ける。
この先にあるのは…もしかして、屋上か?
あいつ、あそこに行くつもりか?
間違いない。
教師たちが団子になって階段を上っていくのが見えた。
「…アホか、あいつ」
あんな足で、上に上がってどうすんだよ。
ていうか、行き止まりだろうが!
チラリと腕の時計を見る。
あと、五分をきっている。
いくらあと少しだからって、それまでにつかまったらおしまいだろうが!!
ああ、もう!
向かいの棟に入り、駆け寄った窓から身を乗り出して上を見上げる。
まだ、青海の姿は見えない。
「あんのバカたれが」
どうするつもりだよおい。
ためらったのは一瞬だった。
上へと続く階段を見上げ、それに足をかける。
二階分上れば屋上。一階分なら。
軽く息を吸い、二段飛ばしで駆け上がった。
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