激走!文化祭 14
//青海詩織//
ドアをあけたとたん飛び込んできたのは一面の青と、そして大歓声だった。
数をカウントする大きな声が聞こえる。まるで全校生徒が声を合わせているかのような大きさだ。
息をつく暇もなく、背後から怒鳴り声が聞こえた。
「青海!!」
逃げ場はない。
それでも、狭い屋上を少しでも教師の手から逃げるように走る。
屋上の突き当りまで行って、伸びてくる教師の手をかいくぐりながら右手へ移動する。
校庭に群がる群衆がチラリと目の端をよぎった。ステージを取り囲むようにして集まっている黒い影。
大合唱が、心臓の音と混ざる。
耳元で脈のようにうねる音。
反対側の柵にぶつかり、それを背にして、こちらへ勝ち誇ったような顔で近づいてくる教師たちを睨みつけた。
どの顔にも浮かんでいるのは勝利を確信した表情。
逃げ場はない。
聞こえてくるカウントは10を切った。
「…青海、ここまでだ――」
「青海!!」
突然背後から飛んできた声。聞き覚えのあるそれに、反射的に振り返る。
一階下の、四階の屋上に、渡会がいた。
黒い瞳が、真っ直ぐにあたしを見つめて。
教師たちが動く気配がして、背後を振り向こうとしたそのとき、渡会が叫んだ。
「こい!!」
ためらいはなかった。
大きく広げられたその腕を見たとたん、柵を握り締めていた手が勝手に動いていた。
「青海!!」
背を打った教師の声が虚しく宙を漂う。
一瞬の浮遊感の後、全身に衝撃がきた。だけど激しい痛みはなく、それよりももっと暖かなものが身体を包んでいた。
「あ…つぁ〜〜」
耳元で聞こえた低い声。
慌てて身を起こすと、間近に渡会の顔があった。
真っ直ぐな黒い瞳とまともに見詰め合ってしまい、訳もなく慌てる。
「あ…っと、その」
「…へーき?」
「え?」
「だから、どこも痛くないかって訊いてんの」
…あッ!
ようやく今の自分たちの状況に思い至って慌てて渡会の上から飛び退いた。瞬間、背中に回っていた渡会の手がぐ、と力強く腕をつかむ。
え?
バランスを崩してまだ倒れている渡会の隣にぺたんと座りこんでしまった。
刹那。
割れるような大歓声――まさしく、そんな表現がぴったりするような歓声が校庭で爆発した。
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