激走!文化祭 15
//住吉数実//
「…3!」
「…2!」
「…1!」
カウントとともに、ほぼ全員のこぶしが突き出された。
「…0!!」
爆発的な歓声が上がる。
だけど、俺たちには喜ぶことができなかった。
詩織は。
詩織はどうなったんだ。
周囲に視線を投げるが、詩織たちの姿は見えない。
「…詩織!!」
叫んだとき。
「あっ!」
向井が小さく叫んだ。小さな声は、しかし歓声にかき消されることなく俺の耳に届く。
向井が真っ直ぐに校舎を指差していた。
いや、正確には校舎の上。
屋上を。
森本の視線が屋上に向けられた。自然と、他の仲間たちも屋上を見上げる。
息を止めて見つめる俺たちの視線の先で、小さな影が動いた。
二人。
長い髪が風にあおられているのが見えた。
「詩織」
知らず声がこぼれた。
見つめる先で、詩織と渡会は大きく手を広げた。それがガッツポーズに変わるのに、そう時間はかからなかった。
「―――っしゃあぁ!!」
野島がこぶしを握り締めて絶叫した。その隣では七尾が満面の、心からの笑顔で何度も何度もこぶしを握り締めている。そして、きゃーきゃー言いながら抱き合って飛び跳ねているのは舟木と西岡。
「…ふ――――…」
森本が長い息を吐き出すのが見えた。それを見て、俺も肩の力を抜く。
とたん、かくん、と膝から力が抜けた。
「…あ?」
膝が震えて立っていられず、そのままぺたんと座り込む。
一気に力が抜けた。
目の前には飛び上がって喜んでいる全校生徒。その姿を見て、長い溜息をついた。
「……終わった…」
心の底からこぼれた言葉だった。
「…終わったな」
傾いたメガネはそのままに、間抜けな姿で森本が笑った。いつもはびしっと着こなしている学ランもよれよれ。
だけど、俺も森本とそう変わらない姿だ。
二人して顔を見合わせる。どちらともなく笑い出した。
「…森本、すごい格好だな」
「住吉こそ。男ぶりが上がったんじゃないか?」
「それはむしろ七尾だな」
見やると、七尾は普段の笑顔なんかよりも断然良い顔で笑っていた。多分、あれがあいつの心からの笑顔なんだろう。
トン、と肩に手が置かれた。見上げると、向井がやわらかく笑っていた。
「お疲れさま」
「おう」
そう答えたところに、「行くぞー」という野島の声が聞こえてきた。一拍遅れて「ヒュー」という高い音が耳に飛び込んでくる。そして音を立てて頭上で煙が広がった。
花火だ。
それを見て、生徒たちから新たな歓声が上がる。
すっかりくつろいでそれを眺めていると、隣の森本が肩を叩いてきた。
言われるまでもなく、俺も気づいた。
生徒の波が二つに割れる。
生まれた道を歩いてくるのは教頭。そして、生徒会長。
す、と呼吸を整える。立ち上がった森本に続いて、俺も立ち上がった。道の先、ステージの前にはいつのまにか七尾や西岡、舟木が並んでいる。
そして、こちらへ歩いてくるやつらを待ち構えた。
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